魔斬姫伝外伝~ナグとイェグ~ 前編

あらすじ

八雲が哭炎斬でシャドウに勝ったという二次創作です。
シャドウには勝てたが、極上の肉体と精神をもつ八雲と法子は新しい淫魔に狙われてしまう。


〔嵐の前の静けさ〕

 その夜はどこか、薄気味悪さがあった。
 夜空に浮かぶ大きな黄金色の満月は美しいが、見る者の心をざわつかせる。
 眩しいほどの月明りは闇色の空を瑠璃色へと変えて、白く大きな雲が風に流れされていく光景は見ていて飽きない。
 そんな幻想的な空を見上げることなく、九条院法子は険しい顔付きで大きく肩を揺らしながら息をしている。
「はあはあっ……」
 彼女の手には斬魔刀・鬼貫正国がしっかりと握られているが、先程切り裂いた淫魔の血でベットリと濡れていた。
 足元には数体の下級淫魔の死骸があり、法子も全身に返り血を浴びており、戦いが壮絶であったことを物語っている。
「法子……、大丈夫?」
「……はい、八雲先輩」
 心配そうに声をかけてきたのは、鷹城八雲。彼女も法子と同じく淫魔の返り血を浴びているものの、それでも冷静を保っていた。
「平気ならそろそろ行くわよ。報告しなきゃいけないしね」
「分かり、ました……」
 顔を上げた法子はしかし、その表情は不安げだ。
 敵は倒したはず――なのに、胸の中でくすぶり続けている黒いモヤは一向に晴れることはない。
 二人が淫魔の死骸に背を向けて歩き出した時、ふと八雲は何かの気配に気付いて振り返る。
「八雲先輩、どうかしましたか?」
「……いえ、何でもないわ。月があまりに大きいから、見られている気になっただけ」
 八雲の言葉で、ようやく法子は空を見上げる。
「確かに、月に見られている気になりますね……」
 ――だがそんな二人を高い場所から見ていたのは、月だけではなかった。

 翌朝、八雲と法子は所属している神器省・退魔組織・紅薙姫の上司に呼び出されたが、昨夜の話ではない。
 二人からしてみれば『説教』と思われる注意をたっぷり一時間ほど受けた後、ぐったりしながら家への帰り道を歩く。
「はあ……。淫魔を倒すよりも、お説教される方が精神的にキツイわね」
「ですね。昨夜は報告後もいろいろあったので、早めに帰らせてもらえると思っていたんですけど……ふわぁ」
 話している途中で、法子は耐え切れずに欠伸をしてしまう。すぐに片手で口元を覆い隠したものの、それでも真っ赤な目に涙が滲むところを見ると、眠気はかなり酷いらしい。
 可愛い後輩の年相応の姿を見て、八雲は思わず表情を緩める。
「ねぇ、法子。そこの公園の中にある喫茶店で、コーヒーでも飲んでいかない? 私、あそこのブラックコーヒー好きなのよ。もちろん、奢るわ」
「ふぇ? あっ、寄るのは良いですよ。でも奢られるのは……」
「いいから。ちょっと話したいことがあるからね」
 申し訳なさそうな顔をする法子の手を掴み、八雲は広い公園の中にある喫茶店へ入った。
 他の人に聞かれたくない話があるようで、入店すると八雲は店員にベランダ席を希望する。
 平日のランチタイムではない時間帯なので、店内にはそんなに客の姿はなく、ベランダ席には八雲と法子の二人しかいない。
「私はホットコーヒーとサンドイッチにするわ。法子も食べときなさい」
「それじゃあ同じのを……」
 店員が注文を聞いて店内へ戻った後、八雲は話をはじめる。しかし内容は天気や季節のことだったりと、核心はあえて避けているようだ。
 それでも法子は八雲を急かすことなく、会話に付き合う。
 やがて注文した物がテーブルの上に並べられると一時会話は中断して、食べることに集中することにした。
 八雲はブラックコーヒーを一口飲むと、パァッと表情が明るくなる。
「うん、やっぱりここのコーヒーは美味しいわ。眼が覚めると言うより、心が落ち着くのよね」
「本当に美味しいコーヒーですね。それに公園の中の喫茶店で食事をするなんて、今までしたことがなかったので新鮮で楽しいです」
 二人は機嫌良く食事を済ませて、食器を片付けに来た店員にコーヒーのお代わりを頼んだ。
 そして二杯目のコーヒーがテーブルに置かれた後、ようやく八雲は『本当の話』をはじめる。
「……法子、シャドウとの戦いが終わって大分経つけど……大丈夫?」
 呟くように尋ねられた言葉で、思わず法子は持っていたコーヒーカップを落としかけた。慌ててソーサーにカップを置くと、眼を閉じて【あの時】のことを思い出す。

 ――【あの時】、八雲は哭炎斬でシャドウを倒した。
 しかし「余裕の勝利」とは言えず、「辛くも勝った」と言うほどだ。
 何故なら勝つまでの間に、二人はシャドウに肉体を開発されて、調教までされてしまった。
 シャドウが最早この世にはいないと分かっていても、淫魔によって作り替えられた快楽に弱い肉体は、二人の心を何度でも傷付ける。
 太陽が沈み、夜の時間がやってくることを、いつの間にか恐れるようになった。
 夜、一人で部屋にいると、淫魔に与えられた刺激を思い出して、肉体が熱く疼くのだ。
 記憶を思い出すのを拒否するように無理やり寝ても、夢にまで淫らな体験は現れる。
 そして自分の悲鳴に似た嬌声で眼が覚めるのだが、その時に気付いてしまう。ショーツがじっとりと、自らの愛液で濡れていることを。
 そのたびに二人は淫魔に対する憎しみと、過去に受けた凌辱を思い出して、怒りで頭の中が真っ赤に染まる。
 ――しかし『怒り』にしなければ、肉体が無意識の内に強制的に与えられた快楽を思い出して、絶頂を迎えてしまった事実を直視しなければならない。
 それだけは退魔師のプライドとして、絶対に認めたくはなかった。
 だからできるだけ夜には一人にならないように、そして眠らないようにと、夜間のパトロールを二人ですることが多くなったのだ。

 
「昨夜もパトロールの途中で、人気のない空き地で一般女性が複数の下級淫魔に襲われているところを助けたんだけど……。流石にスケジュールに組み込まれていないパトロールを勝手にしていたことは、怒られたわね」
 八雲はため息でコーヒーの湯気を飛ばすと、一口飲んでまたため息を吐く。
「……確かにここ最近の私達の行動は、『正義の為』とは強く言えませんから。ただ【あの時】のことから逃れたくて……、淫魔を倒しているだけですからね」
 淫らな記憶を思い出すことが嫌で、しかし淫魔と戦っている間は忘れることができた。なので二人は組織に黙って、夜間のパトロールを勝手に行っていたのだ。
 数多くの経験を積んでいる二人は、下級・中級程度の淫魔ならすぐに倒せる。
 だが仲間達は二人の勝手な行動に、決して良い感情を抱いてはいない。手柄をたてられて面白くない者、組織のルールを守らないことに怒りを感じている者、二人の身を案ずる者など、思いは様々だが。
 いくら被害者を守り、淫魔を倒しても、組織に属している者としては身勝手な行動は許されない。
 それでも組織がある程度、二人の勝手な行動を見て見ぬふりを続けていたのは、確かな実績を残してきたからだ。
 夜に突然淫魔が現れて、退魔師が現場へ到着するには時間がかかることがある。またいろいろな場所で複数の淫魔が現れた場合、人手が不足することもあるのだ。
 太陽が出ている昼間ならともかく、視界が悪くなる夜は人間側に不利な場合がある。そういう時であれば八雲と法子のスケジュール外のパトロールが、組織的にはとてもありがたく思えた。
 しかし昨夜の事件で、また事情が変わってしまう。
 というのも現場は空き地だったのだが、近所には夜間営業の店が数多くあった。被害者女性が淫魔と出会った途端に大きな悲鳴を上げたおかげで、事件のことはすぐに組織へ連絡がいったのだ。
 そして昨夜の夜間パトロールを担当していた退魔師と、八雲と法子の二人が現場に到着したのはほぼ同時だった。
 全員たまたま近くをパトロールしていたおかげで、すぐに現場に駆け付けることができたのだが……問題はそこで起きる。
 仲間達は八雲と法子に被害者女性を安全な場所まで運ぶように指示したものの、それを無視して戦い始めてしまったのだ。
 二人が勝手に淫魔と戦いはじめてしまったので、結局、仲間達が被害者女性を救出した。
 その結果、淫魔は倒したものの、二人は今日の朝から上司に説教されることになる。
 よりにもよって昨夜の夜間パトロールをしていた退魔師達は二人よりも上の立場だったのにも関わらず指示を無視したこと、また被害者救出よりも淫魔を倒すことを優先したことを咎められた。
 今までのことを思い返した八雲は肩を竦めると、眼をスッと細める。
「まっ、悪いことをしている自覚はあったから、罰として三ヵ月間の減給と言われても驚かないけどね」
「でも『勝手な夜間パトロール禁止令』も言い渡されましたから……。『命令違反を繰り返せば、霊刀も没収ということになりかねない』とも言われましたしね」
「『霊刀を没収』は退魔師にとって、一番怖い罰ね」
 淫魔を倒すには、霊刀は必要不可欠な存在だ。
 組織は本音を言えば二人にはこれからも戦ってほしいとは思っているはずだが、内部で混乱を招き続けられていては、それも考え直す必要があると思い始めている。
 退魔師は淫魔を倒すことを重要としているが、その為ならば何をしても良いということはない。フリーではなく組織に属している以上、ルールは必ず守る必要があるのだ。
 二人は複雑な表情を浮かべながら、ぬるくなりつつあるコーヒーを飲む。
 そこでふと、法子は先程組織の事務員に言われたことを思い出す。
「あの、八雲先輩。先程勧められた検査、受けてみませんか?」
「定期的に受けているメディカルチェックのことね。確かにここ最近の私達は働き過ぎて、精神的にも肉体的にも疲れてきているから良いかもしれないわ」
 退魔師は定期的にメディカルチェックを受けることを、義務付けられていた。淫魔と数多く接触している為、影響が多少なりとあるかもしれないということで、肉体的・精神的な検査が行われる。
 しかし受ける日は個人が好きに決めて良いことになっており、二人はいつもなら休暇中か大きな戦いを終えた後に検査を受けることにしていた。
 ここ最近は大きな戦いはしていないものの、数多くの淫魔を倒してはいる。夜に戦い、昼間に眠るといった昼夜逆転の生活に、心身ともに疲れが出ていることには自覚していた。
 また淫靡な夢を恐れているせいで、眠りは浅く短い。徐々に身体が弱ってきているのは、睡眠不足のせいもあるだろう。
「組織にいる女医はカウンセラーの資格もあるので、他人に言えない相談にものってくれるそうです。検査を受ける時に今の私達の状態を話せば、何か良い解決方法を教えてくれるかもしれません」
「……そうね。淫魔の被害に合った退魔師はこれまでにもいたはずだし、話せば多少はスッキリするかも」
 そこでようやく二人の顔に、微笑みが浮かぶ。
「じゃあ早速日時を決めて、検査をしてもらいましょう。今の苦しみから逃れられることを考えれば、夜には多少安心して眠れますよ」
「ええ。それじゃあ、いつにする?」

