百姫夜行外伝~Circulation~九条院法子 前編

朝日が昇る前、神器省の訓練場には既に一人の影があった。

「はっ!」

澄んだ空気を切り裂く声に続いて、刀が風を切る音が響く。九条院法子は腰を落とし、両手で鬼貫正国を握り締め、完璧な型で素振りを繰り返していた。

黒いおかっぱ髪が額にかかり、集中した眼差しの奥で決意が燃えている。162センチの身長ながら、引き締まった体躯には退魔師としての鍛錬の跡が見て取れた。紺色の稽古着は汗で僅かに濡れ、胸元に張り付いていた。

「…九十八、九十九、百。」

法子は深く息を吐き、刀を鞘に収めた。稽古着の襟元から覗く首筋に汗が滴り落ちる。鏡の前に立ち、自分の姿を確認する。黒縁の眼鏡の奥で、真面目な瞳が自分自身を見つめ返していた。

「まだ足りない…」

彼女は小さく呟いた。完璧を求める性格は、子供の頃から変わらなかった。

鬼貫正国——その刀と法子は「刀婚」という特別な契約を交わしていた。彼女の念と刀の力が共鳴し、通常の武器では太刀打ちできない淫魔に対抗する力を授けてくれる。法子は刀の鞘に手を当て、その存在を確かめるように優しく撫でた。

「今日もよろしく」

そう呟くと、わずかに刀から温かい波動が返ってくるのを感じた。刀との絆は深く、一度結ばれれば生涯続く。だからこそ、紅薙姫は刀と結婚した後、他の男性と肉体関係を持つことは許されない。刀の嫉妬が霊力を失わせるからだ。

法子はそれを厭わなかった。むしろ、己の使命を全うするためには相応しい道だと信じていた。


三時間後、模擬訓練が始まった。

法子は念装甲膜に身を包んでいた。極薄の特殊な生地が全身にぴったりと密着し、鍛え上げられた身体のラインを浮き彫りにしていた。特に腰から胸にかけてのくびれと膨らみは、他の退魔師たちにも引けを取らない美しさだった。

聖銀製のプロテクターを装着し、鞘を腰に固定する。巨乳ゆえに胸当てが合わず、他の紅薙姫たちよりも胸元の保護が薄いのは不安だったが、法子は顔色ひとつ変えなかった。

「念装甲膜展開」

法子の言葉とともに、彼女の体を包む薄い膜が淡い青色に輝き始めた。これが淫魔の媚液から身を守る唯一の防具だ。

「模擬戦開始!」

合図と同時に、三体の訓練用人形が動き出した。これらは淫魔の動きを模して作られた特殊な訓練装置で、実際の戦闘さながらの動きを見せる。

最初の人形が法子に向かって触手のような腕を伸ばしてきた。法子は身を低くし、鬼貫正国を抜刀した。刀と念が共鳴し、刃が青白い光を放つ。

「断ち切れ!」

法子の刀が風を切り、触手を両断する。しかし切断された触手はすぐに再生し、さらに多くの触手となって法子に襲いかかる。

法子は跳躍し、空中で身体を回転させながら次々と触手を切り払った。念装甲膜が彼女の動きに合わせて光を放ち、身体を守る。

訓練官の鋭い目が法子の動きを追う。

「もっと念を刀に集中させろ!鬼貫正国の力を引き出せ!」

その言葉に応え、法子は一瞬刀に意識を集中させた。刀婚によって結ばれた鬼貫正国が共鳴し、刀身がさらに強く輝く。

「はぁぁっ!」

鏡像突きの型で前に踏み込み、人形の胴体を貫いた。斬撃に念が乗り、人形の中心部にあるコアを破壊する。一体が動きを止めた。

しかし残り二体が同時に攻撃してくる。法子は身を翻し、一体の攻撃をかわしながらもう一体に斬りかかった。迷いのない動きで、次々と繰り出される攻撃をいなしていく。

「跳躍のかたちで落下し、刀を横薙ぎに!」

訓練官の指示に従い、法子は高く跳び上がった。赤い鉢巻をたなびかせながら、上空から二体目の人形に斬りかかる。全身を包む念装甲膜が風に撫でられて輝き、曲線美を際立たせている。

「はぁっ!」

横薙ぎの一撃で、二体目の人形の首を飛ばした。着地と同時に体勢を整え、最後の人形に向き直る。

最後の人形は突然、姿を変えた。それは上級淫魔の姿——マーカス・アンフロラに似た姿だった。

法子の瞳が一瞬揺らいだ。過去のトラウマが脳裏をよぎる。

「集中しろ、九条院!」

訓練官の声が響く。法子は歯を食いしばり、恐怖を押し殺した。

「私は…負けない!」

法子は刀に念を集中させ、正面から人形に突進した。人形の触手が法子の念装甲膜に触れ、薄い膜が溶け始める。しかし法子は動じなかった。

「念炎の鎧!」

退魔師として鍛え上げた念が火のように燃え上がり、触手を焼き払う。法子は腰を沈め、鬼貫正国を逆手に変えて斬りかかった。

CQBレンジに入り、鬼貫正国を振り上げる。人形の腕が千切れ、紫色の模擬体液が飛び散る。法子は一瞬の隙を見逃さず、肩当にありったけの勢いを乗せ、ベタの左足を踏んばった。股当のバンドが食い込み、引き締まった太ももの筋肉が浮き上がる。

「はぁぁっ!」

渾身の一撃が人形の中心を貫き、最後のコアも破壊された。

「終了!」

訓練官の声と共に、人形たちは完全に動きを止めた。法子は深く息を吐き、鬼貫正国を鞘に収めた。

「九条院、今日の成績は上々だ」

訓練官の評価に、法子は一礼した。しかし、彼女の中での評価は違っていた。

「マーカスの姿を見た瞬間、私は躊躇いました。まだ…克服できていません」

その正直な自己評価に、訓練官は静かに頷いた。

「過去のトラウマを乗り越えるのは一朝一夕ではない。しかし、それでも立ち向かう勇気を持っていることが重要だ」

法子は黙って頷いた。彼女はまだマーカスによる開発の記憶と戦い続けていた。それでも、退魔師としての使命を全うするため、日々鍛錬を続けていた。


訓練場を出る際、廊下で偶然、彼女が崇拝する先輩、鷹城八雲とすれ違った。

「お疲れ、法子」

八雲は優しく微笑む。淫魔マーカス・アンフロラから法子を救った英雄的存在だ。

「八雲先輩…!今日も訓練に励んでおられるのですね」

「ああ。法子も頑張ってるな」

八雲の言葉に、法子の頬が僅かに赤くなる。法子にとって鷹城八雲は、ただの先輩ではなかった。マーカスの調教から自分を救い出してくれた恩人であり、同じような体験を持ちながらも強く生きる姿に、崇拝に近い念を抱いていた。

「先輩のようになれるよう、日々精進します」

八雲は法子の肩を優しく叩いた。「焦らないで。あなたならきっとすぐに追いつくわ」

その言葉が法子の胸に温かく響いた。

■シャワールームにて

淡い湯気が立ち込めるシャワールーム。法子は念装甲膜を丁寧に脱ぎ、聖銀製のプロテクターを外していった。鏡に映る自分の姿に、一瞬だけ視線を落とす。

162センチの整った肢体。引き締まった腹部と腰回りは、退魔師としての日々の鍛錬の賜物だった。念装甲膜が密着していた肌には、まだ淡い赤みが残っている。しかし、その引き締まった身体に添うような曲線は、決して無骨なものではなかった。むしろ女性らしい柔らかな官能を際立たせていた。

法子はシャワーのハンドルを回し、温かい湯が降り注ぐ中に身を置いた。水滴が黒いおかっぱ髪を伝い、なめらかな首筋を流れ落ちていく。肩を緩め、深い息を吐き出すと、緊張していた筋肉がほどけていくのを感じた。

