百姫夜行外伝~Circulation編~表④

(1)
「っぐ、ああっ………は、ああっ」

妖僧・南方弘真との戦いは御巫澪の敗北に終わった。
その結果として巫女服を剥ぎ取られ、宙吊りにされた澪は全身を弄られることに。
性感帯を甘く癒やすような愛撫は”これだけだったら耐えきれる”、”この場はどうにかやり過ごし、もっと力をつけてから再戦を挑む”と澪を勇気付けるも、妙に固く節くれだった指先に乳首を捻られたことで……たったこれだけの接触で、澪の決意は呆気なく崩されてしまった。

「吸精の脈…………あなたならご存知かと思いましたが」
「っか、はあっ、ああっ、ああああんっ……!」

枯れ木の根を彷彿とさせる、ひどく細い何かが乳首に押し当てられたかと思うと強烈な痺れと疼きが乳腺の内側で小さく爆ぜる。
次いで、独立した生命体さながらに蠢き始めたそれは入口としては決して機能しない乳管を無理矢理にこじ開け、愛撫には耐えられないレベルの敏感さを湛えた内側をダイレクトに穿り始める。
唐突に訪れた膨張感と圧迫感と、乳房そのものが千切れかねないほどの痛みに晒された澪は背筋を反り返らせつつがくがくって全身を暴れさせた。

「この艷やかな髪、色白の餅肌、子を成すために大きく張り出した乳房、安産型の臀部……どれも茶吉尼天の供物として相応しい」
「そんな、あっ、あっ、はあ、ああう、あああああっ!!」

電流を直に注がれるような、焼きごてを押し当てられるような、体内を撹拌されるような苦痛が両の乳房へと集中し、手足と異なり拘束を免れていた豊満な肉塊が残像さえ生じさせる勢いで縦に横に揺れ弾む。
一方で色白で蕩けんばかりに柔らかい丘陵に根を張り巡らせた吸精の脈は、辿り着いた豊満な乳房を餌としてぎゅっ、むぎゅっと好き勝手に揉み捏ねていく。
かと思えば今度はたっぷりとした球体を円錐状に絞り伸ばし、細く固い”根”がもっちりとコシを帯びた膨らみの表面に沈み、愛撫に励む指先さながらに蠢きを激化させる。
誰かの手で揉まれるくらいなら……と視線を逸らす澪だったが、髪の毛一本よりも薄く細い根が乳管の内側で前後に動いた途端に、汗ばんだ肉体は遠火で炙られたと紛うほどの熱を帯びる。
異形の怪物が有する触手にも似たそれらは、母乳を求める赤子のつもりか乳暈へと被さり、朱鷺色の乳首を根元から吸い上げ、バキュームじみた奉仕に並行して腰や下腹部から力を奪い取る。
そして直後に脳細胞を塗り潰すのは、悍ましい妄想。
南方に存分にいたぶられたにも関わらず、波音と一緒に彼に媚びへつらい、足で踏みつけにさせられながらも絶頂を迎える、そんなイメージが網膜を焼き尽くし、脳内を隅々まで染め抜き、頭蓋骨を無遠慮に震わせる。
心と体が分離させられる錯覚に恐怖を抱いた澪は、上半身をくねらせて ”根”の行く手を阻もうと試みるも、指の一本さえ動かせない始末。
それでもと乳房をぎゅううっと揉み潰す”根”と南方を交互に睨み付けるが、乳腺の内部で膨らむ愉悦を前にただただ嬌声を飛ばすことしかできなかった。

「言っておきますが……もう逃げられませんよ、勝てぬ戦いを強いられた自身の運命を呪うことですね」
「っうああ、あ、あっ、あひ、いいいいっ……!」
「しかし、助かる道が一つだけあるとすれば、あなたはどうしますか?」

それは、ひどく頼りない蜘蛛の糸。
一方で2つ、3つと加勢に回った”根”は体液に汚れた女体を好き勝手に這い回り、果てにクリトリスと肛門へと狙いを定める。
1つは陰毛を掻き分けて上部の突起に巻き付くと、締め付けを強めつつ敏感なポイントを上下左右に薙ぎ倒しては頂点だけを丹念に扱き潰す。
もう1つは規則正しく並ぶ皺の一本一本を時計回りで順番になぞると、かりかりっと掻き毟る動きを使って閉じていた窄まりをこじ開けたタイミングでひくひく蠢く穴を浅く撹拌していく。
指と似た、だが指とは異なる佇まいの”根”は性感帯の上で散々に暴れ……その度に澪は絶頂の一歩手前まで追いやられることとなった。

「例えば、御巫波音もまた茶吉尼天の供物として愛される……」
「っぐ、ああっ、んふううあっ、そんなこと、許せ……あ、あぅ、あひいいいいいっ!!」

乳管の内側をぞりぞりっと刮げる前後運動に、襞と襞の間を捏ねくり倒す円運動に、肛門のエッジを削りかねないジグザグ運動。
半ば不意打ちで強まった刺激は子宮の内側をじわっとぬめりで蕩かし、射精前のペニスを締め上げるように膣内は縮こまり、クリトリスは見えない糸で引っ張り上げられたと勘違いするほどにぴんっと芯を孕む。
しかしオーガズムには一歩及ばず、細胞の一つ一つさえざわめかせる快感は”根”が蠢動を止めるとともに快感は背中を滑り落ちる形でどこかへと遠のいていった。

「それを許すのであれば、気を失うほどの快感を与えましょう」
「できるわけ、っ、ああっ、あふ……ううっ、んあ、ああっ、あひい、いいいっ……波音を巻き込むくらいであれば、こ、殺しなさいっ……あは、あああぁっ!」
「……波音も茶吉尼天様の供物に牝婢に捧げます。ほんの僅かな歩み寄りを見せるだけでよいのですが」

できるはずがなかった。
決意を固めた澪は黒髪をなびかせつつ首を横に振るが、ここで”根”の先端が膣内や乳管へと深く捩じ込まれていく。
しかしそれらは核心に触れるよりも先に引っ込み、動きを弱め、離れてと桜色に染まる女体を焦らす始末。
そして湿っぽくも甘ったるい、渦を彷彿とさせる愉悦が薄れた途端に前後運動を再開させ、張りを強めた乳腺の内部やぐじゅぐじゅに濡れ蕩けた膣奥に衝撃めいた気持ちよさを刻みつける。
筋繊維さえもばらばらに解けかねない気怠さと全身の収縮を前に、澪はただ腰を泳がせ、乳房をバウンドさせてと”根”を振りほどこうと無駄な抵抗を繰り返すばかりだった。

「どうしました? あなたは負けた、そして妹も同罪……牝婢として生きることができるのであれば、有り難い話だと思われますが」
「っく、あっ、あはあ、あっ……っ、あ、あんっ」

二度目の申し出に対するは、態度も曖昧な嬌声。
脳裏をよぎる”そんなことできるわけない”、”波音を巻き込まないで”、”でも、早くイキたい”、”一時の快楽で全てを失うわけには行かない”、”気持ちよくなりたい”という矛盾した思考。
対する女体は、砲弾状に張り出した乳房に目に見えない糸か何かで引っ張り上げられたように芯を極めた乳首と巻き添えでふっくらと色づいた乳暈、同じく立ち上がったクリトリスと”根”をしとどに濡らす夥しい量の愛液、ひくひくと吸引じみた蠢きで異物を奥へと導く肛門。
嘘と真実の間で澪は奥歯を噛みしめるが、痛みはすぐに快楽へと塗り替えられていった。

「まあ、返事など聞くつもりはありません。既に頂いていますからね、あなたの身体から」
「違う、っ、それは……っ、あああんっ、あうううううううっ!!」

南方の暗く沈んだ声を呼び水に、乳管が、尿道が、括約筋の奥が微細な棘で満たされた触手に襲われる。
脳を洗い流しかねない鮮烈な快感電流を前に、 触れられざる領域への痛苦に満ちた摩擦を前に、細く伸びた根の先が襞と襞の凹凸や子宮口の切れ目を探り回す巧妙さを前に、澪の唇は少しずつ綻びを露呈させていく。