 ――その夜の空は、闇色に染まっていた。分厚い黒い雲が月を隠したせいで、街の様子もどことなくどんよりしている。
 そんな中、高層ビルの間を飛び回る二つの小さな影があった。
 二つの影はビルの屋上から飛び降りると、高架下を歩く二人の中年女性の背後に音も立てずに近寄る。女性達は異様な気配に気付いてすぐに振り返ったものの、その身体からは鮮血が飛び散った――。
「若い女は好きだけど、オバサンは嫌いなのよね」
 血の付いた片手を振りながら、少女は冷たく言い放つ。
「この二人は何と言うかぁ、イェグの趣味じゃなーい」
 自らをイェグと言った少女は、血の付いた手を赤い舌でペロリと舐める。
 二人の少女は見た目は十二歳ほどだが、正体は上級淫魔であり、同じ顔をした双子の姉妹であった。
 黒いゴシック系のワンピースに身を包んでいる姉のラグは、ストレートの金髪が腰まで伸びており、血の色の眼は冷静にスッと細められている。
 妹のイェグは白いロリータワンピースを着ており、緩やかなウェーブがかかった長い金髪をツインテールにして、同じく血の色の眼は楽しそうに歪んでいた。
 双子の姉妹は陶器のような白くスベスベした肌や細くてしなやかな手足に、美しく整った顔立ちは一目見れば忘れられない印象を植え付ける。
 しかし二人から滲み出る雰囲気に人間らしさは無く、淫魔独特の妖しさがあった。
「さぁて、と。コイツらがあの二人のデータを持っていると良いんだけどね」
「持ってなかったらぁ、また探して殺して奪えば良いじゃん♪」
 冷静な姉のナグと、明るい妹のイェグは殺した退魔師二人の荷物をあさり始める。
 双子の淫魔は目的があって、退魔師を狙ったのだ。目的とはとある若い退魔師二人の情報を欲した為であり、殺した二人には何の感情も抱いていない。たまたま自分達の眼に映ったから殺した――、ただそれだけである。
 ナグは鞄の中から、一枚のSDカードを見つけた。
「アラアラ。こういうモノは会社から持ち出しちゃいけない規則が、人間にはあったはずだけどね」
 口ではそう言いながらも、ナグはSDカードを指でつまむ。
「ナグ姉さまはそういう機械的なモノって、得意だっけ?」
「割と嫌いではないわよ。人間の文明って、結構面白いモノが多いから。良いオモチャね」
 感心しているように言うナグの表情はしかし、嘲笑っていた。
 その間にも鞄を調べていたイェグは、一台のノートパソコンを見つけて持ち上げる。
「ナグ姉さま、ノートパソコンを見つけたよ!」
「ちょうど良いわね。ではSDカードの中身を、じっくり見させてもらいましょう」

 双子の上級淫魔は、とある高層ビルの屋上へ移動する。
 そこでナグはノートパソコンを起動させて、SDカードを差し込む。すると画面に映ったのは、これからメディカルチェックを受ける退魔師の今までのデータだ。
「ふぅん……。どうやら殺したあの二人は、人間で言うところの医者ってヤツだったみたいね。退魔師達の詳細なデータが記録してあるけど、特に身体面と精神面のことを取り上げているわ」
「なら殺すのがあの二人で、ちょうど良かったんだね♪」
 イェグは嬉しそうに笑いながら、ノートパソコンを操作するナグの背中にくっついている。
「……ああ、あったわ。あの二人のデータが」
 そしてナグは『九条院法子』と『鷹城八雲』のデータを見つけて、画面に大きく映し出す。
「へぇ……。随分と素晴らしい実績と、高い戦闘能力を持っているのねぇ。身体はあんなに魅力的なのに」
「そうだよねぇ。あの二人のお乳は『プルプルッ』と言うよりも、『ブルンブルンッ』て言う感じ? 戦闘中でもよく揺れていて、遠くから見ていても迫力が凄かったもの!」
「ふふっ、そうね。胸も大きくて凄いけれど、お尻もなかなか大きいのよね。豊満な体付きって言うのかしら? 淫魔にとっては、最高の獲物ね」
「うんうん、あのシャドウが夢中になったのも分かるよ。でもスケベ心が強すぎたせいで、ヤられちゃったらお話にならないけどね。同じ上級淫魔だったなんて、思いたくないほど情けないよ」
 イェグは同属の死を全く悲しまず、バカにするように笑い飛ばした。
 双子が二人のことを知ったのは、知り合い程度の上級淫魔・シャドウが退魔師に倒されたという噂を聞いた時だ。
 双子はシャドウが倒されたと聞いても、二人に復讐することなどこれっぽっちも思い描いてはいない。
 しかし獲物として捕らえた退魔師が、形勢逆転勝利したということには心底驚かされた。なので双子は、二人に純粋な興味を抱いたのだ。
 下位の淫魔から情報を集めて、シャドウを倒した退魔師が『九条院法子』と『鷹城八雲』という女であることを知った。
 その後は夜になると二人の行動を見続けるつもりであったのだが――意外なことに、二人は組織のルールに反して個人的な夜間パトロールを繰り返していたのだ。おかげで二人がどんな風に戦うのか、双子はすっかり覚えてしまった。
 そして興味は好奇心へと変わりつつある。

 ――二人が人間のメスとしての欲望を、どんなふうに現すのか――

「シャドウに美味しく調理される前に下処理されたままで終わったから、欲求不満なんでしょうね。可哀想に……。淫魔を見つけると攻撃せずにはいられないなんて、過激で可愛らしいこと」
「でもねぇ、ナグ姉さま。二人が相手をしているのがいくら下級淫魔とはいえ、ほぼ毎日のように複数回戦っていたら、そのうち疲れて負けちゃうんじゃないの?」
 法子と八雲が毎晩パトロールをしては、淫魔を見つけるとすぐに戦うその姿を、双子は見続けていた。
 昨夜もビルの屋上から気配と姿を消しながら、二人が戦っている様子を一部始終見ていたのだ。
 あの時、八雲が感じたのは、双子が僅かに漏らしてしまった気配――。しかし連日連夜の戦い疲れと、悪夢のような過去の記憶のせいで、肉体的にも精神的にも弱っていた八雲は、双子の気配に気付いても存在まで確認することはできなかった。
「そうね。毎晩はいくら何でも無茶が過ぎるし、今は技と言うよりも力で押し勝っているようなものだしね。いつかは負けてしまうかも」
「えーっ! そんなの勿体無いよ! アレだけの逸材は滅多にいないしぃ、それにナグ姉さまとイェグの好みにピッタリなんだよ? 雑魚にとられちゃったらヤダよー!」
 イェグは嫌そうに顔をしかめながら、ナグの両肩を掴んでグラグラッと揺らす。
 激しく揺さぶられながらも、ナグは「フム……」と冷静に考えるように腕を組む。
「確かに勿体無いわね。雑魚に奪われるのも、死なれるのもイヤだわ。……なら、彼女達が心の奥底に仕舞い込んだ願望を、叶えてあげましょう」
 その言葉で、イェグはナグを揺さぶる手を止めた。
「ホント? まああの女武者っぽい恰好は似合っているしぃ、戦っている最中は男言葉を使う姿も良いけれど……。やっぱり人間のメスは、女言葉の懇願口調が似合うわよね」
 イェグは暗い欲望をその瞳に表しながら、ナグの顔を覗き込む。
 ナグは分かっていると言うように、微笑みを浮かべながら頷いた。
「そうね。ではイェグ」
「はい、ナグ姉さま」
 双子は同時に法子と八雲が所属する組織がある方向へ、視線を向ける。
「「彼女達が望む世界の扉を開けてあげましょう」」

〔淫らな治療のはじまり〕

 数日後の夜、法子と八雲はメディカルチェックを受ける為に、住宅街にある診療所に訪れた。
「真新しい建物ですね。担当医から送られてきたメールによると、場所はここで間違いなさそうです」
「神器省の中にある検査室ではなく、診療所での検査なんて本格的ね。……まあこちらから『プライベートな相談がある』と言っていたから、気を使ってくれたのかも。わざわざ診療時間が終わった後に、診てくれるしね」
 私服姿の二人は何の危機感も抱かずに、診療所に入る。
 すると白衣姿の見慣れた中年女医が二人、すぐに駆け付けた。
 一人は白衣のネームプレートに、『村林』という文字が刻まれている。朗らかで明るい性格をしており、女社会である組織の中では相談役にもなっていた。
 もう一人のネームプレートには、『奥寺』とある。彼女はいつも冷静沈着で、素早く患者の異変を察することができるので、仲間達からの信頼が厚い。
 二人は退魔師という役目を持ちながらも、女医としても活動をしていた。二人は共に、淫魔の被害に合った女性を治療する研究をしている。
 村林は法子の、奥寺は八雲の担当医であった。他の医師よりも自分達の身体のことを知っている為に、今回のメディカルチェックは彼女達に頼んだ。
「法子さん、八雲さん、いらっしゃい。夜遅くにゴメンね」
「わざわざ遠い所まで来てくれて、ありがとう。『組織の中では話しづらいことを相談したい』と言われたから、この診療所の関係者に頼んで一晩貸してもらったのよ」
「そうでしたか……。こちらこそ、ありがとうございます」
「お手数をおかけて、すみません」
 法子と八雲が申し訳なさそうに頭を下げると、村林と奥寺はニッコリ微笑む。
「別にいいのよ。悩みを聞くのも、わたし達の仕事だから」
「いつもなら簡易検査を行っているけれど、今回はいろいろあるようだから精密検査と精淫検査をしましょうか」
「組織の中で噂になっていたけれど、あなた達、かなり無茶な戦い方をしていたそうね」
「正直なことを言うと、医者としては褒め称えられないわよ?」
 同業者でもあり担当医でもある二人から注意をされると、流石に身が縮む思いになる。
「……ごめんなさい」
「本当に、申し訳ないです」
「うふふっ。検査前にイジメるのは、これぐらいにしときましょうか。ねっ、奥寺先生」
「そうね。悪い結果が出てしまったら、責任を感じちゃうから。さっ、二人とも奥へどうぞ」
 村林は法子の背中を、奥寺は八雲の背中を、両手で押しながら診療所の奥へと向かう。
 ――しかし明るい蛍光灯の光を受けて、真っ白な床に映るのは法子と八雲の影、そして異形のモノの影だった。