「はぁ…」

小さく漏れた吐息と共に、訓練の疲れが洗い流されていく。法子は丁寧に体を洗い始めた。健康的な白い肌が滑らかで、水滴が輝くように光を反射している。

シャワージェルを手に取り、まず肩から腕へと丁寧に泡立てていく。次に腹部、引き締まった太もも、そして最後に…

「む…」

両手がためらいがちに胸元へと移動する。豊満なEカップの胸は、彼女の引き締まった体とは対照的な豊かさを持っていた。手のひらに余るほどの量感が、その手に重みを伝えてくる。

法子は眉間にわずかな皺を寄せながら、両手で慎重に胸を支え、泡で優しく包み込むように洗っていく。水の流れに身を任せながら、彼女の指先が敏感な部分に触れる度に、小さな電流が走るような感覚がある。

「…っ」

小さく息を飲む。陥没した乳首は、淫魔マーカスによって一日中開発され、異常なほど敏感になっていた。シャワージェルの滑らかな感触と水流の刺激で、その感覚が呼び覚まされる。

法子の表情が微かに翳る。あの日の記憶──マーカスに捕まり、巨乳だけを延々と弄ばれた屈辱と快感。逃れられない状況で、体が勝手に反応してしまった恥辱。そして翌日、下半身まで犯されそうになったところを鷹城八雲に救われた出来事。

「忘れないで…」

鏡に映る自分の姿を見つめながら、法子は静かに呟いた。あの屈辱を忘れず、いつか自らの手で決着をつける。その決意が、日々の鍛錬の原動力となっていた。

法子は念入りに体を洗い終え、シャワーを止めた。湯気の立ち込める中、水滴を拭い取りながら鏡に向き合う。

Eカップの胸はわずかに下向き加減だが、若さゆえの弾力は健在だった。平均の2倍の大きさの乳暈は、僅かに濃いピンク色をしている。まだ水気を含んだ肌は、シルクのような質感で光を帯びていた。

「これが…私」

法子は自分の肉体を見つめ直す。中学、高校時代からのコンプレックスでもあり、同時に淫魔に狙われる要因ともなった豊満な胸。しかし今は、それすらも己の武器として受け入れようとしていた。

青いタオルで体を拭き、手早く下着を身につける。実用的な青色のブラジャーは華美な装飾もなく、ただ機能的に豊満な胸を支えるためだけに存在していた。堅牢なドイツ製フルカップブラは、普段の激しい動きでも胸が暴れないよう設計されている。

「さて…」

身支度を整えながら、法子は明日の任務に思いを馳せた。特殊任務の指示書が届いていたが、詳細はまだ知らされていない。ただ、いつもと違う種類の任務であることだけは感じていた。

「何があっても、私は紅薙姫として使命を全うする」

そう心に誓い、法子はシャワールームを後にした。

■特殊任務前夜

夕食を終えた法子は、自室のデスクに向かっていた。明日の特殊任務に備え、これまでの資料を整理している。物静かな部屋に、ペンで紙をなぞる音だけが響いていた。

法子は一瞬手を止め、髪に差した紺色のカチューシャを直した。制服から私服に着替えるときに、いつものように前髪を抑えるためにつけたものだ。黒いおかっぱ髪に紺色のカチューシャという組み合わせは、日本人形を思わせる清楚な印象を与えていた。

「淫魔に関する情報はこれだけか…」

机に広げられた資料には、過去の淫魔退治の記録が綴られている。法子は黒縁の眼鏡を上げ、資料を丁寧に読み込んでいった。これが彼女のやり方だった。常に準備を怠らず、あらゆる状況に対応できるよう、情報を整理する。この几帳面さは、学生時代から変わらなかった。

鬼貫正国が壁に掛けられた姿が、月明かりに照らされて静かに光を放っている。法子は時折、その刀に視線を向け、絆を確かめるかのように微笑んだ。

「明日も力を貸してくれるよね」

そう呟いた法子の脳裏に、唐突にマーカス・アンフロラとの戦いの記憶が蘇った。あの日、巨乳ゆえに淫魔の標的となり、一日中胸だけを執拗に弄ばれた屈辱。捕まった次の日、下半身も犯されそうになった瞬間…そして、八雲先輩に救われた時の安堵と感謝。

「くっ…」

法子は眉間に皺を寄せ、胸元に手を置いた。思い出すだけで、陥没した乳首がうずく。淫魔に調教された影響で、今でも胸だけでイけるほど開発されてしまったのだ。

彼女は深く息を吐き、立ち上がった。窓際に歩み寄り、夜空を見上げる。神器省の敷地は静謐な月明かりに包まれていた。

「忘れない…あの屈辱も、この体も…全て受け入れて、前に進むしかない」

法子にとって、淫魔との対峙は単なる任務を超えた、個人的な復讐でもあった。しかし同時に、女性を守るという紅薙姫としての使命も深く心に刻まれている。両方の思いが、彼女を強く、そして時に脆くしていた。

物思いに耽っていた法子の耳に、突然、携帯電話の着信音が響いた。画面には「鷹城八雲」の名前が表示されている。

「八雲先輩…?」

法子は少し驚きながらも、すぐに電話に出た。

「法子。明日の特殊任務のことだけど、少し話がある」

八雲の声は穏やかだったが、どこか緊張感を孕んでいた。

「はい、何でしょうか?」

「明日、神器省から特殊任務の説明があると思うけど…その内容にはびっくりするかもしれない」

法子は眉を寄せた。「どういう意味でしょうか?」

「詳しくは明日聞くことになるだろうけど…その任務、私も関わることになってる」

八雲のその言葉に、法子の心は不思議な高揚感に包まれた。尊敬する先輩と共に任務に就けるという期待と、八雲が関わるということは並の任務ではないという緊張感が入り混じる。

「そうなんですか!ぜひとも先輩のお力になりたいです」

「ありがとう。でも…内容を聞いたら、断りたくなるかもしれない」

法子の表情が引き締まる。

「どんな内容でも、紅薙姫としての使命を果たします」

「…そう。じゃあ、明日会おう」

電話が切れた後も、法子の頭には疑問が残った。どんな特殊任務なのか?なぜ八雲先輩が関わっているのか?そして、なぜ断りたくなるような内容なのか?

「明日になれば分かる…今は準備あるのみ」

法子は再び資料に目を通し始めた。どんな状況でも最善を尽くすこと。それが彼女の信条だった。

夜が更けていく中、法子の心の奥では、不安と期待が入り混じっていた。知らないうちに、彼女の人生を大きく変える転機が近づいていることに、まだ気づいてはいなかった。


翌朝、目覚めた法子は、いつもより念入りに準備をした。

制服を丁寧に整え、黒いおかっぱ髪を慎重にとかす。眼鏡を掛け、最後に鬼貫正国を腰に添える。鏡に映る自分の姿勢は、いつもと変わらず凛としていた。

「行きましょう」

部屋を出る法子の胸には、未知の任務への覚悟が秘められていた。

神器省の廊下を歩きながら、彼女は昨夜の八雲先輩との会話を思い返していた。断りたくなるような任務とは何か?しかし、どんな任務でも、紅薙姫として全うする覚悟は決まっていた。

法子が会議室の前に立った時、扉の向こうから声が聞こえた。深呼吸をして、彼女はノックをした。

「どうぞ」

扉を開けると、そこには見知らぬ男性がいた。

「九条院法子です。特殊任務の件でお呼びいただきました」

法子は背筋を伸ばし、男性に一礼した。

「ああ、来てくれたか。座ってくれ」

男性は穏やかな笑みを浮かべ、法子を椅子に案内した。

「私は特殊プロジェクトを担当している者だ。今日は、ある依頼について話したい」

法子は静かに頷き、男性の話に耳を傾けた。しかし、その話を聞くにつれ、彼女の表情は次第に厳しさを増していった。

「断固お断りします!」

特殊任務の説明を受けた瞬間から、法子の表情は強い拒否を示していた。紅薙姫として、女性を守る立場の彼女には、とても受け入れられない内容だったのだ。

■契約

「九条院さん、これは神器省からの重要な依頼なんです」

担当官の説得に、法子は毅然とした態度で首を横に振る。巨乳を押さえつけるように腕を胸の前で組み、防御的な姿勢を取っていた。

「私は紅薙姫として、女性を守る立場です。そのような…非常識な任務は受けられません」

上半身を淫魔に開発された経験から、男性への不信感は強まるばかり。中学、高校時代からの嫌な経験も重なり、その態度は一層頑なになっていた。

そんな彼女を見つめる視線があった。プロジェクトリーダー。背の高い、知的な雰囲気の男性は、法子の強い拒絶にも穏やかな微笑みを絶やさない。

 (これはなかなか難しい…)