「ああうあ、っ、ああっ、あひいっ、い、いいっ、ああっ、あああああんっ!!」
「波音も澪ともども茶吉尼天様の供物に牝婢に捧げます…………これだけでいいのですよ?」
「はあ、あぅっ、ううっ……波音、だめ、だめなのに、っ……はああ、あひいいいぃっ!!」

愉悦は瞼裏を桃色に染め、乳管を通じて乳腺はおろか脳内さえもぐちゅぐちゅに撹拌し、羽箒でくすぐられたような鋭敏かつもどかしい心地よさが子宮内部を握り締め、膣内を通じて直腸にもぞわつきを施す。
そんな電流じみた悦楽は思考を蝕み、言葉を蝕み、理性を蝕み……南方が望むであろう言葉が口内で自然に組み立てられていく。
故に澪は唇端を綻ばせ、溢れ出る唾液の縦糸や嬌声とともに息を吐き切り……彼を、ただただ悍ましい存在を見上げ、口を大きく開くこととなった。

「っあ、あ、あ………は、し…………」
「そう、それでいいんです。それでいいんですよ」

壊れていく心、その代償として与えられるであろう快感。
甘ったるく、ほろ苦く、冷たく染みるような心地が強まる中で、澪は濡れた唇を南方へと捧げてしまった。

(2)
―――
「どうやら、ぎりぎり間に合ったようだな」

地下の最深部へと続く分厚い扉を破壊した流は、けたたましい警報の音も意に介さず、同行者である神薙ヤヨイを連れて勢いのまま室内へと足を踏み入れる。
そこには触手か何かで宙吊りにされ、些細な身じろぎにさえ揺れ弾む豊満な乳房や長さと肉感を湛えたしなやかな美脚を曝け出し、性感帯に木の根にも似た何かを植え付けられた澪の姿が。
視線が重なっても、うわ言を漏らすだけの彼女を前に自ずと怒りも膨らみ、流は凌辱者たる南方との間合いを少しずつ詰めていった。

「危なかったな、完全に呪われるところやで」
「わかっている。澪は……大丈夫なのか?」
「どうやろ…………でも、きっと平気や。まだ完全には陥落して…へんわ」
「…………わかった、俺が南方を引き受ける。後は任せた」

ヤヨイに澪を任せつつ、流は南方と対峙する。
威圧的な力に、どす黒い邪気に、足元が泥濘と化したような感覚に膝を小さく崩しつつも、両の拳を強く強く握り硬めて、硬い床を踏み付けてやった。

「随分と不躾な……さて、どちら様でしょうか?」
「………………澪、待ってろよ。すぐに助けてやるからな」
「あ、うぅ……わ、わたし、っ、あふ、ううぅ」

震脚が繰り出されれば周囲に突風が生じ、無機質な景色が僅かになびく。
同時に目を見開いた南方は唇の端を歪ませるも、「これはこれは」と嘲り半分の言葉を漏らす。
おそらく、自分一人でもどうにかなる相手だと油断しているのだろう……間合いを詰めても南方は構えを取ることもせず、ただ澪とヤヨイに舐めるような視線を向けるばかりだった。

「女性であれば優しく対応する義務もあるのですが、男性であれば……さっさと殺してしまうのがいいのでしょうね」
「……何とでも言え、あまり舐めていると後悔することになるぞ」
「馬鹿馬鹿しい、ここまで無事に辿り着けたことで自信が過信に繋がったのでしょう……くく、っ……ふふふふふっ」

どこか乾いた笑いに次いで、南方が身を屈めるとその背中がぱっくりと2つに裂ける。
姿を見せたのは、無数の触手。
びっしりと棘を敷き詰めた一本一本の先端にはナイフと紛うほどの鋭い牙。
そして凶器じみたそれらを纏った口吻部からは夥しい量の唾液が溢れており、強酸性の粘液は地面を焦がし、大きな穴を開ける。

「そいつがお前の本性か、少しは歯ごたえがありそうだな。だが信仰の結果がそれじゃあ、あまりに救われないな」
「黙れ……っ、うお、おおおおおおおっ!!」

咆哮を合図として、数本の触手が流へと迫る。
一本は右、一本は左、一本は正面と逃げ場を塞ぐように蠢くそれらは、バックステップで距離を確保した胴体へと食らいつくが、強靭な拳によってはたき落とされる。
さらに左右の触手が風を切り裂きながら側頭部に唾液の酸を浴びせるが、凝縮された気は1つの障壁を作り出し、肉体に触れるよりも先に煙と化して霧散を余儀なくされた。

「どうした? それで終わりか?」
「ぐっ……なるほど、確かに、いやこれは素晴らしい、素晴らしい力だ」
「…………まだ奥の手でも隠し持ってやがるか」

深く息を吐き、構えを解く。
そして眉間に光を集めるようなイメージで”無”から”有”を生成し、それをエネルギーとして体内で練り上げる。
極限まで凝縮させられた気力は心臓から右肩、右腕、右手へと集まり、やがて火傷せんばかりの白熱が掌の中心を輝かせる。
十分すぎるほどの破壊力を確信した流は左足をバネ代わりに飛びかかり、床を抉る触手の先端を回避し、南方の真正面を取ると右肘を引いた。

「ふん、発勁ですか……そんなものが、今の私にっ!」
「………………っ!!!」

実力差に気付かない相手は、強い酸を撒き散らしつつ大量の触手を乱舞させるが……震脚とともにぶつけられた右掌は胴体を勢いよく吹き飛ばし、壁へと叩き付けた。
潰れて体液を吐き出した触手の後ろには蜘蛛の巣を彷彿とさせる大きな亀裂と、赤黒い粘液に汚れた地面。
割れてすり鉢状に凹んだコンクリートから足を離した流は、跳躍し触手の射程範囲から自らを逃がす。
対する南方は出血とともにその場に崩れ落ちるも、妖しく光る両目には生気が。
油断ならない相手だと構えを戻すが、ここで奥の通路から凍えんばかりの腐臭を感じ取ってしまう。

「なっ……今のは、一体」

背筋をそそけ立たせる嫌悪に、鼻や口から入り込んでくる”悍ましい何か”に握り固めたはずの拳が緩む。
おそらく、向こうに何かあるのだろう。
気脈や霊力ともことなる、実体を伴った何かが。

「まあ、単なる製薬会社じゃないってことくらいはわかってたけどな」

気配の主は流の存在を察知していないのか、塊じみた邪悪な風は近づくことも遠ざかることもせずただ通路の奥にじっと佇んでいた。
戦いに割って入るでもなく、ヤヨイと澪に狙いを定めるでもなく、ただその場に留まり続けていた。
一方で呼吸の度に脳を凍らせ、全身をぎこちなく強張らせるどす黒いプレッシャー。
心臓や脳を鷲掴みにされそうな錯覚に怯んだ流は一歩、二歩と後ずさるが、それを隙と見出した南方が穴の開いた腹部を庇いつつ、間合いを詰めてくる。

「どうしました? まさかこれで終わりというわけではないでしょうね?」
「……考えている余裕は無さそうだな」

動きを見せることのない気配より先に、目の前の敵。
流は深く息を吐くのと同時に充填した気力を全て解放し、にじり寄る南方と距離を一気に削り取った。

「うおおおおおおおおおっ!!」

正拳の届く範囲に入り込んだところで、5発、10発と殴打をお見舞いしてやる。
鍛え抜かれた拳は触手の牙を砕き、先端に大きな穴を開け、内部に多くの触手を隠す胴体にも強烈な衝撃を浴びせる。
反動で生じた強風が全身を取り巻く中で右手の先に視線をやれば、苦しそうに蹲る。
しかし致命傷には至らなかったか、どす黒い血糊とともに立ち上がると千切れかけた触手を使って全身を庇い立てる。
もっとも稚拙な障壁が通じるはずもなく、繰り返される連撃は呆気なく防御を貫き、肩を、肘を、首を、膝をあらぬ方向へと捻じ曲げ、頭蓋骨を粉砕する。
それでも相手は難を逃れた触手を暴れさせ、室内のあちこちに強酸を撒き散らすも……飛沫は充実した気力の前に蒸発を余儀なくされる。
そして白い煙の向こうには、表情を歪ませ、一歩二歩と後ずさる惨めな姿。
流は相手との距離を詰めると、拳1つで敵の左胸を貫いた。

