魔斬姫伝外伝~復活のマーカス~中編

■再開
 八雲は法子が消えたその場所を何度も訪れていた。
 連絡があってから数日、連絡のあったところを中心に探してもみたのだが、法子はあの連絡後、連絡が取れないだけではなく、見たという人もいなかった。
 まあ、当然か……。相手はただの人間ではない。淫魔なのだから。
 法子がそこに居たのは確かなはずだったのに、今や法子の姿はない。
 そうなると考えられるのは決まっていた。
 敵に連れ去られたか……。
 それとも、殺されたのか……。
 いや、殺されることはほとんどないだろう。
 何せ相手は淫魔だ。
 生死で考えれば生きていることの方が可能性としては非常に高い。
 そう考えた八雲は焦りそうになる自分を抑えて、法子を捜索した。
 どうか無事でいてくれと願いながら。
 そう思いながら八雲はその法子から最後の連絡があった場所を訪れ、法子を攫った淫魔を待っていた。
 きっとここで待っていれば敵は来る。
 そうでなければ、法子に連絡なんてさせないだろうし、連絡させたのはわざとだとしか考えようがないのだ。
 相手は誰かを待っている。
 それは私かもしれない……。
 八雲は今までいろんな淫魔を倒してきた。
 それだけ、恨まれる数も半端ではなかった。
 もし、八雲を恨んでいる者の犯行であるならば、淫魔は一体どんなやつなのか。
 その情報も欲しかったが、何も出てこない上に、知っているはずの法子は連れ去られてしまっている。
 さて、もし敵の淫魔が現れたとして、どう戦えばいいのか。
 対策をしておきたかったが、どうにも対策するために必要な情報が足りない。
 仕方なしに、敵の情報を覗いた周りの地形、恐らく敵が出現するであろう場所、それらを見て八雲は敵の情報がないということ以外は万 全の対策を立てて敵を迎え撃つ準備をしていた。
 それから少しして、その日も八雲はその場所に来ていた。
 しかし一時間、二時間と経っても何も現れない。
 五感も、第六感も働かせても、敵は現れそうにない……。
 今日も無駄骨か、そう思っていた。
 もうここに来ても淫魔は来ないのだろうかと、そこまで考えてしまったが、ここに必ず来るはずだと八雲の勘は言っていた。
 どうしたらいいのか八雲は非常に悩んだが、自分の勘を信じることにした。
 淫魔が法子を攫ったのなら、それを助けなければならない。
 もちろん、淫魔を倒して。
 そのためにも、いくら無駄骨になろうとも現場に来ることをやめるわけにはいかなかった。
 法子のためにも……。
 そして淫魔が出るのをひたすら待つ。
 その日はとても長い時間待ったような気がする。
 八雲は自分を「先輩、先輩」と慕ってくれる法子を思い出す。
 厳しい訓練も、あの子は必死に頑張っていた。
「いつか先輩の隣に立てるくらい、頑張りますね!」なんて、言っていたこともあった。
 そんな後輩を嫌いになるような者はそうそういないだろう。
 八雲も法子のことは嫌いではなかった。
 むしろよくここまで成長して、宣言通り隣に立てるように頑張っていたと法子を高く評価していた。
 コンビを組むことが、この先あるかもしれない。
 そう思っていた矢先、法子が連れ去られてしまったのだった。
 だが、感情に流されず、八雲はひたすら敵を待つ。
 無事、法子を連れて帰るためにも。
 すると……。
「こんばんは」
 優男のような声が聞こえた。
 こんなところに、他の人間が入って来るはずがない。
 そう思った八雲は、声がした方を思い切り振り返り、距離を取る。
 好青年風に見えるその男は、かつて倒したはずの敵だった。
 マーカス……!
 八雲は即座に戦闘態勢に入った。
 胸当てのないその大きな胸を揺らしながら、マーカスとの距離をさらに取った。
 距離を取っただけだというのに、この威圧感は……。もう以前のマーカスとは違うのだな。
 戦いは始まり、八雲はマーカスが以前よりも強くなっているということがわかった。
 これは、並大抵の退魔師では歯が立たないな。
 八雲がそう思いながらマーカスの攻撃を避ける。
 触手を伸ばし、八雲の足を掴もうとするが、当然そんなものは八雲には通じない。
 ならばとマーカスはわざと隙を作り、八雲が前進した際に、マーカスは仕掛けていた床の擬態触手で足を取ろうとするが……。
 法子には有効だったこの手が、八雲にはそんなものを避けるのは造作のないことだった。
 八雲は間一髪でその触手を避けた。
 その姿は計算しつくされていて、偶然ではない動きだった。
 マーカスは目を見開いた。
「これで法子は一発でしたが、さすがですね」
 やはり八雲は違う。
 そう思ったマーカスは目を妖しく光らせた。
 これは楽しめそうだ、と……。
「……舐めるなよ」
 そんなマーカスの思考を読み取った八雲は静かにそう言うと、刀を構える。
 八雲は怒りのためか、少々手に無駄な力が入ってしまった。
 この淫魔のせいで、法子は今どんな目に遭っているのか……。
 それを想像するだけで八雲は闘志が燃えてきた。
 絶対に負けない。負けて堪るものか。
 法子のためにも、自分のためにも……。
 八雲は素早く動き、攻撃してくる触手を次から次へと避けていく。
 だが、以前のマーカスとは違うと、身体で感じ取る。
 触手のスピードや身体の動きで、マーカスが以前よりも強くなったと八雲は感じていたのだ。
 そしてマーカスには新しい能力、隠している能力があるかもしれないと考える。
 さらに法子が救難信号も出さずに倒されたことから、一瞬で法子を倒したことも予測していた。
 間違いない。マーカスは、前とは違う何かがある。
 そう考えると慎重に動くしかなくなる。
 八雲はマーカスに負けないためにわざと挑発する。
 相手が怒りに満ちれば、それだけ本気の技を見せるだろうし、怒りというものは長くは続かない。つまり、マーカスの怒りの集中力が途 切れた時こそ勝機が見えるのだ。
 そう思いながら、八雲は言葉をマーカスに吐き捨てる。
「前のように泣いて謝る姿は変わらないだろうがな」
 マーカスにとって、屈辱的だったあの出来事……。
「……っ」
 マーカスは余裕そうだった表情が崩れた。
 前回負けたことを思い出したのだろう。
 マーカスは触手を動かし、八雲を追い詰めようとする。
 しかし、表情を歪めたマーカスが連続で攻撃を仕掛けるも、それを八雲は軽々と避けてこう言う。
「私に会った時に目が一瞬泳いでいたぞ。切り札が通用するか不安だったんだろう? 勝てるかどうか、不安で怖かったんだろう?」
 図星だった。
 マーカスは過去に負けたことで、八雲と出会った時、一瞬だけ目を泳がせていたし、いくら切り札があるとは言え、油断ならない相手だ と不安に思っていたからだ。
 だが、怖いとは感じていない。
 マーカスは八雲の言葉を聞き流しながら、八雲の身体をじっと見ていた。
「……」
 何も言わないマーカスに、八雲はさらに言葉を続ける。
「どうした。何も言えないのか?」
 八雲がそう言って、刀を向ける。
 私はいつでもお前を倒せると挑発するかのように。
 マーカスは軽く鼻で笑った。
「いやいや、そのド迫力の胸に言葉が出なかっただけですよ」
 そう。マーカスは八雲の規格外の大きな胸を見ていたのだ。
 そしてマーカスは酷く歪んだ口で八雲を辱める。
「お可哀相に。過去に淫魔にこれでもかと犯されて、つまらないコンプレックスで自衛軍に入り、つまらないコンプレックスで退魔師にな り、つまらないコンプレックスで今も過去の調教という名の一夜を忘れられない」
「……」
 八雲の顔が険しくなった。
 八雲の触れられたくなかった部分を、マーカスはずかずかど土足で上がり込んでさらに泥を塗りたくったようなものだ。
 八雲は湧き上がりそうな怒りを鎮めて、ひたすら冷静であれと自制する。
 こんなところで怒りを露わにして、マーカスを倒せなくなったらどうする。
 法子を助け出すことすら出来なくなってしまうだろう。
 そして自分さえも、守ることが出来なくなる。
 今はただひたすら耐えなければならない。
 マーカスに、何を言われようとただただ耐えるのみ。
 怒るな、泣くな、感情を制御しろ。
 八雲は自分にそう言い聞かせていた。
 感情をコントロールするのは簡単だ。
 いつも通りにしていればいいだけ。
 ただ、戦闘に集中さえしていれば、それで問題はない。
 敵に何を言われようと、それは敵の考えてることであって私自身の本当のことではない。
 そう考えれば、怒りなんて湧きはしない。
 しかしそんなこと、マーカスには関係がないといった様子だった。
 マーカスは八雲の胸を見て、「ふむ」と言って目を細める。
「サイズはGですか? スリーサイズで言うと、96、57、89くらいでしょうか。さぞ、今まで淫魔に愛されたでしょう?」
「……」
 何を下品な……。
 これだから淫魔は……と、八雲は呆れてしまった。