 一通りの検査を終えると、法子と八雲は休憩室で休むことになる。結果はすぐに出るらしいが、二人の身体を休ませる意味での休憩だろう。
 更衣室でピンク色の検査着に着替えた二人だが、いつもは身体にピッタリした戦闘服を身に着けているので、空気が通りやすい今の服装に気まずげな表情を浮かべている。
「八雲先輩、どうでした?」
 ミネラルウォーターのサーバーから紙コップへ水を注ぎ入れている法子は、気を紛らわせる為に八雲に話しかけた。
「検査の為に昨夜の八時頃から何も食べていないから、お腹が減ったわ」
「私もそうです……って、違いますよ! 検査のことです」
 軽く頬を膨らましながらも、法子は八雲の分の水を入れた紙コップを差し出す。
「ありがと。検査は『いつも受けている通り』としか言えないわね。まあ結果が出ていないから、今はまだ何とも言えないけれど……」
「私もです。今回の検査、いつもとは違う状態で受けたので……。『自信が無い』と言うと、ちょっと違うかもしれませんが」
 ここ最近はお互いに無理があると思うほど、戦い続けてきた。その結果が身体に残っていても、二人は自業自得と思うしかない。
 重い空気が流れる中、二人が水を飲み干すと同時に、休憩室に村林と奥寺がやって来た。
「お待たせ。それじゃあ、わたしは法子さん担当で」
「わたしは八雲さん担当だから。それぞれの部屋で、検査結果を報告するわ」
 そして二人は一旦離れ離れになり、担当医の部屋に各々入る。

 奥寺が医者用の椅子に座り、八雲が患者用の椅子に座ると、早速話がはじまった。 
「八雲さんはしっかりしているから、ハッキリと検査結果を言うわね」
「はい」
「まあ簡易検査なら『疲れがたまっているから、しばし休息するように』としか言わなかったでしょうね。だけど精淫検査の方で、『ちょっと問題アリ』と出ちゃったのよ」
「えっ……?」
 法子もまた、村林と向かい合いながら、同じことを言われている。
「驚くのも無理はないと思うけどね。法子さん、何か思い当たることがあるんじゃないかしら? だから八雲さんと一緒に、無茶な戦いをしていたんじゃないの?」
「村林先生、それは……」
「『相談したいこと』って、まさにそのことなんでしょう? ここにはあなたとわたしの二人しかいないし、八雲さんと奥寺先生がいる部屋からは離れているから声も届かないないわ。だから話してみて」
「……分かりました」
 そして八雲と法子はかつて倒した淫魔・シャドウから、受けた屈辱を語りだす。
 八雲はヒトデ型の下級淫魔によって、胸を弄られて絶頂を迎えると、母乳を噴き出す体質になってしまったことを。
 法子は透明のヒマワリ型の触手によって、胸でイクことができる性癖にされてしまったことを話した。
 しかも淫魔・シャドウには一度、敗れた苦い経験がある。
 ヤツを倒した後も、与えられた屈辱的な快楽に身体が反応してしまうことなども、赤裸々に語った。
 言い辛そうでも必死に話す二人を、奥寺と村林は真剣な面持ちで見つめている。
「……そう。八雲さん達は、随分と重い悩みを抱えていたのね」
「はい……。でも同じ経験を持つ法子がいたので、私は何とかやっているんです。多分一人だったら……」
 耐え切れずに、最悪なことになっていただろう。
「そう思いつめないで、法子さん。こう言っては何だけど、同じ苦しみを味わった八雲さんがいるから、一人で抱え込まずに済んだんでしょう?」
「村林先生の仰る通りです。八雲先輩がいなかったら、きっと私……気をおかしくしていたと思います」
 二人の女医は八雲と法子に哀れみの眼差しを向けつつも、その口元は微妙に歪んでいる。
 しかし顔を伏せている二人の眼に、その姿は映らない。
「実はね、二人にとってはとても良いタイミングで、新しい治療法が見つかったの。淫魔の被害に合って、身体が自分の意思に反して淫らになってしまった女性の為に、新薬が開発されたのよ」
「本当ですか? 奥寺先生」
「ただ新薬は作られたばかりで、まだ正式な医薬品とは言えないのよ。つまり二人には、実験体になってもらうようになるんだけど……」
「村林先生、私はそれでも構いません! この体質を変えられるのなら、賭けてみます! 何よりこのままじゃあ……いけませんから」
 八雲と法子は別々の部屋にいながらも、同じぐらい強い決意を固める。
 奥寺と村林は深く頷いて見せると、机の一番下の大きな引き出しからバラ色のトロリとしている液体が入っているガラス瓶を取り出す。大きさは手のひらサイズで、ラベルには二人が読めない異国の文字が書かれている。
「本来淫魔の治療と言えば、滝行で身を清めたり、祓除の儀式を行ったり、特殊能力を持つ巫女に治療してもらうなどの方法があることは知っているわね?」
「はい、奥寺先生。……でも私と法子の場合、何度行ってもなかなか身体の疼きは止められなくて……」
 八雲は興奮状態になった時の感覚を思い出して、ブルッと身体を震わせた。
「でもね、法子さん。この医薬品はあえて、淫魔から与えられた性的興奮状態を起こすことを目的として作られたの。液体を直接肌に塗り込むことによって一気に性的興奮を起こすから、それを発散させて身体を通常に戻すのよ」
「それはつまり……その薬には、毒薬と解毒剤の両方の効果があるってことですか?」
 法子は不安げに、村林に尋ねる。
「そうよ、八雲さん。その身に溜まっている穢れは、いつも行っている方法では長期間が必要になると思うの。それならいっそのことあえて穢れに身を任せて、その上で浄化するというのはどうかしら? 身体にはかなり負担がかかるでしょうけど、それでも短期間で済むわよ」
「でも奥寺先生、どのぐらいの期間が必要になるんですか?」
「約一ヶ月ぐらいよ、法子さん。その間に何度かここへ来て、治療を重ねることが重要になるわ」
「一ヶ月……ですか。それでこの身体が元通りになるのならば、村林先生、お願いします!」
 二人が立ち上がって頭を下げたのを見て、奥寺と村林は目を丸くした。
「……意外とアッサリ受け入れてくれたのね。本当はその敏感になった身体に触れられるのを、嫌がられると思っていたんだけど」
「確かにいつもの私でしたら、そうしたでしょう……。でももう限界なんです!」
 八雲は真剣に叫んだ。悪夢にうなされることや、淫魔と戦い続けること、仲間達から白い眼で見られ続ける日々に、我慢の限界がきてしまったのだろう。
「けれど快く引き受けてくれて良かったわ。今のあなた達は危険過ぎる存在だから、もし拒否されたら組織に報告しようと思っていたのよ。最悪、霊刀を取り上げられる可能性は否定できないけれど、このままの状態で戦い続けた方があなた達の為にはならないからね」
「村林先生はそんなことまで考えていたんですか!? ……まあ確かに今までは勝手に危険なこともしてきましたが、もう大人しくしますよ。霊刀を取り上げられることは、絶対に避けたいことですから」
 法子は恥ずかしそうに顔をそむけながら、本音を呟く。
 淫魔に穢された身でも正気を保っていられたのは、霊刀で淫魔と戦えたからでもある。相棒とも言える武器を手放すことは、二人にとって考えられないことだ。
「それでは八雲さん、検査着を脱いでそこの診療ベッドの上に仰向けになって寝てくれる?」
「あっ、はい」
「治療を受ける前には裸になってね、法子さん。じゃなきゃ、衣類が汚れちゃうわよ」
「わっ分かりました……」