「ぐお、おおおっ、おう……この、っ、戦いに、何の意味があると、っ、おおおぉ……」
「知るか、随分と手間取らせやがって。簡単に死ねると思うな」
「やめろ、私を殺しても……っ、ぐ、が、あああっ」
「今更命乞いか? ふざけやがって」

後に残るは嗄れた呻き声と、両手指にこびり付いた血液の生々しさ。
憎悪とともにそれらを振り払った流は、手刀で右腕を、突きで左腕を、蹴りで両足を捻じり切ってしまった。
噴水さながらに溢れ出る深紅に、強引に毟り取られたことでささくれ立った肉片に、折れて剥き出しの骨が露わになる中で南方はその場に崩れ落ちた。

「ぐ、うううっ……この程度の力で、勝ったとは思わないことです」
「………………まだ何かあるのか?」
「っ………………!!」

さらに両手を首にかけると骨もろとも首をへし折ってやった。
もっとも背中からずるりと垂れ落ちた触手は蠢いたまま、切断したはずの手足も小さな痙攣を残していたが。

「もう、終わったん? めちゃくちゃ早いやん……そいつは祓いきったんちゃうやろね?」
「…………澪は、大丈夫なのか?」
「あ、ああ……いろいろひどい目には遭ってるみたいやけど、命に別状は無さそうや」
「そうか、よかった」

蠢く触手と木の根のような何かに嬲られていた澪も、地下室の傍らで寝かされていた波音という少女も無事とのこと。
安堵に深く息をついた流だったが、ここで視界の端には奥の通路に向かおうとするヤヨイの姿が。

「待てっ!!」
「うわ、あっ……なんやなんや?」
「いいから、そこでじっとしているんだ。多分あの奥には、何かいる」
「……確かに、変な感じはするな」

半ば強引に南方の首を切り落としたところで、ヤヨイに静止を促す。
肩をびくっと震わせた彼女は、流と通路の先に交互に視線を向けると……溜め息とともに澪と波音のところへと戻る。

「あっ、うぅ……」
「とにかく早く戻ろう、ここで治療なんてできっこないんやから」
「ああ、わかった…………だがその前に、こいつの首を持って帰るぞ」
「……うちに任せとき。このボケ簡単に死ねると思ってへんやろな」
「頼むぞ、こいつの力が必要になるかもしれないからな」

最後の一言で納得してくれたのだろう。
ヤヨイが南方の頭に術を施してくれた。
腐敗の止まった生首をヤヨイに預けた流は、澪と波音の身体をゆっくりと抱え上げた。

(3)
―――
「少しはできるな」

榊製薬つくば総合研究所、第2管理室にて。
藤木流と南方弘真の戦いをモニター越しに見つめるのは、伯王神招姫が頭女たる八幡神威。
もっとも興味があるのは勝敗ではなく、流の圧倒的な力だった。

「相手が100号とはいえ、ここまで戦えるとは」

聞く者の心どころか魂さえも彷徨わせるほどの声が形良い唇をこぼれ落ちるとともに、繰り返し、繰り返し、流の身のこなしに視線を向け続ける。

「……しかし、ここの守りもそれなりのはず。何故こうも容易く……」

単にIDを偽造するだけでは地下最深部の実験室に到着できるはずがない。
如何にして生体認証をくぐり抜けたのか、一人の死者も出さずに厳重なセキュリティをどのように突破したのか、どんな手段を使って分厚い扉や壁を破壊したのか、呪精実験姫に留まるとはいえそれなりの力を持っていた南方弘真を呆気なく追い詰めるレベルの力量をどこで誰の師事によって勝ち得たのか……これらの疑問に答えるだけの情報を持たぬ神威は、ただただ画面を目視し続けるばかり。
もっともそのおかげで流という男の底を知ることができた、万一今ここで戦いになったとしても取るに足らない相手であると。

「踏み込みも浅く、速度も遅い、気を練り終えるまで多少の時間も要する。懐に入られたとしてもどうということもない」

野太刀の一振りで片を付けられる相手に、何かを考えてやる必要もない。
現時点では実験室の最奥かた溢れた”邪気”に恐れおののく程度の存在、しかし明日は、明後日は、1ヶ月後、半年後はどうだろうか。
間合いの取り方、身の躱し方、行動の読み方、どれを取っても非凡な才能を見出すことができた。
さらに驚くべきは、あの膂力だろう。
実験体が相手とはいえ呪具を用いることもなく南方の肉体を引き裂く様子は、これまで相対してきた強者に決して勝るとも劣らない。

「……気の量そのものは、かなりの水準ということか」

映像に混じるノイズに顔を顰めつつ、彼の持つ力の根源について仮説を立てる。
あれだけの気を体内に練り込むなど、人間の、それも男の身体に許される芸当ではない。
神薙ヤヨイの差し金かとも考えたが、特に不審な行動は見受けられなかった。

「流石に、あの奥に何があるかまでは気付けなかったみたいだな」

目の前には、震脚とほぼ同じタイミングで何かを感じ取った流の様子が。
一瞬だが通路の奥へと注がれた視線に百姫計画の暴露を懸念するが、幸運なことに彼の意識は窮地に陥った南方へと向いてくれた。

「だが、何らかの情報は掴んでいる様子……引き続き、警戒を怠らないようにしなくては」

南方が捕らえ、嬲りものにしていた勾玉遣いの澪は奪還され、切断された頭部もヤヨイの力によって”生きた状態で”奪われた。
一方でそれだけの力を備えているにも関わらず、南方を除けば死者は0。
あまりに鮮やかな、計算された立ち回りに冷徹さを見出した神威だったが、ここで一つの疑問が頭をもたげる。

「果たしてどう来るのか、どこかに付け入る隙があればいいが」

人質でも取るか、銃火器の類は有効か、交渉によって譲歩を引き出すことができるか、南方の頭を持ち帰ったということは百姫計画に関して僅かでも情報を得ているのか、涼皇か誰かが裏切ったのか。
行き来を繰り返す様々な思考の中で、神威は監視カメラによって録画された映像を最初から確認し直すことにした。
彼の伸び代を把握するために、地下実験室に何らかの手掛かりが残されていないか探すために。

(4)
―――
「こいつは、一体どういうことなんだ」

テロリストによる、榊製薬研究所への襲撃。
研究室から開発中の危険な薬品が盗まれた。
そんな一本の電話から山本英二警部が現場へと急行することとなったが、到着と当時に視界に飛び込んできたのは爆破ではなく爆撃を連想させる惨状……瓦礫を掻き分けてビルの入口へと進むが、幸いにも実験室へと続くエレベーターは無事だった。

「ここは核ミサイルが落ちても無事なんじゃないかと言われていたが……こいつは犯罪者やテロリストの仕業なんかじゃないだろうな」

ビル内部の現場検証、同僚や部下の証言、残っていた監視カメラの映像を頼りに情報を集めるも、把握できたのは少なくとも地下の実験室に5人の男女がいたこと、化け物じみた力を持つ男と化け物そのものの男が戦い一人が勝利したこと、男がもう一人の男の首を持ち去ったことだけ。
通報の内容とは異なる”事実”に疑念を抱くも山本にできることは何も無く、地下へと向かった化学班が戻ってくるのを待つしかなかった。

「どう考えてもこいつは神器省の仕事だ、どうせ淫魔か何かが裏で暗躍しているに決まっている……だが」

神器省か、あるいはもっと大きな力が裏から手を回したのだろう。
既に報道はテロリストによる犯行と断定しており、藤木流、御巫澪、御巫波音が重要な化学物質を持ち出した容疑者として写真が公開されていた。

「まあいずれにしろ、あの藤木って男を捕まえればいろいろわかるんだろうが」

無数の触手を蠢かせ、強酸を撒き散らす男を容易く制圧し、手足も首も素手で引きちぎる膂力の持ち主。
鍛え抜かれた肉体が纏っていた光は、相手の攻撃を呆気なく弾き返していた。
そんな男を相手に拳銃で対応しても、勝ち目は万に1つも存在しないだろう。