 だが、今までのことを見抜かれたのは痛かった。
 八雲は少しだけ眉を動かした。
 そのわずかな変化に、マーカスは気づいた。
「おや、どうやら当たっていたようですね。いつもの冷静な目が、少し鋭く尖っている……。眉まで動かして、余程イイ思いをされたので しょう?」
「……馬鹿を言うな」
 そう言って、八雲はぎりりと奥歯を噛み締める。
 イイ思いなどしたことはない。
 そう自分に言い聞かせる。
 わずかに胸にある飛び出しそうな気持ちを、悟られる訳にはいかない。
 この気持ちを、認める訳にはいかない。
 認めてしまったら、負けることになってしまうのだ。
 マーカスに、負けられない。
 勝って、法子を助けなければ……。
 そう思いながら、隙がないかと八雲はマーカスの様子を窺っていた。
 そうだ。こんなところで、負けてはいけられないんだと……。
 しかし、マーカスは続けてこう言う。
「ああ、その肉体も、本当は淫魔に犯されたがっている心も、もうすぐ私のものになるかと思うと楽しみですね」
 とても楽しそうに、顔を笑みで歪めて高笑いでもしそうなマーカス。
 どこか不気味に、にたりと笑みを浮かべたマーカスは、八雲を早く手に入れたいと触手を揺れ動かす。
 その動き方はマーカスの喜びを表現していて、見ていて気味が悪くなるくらいだ。
 八雲はそんなマーカスに嫌悪感を丸出しにしてこう吐き捨てる。
「どうやら死にたいらしいな」
 そう言いながらも八雲は嫌な予感がした。
 一瞬で殺さないと不味い。
 何か、得体の知れない力を持っているのだろう。
 そうでなければ、こんなにも自信があるはずがない。
 それに……。
 法子の件も気になる。
 法子のいる場所の情報をどうにか吐かせたい。
 しかし、それよりも先に、今までの経験と勘がすぐに殺さないと不味いと心が、身体が叫んでいた。
 戦闘はすぐに再開し、八雲はマーカスの背後を取った。
 守る触手も間に合わないほどの八雲の動き。
 マーカスの目が大きく見開いたのが見えた。
 勝った……! 八雲は内心そう思った。
 しかし、実際に負けたのは八雲の方だった。
「いやはや、本当に不味かったですね。これがなければどうなっていたことか」
 時間停止、それがマーカスを助けた。
 八雲の急所を攻撃し、時間を再び進める。
「うあ……っ!」
 そう呻いて、八雲は何が何だかわからないまま、意識を失ってしまった。
 マーカスは喜びの感情で満たされている。
 ようやく八雲を自分のものに出来たのだ。
 嬉しくないわけがない。
 これで八雲も自分のものだ。
 そう思いながら、触手で八雲を包む。
 ずっと欲しかったものが手に入ったマーカスは、新しいおもちゃを与えられた子供のように喜び、八雲の感触を味わっていた。
 そしてこの新しい能力があって、本当に良かったと、心の底から思った。

■八雲調教1  
 八雲は連れ去られ、そして目を覚ますと責めの手があり、声にならない声を叫んでいた。
 な、なんだこれは……。
 そう思っていると八雲は動かせるのが下半身のみだと気が付いた。
 身体を拘束され、法子の時と同様に、上半身のみが上に出ていて見えるようになっている。
 そしてマーカスが八雲の胸を強く叩いていた。
 目覚めてすぐに胸を叩かれるだなんて、普通では想像できないことをされている。
 弾む胸に、八雲は思わず呻く。
「ンンンーーーーッ!!」
 八雲は胸を激しくスパンキングされているのだ。
 胸を右に、左に、上へ、下へと上下左右関係なく揺らされる。
 何度も何度も叩かれ、胸が歪んでしまうようにさえ思えてしまう。
 その責めは、法子の時よりも強烈だった。
 マーカスにとっては法子よりも八雲のことの方がより重要なことだったからだ。
 自らを殺そうとしてきた相手、復讐すべき者……。
 それこそ法子なんかとは思い入れの桁が違うのだ。
 法子の時は八雲を呼び出すためのものだったようなものだった。
 だからこそ、責めもそれ程思い入れがないから柔らかなものだった。
 とは言っても、それでも常人では耐えられないものだったが。
 しかし、相手が八雲だとするとマーカスも事情が変わって来る。
 マーカスは、八雲に殺されかけたことやそして戦闘の最中の会話にムカついたことを思い出し、より力を入れてスパンキングをしていく のだ。
 胸を叩く度に音がして、それが空間に響く。
 そしてその度に八雲の呻き声が聞こえる。
 まさに狂った空間だった。
 大きな規格外の双乳をひたすらスパンキングする男の姿……。
 そしてスパンキングを拘束されながらされている女……。
 こんなもの、どこに行ったとしても見られることはないだろう。
 マーカスは乱暴な言葉遣いで八雲に言葉を吐き捨てる。
「この程度のこと、お前には何ともないだろうがな!」
 そう言いながら、マーカスはさらに激しいスパンキングを続ける。
 余程強く叩いているのだろう。
 普通では考えられないような大きな音が響き渡る。
「ンフゥ、ンンンンンーーーー!」
 八雲は思わずそう呻いた。
 痛い。だが、痛いだけじゃないような気がする……。
 その気持ちに気づきつつある自分に、八雲は「そんなことはない」と上半身をあまり動かさず、また、顔色もあまり変えずにただ耐えた。
 耐えて、耐えて……。
 そこに残ったのは胸が熱いという感覚。
 これは、無視しなければならない。
 これに支配されてはいけない。
 何故ならそれは気持ちがいいということを認めてしまうことになるからだ。
 気持ちがいいはずがない。そんな、気持ちがいいだなんてこと、あってはいけない。
 ここへ連れて来られてしまったが、そんなことで心を乱してはいけない。
 法子を助けなければならないのだから。
 こんなもので、心を揺れ動かされるようではダメだ。
 しっかりしなくては。
 そして、こいつを倒して、法子を助け出さなければならない。
 しかし、そんな八雲の必死の気持ちを全く考えもしないで、スパンキングはランダムに刺激を与えられる。
 その一撃一撃が、痛みを走らせる。
 胸を叩かれ、そこがじんと痛みを持って熱くなる。
 それが何度もあって、双乳全体が痛みが広がった。
 八雲の乳は、次第に鞭で叩かれるような痛みを与えられるようになった。
 鋭く、一瞬の強い痛み……。
 それを繰り返されると、さらに痛みが広がって、じんじんと痛む。
「……こんなことをしても無駄だ」
 八雲がそう言うと、マーカスは楽しそうにこう言う。
「いいえ? こちらからしたら楽しいですよ。あなたのいろんな表情を楽しめる」
 マーカスは言った通り、いろいろな表情へと変わる八雲を見て楽しみながら、自らの手でスパンキングすることを楽しんでいた。
 八雲は法子の時同様、鉢植えのように上半身は出ていて、両手、下半身は巨大な空洞の肉ツボに捕らわれて、身動きが取れない。
 唯一動かせるのは下半身だが、足や腰など動かしても、マーカスには見えないはずだし、八雲自身も役に立つことはない……。八雲はそう思っていた。
 そしてマーカスは、実はビビりで、初めての戦いで八雲に懇願して戦いで助けを求めたことがあった。
 マーカスは八雲に何度も懇願し、でも、それでも八雲は顔色一つ変えずに無残にも息の根を止めようとしてきたのだ。
 それを思い出したマーカスは、その屈辱を晴らさんばかりに胸をスパンキングした。
 風船を叩くかのように、何度も何度もスパンキングをする。
 そして、風船のように大きく動くその双乳は、マーカスを喜ばせるものとなった。
 だが、その喜びも、八雲を前にするとマーカスはつい、声を荒げてしまう。
 八雲の口にはギャグボール、そして目には目隠しがされていた。
「犯されるだけの存在の雌が、誰が誰を殺すって! あぁ!? 調子に乗ってんじゃねえぞ! クソアマ!」
 マーカスはあらんかぎりの罵声を浴びさせ、手でフルスイングでの胸をビンタした。
 八雲の胸は四方八方へと大きく揺れる。
 豊かな双乳が元の形を一瞬でも戻らない程に、マーカスは素早く次へ、そうして長くスパンキングを続けた。
 叩かれて、揺れて、叩かれて、揺れて……。
 それを繰り返していく。
 このまま続けていれば、いつかは下乳が見えてしまうだろう。
 念装厚膜は破れてはいないが、八雲のその中の胸は、真っ赤な双乳になっていた。
 当然、叩かれ続けたのだから、赤くなっていておかしくないだろう。
 むしろ、赤くならない方があり得ない。
 それほど、強い刺激を与えられていた。
 胸の中の乳腺まで痛みがあって、胸がいつか取れてしまうのではないかと思うくらい、強くスパンキングをされる。
「こんなに乳を叩かれているというのに、恍惚の表情を浮かべて! さすがの八雲も雌だったということだな!」
 そんなことを言いながら、ひたすらスパンキングを繰り返す。
 八雲は雌と言われて不快感を露わにした。
 雌の顔などしていない……!