ナイトメアは内心で舌打ちをした。通常の催眠では効果が薄い。まして性経験のない彼女を籠絡するには、かなりの時間と労力が必要になるだろう。

海外で顕現した珍しい種類の淫魔であるナイトメアは、驚異的な擬態能力を持ち、昼間でも活動できる特異な存在だった。今回は「プロジェクト担当官」という役割を演じている。直接戦闘能力は低く、法子と正面から戦えば敵うはずもないが、変化の力と催眠能力を持つ彼にとって、これは別の種類の戦いだった。

しかし、それは彼にとって、より興味深い挑戦でもあった。

(まぁこっちには切り札がある)

「そうですか残念です。ただこちらの方の話を聞いてからでも遅くはないのでは・・・」

一人の女性が静かに部屋に入ってきた。

「お久しぶりだな、法子」

「八雲先輩…!」

法子の表情が一瞬で和らぐ。鷹城八雲—かつて上級淫魔から法子を救った、最も信頼する先輩だった。

法子の態度の変化を見て、プロジェクト担当官・・・に擬態したナイトメアは部屋を出る。彼は「マクマ」という名を使うこともあれば、「大和」と名乗ることもある。獲物によって、名前も容姿も変えてきた長い経験がある。

「このプロジェクト、私も承知している。」

八雲は優しく微笑みながら法子の傍らに座った。

「もし途中で気が進まなくなったら、いつでも辞めていいんだぞ」

「でも、先輩…」

「見聞を広めることは、悪いことじゃない。経験は必ず力になる」

八雲の言葉に、法子は僅かに唇を噛んだ。巨乳を淫魔に開発された屈辱的な記憶が蘇る。しかし、その時自分を救ってくれ、同じような淫魔の調教を受けた八雲の言葉には重みがあった。

「…分かりました」

法子は深く息を吐き、ようやく重い口を開いた。

「ただし、私の意思が最優先されること。そして、いつでもプロジェクトから離脱できる—この2点が絶対条件です」

■八雲と法子

「はじめまして、九条院法子です。そして—性的な行為は絶対にお断りします」

会議室で交わされた最初の挨拶。

しかし鈴木八雲は穏やかな笑みを浮かべたまま、丁寧に答えた。185センチの長身と整った容姿は、25歳という年齢に相応しい落ち着きを感じさせた。

「わかってる。九条院さんの意思は必ず尊重するよ」

「…八雲、ですか」

法子は眉を寄せた。尊敬する鷹城先輩と同じ名を持つこの男性、鈴木八雲になぜか不快感が募る。自分よりもずっと背が高く、年も3つほど上。

どうしてこの男性が自分のパートナーに選ばれたのかわからない。

整った容姿を持つ彼を前に、法子は無意識に防衛的な態度を取っていた。

しかし、そんな無礼な態度にも八雲は終始紳士的に接した。実際のところ、この「鈴木八雲」は海外で顕現した淫魔ナイトメアの姿のひとつに過ぎなかった。彼は恋人が今までいなかった法子に対し、リードできる男性として接することを選んでいた。

それから1ヶ月—。法子は意識的に分厚いジーンズと厚手のセーターを身につけ、二人で過ごす時間を重ねていく。プロジェクトという名目でのデートは、常に人目につく場所で、決して夜遅くにならない約束で行われた。

「今日は美術館はいかがですか?」 「図書館で資料を調べましょう」 「この喫茶店は静かでいいですね」

八雲の提案は、いつも法子が警戒を解かなくても良い、安全な場所ばかり。その優しさに、法子は少しずつ、だが確実に心を開いていっていた。

どんな男も最初は紳士的なフリをして、結局は胸を見てくる—。法子にとってそれは経験則だった。

しかし鈴木八雲は違った。

映画館で隣に座っても、決して触れることはない。乗馬やカヌーで体を動かしても、余計な接触を避ける。射的のバーでは、法子の腕前を純粋に褒めた。

「九条院さんはどう思う?」

そう言って、八雲は常に法子の考えを尊重した。新作映画の感想、本の解釈、時には社会問題まで—。彼は決して法子の体型に目を向けず、その言葉に耳を傾けた。

ナイトメアの特殊能力である催眠の声は、相手との信頼関係が築かれないと効果が薄い。だからこそ、時間をかけて法子の心を開いていく必要があった。彼の計画は既に順調に進んでいた。

「泊まれる本があるんだ。行かないか?」

その提案に、法子は少し考えてから頷いた。もちろん、別々の個室。その配慮も、彼なら当然のように示してくれる。

テーマパークでは、法子が子供の頃から好きだったというキャラクターの前で、嬉しそうに写真を撮った。

「九条院さんの笑顔、素敵ですね」

その言葉に、法子は思わず赤面する。今まで誰にも見せなかった、少女のような表情を見せてしまっていた。

(この人は…本当に私の中身を見てくれているのかもしれない)

そう思い始めた頃、法子の心の壁は、知らず知らずのうちに崩れ始めていた。ナイトメアは内心で満足げに微笑んだ。信頼関係が深まれば、夢に侵入することも可能になる。そして最終的には子宮に烙印を刻み、完全な支配を実現するはずだった。

「本当の私を見てほしい」

紺のカチューシャで前髪を押さえながら、法子は心の中でつぶやいた。外見と内面を完全に切り離して考えることは、彼女にとって長年の習慣だった。

「鈴木さんは違いますね」

ある日、カフェでコーヒーを前に、法子は素直にそう口にした。黒縁メガネの奥で、瞳が少し潤んでいる。

「私の考えや意見を、こんなに真剣に聞いてくれる人は初めてです」

八雲は優しく微笑んで頷いた。その反応に、法子の心はさらに開いていく。

(やはり性欲だけの男ばかりじゃない)

次第に法子は、八雲との時間を心待ちにするようになっていた。ただし、「鈴木さん」という呼び方は変わらない。尊敬する鷹城先輩と同じ「八雲」という名を呼ぶことは、どこか気恥ずかしく感じられた。

法子は気付いていなかった。八雲の優しさが、少しずつ彼女の心に染み込み、催眠を受け入れやすい状態に導いていることに—。

バーの扉を開けた瞬間、法子は息を呑んだ。天井まで届きそうな巨大なシャンデリア、アンティークと思われる家具の数々、グラスの輝きさえ違って見える。

紺のカチューシャに白のブラウス、ネイビーのスカート—。突然、自分の服装が気になり始めた。周囲の女性たちは皆、優雅でハイセンスな装いをしている。

「お飲み物は…」

バーテンダーが差し出すドリンクリストに、見慣れない外国語が並ぶ。どれを選べばいいのか、全くわからない。

(ここにいちゃいけない場所に来てしまった)

高価そうな調度品が並ぶ棚。煌びやかなお酒の瓶。そして周囲の視線—。全てが法子を責めているように感じられた。

そんな彼女の耳元に、八雲の声が優しく響く。

「大丈夫。俺が手配するから」

その囁きに、法子は思わず八雲の袖を掴んでいた。この非日常的な空間で、頼れるのは彼だけ—。そう感じた瞬間、八雲の微かな笑みに気付くことはなかった。

「何がお好みでしょうか?」

壁一面に並ぶ酒瓶とグラスの数々。その量は圧巻で、選ぶことすら躊躇われた。

「鈴木さんと…同じものを」

八雲が選んだのは琥珀色の液体。グラスを傾けると、今まで味わったことのない芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。

「美味しい…」

「ええ。ただし度数が高いので、気をつけて」

その言葉は聞こえていたはずなのに、グラスを重ねてしまう。八雲との会話が心地よく、時間が過ぎるのを忘れるほど。

(もう一杯だけ…)

その考えが自然と湧いてくるのは、八雲の密やかな催眠の効果だと気付かないまま。

■ホテル セレスティア・カーディナル1406号室にて①

「あれ・・・.天井が、揺れてる…」

ぷかぷかと身体が浮くような感覚。気が付けば、高級ホテルのエレベーターの中。

(やめなきゃ…でも、一度了承したことだから…)