「しかしどうやって…………おい、奥はどうだったんだ?」
「はっ、それが榊総研の研究者に追い出されてしまって……あいつら礼状のことを何だと思っているのでしょうか」
「……やはりか、被害はどうだった?」
「一部の危険な薬品を盗まれただけで、それ以上の損害はないとのことでしたが……分厚い壁のあちこちに大きな穴が開いていて、あれだけの爆薬をどうやって用意したんでしょうか」
「目撃情報とかはなかったのか?」
「いえ、特に……そもそも、話すつもりも無さそうですし」

捜査に非協力的な榊総研、及び腰な上層部、警察庁に圧力をかけてまで事件を隠蔽しようとする神器省。
おそらくこの一件は、”テロリストが次の事件を起こすために武器を盗み出した”という形で片付けられてしまうのだろう。

「結局地下は調べられなかったのか、そこで容疑者とされる藤木流が戦っていたんだが」
「地下は駐車場だと言い張るばかりで、上からもそこは無視しても構わないと指示がありまして」
「……映像が残っているんだぞ、下らない嘘をつきやがって。だが上層部からの許可は下りないだろうな」

出口へと慌ただしく向かう化学班の背中を見送りつつ、徹底的に破壊された分厚い扉に驚愕しつつ、山本は地下へと続く階段との距離を詰めていく。
人1人分の大きな穴が開いたシャッター、その奥には薄闇。
早速とばかりに先に進むが、ここで研究者に止められてしまう。

「何か用か?」
「ここから先は駐車場です、捜査とは関係ないかと」
「監視カメラの映像は押さえてある、隠し事はためにならんぞ」
「……そちらこそ、既に何らかの指示が出ていると思いますが」

不敵に笑う研究者。
向こうには向こうの言い分があるとすれば、簡単に引き下がりはしないだろう。

「わかったよ…………しかし、最近の爆弾は随分と高性能なんだな」
「何が、仰りたいのでしょうか?」
「火薬も残らない、このシャッターなんて手で無理やり引き千切ったような穴しか開いていない、一体誰がやったんだろうな」
「さあ、テロリストの考えることなんてわかりませんね」
「入口の扉だってそうだ、破壊の規模が大きな割に火災が全く発生していない。爆撃でも食らったかのような有様なのに、妙だと思わないか?」
「……………………」
「周囲の建物もガラスが割れているだけだった、爆風が起きたにしては」
「……もういいでしょう、謎解きごっこは…………さあ、お引き取りください」

あくまで冷静さを保つ研究者を前に、やって来た警備員を前に、山本は引き下がることを余儀なくされた。
だが脳内はフル回転を続け、額の裏に浮かんでは沈む仮説を一つ一つ検証しようとしていた。

「おそらく榊総研の主張は嘘だ、だがなぜ隠す必要がある……」

藤木流という男が、セキュリティも厳重な製薬会社に侵入し、危険性の高い薬品を盗み出した……このストーリーが表向きに報道されているものの、そもそもこれは神器省が望む構図に過ぎない。
つまり真実は、奴らにとってもっとも不都合な場所に存在する……”謎解きごっこ”に浸る中で、山本はビルの外へと移動した。
背後に、幾つもの鋭い視線を感じながら。

「淫魔が何らかの理由で地下の実験室に向かった……これはありえないわけではないが、あいつらがここまで大胆に動くとは思えないか、日が沈む前に動き出すのも不自然だ」

神器省の差し金なら、警察に察知されるような暴れ方はせずもっと巧妙な手口を用意するはず。
人間に擬態した淫魔であれば、警察を関与させることもなく霊力や巫能を用いて撃退すればいいだけ。
単なるテロリストだとしたら、これだけの力を持っているのは不自然。
しっくり来る結論を下せないまま、山本は高くそびえ立つビルを見上げた。

「いずれにしろ、これを一人でやった奴がいるってことだけは確実なんだ……」

厳重に管理されていたであろう入口にも大きな穴が開いており、割れたガラスや砕かれたコンクリートが地面のあちこちに散らばっていた。

「だが死者は0か、一体どういうつもりなんだ」

手掛かりに乏しい中で、あれこれ考えても仕方がないのだろう。
山本は指示すべき内容を頭の中で反芻しつつ、パトカーへと戻った。
生活の全てを丸投げすることになるであろう妻に申し訳無さを抱きながら。

(5)
―――
澪と波音を救い出した流は、自らの住む小屋に2人を運ぶ。
未だ目を覚まさない2人に掌をかざして気の状態を確認すれば、深く根付いた荒魂を察知することができた。

「どう? 結構まずいような感じやんな?」
「この波音って子はやばいが何とかなるかもしれない……問題は澪だな」

整えた巫女服の向こうには、鎖さながらに彼女を縛る呪威。
そして、穴という穴から入り込んだであろう吸精の脈。
おそらく、呼吸をするだけでも乳管に膣内に肛門内と鮮烈な刺激が走るに違いない……事実布団の上に仰向けで寝かされている澪は、時折苦しそうな声を漏らしては切なげに腰をくねらせるばかり。
彼女の額に、胸元に浮かぶ汗を拭いつつ、流は脈を刻み付けられていたと思われる場所に掌をそっと近付けた。
指紋を通じて送り注がれるぞわつきと妙な寒気に顔を顰めたままで。

「この、吸精の脈ってのを取り除けばどうにかなるだろうが」
「だめ……なん?」
「そういうわけじゃない、ただかなり難しいってだけの話だ。せめて師匠がここにいてくれたら……」
「師匠? あのマクマとかいう胡散臭い奴やな?」
「…………いや、気にしないでくれ。それよりも今は澪のことをどうにかしないとな」

一方で、茶吉尼天の供物として捧げられることはなかった波音は規則正しい寝息を立てていた。
仮に澪が”妹も生贄に捧げる”と口にしていたのならば、彼女も無事では済まなかった。
澪の意思の強さに感謝しつつ、力なく布団に沈んだ右手を優しく握り締めた。
”俺がついてる、だから絶対に諦めるな”とメッセージを伝えるために。

「それにしても……まさかあんたがここまで強かったなんて、思わなかったわ」
「…………今の俺だったら、神威にも勝てるか?」
「流石にそれは無理やと思うわ、ムツキはそういう次元にいるような存在じゃないねん」

異なる名前を発した理由を聞こうと顔を上げるが、波音の身体を抱え寄せたヤヨイは小さく首を振るだけ。
口に出せない理由でもあるのか、「よかった、無事で」と呟くヤヨイにこれ以上何かを尋ねることはできなかった。

「ありがとう、波ちゃん…うちのご主人様のこと助けてくれて」
「……完全に救えたわけじゃない、むしろ大変なのはここから先だと思うが」
「それでも……無事だったら、きっとやり直せるわ」

波音は、あくまで茶吉尼天の供物として捧げられていないだけ。
そこに至るまでの長い時間、南方によって執拗かつ丁寧な調教を施されたのもまた事実。
さらに神棚ネットワークとやらで、その痴態も配信されているはず。
無論プライバシーへの配慮などされるわけもなく、顔も名前も全てを曝け出されている。
あまりに残酷な所業に怒りを覚えつつ、流は澪の長く艷やかな黒髪を優しくなで上げた。

「地下の実験室、結局あそこには何があったんだろうな」
「調べようとしたら、止めてきたやん」
「…………迂闊に踏み込むべきじゃないと思ったんだ、あの中には南方でさえ持て余すような存在が眠っていた……もし気付かれたら、どうなっていたか」

後頭部の辺りをぞわつかせるのは、 精神を直にどす黒く塗りつぶしかねない悪意の塊。
その妖気や霊気に触れてしまったが最後、存在そのものが崩壊しかねない威圧感がそこにはあった。

「共鳴したような感じがすんねん、もしかしたらうちと同族なのかも」
「神威だったら、情報を持っているんだろうな」
「……うーん、まあそんなところかなぁ。ムツキも涼皇も多分本当のことなんて話してくれないだろうし」