 そう思っているのに……。
 しかし、そんな表情はしたところでスパンキングの痛みですぐに崩れてしまう。
 恍惚の表情とまではいかないが、何かを感じていることは明らかな表情だった。
 マーカスはその様子を見てこう吐き捨てる。
「雌は雌らしく鳴いていればいいんだよ!」
 そう言いながら、興奮した様子でマーカスは楽しそうにスパンキングをする。
 八雲はもう胸がじんじんと熱くて、痛くて仕方がなかった。
 こういうことをされるのは初めてではないが、ここまで長時間やられることはなかなかない。
 だからこそ、八雲は必死で耐える。
 どんな状況だろうと、必ず勝つ道はあるはずだ。
 そのためには、耐えて、耐え抜かなければ。
 そう思いながら、強い責めに耐え抜いた。
 気づけば息も絶え絶えで、八雲はその責めが落ち着いたことに密かにほっとしていた。
 そしてしばらくして落ち着いてきたマーカスは、はっとして乱暴な言葉遣いをやめてこう言う。
「すまないね。つい言葉尾荒げてしまった。許してほしい」
 そう言って、八雲の目隠しとギャグボールを取った。
 目隠しとギャグボールを取った八雲の瞳は、マーカスを捉えた。
 そして八雲は少しだけ呼吸を乱しながらこう言う。
「……法子はどうした?」
 八雲の目の下の黒子が、妙に色っぽく見えた。
 八雲の目は少しも、いや、全く死んではいなかった。
 それどころか、殺意が塊になって襲ってきそうなほどだ。
 確かな意志と強さ、それらがはっきりとわかった。
 これ程の責めをされながら、まだ反抗できるというのか。
 まだ、倒そうと活路を見出そうとしているのか。
 まだ、法子を助けた上で自分も抜け出し、マーカスを倒そうと言うのか。
 そんな強い八雲の意志に、マーカスは驚いた。
 そしてそれは圧倒的に有利なマーカスでさえ、ビクリと肩を震わせて、僅かに後ずさってしまうほどの殺意だった。
 かつて殺された恐怖が蘇る……。
 あの冷酷で、容赦のない八雲の姿を。
 ただ、それ以上に……。
「ふ、ふははっ! この状況で他人の心配とは……! それでこそ、最高の獲物だよ」
 Yシャツの一番上のボタンを一つ外しながらマーカスはそう言った。
 まるで法子を心配し、また、隙あらばマーカスを叩き潰そうとする八雲のその姿が、マーカスにはいじらしく、滑稽にも見えていた。
「何が可笑しい」
 八雲は笑われ、不快な表情を浮かべる。
 何も笑われることなんてしていない。
 一体何が、この男を笑わせたのだろう。
 まるで、馬鹿にされたように思えて八雲はより不快に思った。
「いや? 別に変ではない。だが、滑稽だ! 可笑しいとも! 自分も捕らわれの身で、それでも仲間の心配をして、私を殺そうとするの だから」
 そう言いながら、マーカスは大きな声で笑っていた。
 簡単に抜け出せないな……と、八雲はそう思った。
 まずここの拘束がきついこと、マーカスの新たな能力の謎。
 殺したくても殺せない……。
 しかも、仲間を心配することを笑われるなど、プライドの高い八雲には酷い怒りを溜め込むこととなる。
「下種が……っ」
 その言葉に全ての怒りを混ぜて吐き捨てた。
 だがマーカスはそんな八雲の言葉などお構いなしに言葉を続ける。
「ははっ。さすがは、有名な復讐者である八雲さんだ。痛みにはお強い様子。だが、これはどうかな? 君の過去は知っているよ。いつか ぜひお手合わせ願いたいと思っていたんだ。まあ、以前は話す前にお別れしてしまったから、お互いをよく知ることができなかったから ね」
 ヒマワリ型の触手で、八雲の胸を優しく愛撫し、刺激する。
 叩かれてばかりだった胸は、敏感にその優しい責めを甘受していた。
 陥没乳首は隆起する。
 無数の花弁で包まれるように刺激され、快感を感じ始めていた。
 やんわりとなぞるように触れられ、そしてその部分を撫でられると、鳥肌が立ってしまう。
 気持ちいいとは少し違うが、なんだか官能的にさえ思えた。
 そして舐められるように触手で少し強めに、でも優しく撫でられると、八雲はその端整な顔を快感で歪ませた。
「……っ」
 少しばかり息を呑む音がした。
 八雲はマーカスを睨みつける。
 だがその瞳は睨みつけるといよりは、もっとと求めるようにも見えなくもない。
 マーカスは「もっとって求めているね」と言い、八雲はしまったと思い、改めてキッと睨みつけた。
 しかしそれでもマーカスには八雲の睨みは最早睨みとしては見えなかったのだ。
 そしてヒマワリ型の触手は八雲の胸を包んで吸い付いていく。
 陥没していた乳首が隆起し、その隆起した乳首を激しく責め立てる。
 気持ちよくなんかない……。
 気持ちいいはずがない。
 そんなことより、法子を助け出す方法を……、自分がここから助かる方法を見つけなければ。
 ここから出ることさえ出来れば、きっとなんとかなる。
 今までのようにやれば、全く問題はないはずだ。
 たとえ相手が、マーカスだろうと……。
 だが、新しい能力の正体がわからない。
 これではどう戦えばいいのかわからない。
 どうすればいいのだろう……。
 八雲はそう思いながら必死にその責めを受け止める。
「っふぅ、あ、あ……」
 思わず声が漏れ出る。
 次第に思考は考えることをやめていき、気づけば与えられる刺激のことばかりが気になるようになっていった。
 しかも敏感になってしまった胸は、わずかな動きですら気持ち良さに変換してしまう。
 それでも、八雲は顔色を変えなかった。
 ただ、少しだけ眉が動いてしまったり、きゅっと口を閉じたりはしていたが……。
 だが、足の方は動いてしまっている。
 もじもじと、膝を擦り合わせ、足の指を握ったり開いたりを繰り返す。
 上半身だけは動かさずに、下半身でその快感を逃がす。
 その様子がわかるマーカスは、にんまりと口の端をくっと上げた。
 そしてその様子を見て、マーカスはヒマワリ型の触手から八雲を解放する。
 今度は初めと同じように、自らの手で調教しようと考えたのだ。
「どうですか。胸、気持ちいいんじゃないんですか? こんな風に、愛撫されるのは久々でしょう。いつもいつも、任務ばかりのあなたに は気持ちよくて堪らないんじゃないですか?」
 そう言いながら、マーカスは胸をやんわりと揉んだ。
 マーカスは乳フェチだ。
 その八雲の大きな胸も、乳首も、好みのものだった。
 さらにマーカスは八雲の弱みを発見し、見抜いている。
 それは奥にある乳腺を、割と強めに揉み込み、揺さぶりにも弱いということを。
 マーカスは八雲の乳首を視点に伸ばし、揺さぶる。
 揺さぶられた八雲の胸は、自由に形を変え、そして品よくその形を作っていた。
 まるで八雲の心のようだ。
 何度捏ねても、揺さぶっても、元の形に戻る。
 そして責めを受け入れて、その張りのある胸は大きく動かされる。
 八雲は先ほどのスパンキングのように面白いくらい形を変える双乳に、汗をたらりと一滴流した。
 たぷんと重量感があり、張りのあるその胸は、マーカスによって形を変えられる。
 乳肉は互いにぶつかり、たわみ、より深く強い快感を生む。
 今までのスパンキングとの違いは、ほぼ痛みはなく、代わりに圧倒的な快感があることだろう。
 捏ねられ、引っ張られ、揺すられて……。
「……!」
 八雲はその快感に思わず顔を歪めた。
 顔をわずかに赤くし、目をぎゅっと閉じる。
 八雲はその責めに、マーカスを睨み続けられなかったのだ。
 目に力を入れられ続けない。
 それでも睨もうと必死にマーカスを睨んだ。
 だが、睨んでいるというよりも、何かを求めているような、そんな色が隠されているようにマーカスには見えていた。
「おや、どうしました? それで睨んでいるつもりですか?」
 八雲はマーカスを睨み続ける。
 だがしっとりと濡れていて、瞳は揺れている。
 睨んでいるというにしては、妙に色っぽいものだった。
 しかもいちいち、マーカスが自分の胸の感想をいちいち話してくる。
「ほら、八雲さん。あなたの胸はこんなにハリがあってまるでマシュマロのようですね。それに、乳首は大きく隆起して、つんと尖ってい ますよ。まるであなたのその孤高の表情そのものだ。でも変ですね……」
 もっと憎まないと、そう八雲が思うと、マーカスは八雲の瞳を見てこう言った。
「あれ? 瞳が潤んで乳の快感で眉が垂れて来ていますよ? さっきまでの怖い眼差しをしてみてくださいよ」
 マーカスはそう言いながら、五裂触手で胸を包み込み、それを手で掴んで、あらゆる方向に伸ばし、揺さぶる。
 双乳の付け根の強擦な快感の痺れと、豊かな乳房から取られたくないと、ヒマワリの触手は吸い付き、より刺激が強くなってしまう。
 八雲は顔をわずかに歪ませる。
 どうしようもない刺激に、ついに八雲は身体が、顔が、思考が犯されつつあった。
 少しずつ、自分のものになっていくような気がして、マーカスはいい気になっていた。
 ついに八雲を手に入れたのだ。
 そしてこれから身体も心も、自分のものにしてやる……。
 そう思いながら、思わず自分で自分を褒めるマーカスは、嬉しそうにこう言った。
「素晴らしい。苦労して手に入れただけある」
 陥没していた乳首は完全に隆起し、本来の淫らさを隠し、快感尾与えると目覚め、花開く。
 まさに花そのもの。
「私は淫花の伯爵と呼ばれているが、君は淫花の貴婦人とでも呼ぼうかな?」
 そんな好き勝手な感想を言って、八雲の神経を逆なでする。
 淫花の貴婦人だなんて、そんな不名誉な呼ばれ方、されたくなんかない!