【淫靡な治療】

 八雲は検査着を脱いだ後、下着姿でベッドの上に仰向けに乗る。
「……これでいいですか?」
「ええ。はじめての治療方法で緊張するのは分かっているから、何でも言ってね。お互い女同士で仲間なんだし、遠慮はいらないから」
「はっはい」
 それでも緊張している八雲に覆いかぶさるように、奥寺は上半身を曲げた。そして患者の身体を頭の天辺から、足の爪先までじっくりと見つめる。
 今日は診療所で検査をすることになっていたので、ちゃんとシャワーを前もって浴びて、下着もスポーツブラタイプを身に着けていた。
「ちゃんと検査用の下着を、身に着けてきてくれたのね。今日は初日だし、最初は確かめながらの治療をするわね」
「分かりました」
「まずは治療薬を使う前に、触診をするから」
 奥寺は両手の手のひらを、そっと八雲の胸に当てる。そしてゆっくりと円を描くように、両手を動かす。
「どう? 苦しいとかある?」
「大丈夫……です」
 しかし八雲の顔はほんのり赤く染まりつつあり、身体も小刻みに震えている。
(ふふふっ、素直な身体ね)
 奥寺は内心で、クスクスと笑う。奥寺の両手が触れている部分から、催淫の力が八雲の胸に少しずつ注がれているのだ。
 だが八雲は奥寺の手が熱いだけだと思い込んでいるので、じっと我慢をしている。
(こんなのはどうかしら?)
 スッと目を細めた奥寺は両手を下乳の方へ移動させると、最初は優しく揉んでいき、徐々に胸が変形するほど強く掴む。
「あぅっ!?」
「アラ、今のは強すぎたわね。ごめんなさい」
「いっいえ……」
 うっすら開いた八雲の両目には、涙が薄く滲んでいた。しかし痛みからの涙でないことは、興奮した表情を見れば分かる。
「耐えきれなくなったら、すぐに言ってね?」
(まだ乳首に触れていないのに、軽くイッちゃったのね。可哀想でもあり、可愛くもあるわ)
 ベッドの上で、八雲はビクビクッと身体を震わせる。そのたびに胸が波打ち、ブラジャーの上からでも分かるほどに乳首が勃っていた。
 八雲は胸の先端に何かが滲むのを感じて、慌てて奥寺の両手首を掴む。
「ちょっと待ってください! 胸に触られ過ぎると……」
「ああ、母乳が出るんだったわね。それじゃあ下着も全部、脱いじゃいましょうか」
 にっこり微笑んだ奥寺は八雲の答えを聞かないままに、さっさと下着を脱がせてしまう。
「ええっ!? 奥寺先生っ……!」
「このままの姿で、落ち着くのを待ちましょう。万が一、母乳が噴出しても、裸なら下着を汚さずに済むしね」
 そして奥寺は脱がせた下着を近くに置いてあったカゴの中に入れると、八雲とベッドから離れた。
「ちょっと待ってて。念の為に、タオルを持ってくるから」
「あっ、はい……」
 八雲は奥寺の行動に振り回されっぱなしだったが、離れていく背中を見つめながらほっと安堵のため息を吐く。
 あのまま胸を揉まれ続けていれば、本当にブラジャーを身に着けたまま母乳を出してしまっただろう。
 最悪の事態を避けることができた八雲は改めてベッドにゆっくりと身を横たえて、身体の興奮を抑える為に目を閉じて呼吸を整えようとする。
(チャーンス!)
 ところが離れかけていた奥寺は無防備になった八雲の姿を見ると目を光らせて、足音と気配を消しながら再び近寄って行く。
 そしてそーっと両手を伸ばして、ぷっくりと膨れ上がっているワイン色の二つの乳首を乳房ごとギュウッと握った。
「えいっ♪」
「きゃあああああっ!」
 突然与えられた刺激で、八雲はカッと目を見開く。
 すると陥没乳首の中心がパックリと口を開けて、中からビューッと白い液体が噴出する。何度か母乳が飛び出た後、八雲の身体からはぐったりと力が抜けた。
(アララ。随分と外から与えられる刺激に弱いのねぇ。まあ自分で触るのと、他人が触るのとでは感覚が違うだろうし)
 奥寺は噴き出した母乳を乳房に塗り込めるように、手のひらを動かす。
 ヌルヌルした胸は蛍光灯の光を受けてテラテラと輝き、壮絶な妖艶さがあった。
「らっらめって言ったのにぃ……」
 涙を流しながら舌足らずの言葉を出した八雲は、太ももをこすり合わせている。
(手のひらからこぼれるほどの大きな胸と、感度の良い身体は最高ね。可愛い顔をしながらイっちゃうなんて、退魔師のお仲間達にもぜひ見てもらいたい姿だわ)
 笑いを押し殺しながら奥寺は手のひらに塗り付けた母乳を、まるでマッサージのローションのように八雲の肌に塗り広げていく。
「刺激が強すぎちゃったかしら? どのぐらい感度が上がっているのか、突然チェックするのも検査の一つだから許してね」
 口調は柔らかくあたたかいが、その手は容赦なく八雲の肌を刺激する。最初は緊張からか白かった肌は今や桃色に染まり、人間のメスとしての色気を醸し出していた。
 手のひらで触れるたびに、八雲の身体は無意識のうちに飛び跳ねる。くぐもった喘ぎ声を出しながら何とか奥寺の手から逃れようと身をよじる姿は、いつもの凛々しい八雲からは考えられないぐらい淫らだ。
「せっ先生っ……! もう、いい加減触るの、止めてくださいっ……!」
「止めてあげたいのはやまやまなんだけど、これも検査だから。淫魔の治療方法は辛いものだと、八雲さんだって分かっているでしょう? 今、苦しみを体感しているからこそ、後で楽になれるのよ。ちゃんと正常な状態で戦闘に臨みたいのならば、あなたは退魔師として辛い治療に耐えて」
「ううっ……」
 医者である奥寺から説得力のある説教をされると、退魔師としてのプライドが、女としてのプライドよりも強くなってしまう。
「そう……ですね。私は退魔師なんですから、このぐらいの治療は耐えないと……」
 元々負けず嫌いの八雲は、自分を弱く見られることを嫌う。
 そのことを知っていて、わざと奥寺はソコを突っついたのだ。
「淫魔の治療中で淫らな姿になることは、恥ずかしいことでも何でもないのよ? 今までだって、わたし達は他の淫魔の被害者の女性達のあられもない姿を見てきたわ。でもだからと言って、心の中で馬鹿になんてしないわよ。そういう人達を救うために、わたしは退魔師と医者を兼任しているんだもの」
「それは素直に凄い……と思います」
「ふふっ、ありがとう。だから八雲さんも隠さないでね? 逆に隠されていることがあるとこれから行う治療に支障が出てしまうし、変に治療期間が延びてしまう恐れがあるから」
「は、い……」
 奥寺に真剣な表情で説得されて、八雲はようやく身体の緊張を解いた。
「でもそうねぇ……。やっぱり胸への刺激の問題が、特に大きいようね。言葉は悪くなっちゃうけど胸への刺激を開発されてしまっているから、刺激への耐性をつけることが完治を早めることにつながりそうだわ。今の八雲さんにとってはかなり辛い治療になるけど、覚悟はいいかしら?」
「……構いません。私はその為に、ここへ来たんですから」
 八雲の覚悟を決めた強いまなざしで見上げられた奥寺は、満足そうに微笑んで頷く。
「では治療に移りましょう。その前に暴れられると大変だから、両手足を拘束させてもらうわね」
「分かり……ました」
 奥寺は八雲の身体から離れると、机の引き出しから手足を拘束するベルトを持って戻ってくる。
 八雲は自分の手足が拘束されて、ベッドの柵につながれていく様子を見ながら、何故か胸がドキドキするのを感じた。
「ん? 縛っているところ、痛いかしら?」
視線を感じたのか、奥寺は縛る行為を一時止めてこちらを見る。
「えっ!? いっいえ、大丈夫です」
 慌てて八雲は首を振り、奥寺から顔を背けた。
「じゃあ今回は最初だし、塗り薬の量は少なめで、時間も十分程度にしておきましょうか」
「その程度、なんですか? もっと時間をかけた方が……」
「さっきも説明したけれどこの塗り薬は出来上がったばかりで、正直言うとわたしも使うのはこれがはじめてなの。それにかなり強い薬らしいから徐々に慣らしていった方が、お互い安全だと思うわ」
 少しだけ苦く笑う奥寺を見ると、彼女も八雲と同様に不安があるのだろう――と思ってしまう。
「奥寺先生がそう仰るのならば……。治療を受けている身なのに、余計なことを言ってすみません」
「いえいえ。焦る気持ちは分からなくはないけど、まあマッサージでも受けているつもりになって」
 奥寺はバラ色の液体が入ったガラス瓶の蓋を開けて、斜めにする。甘く蠱惑的な匂いが、八雲の鼻をくすぐった。
「何だか香水みたいな匂いですね」
「女性向けの治療薬だから、製作者も気を使ってくれたんじゃないかしら?」
 奥寺は片方の手のひらに液体を注ぐとガラス瓶を机の上に置き、両手をこすり合わせて伸ばす。そして八雲の桃色に染まった乳房を、下から揉み上げる。
「あぅうんっ!」
(この嬌声は敏感な身体に触れたからかしら? それとも液体の即効性が、身体と相性が良すぎて早く効いたのかな?)
 考えながらも奥寺は八雲の二つの胸を丸を描くように撫で回して、時には揉んでその柔らかさと弾力さを楽しんだ。
「さっきは突然乳首に触っちゃったから、イっちゃったのよね。今回は乳房だけを触り続けたらどうなるのか、治療薬を使いつつ検証してみるから」
「は、い……。ああっ!?」
 陥没乳首が表に出そうなぐらい強く周囲の乳肉を揉み上げられて、八雲の喉から堪え切れない甘い叫びが漏れる。
「う~ん。八雲さんの両胸、まるで肩凝りみたいになっているわ。無理な戦闘を続けたせいで、ちょっと触り心地に問題があるわね。せっかくだし、治療と一緒にマッサージもやってあげるわ。身体が軽くなって、動きやすくなると思うから」
「おっお願いします……!」
 トロンと潤んだ眼をする八雲は、頭の中が熱くなるほど興奮し始めていた。
 奥寺の手の動きは絶妙で、治療薬のせいもあるだろうが、八雲が必死に隠していた淫らな部分を簡単に表に出してしまう。
 まるでパン生地をこねるように、時には優しく、時には強く、胸に触れるのだ。
 八雲は耳まで真っ赤になるほど興奮したせいか、唇が乾燥しはじめる。喘ぎながらも舌を伸ばして唇を舐める仕草は、思わず奥寺が目を見張るほど色気があった。
(普段は真面目一筋と言う女ほど、乱れると全く違った一面を見せてくれるから面白いのよね。……本音を言うと、シャドウよりも先にあなたに会いたかったわ)
 うっすら笑みを浮かべながらも、奥寺はその眼に一瞬だけ鋭さを滲ませる。
「頑張ってね、八雲さん。これもちゃんと現場復帰をする為の治療だから」
「あっああっ……! でも先生ぇ、先っぽ触ってくれないと、苦しくて……!」
 八雲が涙を流しながら哀願にも似た声と視線を向けた先にいる奥寺は、まるで子供をあやすような表情を浮かべた。
「そうね。見ているだけでも、苦しそうなのが分かるわ。でももうちょっと、耐えてみましょう」
 励ます口調とは裏腹に、動く手は激しさを増す。
「ひやぁああっ!」
 媚薬のせいでまるで二つの胸が女性器になり、奥寺の手によって弄り回されているような気がしてくる。
 時々胸を中心に寄せるようにして揉まれるせいで、ぷっくりと腫れた乳輪が擦れて痺れるような快感が上半身に広がった。それでも奥寺はじらすように、あえて一番感じる部分には触ってくれない。
 自分で何とかしようにも、両手足を拘束されたままではどうにもできない。
 ただひたすら身体の熱に翻弄されながら、奥寺が刺激を与えてくれるのを待つしかないのだ。
「せっんせぇ……、お願い……もう、無理ぃ!」
 涙と唾液で顔をグチャグチャに濡らしながら、とうとう八雲は音を上げる。
「そろそろ約束の十分だし、今日はここまでで良いわ。さあ、思う存分に欲望を放出しなさい」
 奥寺はギュウッと二つの乳房を掴み上げると媚薬まみれの人差し指を、頂の赤い穴の中にくぷっと差し込んでグリグリと回す。
「あひぃっ!? そっそれ、だめぇ! あっあああーー!」
 のけぞりながら、八雲は二度目の絶頂を迎えた。
 奥寺の指を押し出す勢いで、母乳は先程よりも激しく噴き出す。濃厚な白さと甘い匂い、そしてぬくもりをともなった液体が、二人の顔や身体にかかっていく。
「おやおや、随分と濃厚なのが出続けるわねぇ。この薬、やっぱり良い効果を出してくれるわ」
 奥寺は低く呟きながらも、八雲の乳房を掴んで母乳を搾り続ける。周囲に飛び散ろうがお構いなしに、一滴残らず搾乳した。
「あああ……! ひぃっぐ、ううう……」
 八雲の身体は何度か小刻みに痙攣した後、ベッドに沈む。肩で荒い息を繰り返しながら、八雲はうつろな顔を横に向ける。久々に自分以外のモノによってイかされた快感は、今の八雲にとっては意識が朦朧になるほど強過ぎた。
 そんな八雲に覆い被さり、奥寺は耳元で何かを囁く。しかし放心状態の八雲は何を言われているのかサッパリ理解できないものの、奥寺に尋ねる気力など残っていない。
 それでも囁き終えた奥寺は満足そうに、八雲から離れる。
「さて、後片付けをしなきゃね」
 奥寺はこの部屋に、新たな異臭がすることに気付いていた。
 八雲は無意識の内に必死に足を閉じようとしていたが、拘束具のせいであまり意味はない。そのせいで、潮を吹いてしまったことが丸わかりになってしまった。太ももやシーツがぐっしょりと濡れており、鼻の奥がツンッとするような刺激的な甘い匂いが漂ってくる。
「アラアラ、下の方も大量に出ちゃったみたいね。待ってて。今、タオルを持ってくるから」
 奥寺はあえて拘束を解かないまま、八雲に背を向けてタオルが置いてある机へ向かう。
 放置された八雲は自分の体液にまみれながらも、法悦に浸った表情を浮かべる。
 その顔を横目で見て、奥寺はひっそりと笑みをこぼすのであった。