曖昧な返事とともに、波音の頭を撫でるヤヨイ。

「まったく、次から次へとどうなってやがる……」

通路の奥にいた”何か”とも、戦わなくてはならないのだろう。
当然今の自分では勝利するどころか、傷を負わせることも困難そのもの。
しかし、神威のやろうとしていること止めるのであれば、いつかは対峙せざるを得ない……南方の生首を持ち去ったことで、向こうも流達の思惑に気付いているのかもしれないのだから。
不安と恐怖と躊躇に苛まれる中で、流は澪の身体に深く刻まれた吸精の脈の痕跡を1つ探り当てた。

「まあ、まずは澪を助け出さないとな。身体はここに存在しているが……心は、ここではないどこかに眠ったままだ」
「…………やんなぁ」

南方による調教に、一時の愉悦と引き換えに妹を牝婢として差し出しかけたことに強い罪悪感を覚えているのであれば、それを忘れさせる必要がある。
だがそのために植え付けられた快感に勝るとも劣らない快感を与える必要がある。
もし彼女が自分との”まぐわい”を覚えているのなら……欠片ばかりの希望に縋り付く形で、流は澪の顔を、首筋を、肩を、腕を弄り続けた。
少しでも意識を、精神を現実世界へと引き戻すために。

(6−1)
―――
「はあ、あっ、うう……っ」

見慣れていたような気がする天井を虚ろに見つめる澪は、この場での一夜を思い出していた。
もっともそれは靄がかかっており、ひどく曖昧で、味も音も匂いも存在しない、何らの感慨も得られない平面的な回想そのもの。
しかしびくっと跳ねた身体をきっかけに、色鮮やかな”現実”が瞼の裏に蘇っていく。

「いや、あっ、あっ、あ、あっ、あああああっ……!」

恐怖か、期待か、渇望に促されるまま、澪は自分の身体を強く強く抱き締める。
着衣の奥には痛々しく乳輪ごと立ち上がった乳首に、同じように裏地と強く擦れ合うクリトリスに、きゅっきゅっと不規則なタイミングで引き締まる窄まりに、ぐじゅぐじゅの蜜を溢れさせた陰部。
目覚め、飢えを凌ぐつもりで暴れ始めた荒魂は神経を隅々まで痙攣させ、子宮内部を蠢かせ、全身を緊張させていく。
かと思えば今度は、滴り落ちる蜜と一緒に火照った肌がとろけていくような、毛穴の一つ一つを極細の何かで穿られるような、もどかしいむず痒さが疼痛との合わせ技であらゆる部分に侵食を試みる。
その度に澪は腰をくねらせ、ぎしぎしっと畳が軋むのも構わずに全身をばたつかせてと活性化した荒魂へと挑むが、高まりすぎた愉悦は弱めのオーガズムを生み出すのと並行して、乱れた意識を妙に甘ったるい闇の底へと引きずり込み始めた。

「あ、ああっ、ああぅ……っ!! は、ああ、あああんっ」

南方との戦いに負けた澪は、無力化させられた上で茶吉尼天の供物に相応しい存在として様々な”味付け”を施される羽目に。
初日は極細の触手だけで延々と乳首を責め倒され、ぬるぬるの粘液越しにちゅぽちゅぽっと先端だけを絞るように啜られ、歯のない口で噛まれ続け、巻き付いた糸状の触手に突起だけをピンポイントで扱かれ、乳輪に敷かれた仄かな凹凸を1つずつ丹念に刮げられた。
2日目はより太めの触手で乳首を上下左右に薙ぎ倒され、性感帯への愛撫と並行して豊満に張り詰めた乳房を揉みくちゃにされ、粘液を塗りたくられたお椀型の膨らみを残像さえも生じかねない勢いでバウンドさせられ、縦長の楕円に変形させられ、めり込んだ触手の先端によって平べったく凹まされと、より広い範囲に愉悦を刻み付けられた。
3日目は安産型の尻を弄られつつ細く短い触手でクリトリスを捏ね回され、芯を孕んだそれをくにくにっと捻じ曲げられ、先っぽに唇のような切れ目を乗せた別の触手に突起の頂点だけを咥えられ、互い違いに動く内側のざらつきで徹底的に揉み嬲られ、意識がクリトリスに集中したところで無数の触手が全身を取り囲み……皮膚が溶けていくような感覚で脳内をとろとろにさせられた。
4日目は糸状の触手に乳首とクリトリスを縛り上げられると同時に、肛門の皺を一本ずつ丹念になぞられ、ぐりぐりっと浅めに押し込まれた先端に窄まりをこじ開けられ、括約筋の手前で何度も何度も何度も出し入れを受け止めさせられた。
5日目は土手をフェザータッチでなぞられつつ、膣口の窪みに触手の先端を押し当てられ、上下左右に滑るような動きで挿入を焦らされつつ膣内に敷き詰められた襞の凹凸を端から端まで探り抜かれ、とどめとばかりに狭苦しい穴の奥を細い触手での執拗な撹拌に晒された。
6日目はとうとう触手が膣奥への没入を果たし、男根では到底不可能な複雑かつ立体的なストロークで子宮口を穿ち、同時進行で括約筋も割り広げられ直腸内さえも触手の先端で蹂躙されることとなった。
7日目は腋窩も口内も、手足の先さえも触手に舐め回され、高まるむず痒さと気持ちよさを丸一日施され続け、ただの1回たりともオーガズムを迎えることはできなかった。

「っああ、あっ、ああ……気持ちいい、いぃっ……また、あ、あっ、ああっ……どうして、こんな」

囚われの身に貶められて一週間が経過した後、澪の脳内にあったのは”これくらいならぎりぎり我慢できる”という儚い希望だった。
容赦なく感じさせてくるが、所詮はそれだけ。
快感が引けば眠ることもできるし、南方への憎しみは残ったまま。
だからこそここは耐えて助けを待とう……と考えたが、翌日以降の相手は触手ではなかった。

「う、ううぅっ……あう、ああっ、あああっ、あああああっ」

びっしょりと汗ばんだ身体を通じて、次の記憶が鮮明に蘇る。
8日目からの相手は南方自身だった。
夢うつつの中で、ささやかではあったが安らぎを得られた日々が、誰かのために奔走し続けた日々が、今までの記憶が、澪の存在そのものがピンク色に塗り替えられていった。