 そう言いたかったが、言えるほどの余裕が八雲にはなかった。
 マーカスはまるでオーケストラの指揮をするかのように繊細なタッチで八雲の胸を愛撫する。
 こんな普通のこと、どうせ大したことじゃない。でも、何故か気持ちいい、だなんて……。
 八雲は無視できない。石になれない。強烈な双乳からの乳悦。
 八雲は足をぎゅっと握って、爪先に力を入れてイク。
 法子とは違い、性的に成熟している八雲。
 恋人もいたし、性的な経験もそれなりにあった。
 八雲は下半身のもどかしさの正体に気づき、必死に耐える。
 ダメだ。こんなところで、こんなもどかしいなどと……。
 そう思うも、八雲は快感を求めようとしてしまう。
 八雲は法子同様に上半身は耐え、声も出さないように踏ん張るが、実は足の動きがマーカスにはバレバレだった。
 次第に淫臭がしてきて、八雲は自分の淫臭と快感を結びつける。
 匂いを嗅ぐだけでも、もどかしくなり、乳首が隆起する。
 こんな、淫らな臭い……。まさか私がさせるだなんて。
 いや、でもこれまでもこんなことはいくらでもあった。
 そう悲観することはない。
 まだ隙があるはずだ。
 マーカスをわざと挑発するか、それとも言いなりになって隙を突くか……。
 八雲はそれを悩んでいた。
 だが、悩みなどすぐに吹き飛んでしまうほど、優しくも強い愛撫を、刺激を与えられてしまうのだ。
「こ、こんなことをしても無駄だ」
 八雲は強がりでそう言った。
 マーカスはそんなことは簡単に見抜き、「そうですか。ではこの匂いは何でしょうねぇ」と言いながら、胸を弄び続ける。
「淫らな……、匂いがしますね。どうやらあなたの方からするようですが、まさか、あれだけ睨んで、否定しておいて、感じているんじゃ ないでしょうね?」
 そう言いながら、胸の飾り……、隆起した乳首を刺激する。
「……っ」
 八雲は再び沈黙し、責めに耐え続けた。
 ここでマーカスは面白いことに気づいた。
 法子と八雲の違い。
 感じている時の手の動きや微かな表情の違い。
 それらの変化をマーカスは観察する。
 胸もどこが感じるのか、二人の違いを調べているのだ。
 八雲は胸の先端はもちろんのこと、全体を揺すられたりすることも好きなようだ。
 乳腺すら感じてしまう……。
 胸を揺すれば、それだけ感じてしまう敏感な身体。
 八雲は訓練されているとは言え、やはり女なのだ。
――雌だ。
 マーカスは笑いが止まらなかった。
 あれ程恐れ、一度負けた相手ですら、身動きを取れなくしてしまえば……、胸を責めてしまえばただの雌に変わる。
 だが、これだけでは終わらせない。
 マーカスはさらに八雲の癖を調べる。
 感じていると眉をきゅっと寄せて、少しばかり俯く。
 足はぴんとして、指だけぎゅっと握ったり閉じたり……。
 ぴくんと膝を合わせて動かしたり、少しでも快感を逃れさせようとしているのだろう。
 その姿があまりに滑稽だった。
 まるで発情期のうさぎのようじゃないかとマーカスは思った。
 腰が動いていて、かくかくとする姿など、動物そのもの。
 これがあの八雲かと思うと、マーカスは面白くて仕方がなかった。
 見えないところで快感を逃がし、何でもないような顔をして、その実、快感にやられてしまいそうなのだ。
 こんな女を恐れていただなんてと、マーカスは肩を震わせて笑っていた。
「どうしたんですか。腰が動いているようですが」
「……! 腰を動かしてなんか、いない!」
 八雲の強がりに、マーカスは「そうですか」と答えて、胸を軽く叩いた。
 すると八雲は「うぅっ」と呻いて、揺れる胸が元の状態に戻るまで待った。
 しかしマーカスは変わらず八雲を責めていく。
 スパンキングはもちろん、愛撫だって忘れない。
 乳首を思い切り吸って、その先端に刺激を与えることだって自由自在にやれるのだ。
 「どうですか。気持ちいいのではないですか? そろそろ正直になったらどうです。ただ静かに耐えている姿を見るのも、少々飽きてき ました」
「誰が、言う通りになるものか」
 八雲はマーカスを睨んだ。
 だが、初めの頃よりも余裕がない。
 息が荒く、顔も赤い。
 しかも今も胸を刺激され、その快感を逃がそうとする。
 マーカスはそんな様子の八雲を見て、くすりと笑った。
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃないですか。もっと自分に素直になったらどうです?」
「馬鹿な。そんなふざけたことを抜かすな。私は、気持ちよくなどない」
「その強気なところ、嫌いじゃないですよ。でも、素直になったあなたも見てみたい」
 マーカスはそう言って責めの手を動かし続ける。
 八雲は言われた通りに素直に刺激を受け入れるということをしない。
 してしまったらそれこそ何かが終わってしまうだろう。
「それにしても、本当に大きな乳ですね」
 などと、言葉からも八雲を辱め、精神的にも支配しようとする。
 だが、八雲はそんなマーカスの思考が手に取るようにわかり、思い通りにならないように聞こえない振りをしたり、反抗したりする。
 こんなもの、子供の喚く声と一緒だ……。
 そう思いながら、大きな胸を揺らされて、刺激されて、少しばかり感じてしまっていた。
 感じてしまっている自分に気づいた八雲は、いけないと思って必死に心を静めた。
「いじらしいですねぇ。もっと素直になってしまえばいいのに。そうしているのも、辛いでしょう? あなたと私しかいないんですから、 少しはそういった弱い面を見せてくれてもいいじゃないですか」
 マーカスはそう言いながらも、八雲の胸を触手で弄ぶ。
「誰が……っ、お前なんかに」
 八雲はそう言って気持ちいいという気持ちに必死に蓋をする。
 だが、一度気持ちよさを感じてしまうと、その気持ちよさはなかなか身体から、精神から抜けていかない。
 最初の頃よりも、八雲は本来の女性としての魅力が出てきていた。
 性的に、淫らに美しく……。
 だが、責めに耐えるその姿も、色っぽい。
「まるで女優ですね。責めに耐えるその姿、まるで絵画のようですよ」
 八雲はそう言われながらも、必死に耐えた。
 誰がこんなやつの言うことを聞くもんか。
 思い通りになるもんか。
 そうしている内に、八雲の念装厚膜は今にも破れそうになっていた。

■八雲調教2 
 マーカスはヒマワリの触手を止める。
 八雲は荒い息をしながら、顔をぐったりと下に向け、流れ出る汗をたらりと流した。
 八雲の顔の表情は、厳しいもので、さらには雌を感じさせる色っぽいものだった。
 目元の黒子が、また色気を出していた。
 胸の谷間に落ちていく汗が、じんわりと全身に浮かんだ玉のような汗が、八雲の絶頂の凄さを見せつけているようだった。
 そして長く続く調教が、いかに過酷なものかわかる。
 ましてや、あの八雲が顔をぐったりと下に向けているのだ。
 相当な責め苦だろう。
 流れ出る汗は下に落ち、また淫臭をまき散らす。
 マーカスはその状態の八雲を見て、満足気に微笑んでいた。
 八雲はとにかく今は快感から逃れ、正常な思考へと戻そうと必死に息をしている。
 その息は熱く、荒いものだった。
 胸が上下し、体力も少なくなっていることがわかる。
 こんなやつに、こんな目に遭わされるだなんて……。
 法子も、こんな目に遭っていたのだろうか。
 もしそうなら、早くここから逃げ出して応援を呼ばなくては……。
 だが、ここがどこなのかわからない。
 自力で脱出するしかないのだろうか……。
 しかし、ここから抜け出せそうにはない。
 八雲は八方塞がりだなと、心の中で思ったが、いや、でもどこかに状況を変えることが出来るはずだと、諦めることはしなかった。
 そんな八雲の気持ちなど知らないマーカスは、八雲の頬を触るが、その瞬間、八雲は今までの疲れも振り切って、思い切り顔を動かし、 マーカスの指を噛んだ。