朦朧とする意識の中で、法子はそう思い込んでいた。

八雲の腕が優しく、しかし確実に彼女の肩を支えている。

「肩が凝っているんですね」

バーでの会話で、法子は戦闘での疲労を漏らしていた。

「実は、マッサージが得意なんです」

その言葉に、酔いも手伝って「お願いします」と答えてしまう。

カチッ—。

扉の閉まる音が、異様に大きく響いた。

(何してるの、私…)

一瞬、冷静さが戻りかける。しかし、すぐに安心感が押し寄せてくる。

(そうよ。最初に約束してくれたもの。性的な行為は絶対にしないって)

「服が皺になるから。このタオルを…」

八雲が差し出したふわふわのバスタオルを受け取る。

「私、向こうで着替えますね」

バスルームに向かう法子の背中を、八雲は静かに見送った。タオルには特殊な加工が施されており、肌に直接触れなくても催眠を維持できるよう準備されていた。

タオルを介した八雲の指先が、法子の背中を優しく押していく。仰向けになった法子の豊満な胸は、タオルの下で微かに揺れていた。

「凝っていますね…」

軽く力を込めると、戦士としての鍛え上げられた筋肉と、女性特有の柔らかさが同居している感触が返ってきた。八雲の瞳が一瞬、獲物を見る捕食者のような輝きを放つ。

巨乳のせいで背中の筋肉は普段から疲労が溜まりやすく、その部分を的確にほぐされると、思わず声が漏れる。

「気持ちいいです…」

実際、戦闘訓練と実戦で酷使した筋肉がほぐれていくのを感じていた。しかし同時に、陥没した乳首が微かに疼きはじめているのを感じる。普段なら気にならない感覚が、どうしてか強く意識されてしまう。

部屋の隅では、アロマディフューザーから甘い花の香りが立ち込めている。しかしその香りには、八雲が密かに仕込んだ別の成分が混ざっていた。粘液を極限まで薄め、アロマオイルに溶かし込んだそれは、超音波と共に部屋中に拡散していく。

(これで少しずつ…)

八雲は内心で微笑んだ。その香りは極めて弱い媚薬として、法子の身体を徐々に、しかし確実に熱くしていくはずだった。

それから数週間が過ぎ、八雲は意図的にスキンシップの機会を増やしていった。

「あの…」

映画館で手が触れ合った時、法子は身を引こうとする。しかし八雲の「怖かったシーンだから」という言葉に、何故か納得してしまう。

テーマパークのアトラクションで、安全のためと肩を支えられた時も違和感を感じた。だが「規則ですから」という説明に、規則を重んじる法子は従ってしまう。

(これは任務だから…でも…)

カヌーを漕ぐ時の背中への接触。全て計算された触れ合いだった。

「法子、今日もマッサージしてあげます」

ホテルでのマッサージも定期的になっていた。バスタオルが徐々に小さくなることに気付いても、「より効果的なマッサージのため」という理由に、疑問を感じながらも従ってしまう。

「気持ちよくて…でも…」

アロマの甘い香りに包まれ、八雲の言葉を聞くと、全てが正しいことのように思えてくる。時折湧き上がる違和感も、彼の穏やかな声で溶けていく。

男性との接触を極端に嫌がっていた法子の中で、警戒心と心地よさが混在していた。しかし八雲の手の温もりを自然に受け入れるようになっていることに、彼女自身は気付いていなかった。

バスタオルが外れた法子の肌が、柔らかな照明に照らされる。着けているのは実用的な青のブラジャーとショーツだけ。装飾も刺繍もない簡素なデザインだが、むしろそれが法子の清楚な雰囲気を引き立てていた。

身長162センチの整った体型。退魔師としての鍛錬で引き締まった腹部と腰回り。しかしその引き締まった身体は、決して無骨ではない。むしろ柔らかな女性らしい曲線を際立たせていた。

(見られちゃ…いけないのに…)

法子は思わず腕で胸元を隠そうとする。しかしその動きが、かえってEカップの豊満さを強調してしまう。シンプルな青のブラジャーは、本来なら清楚な印象のはずが、内に秘めた豊かさゆえに官能的な存在に変貌していた。布地が整えようとする程、むしろ柔らかな膨らみは主張を強め、陥没乳首の存在すら布地の起伏として浮かび上がる。

(でも…これは任務…だから…)

八雲に似た黒髪と白い肌。しかし八雲の小柄な体型とは対照的に、法子の身体は豊満で魅力的だった。真面目な性格からくる緊張感が、かえって官能的な雰囲気を醸し出している。

(なんて素晴らしい…)

八雲は内心で舌なめずりをした。ずっと厚手の服で隠されていた法子の肉体は、想像以上の逸材だった。

「目を閉じて…マッサージの効果が上がるから」

柔らかなタオルで目隠しされた法子は、八雲を強く信頼しているからこそ、この状況を受け入れていた。しかし、わずかな不安も残っている。

「大丈夫です。俺を信じて」

八雲の声が優しく耳元で囁く。目が見えない分、他の感覚が研ぎ澄まされ、アロマの甘い香りがより強く感じられた。

(これは任務…任務なのよ)

法子は自分に言い聞かせる。マーカスとの過去。学生時代からのコンプレックス。そんな経験を持つ彼女が、男性に触れられることを許すのは、絶大な信頼がなければ不可能だった。

八雲はそれを知っていた。だからこそ慎重に、ゆっくりと…。

「リラックスして…」

しかし八雲は、まだ気を緩めてはいけないと心に留めていた。一歩間違えば、ここまで築いた信頼関係が崩れかねない—。

「ん…あ…待って…」

突然の快感の波に、法子は抵抗しようとする。目隠しされた顔が横を向き、八雲の手から逃れようとする動きを見せた。

(これは…おかしい…普通のマッサージじゃ…)

しかし耳元で囁かれる八雲の声が、その不安を溶かしていく。

「大丈夫ですよ。下着の上からですから」

その言葉に、どこか納得してしまいそうになる。理性は警告を発しているのに、体は素直に快感を受け入れてしまう。

「でも…こんなに…」

震える声で抗議しようとする法子だったが、八雲の「マッサージの効果ですよ」という言葉に、また一つ疑問が霧消していく。

陥没乳首は布地の向こうで主張を強め、背中は弓なりに反ってしまう。

(任務…これは任務…なのに…)

快感と疑問が交錯する中、法子の意識は徐々に蕩けていった。

「はぅっ…!」

予期せぬ刺激に、法子の身体が跳ねる。八雲の指が布地の上から一瞬だけ敏感な箇所を掠めた。偶然なのか故意なのか、目隠しされた法子には判断できない。

(今の…わざと…?)

考える間もなく、マッサージという名の愛撫が続く。今までで最も大きな刺激に、法子は必死に唇を噛んで声を抑えようとする。

「んん…」

歯を食いしばっても、微かな艶めいた吐息が漏れてしまう。陥没乳首は布地の向こうで硬くなり、さらなる刺激を求めてしまう。

(こんな声…出しちゃダメ…)

しかし体は正直に反応し、意思とは裏腹に快感を受け入れていく。

下着の上からの優しい刺激が続く。八雲は慎重に、催眠が解けないよう細心の注意を払いながら、布地越しに愛撫を続けた。

「んぅ…はぁ…」

快感に震える法子の吐息が甘く変化していく。しかし八雲は一線を越えることはしない。今日はここまでと決めていた。

(まだ…時期が早い)

布地を隔てた接触だけで、これほどの反応を示す法子の姿に満足しながら、八雲は徐々にマッサージの強さを弱めていく。

「今日はここまでにしましょうか」

「は…はい…」

タオルで目隠しされたまま、法子は荒い息を整えようとしていた。その胸の高鳴りは、快感によるものか緊張によるものか、もはや彼女自身にも区別がつかない。

今日「裸は…絶対に無理です」

法子は強く首を振る。しかし、八雲に後ろから優しく抱きしめられ、耳元で囁かれる。

「大丈夫。あなたを傷つけるようなことは、絶対にしません」

温かい声に、これまでの信頼関係が重なり、法子の心が揺らぐ。

(本当に…いいの?)