「…………は、ああっ、き、気持ちよく、また、ぅっ、ああっ、あああああああ……ぁっ」

先程よりも上ずりを増した声を皮切りに、蜜を蓄えていた陰部がぐちゅっ、ずちゅっと蠢きに沿って汁気を股関節や太ももに伝わせる。
想像上の責めが、愉悦が、絶頂への期待が高まるほどに、”その後”の光景が瞼の裏で鮮明さを増していった。
8日目は、彼の手で頬、首筋、肩、二の腕、脇、腹部、太もも、足の指、掌と性感帯とは無縁な場所をひたすら弄られ続け、全身にむず痒さと焦れったさを破裂寸前まで注がれた上に、”勝手にイクことは許さない”とばかりに澪が気持ちよさそうな表情を浮かべたところで手を離されるという甘ったるい拷問を受ける羽目になった。
9日目は、前日と同様に全身を撫で探られる一方で、彼の太く固い指先は乳房を優しく包んでと気持ちよくなれる部分と少しだけ距離が縮まった。
それでも触れる時間はほんの数秒、羽箒で優しく掃かれる程度の刺激しか与えられずぴんっと千切れんばかりに立ち上がった乳首もお預けの立場に甘んじさせられた。
10日目は、ようやく両掌が豊満な膨らみへと被せられ、抱えきれないであろう豊満な膨らみにぐにゅっ、むにゅっとめり込んでくれた。
乳首には触れられずじまいだったが、乳房の内側が沈む指腹によって押し揉まれると血流の改善とともに背筋がぞわつき、下腹部がぎゅっと縮こまり、手足の先が制御を失ったように痙攣を激化させ……最後にこみ上げた震えが体内の奥に集まったタイミングで子宮の内側が熱された果てに蕩けてと、気をやるには至らなかったものの大いに快楽を得ることができた。
11日目は、いよいよと言いたげな指使いが、ついに乳首へと捧げられた。
妙に滑らかで、それでいてくっきりとした指紋を隔てて先端が強く強く引っ張られたかと思うと、互い違いに動く指先が触れるか触れないかの強さでたっぷりの時間を費やして輪郭だけを探られ続ける。
乳輪をざりざりっと強めに引っ掻かれたかと思うと、朱鷺色と白目の肌色が混じり合う境界線を爪の先だけで弄ばれる。
ぴんっと指の先で弾き転がされたかと思うと、痺れて疼くポイントを指腹で優しくなだめられ、痛気持ちよさを痒みへと置き換えていった。
12日目は左右の乳首を丹念に薙ぎ倒されながら、不規則なタイミングでクリトリスを摘み扱かれた。
例えば根元から掘り起こすように引っ張られたり、頂点だけをかりかりかりかりっと一定のリズムに応じて引っ掻かれたり、8の字を描くような動きであちこちに倒されたり、蜜に溺れた小さな突起を唇でちゅるんっと咥え込まれたり。
それだけであれば些細な愉悦だったが、延々と責め抜かれた身体は幾度となく絶頂寸前まで引き上げられるも、イカせてくれるほど南方は甘い男ではなかった。
13日目はクリトリスを愛撫するだけだった指先が、ついにぬるぬるでどろどろの膣内へと没入を遂げた。
襞の一筋一筋を丁寧に探索するように生きた洞窟の内壁を掻き分け、出し入れを少しずつ加速させ、ぎりぎり中指の届く位置に佇むGスポットを刮げられ……しかしやや固めのざらつきを敷き詰めた部分と指紋が互いに馴染んできたところで不意に指が引き抜かれ、下腹部の筋肉を例外なく弛緩させるような絶頂の波は呆気なく引いていった。
さらにその後も南方は中指に人差し指を加勢させて、愛液を潤滑油として襞を摩擦運動でま繰り返していくが、やはりイク寸前に動きを緩められてしまった。

「ふあ、ああうっ……だめ、だめ、ええええっ…………っ、ああ、あっ、ああああんっ」

もう自分は救い出された。
ここに南方はいない、あんな辛い目に遭う必要はないんだ……理性の発する言葉だけを頼りに、澪はひどく曖昧でひどくぼやけていてひどく頼りない自分をどうにか取り戻そうと汗で溶け消えてしまうのではと紛うほどに濡れた身体を抱き締める。
しかし何かに触れる度に、熱を感じる度に記憶の大部分を支配していた快楽が思い出され、澪は枕の端を噛み締めながら自らの腹部を撫で回してしまった。

「はああっ、もっと、もっと、気持ちよく……? 違う、私は、そんな、あああっ、あう……ううぅぅっ」

14日目は、とうとう南方の”金剛様”が滴りと粘膜の境界線さえ失いかけた膣内を優しく突き上げてくれた。
今まで焦らされた分だけ快感は強烈で、たった数度のストロークで澪は呆気なく絶頂へと追いやられることとなった。
そして脳裏を蝕むは”やっと南方様にイカせてもらえた”という甘っこい猛毒。
全身を駆け巡る至福が腟内と子宮口を大いにざわつかせ、その後も澪は突き込まれた先端の思うままに快楽へと絡め取られていくこととなった。
時に力任せに腰を掴まれて粘膜を抉り取るような荒々しい摩擦を受け止め、時に彫りの深い襞を一本ずつ撫でくり回すような動いているかどうかも不明瞭な抽送に晒され、時に長めに距離を取った往復で丸く盛り上がったポルチオとGスポットをほぼ同じリズムで責められ、時に乳首やクリトリスを引っ張られた状態で全身に重々しい衝撃が走るレベルの、突き上げを浴びせられることに。
見た目は単なる人間の男性でしかない彼の動きは、確かに無数の触手と比べれば単調なものだった。
しかし肉の刀としか形容できないグロテスクかつ巨大な”金剛様”は鞘さながらの膣内にぴったりとフィットし、粘膜もぴたっと吸い付いて離れない有様。
触手を遥かに超える、男の身体が与えてくれる悦びを前にした澪は、ただただ腰をくねらせ、ただただ絶頂の荒波を受け入れ続けた。
夜が明けても、また日が沈んでも、絶頂とは無縁な時間の方が少なくなり、調教を施された肉体が絶頂を当たり前と捉えるまで、ずっと……
「っく、ああ、っ、あひ……いいぃっ、っ、っはああ、あっ、ああっ……我慢、我慢しないと、また、あんなひどい目に、ひどい……? 違うっ、そんなことは、あううぅっ」

助け出されたことで、絶頂より遠ざけられた肉体。
しかしそれはすぐに違和感へと置き換えられ、刻まれた呪威によって荒魂が暴れ始める。
神経の内側をダイレクトにくすぐられるような、脳を直接洗い揉まれるような、全身に電流を流し込まれるような、赤くなるまで焼かれた鉛の塊を下腹部に抱えさせられるような……存在そのものが作り変えられていくような強烈かつ執拗な飢餓感を前に、澪は背中を丸めて耐え続けることとなった。

「こんな、あっ、あううっ、んは、ああっ、ああ、あっ、あああああああっ……!」

こんなのはもう終わりにしたい、諦めたくないと理性を総動員し、唇を強く噛み締める澪。
しかし思考と思考の隙間を襲うのは、南方が刻み付けたどす黒い愉悦。
彼は調教の際、必ずエリーゼのためにという曲を流し続けていた。
その緩やかなテンポに応じて引っ掻き、摘み、扱き、弄り、突き上げを繰り返すことで、気付けばあの曲を聞くだけで脳が蝕まれ、乳首やクリトリスは勝手に芯を孕み、膣内は愛液で煮え滾らんばかりに蕩け、肛門も架空の男性器を捩じ切るつもりで収縮を始める有様。
その条件反射は今も消え去ることはなく、頭の中に旋律が甦っただけで腰は意図とはむかんけいにくねりを強め、膣内も不規則な間隔できゅっきゅっと締め上げを強める。
そんな状況下にて、澪の脳内はその後の記憶を瞼の裏に色も鮮やかに映し出そうとしていた。
「っ、うううぅっ、おううっ、っか、あはああぁ……っ」