 ごりっと音がして、マーカスの指からは血が滲み出た。
 痛みにすぐ手を引っ込めるマーカスは、その並々ならぬ八雲の闘志に、驚きを隠せなかった。
 まだまだ戦意は落ちていない。
むしろ、隙あらばすぐに殺してやると思っているようだ。
こんなところで、こんなやつの言いなりにはならない。
 こんなやつに、絶対負けないという八雲の強い意志が、その瞳の光でわかった。
 マーカスはそんな八雲を見て、やはり手に入れてよかったと感じた。
 理想の身体を持っていて、さらには楽しめる精神力もある。
 たくさん遊べそうだ。
 やはり遊べないやつはつまらない。
 何故ならただ捕まえて、襲って、はい終わりではつまらなさすぎるのだ。
 八雲のように反抗してもらわなければ。
 従順なだけなら犬で十分。
 こうして反抗心を持って、噛みついて来るくらいが丁度いいのだ。
 マーカスは噛まれた指をもう片方の手で擦り、痛みを緩和すると、未だ光を失なわない八雲にこう言う。
「その魂に敬意を払って、どうやって僕が君を倒せたのか、教えてあげよう」
 八雲はまだ倒されてなどいないと、そう思いながらもマーカスの話に耳を傾ける。
 八雲は救難信号は出している。
 しかし場所は移動している上に、マーカスの能力がわからないからには、来た応援も負けるかもしれない。
 この私でさえも、その能力がわからない。
 そんな中、仲間が来たとしても……。
 しかし、もしかしたら、隙があれば倒せるかもしれない。
 その隙は、どこにあるだろうか。
 あったとして、この拘束から逃れられるだろうか。
 ……何度も試してみたが、拘束を外すことは出来なかったが、また挑戦してみた方がいいのだろうか。
 それとも、大人しく救援を待つしかないのか?
 並大抵の者ではこのマーカスは倒せない。
 どうしたら一番良いのだろう。
 この、マーカスを倒して法子を助けるには。
 少しでも事態が好転するように、八雲はいろいろと考えた。
 しかしどれも実行まで至ることが出来ないと判断し、すぐに別のことを考える。
 身体の熱が治まるまでずっと、そうやって考えていた。
 しかし、そんなことを考えていると、マーカスは五裂触手を出す。
 相変わらず、脳がないこればかりをしてくる。
 また弄ぶつもりか。
 本当に、脳がないだけじゃなく芸もないな。
 この淫魔は……。
 そう思っていたが、八雲は一瞬でアクメしてしまった。
「ひぎぃっ!」
 そう言って八雲は胸を大きく反らせる。
 胸は大きく弾んで、汗も飛んだ。
 しかもその直後に念装厚膜が破れ、胸が丸出しになってしまった。
 ぷるんっと音が聞こえてきそうなほど、赤くなった乳房が飛び出した。
 八雲はその強い衝撃で何が起こったのかがわからない。
 いや、それ以前に、意識が吹っ飛んでしまうくらいの強い快感……。
 何をされたのかが全くわからなかった。
 この強烈な快感はな何だ……っ。
 そう思いながらも、声にならない声で悲鳴を上げた。
 胸を大きく突き出し、身体が痙攣御起こす。
 がくがくと腰が、足が動く。
 何をされたのか全くわからない八雲は、体中からじんわりと汗を流した。
「どうしたかわかるかい?」
 八雲はマーカスの声すらも上手く聞き取れない。
 身体がアクメの快感に追いつかず、まだ異常なほど痙攣してしまっているのだ。
 今までとはけた違いの乳悦。
 吸引絶頂とも違う。
 こいつは、今何をした……。
 靄がかかったような頭で八雲はそう思った。
 しかし何をされたのか全くわからない。
 予想すら出来ないのだ。
 こんな激しい絶頂を迎えたというのに、その絶頂を迎えるまでに何があったのかがわからない。
 今、一体何が起こったんだ。
 確か、触手が出て、それから……。
 何をされたんだ? そもそも触手に触れられたのか?
 そんなことが頭を過る。
 八雲は念装厚膜のなくなった自身の胸に与えられた刺激をもう一度思い出す。
 いきなり、強い刺激が来た。
 そうとしか言いようがない。
 何をどうしたら、こんなに強い刺激を与えることが出来るのだろうか。
 考えても考えてもわからない。
 多くの戦いを経験してきた八雲だったが、マーカスの新たな能力のようなものは初めてだった。
 そのため、何が何なのかわからず、周りを見たりして他に敵がいないかなど確認したが、そんな敵などどこにもいなかった。
 これは一体どういうことだ……。
 八雲は予想のつかない出来事に、頭が全く働かなかった。
 いつもの正常な思考であれば答えに行き着くことも出来たかもしれないが、それが今は絶頂のせいで出来ない。
 今も、まだ痙攣は収まらず、がくがくと腰は動き、足がぴくぴくと動いてしまっている。
 そのことがマーカスには手に取るようによくわかっていた。
 マーカスはここまで派手に絶頂を迎えてくれるだなんてと非常に喜んでいた。
 それはそうだ。
 あの法子もこの能力には勝てなかった。
 八雲だって勝てるはずがないのだ。
 時間停止、なんと素晴らしい能力だろう。
 この能力のお蔭で法子も、そしてあの八雲さえも手に入った。
 マーカスは新たな能力に感謝していた。
 八雲はに嬉しそうなマーカスを見て、荒い息をしながら「この下種が」と口にした。
 だが、マーカスはそんな言葉、耳に入っていても特に痛くも痒くもない。
「なかなかいい絶頂振りでしたよ。また見せてよ。能力を使ってあげるからさ」
 マーカスはそう言って、八雲を見つめている。
 そして、痙攣がやっと落ち着いてきた八雲を見て微笑んだ。
 マーカスは機嫌良さそうにこう言う。
「わからないかな? それにしても……、素晴らしい胸だ。法子を超えているね。やっぱり97のGかな? 乳暈は同じくらいかな? 形も 最高だね」
 そんなことを言いながら、八雲の胸をじっくりと観察するマーカス。
 その大きくて普通あまり見ない張りのある胸を、マーカスは機嫌良さそうに見て、触手でゆっくりと触った。
 八雲は先程までの強すぎる絶頂を思い出して、びくりと肩を震わせた。
 いや、待て。
 こんなやつに震えるほど恐れてはいけない。
 能力はまだわからないが、きっと対抗策か何かがあるはずなんだ。
 そう思いながら必死に胸の刺激を逃がそうとしていた。
 しかし八雲は嫌な予感がした。
 これは不味い。非常に、不味い……と。
 能力もわからない上に、守りもなくなってしまった。
 必死に逃げようとする八雲。
 だが、そこから逃げることは不可能だった。
 手足が使えない。
 胸だって丸出しだ。
 どう頑張っても逃げられないではないか。
 それでもと八雲は必死に身体を揺すったりしてその場から離れようと、拘束から逃げようとしたが、やはり逃げられない。
 周りを見て、脱出出来そうな扉がないかなどを見たが、やはりそんなものはなく……。
 八雲は焦っていた。
 このままではまた絶頂させられて、何が何だかわからないまま、ずっとこのままだと……。
 そして、おもちゃのように飽きられるまでずっとこうして捕らわれたままになってしまう。
 飽きられたら、どうなってしまうのか……。考えたくもない。
 いや、だが、絶対に逃げられるはずなんだ。
 どこか、何かのタイミングで、マーカスの隙を突きさえすれば。
 そうだ。なんとかしなくては。
 連絡さえ取れれば、他の者達に救助してもらうことだって出来るかもしれない。
 ……いや、それは考えたところでやめておいた方がいいだろう。
 マーカスの新たな能力は危険だ。
 束になって襲い掛かったところで勝てないかもしれない。
 それだけ謎に包まれていて、危険な能力なのだから。
 このままではいけないにしても、もう少し、様子見するしかない、か……。
 悔しいが、それしかない。