シャワールームに向かいながら、かつての陰口が蘇る。

「乳女帝」「ロケット委員長」「メガネ牝牛」…中学、高校と付きまとった嘲笑の声。豊満な胸を揶揄され、成績の良さまで「胸で誘惑した」と陰口を叩かれた日々。

バスローブに手をかけながら、法子は深く息を吐いた。過去のトラウマと、八雲への信頼が心の中で交錯する。

シャワーの音が静かに響く中、彼女の決断の時が近づいていた。

の調教を終えた八雲は、満足げな笑みを浮かべていた。

「こ、こちらを見ないでください…」

そう言って法子はベッドにうつ伏せになる。普段の知的な印象を与える眼鏡も外されていた。

日本人形を思わせる黒いおかっぱ髪が、整然と肩口に流れ落ちる。その下には退魔師としての鍛錬で磨き上げられた美しい筋肉が浮かび上がる。姿勢の良さは、うつ伏せの状態でも失われることはない。

しかし、その引き締まった背中とは対照的に、豊満な胸はベッドに押しつぶされ、抑えきれないほどの柔らかさで横へと広がっていた。腰の柔らかなカーブは、普段の真面目な性格からは想像もつかない官能的な曲線を描いている。

柔軟性を感じさせる身体の仕草に、八雲は思わず息を呑んだ。日頃の厳しい訓練が生み出した、無駄のない筋肉と女性らしい柔らかさが共存する体は、まさに最高の獲物だった。

「では、始めさせていただきます」

八雲の声に、法子の白い背中が僅かに震えた。

八雲の手のひらから、アロマオイルが法子の背中へと滴り落ちる。触手の粘液を混ぜ込んだそれは、通常のオイルよりも粘性が高く、肌の上でゆっくりと広がっていく。

「あ…」

いつもと違う感触に、法子は小さく声を漏らす。オイルのおかげで、八雲の指が驚くほど滑らかに動く。

(こんなに…気持ちいい…)

しかしその気持ちよさは、純粋なマッサージの域を越えていた。背中を這う指が、どこか色っぽい快感を呼び起こしていく。

「気持ちよさそうですね」

八雲の言葉に、法子の背筋がビクつく。

(でも…)

大きな不安と共に、どこか期待めいた感情が胸の奥で蠢く。真面目な性格ゆえに、その微かな期待に気付くことすら恥ずかしかった。

アロマオイルは、滑らかな流れで背中から下へと伝っていく。八雲の手が丁寧にそれを馴染ませていった。

「ん…あ…」

小振りながら形の整った曲線に、八雲は思わず見惚れる。退魔師として鍛え上げられた肉体は、そこにも表れていた。しかしそれは決して無骨ではなく、むしろ芸術品のような美しさを持っていた。

八雲の指が円を描くように、ゆっくりと愛撫するようにオイルを馴染ませていく。その度に法子の身体が小さく跳ねる。

「はぁ…ん…」

快感に震える吐息が漏れ出し、法子は慌てて顔を枕に埋めた。

(こんな風に…触られるなんて…)

理性では「これはマッサージ」と言い聞かせているのに、身体は素直に反応してしまう。八雲の指が滑るたび、背筋が甘く疼いていく。

(だめ…こんなに…感じちゃ…)

疑問と期待が入り混じる中、法子の意識は徐々に蕩けていった。

視界が塞がれた分、法子の肌は一層敏感になっていた。八雲の指がどこに触れるのか、予測できない緊張感に身体が強張る。

「力を抜いて…」

囁きかけるような声。

オイルに混ぜられた媚薬が徐々に肌から染み込み、理性を溶かしていく。

「はぁ…」

背中を這う指が、ゆっくりと円を描くように動く。マッサージのはずなのに、どこか色めいた感覚が全身を巡っていく。

(おかしい…こんなに…)

普段の真面目な精神が抵抗しようとするも、媚薬入りのオイルは着実に法子の感覚を狂わせていく。背筋を這う指の動きに、小さな吐息が漏れる。

「気持ちが良いようだな」

八雲の言葉に、法子は恥ずかしさで顔を真っ赤に染めた。

「あ…! だ、ダメです…!」

横からはみ出た胸に八雲の指が触れた瞬間、法子の声が強い拒否を示す。

「そこは…許可してません…!」

しかし、起き上がって抗議すれば全てが露わになってしまう。うつ伏せの姿勢のまま、声だけで必死に抵抗する。

「マッサージの効果を最大限に…」

八雲の声は相変わらず穏やかだった。そして指の動きは止まらない。オイルを馴染ませるような動きで、横からはみ出た柔らかな膨らみを愛撫していく。

「や…やめて…ください…」

怒りと羞恥で震える声。しかし、その声には既に媚薬の効果なのか、微かな艶が混じっていた。

(こんなの…おかしい…)

理性で拒絶しようとする心と、快感に溺れそうになる身体の狭間で、法子の意識が揺れていく。

「え…?」

いつもなら法子の意思を尊重する八雲。しかし今日は違った。突然、背中に重みを感じる。八雲が法子の上に覆い被さってきたのだ。

「やめ…て…」

オイルで濡れた指が、うつ伏せの体勢で押しつぶされた胸の隙間に忍び込んでくる。

「鈴木さん…お願い…」

必死の声に、これまでの信頼関係が崩れていく音が重なる。しかし八雲の動きは止まらない。

(どうして…こんな…)

混乱と戸惑いの中、法子の意識が揺らめく。媚薬の効果で、拒絶の言葉とは裏腹に、体は熱く疼いていた。

「はぁっ…んっ…!」

八雲の10本の指が、オイルまみれの柔らかな膨らみを捉える。今まで焦らし続けられた身体は、その刺激に激しく反応した。指先は円を描くように、時には揉みしだくように動き、乳房全体を貪るように愛撫していく。

「や…だめ…」

しかし言葉とは裏腹に、法子の声は艶めいていく。今までの優しい愛撫で敏感になった肌が、指先の動きに震えていた。

八雲の手のひらには、押しつぶされた豊満な胸の感触が伝わってくる。柔らかすぎて形を留めないほどの触感、そして若さゆえの弾力と張り。指に余るほどの量感に、彼も息を呑む。

「こんな…あっ…」

拒絶の言葉を紡ごうとする法子だったが、快感の波に押し流されそうになる。

長時間の焦らしと媚薬の効果で、理性が急速に溶けていくのを感じていた。

押し寄せる快感に、法子はベッドの端を必死で掴む。指先が白くなるほどシーツを握りしめ、体を震わせている。

(こんなの…嘘…)

男性に触れられるのさえ拒んできた自分が、こんなにも感じてしまうなんて。罪悪感と快感が混ざり合い、意識が蕩けていく。

八雲は法子の反応を愉しむように、さらに執拗に愛撫を続ける。今までの忍耐が報われる瞬間だった。

(ようやくここまで来た…)

デートを重ね、マッサージを装い、ひたすら彼女の信頼を得るために演じてきた優しい男性像。それらは全て、この瞬間のための布石だった。

快感に身をよじる法子の姿に、八雲は密かな優越感を覚える。男性不信の彼女を、ここまで従順にさせた自分の手腕に、満足げな笑みが浮かぶ。

薬の効果で、理性が急速に溶けていくのを感じていた。

八雲の指が胸の中心部へと移動する。陥没した敏感な場所を、中指でゆっくりと円を描くように愛撫していく。

「あぁっ…! んっ…!」

今までの控えめな吐息とは違う、明らかな艶声が漏れる。両足を突っ張らせ、背中を反らすように反応する法子。

「やめ…て…こんな…」

歯を食いしばって声を抑えようとするが、八雲の中指が「おいで」と手招きするような動きを繰り返し、陥没した中身をほじるような動きに、意識が真っ白になりそうになる。

(こんなの…ダメ…)