「ひゃうぅっ……! むっ村林先生、本当にコレが治療になるんですか?」
「まあ、失礼ね。そんなことを言うコには、こういうことをしちゃうわよ。エイッ!」
「きゃああっ!」
 ベッドの上に仰向けで寝ている法子の右胸を、村林はヌラヌラと妖しく光り輝く手で変形するほど強く掴む。
 数分前、村林はバラ色の液体を片手にだけ垂らしながらこう言った。
「まずは右胸の検査兼治療から、はじめましょうか。いきなり両胸では、精神的にも肉体的にも今のあなたではキツイと思うからね」
「そう、ですね……。確かに今の私では、耐えられないのかもしれません……」
 しゅん……と落ち込んだ法子の頭を、村林は乾いている方の手で優しく撫でる。
「まあまあ、そう落ち込まずに。徐々に治していけばいいのよ」
「はい……」
 明るい村林の顔を見ていると、救われる気持ちになる法子。
 しかし液体まみれの手が右胸を鷲掴みにした途端、頭の中が真っ白になった。
「くぅうんっ!」
 鼻にかかった甘い声を上げながら、危うく達しそうになる。
 村林の体温でぬるくなった液体は、肌に触れた途端に熱くなって法子を上気させたのだ。
「おやぁ? この塗り薬、そんなに即効性が高かったかしら?」
 村林は不思議そうに首を傾げながら、口で息をする法子を見下ろす。
 法子は体を小刻みに震わせながらも、精一杯プライドを保とうとした。
「いっいえ……。いきなり触られて、ビックリしただけです……」
「そうだったの。でもコレは治療だから、わたしの手の感触に慣れてね」
「どっ努力します」
 目を赤く染めながらも、法子は真面目に頷いて見せる。
「それじゃあマッサージの意味も込めて、右胸を揉んでいくわね。イキそうになったら、素直に言ってよ。準備をするからね」
「はっはい……」
 そして村林は両手を使って、法子の右胸を揉み始めた。
 それから数分が経過して、法子は既に全身を桃色に染めている。顔はリンゴのように赤くなり、口から漏れ出る吐息は熱い。
「法子さんは退魔師として日々身体を鍛えているおかげで、胸が大きくても張りと弾力があって良いわね。治療中にこんなことを言うのもなんだけど、触っているわたしが気持ち良いぐらいよ」
「そっ……ですか」
 うつろな表情で返事をする法子は、ベッドのシーツをシワができるほど強く両手で握りしめていた。すんなり伸びた両足は、何かを我慢するように時折痙攣を起こす。
 必死に治療を受ける法子を見続けている村林は、唇を上げる。
(右胸の愛撫だけで、イキそうになっちゃってるし。耐えながらも隠そうとしているこの表情、たまらなく可愛いわ~♪)
「頑張ってね、法子さん。別の部屋では、八雲さんも同じ治療を受けているんだから」
「ええ……。八雲先輩も治療を頑張って受けているんですから……、私もしっかりと専念しないと……!」
「そうそう。治療を気持ち良く感じても良いのよ? 一気に性欲を発散させることが、完全回復への近道なんだから」
 村林の口調はあくまでも優しげだが突然、右胸の陥没乳首を親指の腹でグリッと押しさすった。
「ひやぁああんっ!」
 法子の背中が何度も飛び上がり、触れていない左胸の陥没乳首がぷっくりと膨れ上がってくる。
 右胸の乳輪を人差し指で円を描くように撫でると、まるで右胸に同調するかのように左胸も感じているかのような反応を起こす。柔らかかった白き膨らみは張りと弾力を増して、花のつぼみのような乳首は徐々に硬さと形を変えていく。
「あっああっ……! 先生ぇ、何だか左胸も熱い……です!」
「右の胸しか触っていないのに、左胸も感じちゃうの? やっぱり、感度が異常なほど上がっているわね。ここいらで一度、イッとく?」
 村林は勃ち上がりかけている右の乳首を、親指と人差し指でギュウッとつまみ上げる。
「あひぃいっ! せっせんせぇ……!」
「……っとと、その前にタオルを用意しなきゃいけなかったわね。忘れていたわ、ごめんなさい」
 下腹にたまった熱を一気に放出できると思いきや、村林は突然真面目な医者の態度に戻った。そしてアッサリと、法子の胸から両手を離してしまう。
「あっ……」
 いきなり刺激と快楽から解放された法子は、まるで高い所から急落下するような感覚になる。
 気持ち良さから身も心も上りかけていたものの、達することなく放置されることは、快感に弱くなっている法子にとっては地獄だ。
「えっと、確かタオルは棚の中に入れてあったわね。ちょっと待ってて」
 背中を向けて離れて行こうとする村林の腕を、咄嗟に法子は手を伸ばして掴む。
「まっ待ってください!」
「ん? どうしたの?」
 驚いた表情で振り返った村林の眼に映ったのは、羞恥心で戸惑いながらも必死に自分の腕を掴む法子の姿だ。
 まるで母親に置いていかれそうになっている心細げな子供のような顔付きで、村林にすがっている。
「もうっ……我慢できないんです。身体が熱くて、たまらなくてっ……」
「もしかして、待っていられない?」
「そう、なんです……」
 法子は情けなさから、涙を流す。いくら治療とはいえ、自分がここまで快楽に弱くなっているとは思わなかったのだ。
 今の法子は退魔師としてプライドを保つよりも、女として快楽を求めてしまっている。そのことを頭では理解できてしまうものだから、余計に自分を情けなく思う。
「泣かないで、法子さん。良いのよ、それで。患者に我慢される方が、医者としては心苦しいから」
 優しく慰めながら、村林は戻ってきてくれた。
 そして新たに液体を両手に塗り付けて、ベッドの横に立つ。
「シーツは後で交換すればいいだけだから、気にしないでね。ベッドの上では難しいかもしれないけれど、こっちを向きながら膝立ちしてくれる? その方が、ヤりやすいから」
「……分かりました」
 言われるままに法子は村林の方に身体を向けて、ベッドの上で足を開きながら膝で立ち上がる。
「それじゃあ思う存分に、イキなさい」
 村林は濡れた両手でべチャッと音が鳴るほど強く、法子の二つの胸を掴んだ。
 胸の先端から媚薬が体内に染み込むような感覚に、法子はブルッと身を震わせる。
 村林は二つの胸を丹念に揉み込むと、最後の仕上げとばかりに乳首をいじり始めた。真っ赤に染まった二つの乳頭を人差し指と中指で挟み込み、ギュゥっと掴み上げるようにして引っ張る。
「ひっやぁあん! あああっ……、きゃああんっ!」
 普段は陥没していて表に出てこない乳首の先端を出されて、法子は股間が潤っていくのを感じた。たまらず法子は村林の両肩を掴み、必死の形相で見上げる。
「先生っ、もうイキたいっ……! 法子、おっぱいをいじられながらイキたいのぉ!」
 甘えた声を上げながら懇願する法子の顔を見て、たっぷり満足した村林は深く頷いて見せた。
「本当に可愛いわね、法子さん。あなたのお願いなら、何でも叶えてあげたくなっちゃうわ」
 クスクスと笑いながら村林は二つの乳首を指の間に挟みながら、乳房に手跡がつくほど強く揉んだ。
「あひいいいっ! イックぅーー!」
 絶叫を上げながら、法子は女性器から大量の潮を何度も噴き出す。そのたびに白いシーツに濡れ染みができていくのを、村林は黙って見ていた。
 診療室に淫靡な匂いが漂う中、全てを出し切った法子はそのまま後ろに倒れてしまう。
「あふぅ……。ひぃっ、くぅ……」
 完全に力が抜けてしまったらしく、足を大きく開きながら小刻みに痙攣を起こしている。
 村林の眼には、ぐっしょり濡れた法子の秘所が丸見えになっていた。濡れた黒い茂みの奥には、可愛らしい赤い小さな実が見え隠れしている。視線を下に向けると、淫口が何かを欲するように涎をダラダラ流しながら、クパクパと開いたり閉じたりを繰り返していた。
(アソコはすっかり興奮状態みたいね。普段は堅物と言われるコが、実は快楽に弱いというのはソソルわぁ。アソコをイヤッて言うほど弄り回して、イジメるのも楽しそうだけど、今日は胸だけにしときましょ。楽しみは長く続けた方が、面白いしね)
 そして村林は眼を閉じている法子の上に覆い被さるような体勢をすると、耳元に唇を近付けて何かを囁いていく。
「んっ……」
 しかし達したばかりで正常な状態ではない法子は何を言われているのか理解できないものの、それでも村林は囁き続けた。
 やがて言い終えると村林はベッドの上に座り、法子の身体を優しく持ち上げ、彼女の頭を自分の膝の上にのせて、じっくりとその姿を見つめる。
 法子の肌はピンク色に染まりながらもじんわりと汗ばんでおり、生々しい色気を放っていた。激しく息を乱しているせいで、揺れる巨乳はいつもより淫らに見える。強制的に表に出された乳首は空気に触れることさえ刺激になるのか、乳房には軽く鳥肌が立っていた。
 村林はニンマリと笑いながら、法子の顔にかかっている髪を丁寧に指で払う。
「大丈夫? 法子さん」
「あっ……、はい。すみません、シーツを汚してしまって……」
「それはいいって言ったでしょ? それにどうせなら、このまま治療を続けましょうか。身体にたまっている淫気を取り出しつつ、快楽に慣れた方が良いわ」
「えっ? まだ……、するんですか?」
 久し振りに自分以外のモノ――しかも同性の仲間の手でイかされた衝撃から、未だに抜け出せない法子は戸惑いの表情を浮かべた。
「イったばかりで辛いかもしれないけれど、これも現場復帰する為よ。八雲さんも頑張っていることだし、わたしも早く元気な法子さんに戻ってほしいから。ね?」
「……わっ分かりました」
(根が真面目だと、『治療』と名がつけばどんな行為だって受け入れるんじゃないの? 世間知らずのお嬢様って、ホーント怖いモノ知らずね)
 村林は顔に浮かびそうになった笑みを噛み殺しつつ、再び法子の胸に触り始める。
「じゃあ今度はお話ししながら、治療をしましょうか。法子さんは昔っからこの胸の事で、からかわれ続けてきたのよね?」
「えっええ……。胸が大きいことで、良かったことなんて一度もありません……」
 熱い吐息を漏らしながら、法子は素直に答えた。
「法子さんほど可愛くて巨乳なら、グラビアアイドルをやったらすぐに人気が出たんでしょうけど……」
「やめてくださいっ! あんなハレンチなこと、できるワケないじゃないですか!」
 急に正気に戻ったかのように怒鳴ってきた法子に驚き、村林は思わず胸から手を離してしまう。
「そっそうね。軽い気持ちで言って、ゴメンなさい」
「いっいえ! 私の方こそ、急に怒鳴ってすみません。村林先生は私のことを思って、言ってくださったのに……」
「もしかして、前にも同じことを言われたの?」
 村林の問いに、法子は辛そうに顔をしかめた。
「……はい。でも私の実家ではそういうことは一切許されませんし、私自身も一度もなろうとも思いませんでした」
「そうだったの。でもね、わたしが思うにからかいの意味もあっただろうけど、その半分は本心だったと思うわ。だってこんなに魅力的な法子さんなんだもの」
 村林はそう言うと、ボリュームのある二つの胸を下から揉み始める。塗り薬によって淫靡な輝きを放つ胸をこね回し、勃ち上がった乳首同士をこすり合わせた。
「やぁあんっ! 先生ぇ、乳首同士はダメぇ! 法子、ソコが一番敏感なのぉ」
「そんな甘ったれた声で叫ばれても、やめないわよ。だって本当は気持ち良いところなんでしょう?」
 村林はあえて、むき出しになった乳首を責め続ける。
 ぽってりと大きく膨らんだ乳首がこすれ合うたびに、法子は性器が再び潤っていくのを気付いた。身をよじって逃げようとしても、何故か身体は思うように動かない。上半身は弱い部分を村林に押さえられているので、下半身に力を込めて動こうとしても、すぐに力は抜けてしまう。
 法子の足掻く姿を見て楽しんでいた村林は、ニッコリと微笑み声をかける。
「ふふっ、何で逃げられないのか理解できないようね。法子さんはね、心の奥底では胸でイキたいと思っているからよ。それも一度や二度だけではなく、何度でも気を失うほど絶頂を味わいたいと思っているの」
「うそっ……! そんなことっ……」
「だって本気で逃げたいと思っているのならば、わたしなんてすぐに跳ね除けられるはずよ? 弱っていても、あなたにはそのぐらいの力はあるんだから」
 眼を見張る法子の二つの乳首に、村林は親指を立てて押し込んだ。
「ひぃうっ!? あっ、おっぱいに指が入っているぅ! あっあーっ!」
 グリグリと押し入れられる親指は、法子が体験したことのない快感を与えてくる。まるで膣の中に親指を入れられている感覚になり、目の前がクラクラしてきた。
 村林はそのまま乳首に親指を入れたり出したりを繰り返して、そのたびに塗り薬のせいでジュブッジュブッと濡れた音が診療室に響き渡る。
「法子さん、どう? まるで乳首が性器になって、犯されている感じがするでしょう?」
「なっなる! ああっん! また法子、おかしくなっちゃうよぉ!」
 子供のような口調で乱れる法子は、幾度も背を浮かしては股間から愛液をまき散らす。
「おかしくなっても、法子さんは可愛いわよ。だから乳首を犯されながら、イっちゃって」
 親指が見えなくなるほど奥深くまで差し込まれて、法子は子宮が熱く下っていくのを感じた。
「あひぃいい! イクっ、またおっぱいでイッちゃうよぉ! あああーーっ!」
 そして法子は盛大に潮を噴き出し、絶頂を迎える。背中をのけぞらしながら両手足を震わせて、イった法子はアヘ顔になってしまう。
 だがそんな法子を、村林はあたたかい眼差しで見つめていた。