 マーカスはそんな八雲を見て目尻を下げる。
 八雲の思考を全て知っているかのようにを嘲笑いながらマーカスは自らの手で八雲の胸を愛撫した。
 時間停止し、淫魔らしく、今までの調教で八雲の弱い部分、リズム、強弱を把握され、さらに愛撫をされる……。
 胸を大きく動かされ、そして先端にある乳首を弄ぶ。
 乳腺にまで届くような大きな刺激も与えて、さらにはその刺激のせいで下腹部の子宮がきゅんと締め付けるかのような動きを見せる。
 胸を少し摘まんだりして、痛みの中にある快楽を引き出そうとマーカスは少々手荒に八雲の胸を強く触った。
 そして触手でその大きな胸の全体を吸い、さらには乳首までも吸い付くように、そして摘まむような刺激を与える。
 時間が止まっている八雲には、何をされているかなどわかりはしないだろうが、きっと時が動き出したら大きく絶頂を迎えてくれること だろう。
 そしてさらにマーカスは触手で胸の中心だけでなく、周りをも大きく吸い付かせ、全体に快感を得られるようにした。
 さらには乳首をぎゅっと摘まんで、擦る。
 大きな乳首はその弾力でマーカスの指の感覚を楽しませた。
 八雲はマーカスに胸を弄られ続けるも、時間が止まっているからそれにすら気づけない。
 マーカスは余裕の笑みを見せて、八雲の胸を好き勝手動かし、弄んだ。
 そして10秒、八雲の時間が止まり、動き出す。
「ンンン……ッ!」
 そう呻いて、八雲は目を見開いた。
 さらに八雲はアピールするかのように上半身を前に突き出した。
 一気に気持ちよさが襲ってくる。
 どうして。何もされていないのに。
 いや、何かされたのか? 私の知らないところで……。
 でも、だったら、この能力は何なんだ。
 そう思いながらも、八雲は長い絶頂を迎えていた。
「ふ、っくぅ……!」
 足がぴんと伸び、爪先まで伸ばされる。
 そしてさらには淫臭までも、また周りに振りまいて……。
 何がどうしてこうなったのか、八雲には全く分からない。
 だが、マーカスだけは口が弧を描いていた。
 これこそ、法子を追い詰めた技、時間停止だ。
 八雲の絶頂中に再度時間を止められ、乳首同士を擦られ、伸ばされ、揺さぶられる。
 もう八雲のいいところはマーカスには手に取るようにわかっているのだ。
 双乳を両方触手で持ち上げ、大きく揺さぶる。
 すると八雲の乳腺が動き、張りのある胸は弾力でたぷたぷと揺れ動く。
 乳首は完全に隆起し、それお触手が吸い付く。
 強く、激しく吸われた乳首は、何度も形を変え、より赤くなっていく。
 陥没乳首が今や完全に隆起し、主張して、ピンと上を向いている状態だ。
 その乳首を吸われたら、八雲ならまだ耐えられるが、他の普通の女性からしたら即座にアクメしてしまうことだろう。
 とはいえ、時間停止を使われているから、時間を動かした瞬間、八雲もアクメしてしまうのだが……。
 そしてマーカスは初めと同じようにスパンキングもする。
 胸を大きく叩き、念装厚膜がなくなったその胸はあっと言う間にマーカスの手のひらの形に赤く染まっていく。
 大きく揺れる胸……。
 マーカスはその胸をひたすら叩き、そして触手でその痛みが残っているであろう部分を優しく刺激した。
 強い刺激だけでなく、優しい刺激を与えることが、八雲には有効らしいことがわかりつつあったからだ。
 いや、八雲だけではないかもしれない……。
 しかしそんなことはどうでもいい。
 マーカスは今、八雲にしか興味がないのだから。
 そしてマーカスは八雲の胸を掴んで大きく揺らす。
 まるで弾力や柔らかさなどを確かめるかのように。
 そしてつんと立った乳首に、触手で刺激を与えた。
「弾力、形、柔らかさ、感度、鍛えている分素晴らしい。それに乳首の大きさも凄い」
 マーカスは八雲の双乳を楽しむと、また弄び、揺らしたり、吸ったり、強く刺激を与えて何度目かの絶頂を迎えさせようとする。
 八雲の絶頂する姿を見るマーカスは、何度見ても美しいし、楽しく、また面白い。
 何故なら自分を殺そうとした相手だからだ。
 復讐も兼ねて、少々……いや、かなり意地悪なことに、連続で絶頂させるマーカス。
 これだけ刺激をすれば、また絶頂を迎えさせることが出来るだろう。
 そう思ったマーカスは、能力で止めていた時間を動かすことにした。
 10秒後、再び八雲の時間は動き出す。
「っ!!!!」
 八雲はさらに強い絶頂に襲われ、慣れない快感にもはや声が出なかった。
 胸を大きく掴まれ、思い切り揺らされながら、乳首を吸引され、乳首の周りを刺激され、奥の乳腺にまで響くような刺激を与えられる。
 感じないわけがなかった。
 時間を停止され、その間に受けた愛撫が、時間を進められると同時に一気にそれらの気持ち良さが八雲を襲ったのだ。
 乳首と乳首を擦られる快感……。
 それは何とも言えないほど、強い刺激だった。
 そしてそれのおまけで双乳が解放され、上下左右に揺れる。
「どうですか? 気持ちいいでしょう。あなたはこういうものが欲しかった。違いますか?」
 マーカスはそう言って、激しい絶頂を長く続けている八雲にそう聞いた。
 だが、八雲は答えることが出来ないほど、気持ち良さで頭がショートしていたのだ。
 気持ちいい? 気持ちいいって、何だ……っ。
 八雲はもうそんなことさえ考える余裕がなかった。
 もはや絶頂は気持ちいいというよりも、辛いものと思えてしまうのだった。
 そしてしばらくしてようやく、自分が気持ちよくて絶頂していたと気づく。
 マーカスはそんな思考すらままならない八雲を見て、にんまり笑みを浮かべる。
「答えることも出来ないくらい、気に入ってくれたみたいですね」
 八雲は耳に入ってきたその言葉を、否定しようと頭を軽く横に振ったが、そんなものは何の役にも立たなかった。
 その後も徹底的に愛撫され続ける……。
「これはどうですか?」
 そう言いながら、マーカスは触手で八雲の乳首を両方一緒に吸い付いて、根元を歯ブラシのような触手で磨くように刺激した。
「っくぅ……!」
 八雲は耐えようと必死になっていたが、先程の強い絶頂のせいでわずかな刺激でも絶頂へと向かってしまった。
 びくんびくんと身体が弾み、胸も大きく揺れ動いた。
「おやおや、もう反抗出来ないんですか? まだ遊んでいたいんだけどなぁ」
 そう言われ、八雲は睨んだ……つもりだった。
 しかし実際には睨んでいるというよりも、もっとしてほしいという視線にしか見えなかった。
「どうしたんですか? そんなに物欲しそうな眼で見て……。足りないのなら、追加でもっと快感を味わわせてあげますよ」
 そう言って、マーカスは触手でさらに八雲を弄び続ける。
「こ、こんなことしても……無駄だ……っ」
 八雲は必死にそう言ったが、その声は息も絶え絶えで、小さくて最初の頃の威勢はどこにもなかった。
「え? 無駄? なんですって?」
 マーカスはそう言いながら八雲の胸を再び愛撫していく。
「あなたのような乳雌が、何を言ったところで無駄なんですよ。僕に勝とうと言うその気持ちも、反抗心も、戦おうと言う闘志ですらね」
 八雲はそんなはずはないと必死に頭を振って責めに耐えた。
 しかし絶頂は身体が覚え込んでしまっていて、絶頂をしないということが出来なくなっていた。
 もう身体をコントロールすることすら出来ないのだ。
 このことに気づいた八雲は焦った。
 コントロール出来ない……。
 それは、つまりは敵の思うがままにされてしまうということ。
 八雲は目の前が真っ暗になっていくような感覚を味わった。
 こんな、強い刺激を与えられ続けたら、頭がおかしくなってしまう……。
 身体が、変になってしまう。
「また絶頂させてあげますよ」
 その悪魔のような言葉に、八雲は「また、絶頂を迎えるのか」と諦めのような感情を持っていた。