快感と羞恥で全身が震える中、法子の理性は急速に崩れていった。

「やめて…! やめてください…!」

突然、法子の声が切迫したものに変わる。快感の中に恐怖が混ざり始めた。

かつてマーカスに開発された記憶が蘇る。あの日の屈辱と快感。巨乳を一日中嬲られ続けた悪夢のような体験が、鮮明に思い出されていく。

「嫌…! 嫌です…!」

必死で体を捩り、八雲から逃れようとする。しかし185センチの長身に覆い被さられた状態では、どうすることもできない。

(また…あの時みたいに…)

恐怖と快感が混ざり合う中、法子の意識は次第に混濁していく。理性で抵抗しようとする心と、快感に溺れそうになる身体の狭間で、苦しい闘いを続けていた。

「あ…やめ…」

必死の懇願も虚しく、八雲の指は止まらない。むしろ動きは激しさを増していく。中指で円を描くような動きから、くりくりと刺激する動きへ。時には優しく、時には強く責め立てるように。

「はぁっ…んっ…!」

陥没していた乳首が、快感に反応して徐々にその姿を現し始める。今まで内側に隠れていた敏感な突起が、八雲の指の動きに合わせるように膨らんでいく。

「こんな…あっ…出ちゃ…」

羞恥に顔を真っ赤に染める法子。しかし八雲の指使いは更に巧みさを増し、彼女の声は次第に甘く変化していった。

必死に抵抗しようとする意思とは裏腹に、身体は素直に反応してしまう。かつて淫魔に開発された快感が、再び目覚めていくのを感じていた。

「はぁ…ん…!」

隠れていた乳首が完全に顔を出す。ベッドシーツと法子の肉体に押しつぶされているせいで見れないが。

八雲の指先から感じるそのサイズ。

陥没していた時からは想像もできないほどの大きさで、八雲も思わず驚きを隠せない。

「こんなに大きかったなんて…」

その感想を耳元で聞き、耳たぶまで真っ赤になり法子。

(これからは引きこもり生活は終わりだ。毎日外に出してやるからな)

そのまま人差し指と親指でオイルを馴染ませるように、優しく摘むような動きを繰り返す。

「やっ…! だめ…!」

法子の声が甘く上ずる。今まで内に秘めていた快感が、一気に解放されたかのように全身が震える。

「や…もう…これ以上は…」

拒絶の言葉とは裏腹に、指の動きに合わせて背中が弓なりに反ってしまう。媚薬の効果も相まって、法子の意識は次第に蕩けていった。

八雲は繊細な指使いで、法子の反応を探っていく。指先でリズミカルな振動を与えると、今までにない反応が返ってくる。

「あっ…! んっ…!」

揉みしだくような愛撫よりも、微細な震えを伴う刺激に、法子の身体が敏感に反応する。特に先端を指先で軽くなぞると、堪えきれない声が漏れる。

(なるほど…)

八雲は内心で笑みを浮かべた。豊満で柔らかな胸。陥没から露わになった大きな突起。

退魔師・鷹城八雲よりは胸は弾力は弱いが、その分蕩けるような柔らかさは法子のほうに軍配が上がった。

(人間の身体は本当に面白い)

ナイトメアとしての本質が、この発見に歓喜を覚える。かつてマーカスに開発された痕跡を、彼は確実に感じ取っていた。

「もう…やめ…て…」

しかし法子の懇願も空しく、八雲の指は新たに見つけた弱点を、さらに責め立てていく。

「あっ…はぁっ…!」

ついに法子の身体が限界を迎える。背中が大きく反り、全身が痙攣するように震えた。

「んっ…!」

その瞬間、八雲は法子の顔を強引に後ろへ向かせ、唇を重ねる。

「…っ!」

突然の行為に、法子の目が怒りで燃える。両腕で胸を必死に隠しながら、がくがくと震える足で立ち上がる。

「こ、これは任務の範囲外です…! 絶対に許しません…!」

シャワールームへ向かう法子を、八雲が追いかける。

「待ってくれ…」

パシン!

振り向きざまの平手打ちが、八雲の頬を強打した。

「近寄らないで…!」

声を震わせながらも毅然とした態度で、法子はシャワールームへと消えていった。その背中からは、これまでにない強い怒りが感じられた。

八雲は頬に手を当てながら、今夜はここまでと判断した。

■ホテル セレスティア・カーディナル1406号室にて②

キスされた日から、法子は八雲の連絡を一切シャットアウトしていた。

(結局、男なんて…みんな同じ)

これまでの信頼関係が、一瞬で崩れ去ったように感じられた。しかし、執拗に鳴り続ける着信音に、ついに意を決して電話に出る。

「本当にすまなかった。あの時のことを、きちんと謝罪させてくれ」

謝罪の言葉に、法子は長い沈黙の後、重い口を開いた。

「…わかりました」

渋々ながらも、明日の約束を交わす。電話を切った後、また同じように体を触られる可能性が頭をよぎり、背筋に微かな電流が走る。

(これは…任務だから…)

そう自分に言い聞かせながら、法子は複雑な思いを抱えていた。

デートの始まりは気まずい雰囲気に包まれていた。しかし、高級レストランでディナーを共にするうちに、徐々に会話が弾み始める。

「その本、私も読みました」 「映画の考察、とても面白いですね」

知的な会話を重ねるうちに、法子の警戒心は少しずつ溶けていく。

その後訪れたバーで、グラスを傾けるうちに頬が微かに赤みを帯びてきた。カウンター越しに、八雲が何気なく法子の手に触れる。

「…!」

その瞬間、数日前の記憶が鮮明に蘇る。オイルまみれの指が、自分の胸を…。

(ダメ…考えちゃいけない)

グラスを強く握り締めながら、法子は浮かび上がる感覚を必死に押し殺そうとした。しかし、媚薬入りの酒が徐々に彼女の理性を溶かしていく。

「法子の嫌がることはしない」

そう告げられ、法子は八雲の差し出した手を握ってしまう。185センチの長身から伸びた大きな手の温もりを、今まで以上に強く感じていた。

ホテルのエレベーターの中、法子の心臓は早鐘を打つ。

(こんなの…ダメなのに…)

部屋にはラベンダーの香りが・・・嫌味でないほど良い匂い。

しかし法子はそこに強烈な媚薬を含む淫魔の体液が混ざってることにわからなかった。

部屋に入るなり、八雲は後ろから法子を優しく抱きしめる。162センチの法子の身体は、八雲の胸板に包まれるように収まった。

「…!」

筋肉質な体に抱かれ、法子は息を呑む。今までにない安心感と緊張が入り混じる中、自分の鼓動が加速していくのを感じていた。

「大丈夫。約束は守るよ」

耳元で囁かれる声に、法子の理性が揺らぐ。柔らかな身体が、硬い胸板に溶けていくような感覚。

(どうして…拒めないの…)

「ん…」

八雲の人差し指が、ゆっくりと法子の唇を撫でる。その優しい愛撫に、思わず身体が小さく震える。

「あ…」

そのまま手が腰へと移り、ニットの上から優しく撫でるように触れる。一瞬の接触だけで、全身に電流が走ったかのように反応してしまう。

(こんなに…感じるなんて…)

数日前の記憶が蘇り、法子の呼吸が乱れ始める。優しい愛撫の一つ一つが、彼女の理性を溶かしていく。

八雲の大きな手が、ニット越しに胸に触れる。その瞬間、再び全身が跳ねるように震えた。

「だ…め…」

微かな抵抗の言葉も、上ずった声になってしまう。媚薬の効果で、触れられる度に意識が蕩けていくのを感じていた。

「あ…やぁ…」

八雲の指の動きを、法子は震える瞳で追うことしかできない。ニットとブラ越しでも、確実に敏感な場所を責め立てる指使いに、声が上ずっていく。

「んっ…!」

乳首が弄ばれた瞬間、法子の肩が大きく跳ねる。その反応を見逃さず、八雲は荒々しく乳房全体を揉み揺さぶる。

「.! や…これは…」

快感の波に飲み込まれそうになりながら、法子は必死に抵抗の言葉を紡ぐ。しかし八雲の指は止まることを知らず、むしろ彼女の反応を確かめるように、さらに巧みな責めを繰り返していく。

(また…感じちゃう…)