【変化する肉体】

「八雲先輩、こっちです!」
「待たせちゃったかしら? ゴメンね、法子」
 数日後、晴れ晴れとした表情を浮かべる二人は、以前訪れた公園の中の喫茶店で待ち合わせをしていた。
「こうして会うのも、久し振りね。仕事時間や通院時間がなかなか合わなかったから、顔を合わせることもなかったし」
「そうですね。しばらく戦闘禁止とされていても仕事はありますから、お互いのスケジュールが合わない時もありますしね」
 二人は治療を受ける前と比べて顔色が良くなり、表情も明るいものへとなっている。やつれていた時もあったが、今では元通りと言えるほどだ。
「最初、あんな治療を受けるとは思わなかったけど……。でも実際に効果が出ているんだから、良い方向へ向かっている気がするわ」
「ええ。でも未だに治療を受けるのは、ちょっと恥ずかしいんですけど……」
 八雲と法子はたびたび受けた『治療』を思い出すと、顔をほんのり赤らめる。
 最初の治療の後、二人は久々に何も考えられなくなるぐらいの絶頂を何度も味わったせいで、気絶してしまった。
 目覚めた時には朝になっており、医者の控室に置かれた簡易ベッドの上で二人は眠っていたのだ。裸になっていたはずの二人はいつ着させられたか記憶にはないが、下着と検査着をちゃんと身に付けていた。
 しっかりと覚醒した瞬間に飛び起きた二人は、テーブルの上に一枚のメモ紙を見つける。

『二人とも治療疲れで眠ってしまったので、ここに寝かせます。朝、起きたら患者さんに見つからないように、裏口から出て行ってね』

 メッセージの最後には、奥寺と村林の名前が書かれてあった。
 二人は慌てて、ソファ椅子の上に置かれていた私服に着替える。幸いにもまだ早朝だったので誰にも見られることなく、診療所が完全に開く前に裏口から出られた。
 その後はそれぞれの担当医から送られてくるメールで次の診察日を教えられて、二人は現在も通院している。
 淫靡な治療方法に当初は戸惑いと拒否したい思いがあったものの、あの淫らな夢や衝動に駆られることが減ってきた為に、改めて治療に集中することにしたのだ。
 治療中はもちろん、戦闘は禁止。特殊な治療方法を行っているので、組織にも最低限の出社しかしないように奥寺と村林から頼まれていた。
 今は治療休暇を取り、家と診療所を行き来する日々を過ごしている。
「でも最近は、ちょっと遠くまで買い物に行ったりできるようになったんです。前はその……いろいろとあって、昼間外に出かけるのが怖かったんですけどね」
 法子は思いつめる性格をしているせいで、太陽が出ている昼間に人前に出ることを怖がった。買い物もインターネットか近所の店で済ませて、ほとんど家から出ない生活を送っていたのだ。
「私も長い時間、外にいられるようになったわ。特に治療を受けた次の日なんかは、映画も見に行けるようになったのよ。……でも治療を受けて、数日が経つとダメね。またあの状態に、逆戻りしてしまうんだもの」
 八雲は悲しそうに、目を細める。
 治療を受けて良くなるのは数日間だけで、時間が経つにつれてあの状態に戻ってしまう。
 時には担当医に緊急の連絡を入れて、深夜に治療を施してもらうほど酷くなる時もある。
「私もそうなんですけど……。でもコレって、私達が先生達の好意に甘えているってことになりませんか?」
「うーん……。実は私もちょっと思っているの。先生達はどんなに遅くても、診療所を開けて治療してくれるしね」
 そして帰りは先生方が運転する車で、家まで送ってもらっているのだ。
 治療を受ける前は一人で部屋の中で耐えていられたことが、今では彼女達をすっかり頼ってしまっている。
 そのことを申し訳なく思い、それぞれ担当医に迷惑ではないかと聞いたことがあった。
「村林先生は『可愛い法子さんに頼ってもらえるのは嬉しいから、気にしなくて良いのよ』と明るく言ってくれますけど……」
「奥寺先生も『患者に苦しみを我慢されるよりは、どんな時間になっても連絡してもらった方が気が楽よ』と言ってくれたわ。治療が終わったら、お礼をしなきゃね」
 だが約束の一ヶ月間を終えるまでは、まだ日数がある。
 それまで二人はこの治療を、受け続けなくてはならない。何より、退魔師としての戦いの日々とプライドを取り戻す為に――。
「……っとと。法子、そろそろ駅ビルが開く時間よ」
「もうそんな時間になりますか。では行きましょう」
 二人が今日待ち合わせをしたのは、駅ビルの中の女性用下着売り場で新たな下着を購入する為だ。
「日常で使う物と戦闘用で使う物は別々にしていますけど、流石に診療所用のはなかったので……」
「私もよ。ちょうどこの駅ビルの中に、大きめのサイズを取り扱う下着売り場が入ったと聞いてね。一度来てみたかったの」
 二人は一般的な女性の胸のサイズよりはるかに大きい為に、なかなか合う下着を見つけられないのが悩みだった。
 そんな時、たまたま組織の事務に用事があって訪れた八雲は、事務員の女性からその店のことを聞いたのだ。
 事務の女性も胸が大きいことで下着の悩みがあり、相談に乗ることが多かった。その為、こういった情報に詳しい。
 二人は駅ビルへ入ると、レディースを扱う階に行く。角のスペースに下着売り場はあり、パッと見でも巨乳サイズを扱っているのが分かる。
「お値段はちょっと張るみたいだけど、治療を受けるのにお粗末な下着じゃあ同性相手でも恥ずかしいからね。清潔感があって、シンプルなデザインのを選びましょう」
「はい。だとすると、色は白や青が良いですかね?」
「そうね。診療所用と考えれば、そのあたりが良いわ」
 二人の治療方法は特殊な為に、診療所の診察時間を終えた夜から開始されていた。 
 二人はそれぞれ裏口から診療所の中へ入り、更衣室で私服を脱いで下着の上に検査着を着てから、担当医が待つ診療室へ行くのだ。
 治療を受ける為に検査着を脱ぐ時に、担当医の眼に下着が見えることもあり、流石に普段使いしているものや戦闘用のものを身に着けているのはちょっと気が引けた。
 メディカルチェックは一年に数回なので、検査用の下着は一組しか八雲も法子も持っていなかったのである。
 しかし今回は一ヶ月の間に何度も治療を受けることを考えると、同じ下着を着続けることは若い女性として悩んでしまう。
 結果、二人は新たに下着を購入することにしたのだ。
「サイズや色、デザインは条件通りのがいくつかあるんですけど、八雲先輩は何枚買います?」
「そうねぇ……。まあ一ヶ月はきっているけど、複数枚買ってもいいんじゃない? 別に治療以外の日でも、プライベートの時に着ればいいんだし」
「そうですね。じゃあどれにしようかな?」
 久し振りに女性らしい買い物をすることができて、二人の表情は退魔師ではなく、一人の人間の女性としての柔らかなものへとなっている。
 二人は口に出しては言わなかったものの、お互い心の中ではこんな穏やかな時間が続けば良い――そう思っていた。