 だが、しかし、同時に喜んでいるもう一人の自分もいる。
 そのことに気づきつつある八雲は、必死に自分と戦った。
 いや、戦おうとしていた。
 しかし、そんなことは関係ないとばかりに絶頂ばかりさせられて、もう何も考えられなくなっていた。
 心にあるのは、最早法子のことではなく、これ以上責められたら……という恐怖心のようなものだった。
 もちろん、法子のことも心にはしっかりある。
 だが法子のことを考える余裕など、今はない。
 最後にマーカスに口内に指を入れられる。
 少しだけ残っていた闘志が、八雲にマーカスの指を噛めと言う。
 そして指を噛もうとしたが、指を上手く噛めない。
 結局、甘噛みにしかならなかった。
 それはまるで、全身の筋肉が溶けてしまったようだった。

■八雲調教3  
「植物はね、水が少ない分、より根っこを長く生やして、地中の水分を吸い取るんだ。凄いよね」
 マーカスは突然植物の話をし始めた。
 身振り手振りをつけて、話を続ける。
 それも酷く楽しそうにだ。
 捕らわれの身の八雲は眉間にしわを寄せる。
「何を……」
 八雲は困惑と怒りを感じていた。
 激しい調教をされながらも、マーカスは突然思い出したように楽しそうにそう話し始めたからだ。
「花っていいよね。美しいだけじゃなくて、魅力があるんだから」
 困惑する八雲を横目に、マーカスはこう言う。
「君達も同じってことだよ」
 そう言ったマーカスは、八雲に動画を見せる。
 上半身を責められながら、マーカスに必死に軽口を叩く八雲の姿。
 余裕そうな声とは別に、身体は汗だらけで、特に足はくねくねと動いてしまっている。
 マーカスの責めを必死に受け流しながら、言葉を吐き出すその姿はまさに強者。
 しかし、見えない下半身を淫らにくねらせ、絶頂の際に、足をこれでもかと突っ張らせたり、腰を突き出し、蟹股になる風景が移ってい た。
 くねくねと、まるで植物が揺れるかのように足が動き、さらには淫らにも腰が動き、マーカスの言う花の意味が八雲には少し理解出来る かのようにも思えた。
 上半身は必死に啖呵を切って、動かないようにしていたが、下半身は見えないからと必死に動かして快感を逃がそうとしていた。
 言葉だけは饒舌に、だが下半身は滑稽なほど動いていて、淫らなダンスを繰り広げる。
 それは明らかに感じている証拠で、肉体は制御出来ず、精神だけでなんとか持ち堪えていたことがわかる。
「違う……。こんなの、私じゃ……」
 八雲はあまりに酷い映像に、そう呟いた。
 戦士からただの女に一瞬戻ってしまった八雲。
 信じられないその姿を、八雲は呆然と見ていた。
 しかしすぐにハッとして元の強い八雲に精神を戻した。
 だがマーカスは「これが本当の君だよ」と言って映像の続きを見せる。
「言葉だけは必死に吠えてるけど、下半身はこのざまだ」
 下半身は肉体言語で、快感を貪り、下半身も責めてほしい、少しでも乳イキの快感を貪りたいと言葉よりも雄弁に物語っていた。
 それだけならまだしも、上半身を責められると、より下半身が揺れ動く。
 胸をスパンキングされる度に下半身がびくびくと動き、触手で吸われてはまた足を開いて快感に耐え続ける。
 乳イキをする度に、大きく開かれる足。
 ぴんと爪先まで真っ直ぐ伸ばして、明らかに快感を貪っていることがわかった。
 そうして、時間が経つにつれて、下半身は触られてもいないのに汗でしっとりと濡れていて、それだけではなく股当のすぐ下の太ももの 辺りから汗とは違う粘り気のある液体まで流れているように見えた。
 念装厚膜があっても色が変わるくらい、太ももが濡れていた。
 八雲の下半身は尚もくねくねと動き、まるで淫らなダンスを踊っているかのようだった。
 度々足を蟹股にし、快感を下半身で逃がそうとするその無様な姿も、動画には映し出されていた。
「いい花に成長してきたね。嬉しいよ」
 馬鹿にするでもなく、優し気な微笑みで下半身の動画を見るマーカス。
 マーカスは法子や八雲を花と同じように扱っている。
 まるでもっと成長してほしいと願って世話をする人のように。
 だが、法子も八雲もそんなことは願っていない。
 花になるだなんて、そんなこと考えたくもなかった。
 そしてあまりのことに感情が追い付かない八雲。
 見えないからと油断していた。
 まさかこんな風に見せられるなんて……。
 快感を必死に受け流していたことが丸わかりだ。
 八雲はもうそんな映像を見たくはなかった。
 早く動画が終わることをただただ祈るばかりだった。
 プライドの高い八雲だからこそ、こんな無様な姿を見せられたくはなかった。
 自ら求めるかのようなそんな腰の動きを、淫らにも広がる足を、八雲はそんなものを見たいなどと思えない。
 それも自分の映像だ。
 いやらしくも下半身を淫らに動かし、上半身は動かさずに表情もあまり変えない滑稽とも言えるその姿を見せられる。
 身体の気持ち良さは下半身が動いていることで気持ちいいのだとすぐにわかるし、上半身の顔にもしっとりと汗が滲んでいる。
 こんな自分の姿、見たくはない!
 早く消してくれと、そう心の中で思っていた。
 何度も、絶頂を迎え、足を無様にも開くその姿を、八雲は見たくない。
 だが、見ないと言うことが出来ない。
 マーカスが見えるようにと八雲の顔を無理矢理映像を映し出されている方へと向けているのだ。
 目を閉じてしまおうにも、そんなことをしたらどうなるかわからない。
 八雲は嫌がりながらも、映像を見続けるしかないのだ。
 そうしている内に、肉体はもちろん、精神もずっとイキたがっていることがわかっていた。
 映像からしてもそれは丸わかりだ。
 精神的には言えないが、身体はイキたくて仕方がないと言った様子で、滲む額の汗がたらりと頬を伝って下に落ちていくのが見える。
 そして淫気が周りに満ちていき、より八雲は淫らになっていく。
 その姿も映像にはしっかりと映されていた。
 だが、精神的に強い八雲は、何度イッても、マーカスを倒そうと言う意志だけはあるようで、口で何度も何度も、マーカスを貶める言葉 を吐いていた。
 それでも身体はびくびくと動き続けているのだが……。
 映像を見せられた八雲は、吐き捨てるようにこう言った。
「こんなもの、見せたところで何も変わらない」
 八雲は強がってそう言った。
 本当のところはこんなものを見せられて、動揺してしまったし、さらには困惑と自分への怒りだってある。
 また、求めてしまう自分の浅ましさに恥ずかしさだって覚えていた。
 しかしそんなこと、マーカスはお見通しだった。
「そうかな? 随分熱中して見ているようだけれど。素直になればいいじゃない。本当はもっとしてほしいんでしょ?」
 マーカスがそう言うと、八雲はキッとマーカスを睨みつける。
「そんなことは、ない……!」
 八雲は必死にそう言って、胸が揺れるほど身体を動かして噛み殺そうとマーカスを睨み続ける。
 その姿はまるでライオンのようだ。
 強く、逞しく、立派な姿に見えなくもないだろう。
 だが、そんなもの、マーカスには首輪をつけた猫くらいにしか思えない。
「ふうん。嘘はいけないね」
 そう言って、八雲に映像を見せつけてくるマーカス。
 イキながら足を思い切り蟹股にして足を強張らせる様子が映されている。
 さらにがくがくと腰を動かし、下半身を動かす様子も映されていた。
「こんなになるまでイッているのに、それでも我慢するなんて、余程強い精神力の持ち主なんだね。でもこの映像を見る限り、それは無駄 な努力だけれどさ」
 そう言われた八雲は酷く恥ずかしかった。
 自分の淫らな姿をそのまま見せられて、ましてやそれを無駄な努力と言われて……。
 ああ、なんということだろう。
 こんなやつに、敵に突かれてしまうような隙を見せてしまうだなんて……!