理性で拒もうとする心と、素直に快感を受け入れようとする身体の狭間で、法子の意識は揺れ続けていた。

「あ…んっ…」

2度目の快感は、前回の混乱がない分、より鮮明に感じられる。全身が熱く、汗ばんでいく。

「汗をかいているね。脱いだ方が楽だよ」

八雲の囁きに、法子は必死に首を振る。

「だ…め…です…」

しかし拒絶の言葉とは裏腹に、ニットの中に忍び込んだ八雲の手が、ブラ越しに陥没乳首を執拗に愛撫し始める。指先が何度も何度も円を描くように動く。

「はぁっ…! や…」

快感で腰が砕けそうになる法子を、八雲は背後から支えるように抱きしめる。

(こんなの…ダメなのに…)

媚薬の効果も相まって、法子の理性は急速に溶けていった。

「ダメ…これは…いけないこと…」

もはや感情的な拒絶ではなく、倫理観だけで抵抗する法子。その声には、確かな嫌悪感は感じられなかった。

「大丈夫…下着はつけたままで…」

耳元で囁かれる甘い声に、さらに理性が揺らぐ。

「あぅ…んっ…!」

指の腹で何度も何度も陥没した場所を擦られ、優しく撫でられるたびに、数日前の記憶が鮮明に蘇る。あの時の快感、背徳的な悦び。そして布地の向こうで、陥没していた乳首が徐々にその存在を主張し始める。

「はぁ…あっ…」

快感に反応して膨らむ突起を、八雲は的確に責め立てる。ブラ越しでもわかるほどの大きさに膨らんでいく度に、法子の声は艶めいていく。

(いけないのに…こんなに…)

「これは…んっ…」

言葉を紡ごうとするが、的確な愛撫に意識が途切れそうになる。倫理と快感の狭間で、法子の心が揺れ続けていた。陥没から顔を出した乳首は、布地を突き上げるように隆起していく。

「わ、わかりました…ニットだけ…」

汗ばんだ体に張り付くニットに、法子は諦めたように呟く。

「向こうを向いていてください…」

八雲に背を向けるよう指示し、震える手でニットに手をかける。黒い生地が上へと持ち上げられていく。

「振り返らないでくださいよ…?」

不安げな声で確認を取りながら、ゆっくりとニットを脱ぎ去る。露わになった肌に、エアコンの風が冷たく感じられた。

両腕で胸を隠しながら、青いブラジャー姿の法子が小さな声で告げる。

「い、いいですよ…」

その仕草に、まだ残る初々しさと緊張感。八雲は満足げに微笑んだ。

八雲がソファに腰を下ろし、法子に手招きをする。

「こっちに…」

戸惑う法子に、八雲は優しく促す。

「こうすれば、胸は見えないよ」

背中を八雲に向けて座るように導かれ、法子はゆっくりとソファに腰を下ろす。

「あ…」

すぐに後ろから伸びてきた手が、再びブラ越しに愛撫を始める。

「ん…こんな…」

背後から包み込まれるような体勢で、八雲の指が的確に動き始める。前よりも密着した姿勢に、法子の心臓が早鐘を打つ。

(こんな体勢…ダメ…なのに…)

抵抗の言葉とは裏腹に、法子の身体は次第に八雲の胸板に寄りかかるように傾いていった。

八雲の指が青いブラの上から、リズミカルに円を描くように動く。人差し指と中指で乳首の周りを優しく円を描き、時折親指で先端を軽く押さえるような動き。その度に陥没していた乳首が存在感を増していく。

「はぁ…んっ…」

膝の上に座る法子の身体が、小刻みに震えはじめる。その反応が八雲の体に直に伝わってくる。

「ビクビクしてるね…」

耳元で囁かれた言葉に、法子の背筋が震える。布地の向こうで、乳首は完全に隆起し、青いブラを押し上げるように膨らんでいた。

八雲は乳首を中指の腹で軽くなぞり、時には指先で弾くような、時には円を描くような動きを繰り返す。

「だめ…こんな…」

抵抗の言葉とは裏腹に、快感に反応する度に法子の身体が痙攣するように跳ねる。その反応を逃すまいと、八雲の指は的確に動き続けた。

(こんなに反応するなんて…)

膝の上で震える法子の様子に、八雲は密かな満足感を覚えていた。

両手に余るほどの豊満な胸を、八雲は執拗に愛撫していく。ブラの上からでも伝わる柔らかさと重みに、改めて法子の体型の魅力を実感する。

「あぁ…やめ…」

指先が動く度に、法子の声が上ずっていく。青いブラの中で押しつぶされそうな程の量感が、その動きに合わせて波打つように揺れる。

「こんなに大きいと、重くて大変でしょう?」

耳元で囁かれた言葉に、法子は顔を真っ赤に染める。学生時代からのコンプレックスを指摘され、羞恥に震える。

「んっ…あ…」

しかし八雲の指は止まらない。両手で豊満な胸全体を包み込むように揉みしだきながら、親指で乳首を的確に刺激していく。

「これだけ敏感だと、辛いでしょう?」

その言葉に、法子の意識が次第に快感に溺れていく。

青いブラを突き上げるように膨らんだ乳首を、八雲は指先で摘まむように刺激する。

「やぁっ…! だめ…!」

その瞬間、淫魔としての能力で指先に微細な振動を与える。人間には真似できない速さの刺激が、布地越しに法子の敏感な突起を襲う。

「あっ…! はぁああっ…!」

突然の強烈な快感に、法子の声が大きく上ずる。

「や、やめて…! これ以上は…!」

限界が近づくのを感じ、法子は必死に懇願する。しかし八雲の指は容赦なく、さらに振動を強めていく。

「だめっ…! イッちゃ…!」

背中を大きく反らせながら、法子は絶叫のような声を上げた。全身が痙攣するように震え、もはや快感から逃れることはできない。

「だめっ…逃げ…」

八雲の膝の上から逃れようとする法子だが、腹部に回された腕に阻まれる。

「あっ…はぁっ…!」

もう片方の手がピストルの形を作り、両方の乳首を同時に押し、揺さぶるように刺激を与える。布地越しでも容赦ない快感に、法子の意識が真っ白になりそうになる。

「んあっ…! や…これ…!」

前のめりになった法子は、八雲の腕と太ももにしがみつくように手を伸ばす。

「いやぁっ…! 来ちゃ…!」

背中を大きく反らせ、全身を痙攣させながら、法子は絶頂を迎えた。快感の波に飲み込まれ、意識が遠のいていく。

八雲の腕の中で、法子の白い肌が汗に濡れて輝いていた。

凄まじい痙攣が法子の全身を襲う。その激しい動きに、黒縁の眼鏡が弾かれるように床に落ちる。

「はぁ…はぁ…」

硬直した後、力が抜けたように八雲の胸板に寄りかかる法子。荒い息遣いと共に、汗に濡れた肌が上下する。

その瞬間—。

「っ!あぁっ!」

八雲の手が素早く動き、下から上へとブラを捲り上げる。

「だめ…!」

抵抗する余力もない法子の声が、虚しく部屋に響く。

「離してっ…! 約束…約束したじゃないですか…!」

法子の必死の抗議の声が響く。上にブラを持ち上げられた状態で、八雲には膨らみがよく見えない。

しかし、そんな法子の声を無視するように、八雲の指が直接肌に触れる。

「やめて…! 約束が…」

力なく震える声。絶頂の余韻で力の入らない身体に、八雲の指が容赦なく這っていく。

「嘘つき…嘘つきです…!」

裏切られた悲しみと怒りが混ざった声を上げる法子。しかし八雲の手は止まることを知らず、素肌を的確に愛撫し続けた。

「大丈夫だから…」

耳元で囁かれる八雲の声に、法子の抵抗が弱まる。

手のひらから密かに淫魔の体液を滲ませながら、八雲は直接肌に触れていく。今までブラ越しにしか触れていなかった豊満な胸が、手のひらに柔らかく収まる。若さゆえの張りと弾力、そして指に余る量感に、八雲も思わず息を呑む。