 八雲は夜、診療所の裏口から中へと入る。
 八雲としても昼間は身体を鍛えたり、まだ戦えないものの組織内で事務的な仕事をしているので、夜の治療の方がありがたかった。
 何よりいつも激しく治療されるせいで、体力も精神力も根こそぎ奪われてしまう。治療を終えた後は、自分の部屋でぐっすり休みたいのだ。
「こんばんは、奥寺先生。あれ? 村林先生、今夜は法子の治療はないはずじゃあ……」
 いつものごとく奥寺の診療室に入ると、何故か法子の担当医の村林までいる。
「実は今回から、もう少し激しい治療にしようと思ってね。村林先生に協力してもらうつもりなの」
「よろしくね♪」
「そっそうでしたか……」
 しかし自分の淫らな姿を奥寺以外に見せることに、僅かながら戸惑いがあった。
「今日は耐久性を調べてみようと思っているの。でもね、コレは最終段階に近付いている証拠だから、喜んで」
「それは良くなっているってことですか?」
「もちろんよ。最近の八雲さん、大分調子が良いことが見て分かるもの。回復してきたところで、最初の頃には耐えられなかっただろう治療を、今からはじめられるんだもの」
 そこで八雲の顔に、安堵の笑みが浮かぶ。
 確かに体調の良さは感じていたものの、担当医である奥寺からはまだハッキリ症状については言われていなかった。
 だがハッキリと『良くなってきている』と言われると、不安が薄れていく。
「でも激しい治療になるから、ここではなくてシャワールームの方に移動しましょう」
「分かりました」
 この診療所では患者の検査後や、医者が簡単な手術をした後に使うシャワールームがある。
 一人用ではあるが洗面所と一緒になっている為に広さがあり、三人の女性が入っても余裕があるほどだ。
「今回使う塗り薬は、いつものよりも少し効果が強いの。でもその分、淫魔の後遺症をかなり薄くしてくれるそうだから、辛いのは今だけだと思って」
「わっ分かっています……」
 更衣室で診察着と下着を脱いで、八雲はシャワールームに入る。
 どうやら前もって掃除をしていたらしく、ホテルのシャワールームのように綺麗で清潔感があった。
「じゃあはじめましょうか。村林先生も、よろしく」
「はーい♪」
 奥寺は八雲の正面に、村林は背後に立つ。そしてそれぞれ透明の液体が入った瓶の蓋を開けて、手のひらへ垂らす。
「その透明なのが、新しい塗り薬ですか?」
「そうよ。実はね、あまり大声では言えないけれど、淫魔の体液が少量入っているのよ」
「えっ! なっ何でそんなものが……」
「毒を以て毒を制す――ということね。淫魔の毒には同じ淫魔の毒を使って、耐久性を上げるのよ。だからいつもより乱れてもおかしくはないけれど、これからの淫魔との闘いにはかなり有利になると思うわ。淫魔の毒に対して、免疫ができるんだもの」
「免疫……ですか。確かにそれならば、闘い方がやりやすくなると思いますけど……」
「大丈夫よ。しょせんは塗り薬だから、シャワーのお湯で流したら綺麗さっぱり効果はなくなるから」
「奥寺先生がそう仰るなら……」
 今までの治療で、八雲はすっかり奥寺を信用してしまっている。
 渋々ながらも受け入れる覚悟を決めた八雲を見て、奥寺と村林は眼を合わせてコッソリ微笑む。
(これだけ信頼されると、何だかくすぐったいわ)
(医者として信頼されるなんて、ホントはおっかしーけどね)
 心の中で嘲笑いながらも二人は両手で塗り薬を広げて、奥寺は大きな二つの白い膨らみを、村林もこれまた大きめな尻に触れた。
「ひゃうっ!?」
「冷たかったかしら?」
「ゴメンね~。すぐに肌になじむと思うから」
「はっはい……」
 二人の女医はたっぷりと塗り薬を、八雲の肌に塗り込んでいく。
 蛍光灯の光を受けて、テラテラと妖しく輝いていく八雲の身体には変化が起きていた。
 四本の手が身体を撫でまくっているせいで、徐々に陥没乳首も色を濃くして硬く尖り始める。そして股間の方も、熱く疼いてきた。
 顔が赤く染まり、眼にうっすらと涙が浮かぶ八雲を見て、二人は頃合いだと思い離れる。
「八雲さんは胸で気持ち良くなると、簡単にイっちゃうのが悩みなのよね。だから今日はあえて、強めの刺激を与えてみましょう。刺激に対して耐性がつけば、そう簡単にイクことはなくなるから」
「つっ強めの刺激……とは?」
「道具を使うのよ」
 奥寺はニッコリ微笑むと、いつの間にか両手に持っていた何かの道具を、八雲に見せた。
「それ、何ですか?」
「本来は八雲さんのような陥没乳首を上げる為、そしてバストアップの為に使用される道具で、吸引器と言ったら分かるかしら?」
 確かに言われてみれば、そういうことに使う道具であることは見て分かる。
「でも……私にそれを使うんですか? 確かに胸の反応の仕方で悩んではいますけど、大きさとかでは特に……」
「分かっているわ。でもね、こういうのはアダルトグッズとしても使われているのよ。まあ実際に使ってみれば、分かるから」
 戸惑う八雲をよそに、奥寺は二つの胸に吸引器を装着した。ピンク色のカップは陥没乳首を覆い込み、ピッタリと肌にくっつく。二つのカップには管があり、途中で一本になって奥寺が最後尾を手で握っていた。
「それじゃあ、はじめるわね」
 奥寺が最後尾をグッと握り締めると、胸は搾乳されるようにギュウギュウと搾り上げられる。
「ふっわあああっ……!」
 眼と口を大きく開いた八雲は、ガクガクと身体を震わす。
 突然の刺激はまるで乳首全体を摘み上げられて、潰されるような感覚を与えてくるものの、何故か乳首から下半身にかけて快楽の刺激が駆け抜ける。
 陥没していた乳首が強制的に表に出される感覚は、今まで体験したことがない。未知なる体験の恐怖と共に、新たな快楽を身体に刻み込まれていく。
 感じている証拠に淡い茂みに隠れていた小さな赤い芽は、ニョキニョキと成長をしはじめていた。
「触られるのとは、また別の快感が生まれるでしょう? 無機質な物から与えられる刺激にも、慣れておきましょうね」
 どうやら奥寺が握っている最後尾はポンプらしく、手を緩めると空気が入ってきて刺激から解放される。だが再びポンプを握られると、また乳首が搾り上げられた。
「んくぅっ……! やぁああっ、しっ刺激が強いっ……!」
「無機質な物は情け容赦ないからね~。さぁて、お待ちかねの方も刺激を与えてあげるわ」
 村林は八雲の背面に薬を塗り終えると、前の方に移動する。
 しかしその手に妙な物を握っていることを、八雲は気づいた。
「むっ村林せんせぇ……、それ、何ですか?」
 息も絶え絶えに尋ねると、村林は満面の笑みを浮かべながら説明をはじめる。
「コレもいわゆるアダルトグッズと言う物よ。ナカを気持ち良くさせてくれるわ」
 村林が握っているのは、派手なピンク色のピストルの形をした物だ。だがよく見ると、先端はまるで男性器の亀頭のような形をしており、そこから持ち手にかけて大きなイボがたくさんある。そして左右には、子供のペニスサイズのモノが二本ついていた。
「このバイブ、ちゃんとクリトリス用とアナル用の突起も付いているの。回転パールもあるから、いろんな動きもできるしね。きっと八雲さんも気に入ると思うわ」
「ちょっ、待って……て、きゃあああっ!?」
 八雲の了承を得ないまま、村林は陰唇を指でパックリ開くと、物欲しげにヒクヒクと蠢いている女壺にバイブをズブッ……と突っ込んだ。丸くてツルッとした先端を入れると、イボの部分で入口をグリグリと引っかいていく。
「ナカは柔らかく濡れていて、良い感じ。コレなら一気に入りそうよ」
「村林先生っ、それだけは……あああっーー!」
 八雲の口から、絶叫が迸った。
 膣壁が太いバイブによって割り開かれていき、最奥まで差し込まれる。頭で考えるよりも先に、身体は侵入者を喜んで迎え入れる為に子宮が落ちていく。そして子宮口とバイブの先端が当たった時、ようやく挿入が止まった。
「あひぃっ……、くっ……ふううう!」
 八雲は既に、イきそうになっている。
 膣の中をイボだらけのバイブが埋め尽くしたというのもあるが、クリトリス用とアナル用の小バイブのせいでもあった。
 クリトリス用は親指サイズだが柔らかなトゲがあり、真っ赤に硬くなった実を押し潰す。
 アナル用は中指ほどの長さがあり、薬を塗られていた肛門は拒むことなく侵入を受け入れた。
「シリコンでできているから、そんなに冷たくないし柔らかいでしょう? 受け入れやすい素材だから、どんなに凶暴な形をしていてもすんなり受け入れてしまうんですって」
 クスクスと笑いながら、村林は手元にあるスイッチを入れる。するとバイブはブブブッ……と鈍い音を立てながら、細かく震え出した。
「あーっ! いやっ、ダメっ、んあああ!」
 バイブの振動とイボによって、膣の中の快楽ポイントに刺激を与えられる。足を閉じようとしても、既に身体に力が入らない。立っているのも必死で、意識も飛びそうになる。
 しかし村林はお構いなしに、緩やかにバイブを引いたり入れたりを繰り返しはじめた。
 バイブの太さと長さに眼がチカチカしながらも、女肉は歓迎している。出そうとして引けば、逃すまいとナカが収縮した。そして一気に突っ込めば拒むことなく、濡れた穴は開いていく。
 シャワールームはジュボッジュボッと淫らな音と共に、甘酸っぱい愛液の匂いが満ちる。
「こっちの方も、忘れないでね」
 奥寺はそう言うと、ポンプを握ったり開いたりする行為を早くした。
「あひぃっ……!」
 乳首が変形しそうなぐらい激しく強く搾られて、八雲の見開いた眼から涙が零れ落ちる。痛いはずなのに、ジンジンと熱くなるソコからは快楽まで生まれてくるのだ。 
 震える太ももには愛液がトロトロと流れ落ちていき、床に液だまりを作っていく。
「泣かないで、八雲さん。ホラ、慰めてあげるから」
 奥寺は優しく八雲の頭を撫でながら、その手を後頭部へ移動すると突然引き寄せた。そしてグロスで輝いている唇を、八雲の唇に合わせる。
「んむうっ! んんっ……ちゅうぅ」
 いつもの八雲ならば、女性とキスをすることなど夢にも思わなかっただろうし、現実に起こったのならば激しく抵抗しただろう。
 しかし身体中に媚薬入りの薬を塗られた上に、胸や下半身に快楽の刺激を与えられているせいで、まともな思考ができずにいた。
「……ふふっ、女の唇は柔らかくてあたたかくて良いものでしょう? このまま素直に、快楽に身をゆだねて。わたし達は八雲さんに気持ち良く、治療を受けてもらいたいだけなのだから」
 奥寺は妖艶に微笑むと、再び八雲にキスをする。
 言われるまでもなく快感の波にもまれていた八雲は、自ら舌を差し出す。
 嬉しそうに眼を細めた奥寺は、自分の舌と八雲の舌を絡ませる。ピチャッヌチャ……と淫靡な濡れた音が、二人の唇の間から漏れ聞こえてきた。
「……ぷはぁ。奥寺先生の唾液、甘い……」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。もっと欲しい?」
 うつろな眼つきの八雲は、首を縦に動かす。
「じゃああげるわ。あなたの望みですものね」
 奥寺は八雲の後頭部を片手で押さえながら、再び口の中に舌を差し入れる。上顎や舌の裏、歯茎までも丁寧に舌で舐めていく。