 八雲の高いプライドが叩き落とされた瞬間だった。
 映像は流れ続け、もう何分経っただろう。
 びくんびくんと動く腰や足を、もう見たくなかった。
 口だけは達者で、いろいろとマーカスに歯向かったり挑発したりとしていたが、だが、与えられる快感に、下半身は正直に動いてイキた いとその姿からそう言っていることがわかった。
 八雲の精神の強さと、肉体の求めるものの違い……。
 精神はまさに鋼の精神といったところで、今までの経験や高いプライドがそれを保っていたが、身体は度重なる淫らな行為に、淫らな刺 激に完全にスイッチが入ってしまって、性的な快感を求めてしまうのだ。
 そんな身体を鎮めようと八雲は何度も精神力でコントロールしようとしていた姿が映し出されるも、下半身が動いてしまうことに変わり
はなく、いかに淫らな身体をしているのかを映し出していた。
 それが八雲には十分にわかった。
 だから、もうこんな映像を余計に見たくはなかった。
 強い精神で跳ね返しているつもりだった。
 戦っているつもりだった。
 でも、だったらこの映像は何だ。
 どう見ても自ら快感を貪っているではないか……!
 精神はコントロール出来ていた。
 でも、身体の方はコントロール出来ていないどころの話ではない。
 自ら求めにいっているようなものではないか。
 いやらしくも腰を突き出して、足を開き、爪先をぴんとさせて……。
 これが求めていないというのは、無理な話だ。
 こんなこと、あってはいけないことなのに……。
 絶対に負けないと思っていたのに……。
 そう思いながらも、映像に映る自分の下半身を見て、悔しさのあまり、ぎりりと奥歯を噛み締めた。
 八雲の額から汗が滲み出て、それが目元の黒子を濡らす。
 まるで涙のようだ。
 そんな八雲をいいことに、マーカスはこんなことまで言い出す。
「法子のことを気にしていたね。言い忘れていたよ。彼女も同じように」
 動画で同じ責めを受ける法子が映し出される。
 口ではマーカスのことを挑発したり、反抗したりとしていたが、法子も八雲同様、身体と精神が大きく違っていた。
 法子は八雲と同じく、下半身はびくんびくんと動かしながら、快感を逃がそうと必死に足を動かしていた。
 八雲のことを喋るまいと必死にしているその姿も、八雲にはとても申し訳ないと思わせるものだった。
 そして法子はイク時は足をぎゅっと締めて、足の指を開いて閉じる。
 口では軽口を叩いていたが、法子も八雲同様、下半身は快感に打ち震えていた。
 こんなことをしても無駄だと言いながら、下半身は正直にその快感を受けて気持ちよさそうにもじもじと動いている。
 簡単には落とされない法子のプライドも、徐々に肉体の淫らさに呑み込まれていく。
 マーカスのその責め苦にいよいよ法子は耐えられなくなってきていたのだ。
 それだけ法子も八雲同様、口だけは達者で、でも快感には弱いことが丸わかりだった。
 その様子は下半身の映像だけでもわかる。
 また、音が録音されていることもあり、何を言っているかも、喘いでいるかもわかる。
 法子は何かを心の支えに、必死にその責め苦に耐えていることがわかった。
 その支えが何かなのかは八雲にはわからなかた。
 法子のその強い精神力を支えているものがまさか自分だとは思いもしないだろう。
 しかし、八雲はそんないじらしい法子を見て、より不安になっていた。
 こんなに辛い目に遭っている法子を助けられないと……。
 今だって、拘束されて敵のマーカスに攻撃を与えることも出来なければここから抜け出すことさえ出来ないのだから。
 映像の法子はそれでも必死に耐える。
 その度に聞こえるマーカスからの質問……。
 それは八雲の情報を求めるものだった。
 まさか、法子は私のためにこんなに辛い目に遭っていたのか? そう思うと、八雲は目の前が真っ暗になっていくのを感じた。
 自分のせいでこんな目に遭わせてしまった。
 ……法子、どうか無事でいて。
 八雲はそう思いながら、責められる法子の映像を見ていた。
 映像の中の法子はもう限界を突破してしまっていて、連続して足が痙攣しているのがわかる。
 こんなにも快楽責めをされてしまっては、拘束されてしまっているならば、もう逃げられないのだとすれば、なんと残酷なことだろう。
 そして八雲は思う。
 法子は耐えられるだけ耐えたのだと。
 だが、この淫魔の方が一枚上手だった。
 新たな能力がそうさせたのだろう。
 映像は法子がイクところを映し出している。
 それでも何度も必死に戦おうとするその姿が涙ぐましい。
「結構我慢強いところも君達は似ているよね。見えない下半身で快感を逃がそうとしているところもさ」
 映し出されている法子のその姿は淫らとしか言いようがないほど、もじもじと膝を擦り合わせて必死に耐えていることがわかった。
 次第に犯されていく精神と、身体の快感……。
 それが見て取るようわかる。
 そしてイクときの二人の違い、同じところ、癖を楽しそうにマーカスは話す。
「君はイクときに足を開き、法子は足をぎゅっと締めて、足指は開いて閉じるんだよね。結構似ているよね。開いているか閉じているかの 違いだけで、足はしっかり動かしているんだからさ」
 そんなことをさも楽しそうに話すマーカス。
 法子の映像を八雲に見せながら、八雲に「ほら、ここの足の動きなんて君達そっくり。さっきの君の映像見せてあげたでしょ? 凄く似 ていると思わない? やっぱり法子は君を尊敬しているだけあって、君とそっくりだ。我慢強いところもね。でもそんなの無駄だけどさ 」
 そう言いながら、映像を止めようともしないマーカスに八雲は腹を立てた。
 そして八雲は思い切り睨む。
「っろす」
「ん?」
「お前は必ず殺すっ、殺すっ!!」
 八雲は鋭い視線でマーカスを睨みながらそう言い放つ。
 こんな映像、撮られていただなんてと思うと同時に、怒りが湧いて来るのだ。
 必死に繋ぎ止めていた精神、しかし身体は正直に動いてしまっているという事実。
 それが八雲には強く、酷く感じられた。
 八雲の言葉はさらに続く
「ただじゃ殺さない。細切れにして、この世に顕現したことを絶対に後悔させてやるっ!」
 噛みつかんばかりの感情剥き出しの言葉を、心地よさそうに聴きながら、新しい能力である淫気を出す大きな淫花を部屋に置く。
 能力がない者でも目に見えるほど濃厚な淫気があっと言う間に部屋中に立ち込めていく。
「殺すっ!」
 そう言いながらも、拘束を解くことすら出来ないでいる。
 マーカスは滑稽だなとさえ思った。
 どうやって殺すと言うのだろう。
 捕らわれの身で、さらに念装厚膜だってもうすぐ溶けてしまうだろうに。
「殺してやる!」
 そう言う八雲に、マーカスは嘲笑った。
「君が僕を殺す? そんな拘束も解けないというのに? 面白い。やってみてよ」
 そう話すマーカス。
 その間にも八雲の残った念装厚膜がみるみる内に溶けていく。
 直に淫気が肌から吸収され、呼吸でも吸ってしまう。
「植物はね、水やりとは別に、葉水をすることで、きれいで元気な葉っぱになるんだよ。花だけ美しくてもダメで、それを彩る葉の方も美 しくないとね」
 そんなことを言うマーカスの言葉など耳に入らないのか、八雲は大きな声で叫ぶ。
「ただじゃ殺さないっ! ゆっくりいたぶって、前よりも残酷に殺してやる!」
 声を張り上げ、必死に八雲はマーカスを眼で射て殺さんと思い切り睨む。
「私の分だけじゃない! 法子の分も倍以上に苦しみを与えて殺してやる!」
 絶対に負けない。
 その意志のみが今の八雲を支えていた。
 マーカスへの復讐心があるからこそ、八雲は自分の意識を保っていられた。
「絶対に殺してやる!」
 何度もそう言いながら、拘束されている手や足を出来る限り動かして、外れないかも試してみたが、どうやら拘束は外せないとわかると、余分な体力を使う必要はないと、口でより多くマーカスを貶める言葉を吐いた。
「絶対に、酷い目に遭わせてやる! 法子の分も、私の分も、持てる力の全てを使ってお前を倒してやる!」
 マーカスはそれを心地よさそうに聴く。
「良い声だ。最高の花が見られそうで今からドキドキだよ。今は蕾だけど、どんな花かな?」
「マーカス、お前だけは許さない! 決して、許さない! 次に会った時、それがお前の命日だ!」
 そしてしばらくして八雲の声にならない声を聴き、最高の淫花を想像しながら、マーカスは立ち去った。


これはbc8c3zがあらすじ・設定を作り、それを元に根本鈴子先生に書いてもらった綾守竜樹先生著・魔斬姫伝の2次創作です。
綾守竜樹先生のファンの方に読んでいただければ、それに勝る喜びはありません。
一瞬でも先生がいなくなったことの皆さんの孔を埋めれれば幸いです。
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