高熱と倦怠感にうなされた時のような声が漏れるに伴い、色は音を、音は声を、声は臭いを導き出す。
15日目は膣内に南方の金剛様を模った張り型を腟内に捩じ挿れられたまま、愛液を塗りたくった指先で肛門の皺を丁寧になぞられ、腹の力が弛んだところでぬぷっと指先を括約筋の奥にまで差し込まれる。
その勢いで荒さを増す前後運動は粘膜を通じて膣内にも快感をもたらすが……眉間に光を感じるのと並行して指は引き抜かれてしまった。
後に残るはひくひくっと開いては閉じる肛門と、それを満足そうに見つめる南方の表情。
澪はただ、張り型を通じて与えられる愉悦を頼りに腰を10回、20回、30回と振り乱した。
16日目は宙吊りにされた状態で、黒塗りの蛇目紋鞍へ跨るように命じられた。
馬頭羅刹と呼ばれた付喪神は、緩急を含んだ振動を唐突に繰り出したかと思うと浅く、深く、浅く、深く深くとストロークに人体さながらの捻りを咥え、カリ高の亀頭を用いて膣奥を滅茶苦茶に掻き混ぜてくれた。
一方でただ乱暴なだけでなく、ただ力強いだけでなく、入り組んだ襞の凹凸とエラを噛み合わせ、溝の奥をじょりっと刮げ削るように進み、止まったかと思うとGをスポットを起点に微細な痙攣をざらついた粘膜に浸透させ、先の丸い棘を彷彿とさせる粒と粒の間も目眩じみた愉悦で染め上げてくれた。
それだけでも気絶に値するほどに気持ちよかったが、子宮口と切っ先が重なり合ってからが本領発揮だった。
馬頭羅刹が暴れ馬同然に前後、上下、左右に動き、子宮の内部さえもどろどろのぐちゃぐちゃに溶かされ、襞をずるんっと捲り剥がされ、別の小さな尖端がクリトリスを捏ね潰しては肛門に持続的なピストンを与え……結局澪は脳内を駆け巡る白くて甘い火花に耐えかねて気を失ってしまった。
だが南方が失神を、逃避を許すはずもなく、その都度水を浴びせられ強制的に意識を覚醒させられる。
また絶頂へと追いやられ、また水をかけられ、また絶頂へと追いやられ、また水をかけられの往復は数時間にもわたって繰り広げられ、死を覚悟したところでようやく終わりを告げた。
17日目は、昨日と同じく馬頭羅刹に跨るよう促されたが、ここ数日ほぼ手つかずだった乳房には触手の群れが。
黒紫色のぬめりを纏ったそれらが乳房を捏ね回し、粘液を乳肌全体に塗り拡げ、その液体が皮溝へと入り込むような錯覚とともに膨らみの内側を甘く焦がし、解れきって今にも滴りを噴き出しかねない乳腺に愉悦を授ける。
加えて馬頭羅刹が3次元的な律動を繰り出し、澪の身体は暴れ馬に乗せられたかのような翻弄を余儀なくされた。
予期せぬタイミングで振動を繰り出す男根が愛液溢れる襞を撹拌し、2つの性感帯をコンマ数秒遅れのタイミングで責め、付喪神を敷いた尻を右に左にと跳ね暴れさせる。
その度に左右の豊満乳は8の字でも描くように揺れ、触手によって付着させられた汁気を飛び散らせ、辛うじてフェザータッチを浴びせられるだけの膨らみにじーんっと心地よい痺れが走る。
対する馬頭羅刹は低く太い声で、「気持ちいいか」、「気をやってしまうだろう」、「無理をすることはない」と南方の調教に苦しめられて狂わされた澪を労りつつも嘲り倒す。
澪は幾度となく首を振って拒絶するが、横へのスライドや円運動、緩急が与えられた往復とストロークにも変化が生まれれば、薄皮を剥ぐように理性が削ぎ落とされ、しまいには呂律の回らない声でこう叫んでしまった。
「もっと、律動が欲しい」と。
すると馬頭羅刹は求めのままにピストン運動を激化させ、降りてきた子宮口をぐりっと押し返し、上半身どころか脳さえも貫きかねない膨張感と摩擦快感で澪の精神そのものに支配を及ばせる。
器官も細胞も神経物質も全てが濃いめの桃色へと塗り替えられていくような、凹凸に沿ってあらゆる部分に光の膜を貼り付けられるような、足の先からゆっくりと温泉に浸かるときのような、痛くて染みるようで気持ちよくて疼くて怖くて……と様々な感覚が音や色を伴う中で、澪はただオーガズムへと導かれ続けることとなった。
そのオーガズムもかつて味わったものとは全く異なり、子宮の内部に嵐が吹き荒れるような、粘膜の一つ一つを遠火で炙られるような、筋繊維を強引に解かれるような、襞の合間を棘付きの何かがじょりっと駆け巡るような、ひどくひどく野性的な快感だった。
これまでのまぐわいとも、南方の責めとも性質が違いすぎる気持ちよさに澪は意識を失い、今度は水を浴びせられても目を覚ますことはなかった。

「っ、ああっ、ああ、はあああああぁっ……」

思考を司る領域がほんの少しだけ現実へと帰還を果たし、蹲っていた澪は迸る汗もそのままに顔を上げる。
しかし直後に瞼裏を塗り潰すは、南方による調教の日々。
馬頭羅刹に犯された後、今度は騎乗位や後背位で肛門を執拗に突き上げられ、触手を捩じ込まれ、内側で蠢動を受け止めさせられ、粘液を直腸内で浴びせられた。
男根とは異なる動きが襞をじょりじょりっと削り、目の粗い触手の表面が傷み混じりの摩擦を与え、括約筋をくすぐり尽くして感覚を失わせ、最後に肛門の皺に合致するように変形した尖端が時計回りと反時計回りを交互に繰り出しては神経の集まった弱点に渦状の捻りをぶつける。
澪はやはり絶頂へと導かれ、尊厳も失った彼女はとうとう猿轡を口に被せられて許可なく言葉を発することさえできなくなってしまった。

「うああっ、あ、ああっ、ああっ、んはあああああっ……!」

どす黒い泥濘状の”悪夢”に爪先が絡め取られる錯覚を呼び水に、「貴方はずっとみんなのために頑張ってきたでしょう?」と南方の声が聞こえてきた。
「それなのに、あなたはずっと報われないまま……だからご褒美が欲しかったんでしょ?」と次いで内なる自分の声が。
我慢の果てに意識を失いかけた澪は「違う!」と何度も叫ぶが……四つん這いで生活することを強いられ、言葉さえ喋れず、ただ愉悦を享受し続けるだけの毎日は、澪に生きているという実感を与えてくれた。

「違う、そんな、あっ、あっ、ああっ……っ、ああっ、は、あああっ」

支離滅裂な嬌声を、波音を裏切るような言葉を飛ばすだけで、南方は気持ちよくしてくれた。
あれこそがご褒美だったのか、だったらあれが欲しい。もっともっと何度も、気が済むまで
、自分という存在が壊れるまでイカせて欲しい。
伯王神招姫として捨てるべき浅ましい思考に骨の髄まで支配された澪は、今まで抑え込んできた本心を暴き立てるように全身をくねらせ、布団の上でただひたすら暴れ続けた。

「っううっ……でも、わ、私は、うううっ、んはあ、あああ……ぁ」

破滅と地続きの愉悦をもう一度でも受け入れてしまえば、身を削るようなこれまでの努力も、心をすり減らし疲弊させかねない禁欲も、神降ろしが生み出す恍惚も、敬神崇祖の精神も、人生全てに等しい積み重ねも、澪を構成していたであろうあらゆる全てがひび割れていく。
もう戻れないのかもしれない、この身体に刻まれた快感が脈を打ち、肉を熱し、神経をざわめかせ、脳を震わせ、子宮口と膣内が”架空の存在”を貪らんばかりにぎゅうっと収縮を強める。
触手を、張り型を、南方の男根を求める果てに、舞でも踊るように腰を泳がせた澪は右手をぬるぬるに溢れて蕩けた陰部へと差し出してしまった。

「おう、ううっ、んっ、ああっ、あっ、ぐ、うう、うううぅっ……!」

薄れゆく”今まで”を歓迎するように濁りを帯びた嬌声を皮切りに、枕の端を噛み、毛布を力任せに握り寄せる。
すると鼻腔を伝って体内に浸透する、南方とは異なる男臭さ。
どこかで嗅いだ覚えのあるそれは、呼吸の度に全身を駆け巡っては手足の先にまで染み渡り、興奮と恐怖の狭間で機能を停止していた理性へと影響を及ぼす。
並行して思い出されるのは、流と過ごしたほんの数日。
同世代の女子が当たり前のものとして受け取っていた安らぎが僅かに鮮やかを増す中で、秘裂へと迫る右手は臍へと遠ざかることとなった。

(6−2)
―――
「まずいな、どうすれば……」

苦しそうな声を漏らす澪に何かできないだろうか、と考えた流は襖を開けると彼女の枕元に腰を下ろす。

「みおを、みお……を、イカせて、くださいっ、あ、っ、は、あああ、あうぅっ」
「落ち着け、もう大丈夫、大丈夫だからな……だから」

甘ったるくも甲高い声を飛ばし、毛布をはだけさせ、仰向けに寝転がってもなお垂れることもなくお椀型を保ち続ける乳房を曝け出す澪。
括れた腰も時折前後運動を繰り出し、適度に茂みの生え揃った陰部も薄白く濁った蜜でぬらりと照り光っていた。

「…………やはり、治療が必要か」

状況を弁えることもなく屹立を果たした男根を暗闇に晒すと、澪の身体を起こして抱える。
次いでお互い座ったまま向き合うような姿勢を取り、次いで粘膜と汁気の境界線も曖昧に貶められた膣口へと宛てがう。