 徐々に八雲の身体からは力が抜けていき、やがて自ら腰を動かすようになる。
 足を開きながら腰を上下に動かして、快楽を貪り始めた八雲を見て、村林はニンマリ笑う。
「そうそう。素直に快感を求めて」
 艶やかな村林の声は、まるで媚薬のように八雲の脳に染みわたる。
 すると村林は突然振動のスイッチを切り、別のスイッチを入れた。
「あっ、ふわぁあああっ!」
 新たな刺激を下半身に与えられて、思わず八雲は近くにいた奥寺にしがみついてしまう。
 バイブがローターのように回転しながら、伸縮しはじめたのだ。膣の中をグルグルとえぐられて、奥からじわり……と淫汁が溢れ出てくる。奥まで入れられたバイブは、Gスポットと子宮口を息もつかせぬ速さで責めてきた。
 またクリトリスも完全に皮が剥けるまで小バイブに責められて、剥きだしになった敏感の実は頭の中が真っ白になるほど快楽の痺れを生み出す。
 そしてアナルの中も小バイブが挿入してきて、下半身に強い圧迫感がある。本来ならば出すところが、無機質な器具で埋まっているせいで息苦しさがあるのだ。
 だがそれ以上に、淫口から背筋を通って頭にまで到達するほどの強い快感が、身体全体を支配していく。
 奥寺と村林は淫らに狂っていく八雲を見ながらも、空いている片手で火照る身体をまさぐる。
 敏感になった八雲の身体は触られるだけでも強い快楽となり、徐々に乳首からは母乳が、淫口からは淫汁が外へ出てきた。
「あうぅんっ! もうっ、ダメ! イクっ、イッちゃうぅ!」
 奥寺の両腕を必死に掴みながら耐えてきた八雲だが、身体がブルブルと震えて、達しそうになっている。
「良いわよ。存分にイキなさい」
「出すもの出して、スッキリするといいわよ」
 奥寺はポンプを思いっきり握り締めて乳首を搾り上げながらも、八雲と唇を合わせて口の中からも快楽を与えていく。
 村林はバイブを根元までズブッと差し入れたまま、大きく円を描くようにグルグルと動かした。
「んぐぅっ!? んんんっーー、ああっーー!」
 八雲は絶叫を上げながら、母乳と潮を激しく噴出する。
 母乳の出の激しさに両胸からはカップが外れて、甘く生ぬるい液体は床に飛び散る上に、三人の身体にも降りかかった。
 女性器から出る潮も、まるで我慢していた尿が一気に噴出したかのような勢いだった為に、バイブが抜けて村林の手から弾き飛んでしまう。
 シャワールームの床は八雲の母乳と潮で濡れていき、メスだけが放つ淫臭が漂ってくる。
「アラアラ、まるでお漏らしをしているようね」
 村林は女性器からブシューッと潮が噴き出す様子を見て、失笑した。
 バイブは激しく動きながら床の上で暴れまわっていたが、村林は冷静に拾い上げてスイッチを切る。
「大丈夫? 八雲さん」
「ふわぁ、い……」
 返事をするもののその眼は焦点が合わず、口調も舌足らずになっている。身体からは一気に力が抜けたようで、奥寺に寄りかかっていた。桃色に光り輝く身体は興奮の余波が残っているようで、ビクビクッと痙攣を繰り返している。
 意識が朦朧としている八雲の耳に口を寄せて、奥寺は何かを囁いていく。――だがその言葉は人間では聴き取れぬもので、耳に流し込まれている八雲は何も感じずにいた。
 だがその囁きの効果は、しっかりと八雲の身体に現れる。
「んっ……。ア、レ……?」
 急激に頭の中の熱が冷めていき、冷静に物事を考えられるようになったのだ。ところがそのせいなのか、自分の身体が肉体的な快感を強く求めていることに気付いてしまう。
「八雲さん、どうしたのかしら? やっぱり刺激が強すぎた? 今夜はここまでにしときましょうか?」
 奥寺は八雲の異変の原因を知っていながらも、わざと気遣うように話しかけた。
「えぇっと、それが……」
 イったばかりだというのに、再び快感を求めてしまう自分に浅ましさを覚えて、八雲は口ごもる。
「もしかして、まだイキ足りない? それなら言ってね。じゃないと、治療にならないんだから」
 村林に医者らしい口調で言われては、本心を告げるしかない。
「実は……そう、なんです。何だか……身体がまだ熱くて……」
「それは今夜はじめて使った新薬のせいよ。最初に説明したけれど、塗り薬は肌についている限り、身体は興奮し続けるからね」
「でもこのままじゃあ八雲さん、辛いでしょう? もう一回、イッときましょうか」
 奥寺と村林は八雲の身体を掴むと、位置を変える。八雲を体液で濡れた床の上に寝かせて、村林は膝枕をした。
「ちょっと待っててね。準備をしてくるから」
 そう言って奥寺は、シャワールームから出て行く。
「それにしても八雲さんの胸って、弾力と張りがあるわねぇ。鍛えているのが分かるわぁ」
 その間に村林は両手を伸ばして、八雲の胸を揉む。
「んあっ……! やっやめて、まだ母乳がっ……」
「うふふ、まだ出るわね。でも全部出しちゃった方が、身体には良いのよ。毒も性欲もスッキリ出した方が、楽になれるんだから」
 楽しそうに村林は八雲の乳房を揉んでいき、そのたびに乳首からは母乳がブシュッビュッっと飛び出てくる。
 八雲は真っ赤な顔を見られないように顔を背けるも、胸は感じていることを素直に現していた。
 やがて奥寺がシャワールームに戻ってきたが、その姿を見て八雲は眼を見張る。
「お待たせ。装着するのに、ちょっと手間取ってしまって」
「ひぃっ! なっ何ですか、それっ!」
 八雲は思わず身を縮めて、奥寺から遠ざかるように後ろに引いた。
 奥寺は下着姿になっているのだが、その下半身にはとんでもない物が装着してある。
「こういうの、見るのははじめて? アダルトグッズの中で、主に女性が使う物なのよ。ペニスバンドと言えば、分かりやすいかしら?」
 奥寺が下半身に装着しているのは、黒いレザー生地の紐パンの股間の部分に、勃起した男性器の形をした物がついているものだ。
 しかもその男性器は生々しい肌色をしており、奥寺が動くたびにまるで本物のように反り返りながらもブルンブルンと動く。太い筋が何本も浮き出ており、凶悪さが表現されていた。
「無機質な物で与えられる刺激も良いけれど、生きているものから与えられる快楽も良いものだから。もっと新しい快感を味わって」
 奥寺はしゃがみ込むと、八雲の両足首を掴んで大きく開かせて、M字開脚させる。
「待って、奥寺先生! そんなっ……さっきのよりも、太いんじゃあ……」
「ええ。八雲さんに喜んでもらおうと、Lより大きいBIGサイズにしてみたの。物足りないと感じるより、マシでしょう?」
 不安な顔をする八雲に微笑みかけながら、奥寺はペニスのくびれ部分を握り、子供の拳サイズの先端を蜜口に当てた。更にペニスの竿の部分は、子供の手首から肘までの長さと太さがある。
 こんなアダルトグッズでイッた経験など無い八雲の口から、恐怖のか細い声が漏れた。
 それでも奥寺は腰を押し進めて、ブニブニとした先端はグググッ……と肉道へ入っていく。
「あぐぅうっ! ひぎぃっ、うぐぅっ……! くっ苦じい……!」
 背を浮かして侵入者から逃れようと身をよじっても、村林には両胸を、奥寺には両足を押さえつけられているせいで、身動きが上手くとれない。
 それでも巨根サイズのペニスの挿入は容易ではなく、すんなり入らないことに奥寺は眉を寄せる。
「八雲さん、深呼吸をして。ゆっくり入れていくから。じゃないと、余計に苦しいわよ」
「あっ、ふわぁい……」
 何も考えられなくなった頭で、素直に返事をして深呼吸を繰り返す八雲。すると異物感が少しずつ和らいでいき、ペニスが膣に馴染んでいった。
 頃合いを見て、再び奥寺は腰を動かす。熱く熟れた膣壁の中を、ペニスは終着点を目指して進んでいく。八雲の腹に、徐々にペニスの形が浮かび上がる。
「ああっ……! 八雲さんのナカにちゃんとおさまっていくのが、見て分かるのが素晴らしいわ……!」
 奥寺は興奮しながら、八雲の腹を愛おしそうに撫でた。
 ペニスの先端は子宮口に到着するも、それでもまだと言うように押し上げる。
「あひぃっ!? いやあぁっ、子宮が押し戻されるぅ!」
 八雲は村林の膝の上で、頭を何度も振り回す。下りていた子宮が押し上げられると、下半身に何とも言えない浮遊感が生まれる。
 奥寺が腰を引けば、ペニスの広がった傘の部分が粘膜を引っかきながらズボーッと下った。しかし先端だけを残して一度止まると、今度は止まらず一気に子宮を押し上げる。
「ひぎいっ! あっああ、中っ……膣の中が熱いぃ!」
 八雲の全身に鳥肌が立つほどの刺激を、奥寺は繰り返し与え続けた。
 ズブッ、ヌチャッと耳を打つ濡れた音は、徐々に短くなっていく。奥寺が腰の動きを速くして、ピストンを続けているからだ。
 激しく腰を打ち付けていた奥寺はふと、二人が交わる部分から別の体液が流れていることに気付く。
「八雲さんったら。気持ち良すぎて、お漏らししちゃったのね」
「あっ、うう……、くぅん……ひぃうっ」
 八雲の眼から、悔し涙が流れる。
 人工のペニスから与えられる刺激は、今まで経験したことがない快感。背徳さと気持ち良さが入り交じり、下半身が制御できなくなってしまう。その結果、緩んでしまった女性器からは尿が出ているのだ。
「恥ずかしがることはないわ。それだけ気持ち良くなっている証拠だもの。だからもっと乱れて良いのよ。ほらっ!」
 熱い息を吐きながら、奥寺はズンズンッと子宮に響くほどペニスを打ち付ける。
「コッチの方も、気持ち良くなんなきゃね」
 村林は乳房をいじっていた手を、乳首へと移動した。そして表に出された乳首を、親指と人差し指でギュッと摘まんだり、解放したりを繰り返す。
 普段は刺激が届かない陥没乳首に新たな刺激と快楽を与えられて、出したはずの母乳が再び出る予感がした。
「あっはぁあ~ん。んんっ、やぁんっ。はじめてのことばかりなのにぃ……、何でこんなに気持ち良いのぉ?」
 切なげな甘い声を上げながら、八雲は身体を震わす。肉体は快楽の海を漂い、現実感が薄くなっていく。身体は確かにココにあるのに、何も考えずに全てを委ねていることに不思議な安堵感があるのだ。
 そんな八雲の姿を見下ろした二人は、妖しく笑う。まるで八雲が自分達の操り人形になったことを喜ぶかのように――。
「今夜は八雲さんが満足するまで、たっぷり付き合ってあげるわ」
「何度でもイッて良いからね」
「あっあーんっ! またっ、またイクぅ!」
 背を弓なりにしならせて、八雲は再び母乳と潮を盛大に噴き出す。虚ろな目にふと二人の美しい少女の顔が映っても、混濁した意識は認識できずにいた。



これはbc8c3zがあらすじ・設定を作り、それを元にある方に書いてもらった綾守竜樹先生著・魔斬姫伝の2次創作です。
綾守竜樹先生のファンの方に読んでいただければ、それに勝る喜びはありません。
一瞬でも先生がいなくなったことの皆さんの孔を埋めれれば幸いです。
感想があれば励みになりますのでお書きください。
またアンケートだけでもいただけたら今後の参考になりますので入れてください。
よろしくお願いします。

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