「ふあ、ああっ、あっ、ご褒美、みおに、ご褒美……んううあ、ああああっ」
「違う、そうじゃないんだ。でも……」

ぐちゅぐちゅに溶け崩れた膣内は獲物を発見するや否や、ぎちっぎちっと緊張をピークへと引き上げ、カリ首も裏筋も何もかもへと食らいつく。
調教の仕上げとして作り変えられた膣壁は吸い付いてくる一方でクリームさながらの滑らかさを誇っており、幾度となく触手の嬲り物へと成り下がったであろう襞の集まりもじょりじょりっと亀頭表面の微細な起伏を磨き抜いてくれる。
さらに筒そのものも窮屈さを増しており、ストロークの度に届けられるのは凹凸とカリ首が噛み合う痛気持ちよさ。
南方の所業に怒りを、快感に屈する自分に惨めさを、あどけなさを残しつつも狂わされた
澪に憐れみを抱きながら、流は腰を力強く掴み寄せては乳房を鷲掴みにし、なだめるように乳首を扱いては唇を彼女のそれへと被せていった。

「はあ、あっ、ああっ、イク、イクっ、はあ、ああっ、んはあああっ……!」

以前とは全く違い、澪は足裏を布団の上に乗せたまま腰だけをくねらせる。
楕円を描き、横の動きに縦の動きを混じえ、ジグザグに泳がせ、浅く深くをランダムに繰り出し、引き締めた下腹部を用いて膣奥だけをきゅっきゅっと引き締める。
鍛えられた身体と度重なる調教による腰使いに晒されたペニスは愉悦を逆流させ、竿の根元には早くも淋しさを混じえた痺れが。
迫る射精欲求を振り払うつもりで流は澪の腰を抱き、閉じ合わさっては蠢動を強めた膣奥に亀頭を深く嵌め込んでやった。

「っ、イク、イキたい、あっ、ああうぅっ、んはああっ、オマンコ、っ、気持ちいいっ、、ああっ、んはああああっ……!」

作り変えられた精神を目の当たりにしつつ、右手の親指を窄まりへと進ませる。
強張りなど全く感じさせない、ゴムとグミの中間を連想させる弾力の奥にはとろとろに煮え滾った滴りと異物へと食らいつく粘膜が。
短いストロークを使って肛門内での出し入れを繰り返せば、澪はリズムに応じて腰をくねらせ、括約筋の手前にまで辿り着いた指腹を咀嚼し、ぬぷっ、ぐちゅっと押し返す始末。
女性器同然に作り変えられた”穴”に救ってやれなかった後悔と罪悪感が脳裏を満たす中で、流はGをスポットと亀頭の位置を合わせて突き上げを細やかなピストン運動へと切り替えた。

「はあっ、お尻、いいっ、イク、っ、またイッちゃう、っ、ああっ、ああああっ……!」

これが仕込まれた結果とばかりに、肛門を腟内を収縮させる澪。
渦を巻いたうねりがカリ首を、裏筋を責め立てれば、同時進行で緊張を極めた襞があちこちに竿をひん曲げ、亀頭を揉みくちゃにする。
一方でリング状に指を取り巻く括約筋の辺りでは、ぎちぎちっと毛先一本でさえ通さないと言いたげな狭隘感が。
激しい圧力に全てを理解した流は、ポルチオをこつんっと一回だけノックしたのを皮切りに腰を引き……もう1つの穴へと亀頭を押し当てた。

「っく、こっちが……いいんだよな?」
「はあっ、あ、あぁっ、あひいいいいいっ……! いいっ、いいですっ、お尻で、ああっ、んはあああぅっ!!」

涙を溢れさせ、流の顔を、互いの結合部を交互に見つめる澪。
だがその唇はだらしなく綻びきっており、唾液はただただ垂れ流し。
差し出された舌からも涎の糸が伝い落ちており、その表情は”かつての彼女”とは明らかにかけ離れていた。
しかしそんな澪は流の顔を真正面から見つめても、何も言わず熱っぽく息を荒げるばかり。
切っ先を肛門の奥に捩じ込んでも、括約筋を無理にこじ開けても、直腸付近に亀頭を迫らせても、艷やかな唇が滲ませたのは嬌声だけだった。

「お尻、っ、イクっ、ぅあ、ああっ、あふうううううっ……!」
「っ、こんなに腰を動かすなんて……よっぽどひどい目に遭ったんだろうな」

臀部を痙攣させた澪は、カリ首を握り潰すように締め付けを激化させ、起伏と噛み合った裏筋を前後に摩擦させ、竿全体をぬめり越しの分厚い粘膜でふんわりと取り巻いてくれる。
対する流は時折動き止めては弱点を探る要領で微細な前後運動に左右の動きを加え、襞をカリ首で掻き出し、左手の親指と人差し指でクリトリスを控えめに摘み上げてと頭の天辺まで愉悦に漬け込まれた身体に、新たな快楽を刻み付けようと試みる。

「助ける方法は……多分、これだけなんだろうな」

自分が新たな快感を施すことにより、南方による調教を過去のものにできるかもしれない。
忘れさせることができれば、元の自分を取り戻すことができるかもしれない。
精の循環を適切なサイクルに戻すことが可能なら、荒魂と和魂の調和を確立させることができるかもしれない。
限りなく小さな希望に縋り付くように流は澪の腰を掴むと、ぎちぃっとペニスを絞り上げるように縮こまった直腸付近に白濁を迸らせた。

「あはあっ、ああ、っ、イク、イク、っ……あ、ああ、ああああああっ……!!」

そして同じタイミングで絶頂を迎える澪。
しかし精液を啜り取っているとしか思えない蠢きの向こうには、理性を取り戻した瞳。
射精が終わったと同時に思わず彼女の肩を掴むが、澪は流の手を振り払うとただ泣きじゃくるのみ。

「…………もういい、もう大丈夫なんだ。だから……落ち着いてくれ」
「ぅうっ、う、ああっ、うう……っ、いや、いやああああっ」

流は澪を真正面から抱き締め、改めて膣口にペニスを押し当てる。
次いで掌を背筋に被せ、自身に残っていた熱をゆっくりと汗塗れの肌へと浸透させていく。

「やはり、師匠の力を借りるしか無さそうだな」

だが助けに至るには、澪の気持ちが必要不可欠。
肉体が、精神が荒魂による支配を拒むだけの強さを持たなければ、外からの願いも祈りも届かない。
愉悦以外の感情を求めることができなければ差し伸べた手も意味を成さないのだから。

「……俺にどうにかできるなんて思ってない、でもな……」

男根を膣内に挿入したまま、流は澪の頭を撫でる。
少しだけ、彼女が笑みを浮かべたような気がした。


これはbc8c3zがあらすじ・設定を作り、それを田上雄一先生に作ってもらった綾守竜樹先生の百姫夜行の2次創作です。そのうちアンケートをすると思いますが、その際にご協力いただけましたら幸いです。

今後もどんどん続いていきます。
よろしくお願いします。

4件のコメント

  1. 仕事が忙しく感想が遅れてすいません。
    南方に原作以上に嬲られる澪がたまりませんねふふふ
    それでも原作ほどあっさりと堕ちはせず、波音を売る事も無かったのは流と愛し合っていたからでしょうか。
    次回、どうやって流は澪を救うのか楽しみにさせていただきます!

    1. こんにちは、ダガービーズさん。
      いつもご感想ありがとうございます。
      励みになります。
      次回は4月7日更新予定です。綾守先生の命日です。
      澪や波音の今後や新キャラ、そろそろミアの来日も近いです。
      遅い更新ですが、気長にお待ちいただけましたら幸いです。

  2. 更新お疲れさまです。
    澪は綾守先生の作品の中で一番好きなキャラなので今回のお話はとても満足です。
    他のキャラやミアも今後物語に本格的に絡んでくると思い、更新が楽しみです!

    1. こんばんは。シンさん。ご感想ありがとうございます。励みになります。
      まだ出来ていませんが、4月の綾守先生の命日前後にはかなりの更新ができそうです。
      もちろん澪も出てきます。ただ官能的なシーンは澪はないかもです。その辺りは波音やヤヨイ・御影などのメンバーが頑張ってくれそうです。
      ぜひ4月の更新まで待って頂けましたら幸いです。よろしくお願いいたします。

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