「あぅ…」

媚薬を含んだ体液が肌に染み込んでいく度に、法子の声が艶めいていく。

「こんな…のっ…」

ブラ越しの愛撫とは比べものにならない快感に、法子の意識が蕩けていく。八雲の指が這う場所すべてが敏感になっていき、抵抗する気力さえ失われていった。

背中を反らせながら、法子は八雲の腕の中で震えている。約束を破られた怒りと、押し寄せる快感の狭間で、彼女の理性は急速に崩れていった。

(だめ…戻さないと…)

法子が必死でブラを戻そうとするが、八雲の指がその動きを制する。隆起した乳首を、飴細工を作るかのように優しくねじり、伸ばしていく。

「んぁっ…! はぁ…!」

やや強めの力加減に、一瞬の痛みを予感する。しかし淫魔の体液がそれが痛みになる前にヌメリ、肌を滑らかに包み込み、それは最高の快感へと変わっていく。

「あっ…こんな…」

普段は陥没している乳首が、異常なほど大きく膨らみ、刺激される度にビクビクと跳ねる。その反応を確かめるように、八雲の指は更に巧みに動いていく。

「や…もう…」

快感に翻弄される法子の声が、次第に甘く変化していった。

乳暈ごと摘まみ上げられ、優しく揺さぶられる快感に、法子の意識が蕩けそうになる。

「んっ…ふぁ…」

必死に声を押し殺そうとするが、身体の反応は隠しきれない。背筋が弓なりに反り、指先が痙攣するように震える。

(やめて…信じて…たのに…)

八雲の指から伝わる快感は、今までに経験したことのないほど強烈だった。抵抗する意思とは裏腹に、肉体は素直に反応してしまう。

(声を…出しちゃいけない…)

歯を食いしばって堪えようとする法子だったが、その必死の抵抗がかえって快感を際立たせていく。八雲の胸板に寄りかかったまま、全身を痙攣させながら息を荒げている。

しかし・・・八雲が指を動かすたびに、快感の波はどんどん大きくなっていく。

「あっ…はぁっ…!」

完全に隆起した乳首を、八雲の指が容赦なく扱き立てる。人差し指と親指で挟み、軽く引っ張るような動きを繰り返す。

(やめて…こんなの…信じていたのに…)

「んぁっ…! もう…耐えら…!」

快感の波が押し寄せ、法子の意識が真っ白になっていく。男性不信の自分が、こんなにも感じてしまうなんて。その事実が、さらなる羞恥となって全身を震わせる。

「いやぁっ…! 来るっ…!」

背中を大きく反らせ、全身を痙攣させながら、法子は絶頂を迎えた。八雲の胸板に寄りかかったまま、激しい痙攣が全身を走る。

(私…また…またこんなふうに…)

かつて淫魔に開発された記憶が蘇る。今度は信頼していた人に裏切られ、同じように快感に溺れてしまう自分が許せなかった。

「はぁ…はぁ…」

荒い息遣いを繰り返しながら, 法子はぐったりと力を失っていった。信頼を裏切られた悲しみと、押し寄せる快感の狭間で、彼女の意識は徐々に遠のいていく。

八雲は力なくなった法子の身体を優しく持ち上げ、自分の方へ向かせる。今や対面となった姿勢で、その肢体が明らかになる。

両手でも余りそうな豊満な胸が、汗と媚薬を含んだオイルで淫らに輝いている。やや下向き加減のその形は、重量感と若さゆえの弾力を兼ね備えていた。揺れるたびにその重みと柔らかさを主張するように、白い乳房が僅かに揺れる。陥没していた乳首は完全に顔を出し、厚みを増した乳暈は大根の輪切りほどの大きさに膨らんでいた。その中心には、成人男性の親指の先ほどもある突起が、まだ残る快感に反応して痙攣するように震えている。

「や…見ないで…」

法子は腕で胸を隠そうとするが、力が入らない。絶頂の余韻で乳首が敏感になっており、わずかな振動でさえビクビクと跳ねてしまう。

(こんな…姿…見られるなんて…)

信頼していた八雲の前で、このような姿を晒すことになるとは。法子の心は、屈辱と快感の狭間で揺れ続けていた。

法子の力の入らない隙を突くように、八雲の手が再び豊満な胸を捉える。

「やめ…んっ…!」

拒絶の言葉を紡ごうとした瞬間、八雲の唇が重ねられる。必死に抵抗しようとする法子だったが、胸からの快感に意識が蕩け、唇が緩んでしまう。

(こんな…のに…)

その隙に八雲の舌が侵入し、法子の舌と絡み合う。熱く滑らかな舌が口内を這い回り、時には優しく、時には強引に法子の舌を愛撫していく。

(拒まなきゃ…抵抗しなきゃ…)

咄嗟に舌を噛もうとするが、快感で力が入らず、結果的に甘噛みになってしまう。

その仕草に、八雲の舌が更に深く絡みついてくる。唾液が交わり、法子の口端からは銀筋が伝う。呼吸も荒くなり、顔が真っ赤に染まっていく。

(初めての…キス…なのに…)

法子の意識は、快感の渦に飲み込まれていった。

「んん…!」

八雲の唾液が、法子の口内に流れ込んでいく。密かに媚薬が仕込まれたそれを、法子は必死に拒もうとする。

「ん…ぅ…!」

しかし長く深いキスの中で、呼吸も満足にできない状態。嫌がる法子の喉は、自然と唾液を受け入れてしまう。

(飲んじゃ…だめ…なのに…)

唾液は、法子の体の中へと染み込んでいく。八雲の舌との戯れに、意識が更に朦朧としていく。

唇が離れた時には、法子の瞳は既に潤んでいた。全身が熱く、さらに敏感になっていくのを感じる。

(体が…変に…)

快感と羞恥で、法子の意識は更に蕩けていった。

「それでいいんだよ…」

八雲の声が耳元で優しく囁く。次の瞬間、彼の唇が豊満な胸に触れる。

「やぁ…! だめ…!」

左右交互に乳首を舐め、柔らかな舌が突起を包み込むように転がしていく。時には優しく吸い上げ、時には舌先で弾くような愛撫に、法子の声が上ずる。

「ん…あぅ…」

吸われる度に乳首が更に膨らみ、舌の動きに合わせて跳ねるように反応する。八雲は舌で乳暈を円を描くように舐め回し、中心の突起を甘く吸い上げる。

時折、法子の首筋や胸元の匂いを深く嗅ぎ取る。汗と媚薬の甘い香りに、彼の動きも次第に激しさを増していく。

「こんな…ふうに…」

快感に溺れる法子の声が、徐々に艶めいていく。理性で抵抗しようとする心と、素直に快感を受け入れようとする身体の狭間で、彼女の意識は揺れ続けていた。

舌で乳首を愛撫しながら、八雲の手が豊満な胸全体を揉みしだいていく。指の間から溢れそうな柔らかさと、若さゆえの驚くべき弾力が手のひらに伝わってくる。

「んっ…はぁ…」

両手で乳房を包み込むように揉み上げると、指先に硬く膨らんだ乳首が食い込んでくる。吸われ、舐められ、もてあそばれる度に、その突起は更に硬さを増していく。

「こんなに反応するんだね…」

八雲の囁きに、法子は顔を真っ赤に染める。しかし、その羞恥すら快感へと変わっていく。

「や…もう…」

抵抗の言葉とは裏腹に、法子の背中は弓なりに反り、更なる愛撫を求めるように胸を突き出してしまう。八雲の手の中で、豊かな胸が官能的に形を変えていく。

八雲は両手で豊満な胸を寄せ、突き出た二つの乳首を同時に口に含む。

「はぁっ…! あっ…!」

前歯で軽く噛みながら、舌で転がすような刺激を与えていく。これまでにない快感に、法子の声が甘く変わっていく。

「だめ…こんなの…!」

背中を大きく反らせながら、法子の全身が痙攣し始める。八雲の舌が更に激しく動き、前歯が敏感な突起を挟み込む。

「いやぁっ…! また…来るっ…!」

絶頂の波が押し寄せ、法子の意識が真っ白になっていく。八雲の腕の中で、彼女の身体は大きく震えていた。

凄まじい快感の波に、法子の意識が薄れていく。脳がピンクの靄に包まれたかのように、思考が蕩けていく。

「はぁ…はぁ…」

力なく八雲の胸板に倒れ込む法子。その肉体は未だ痙攣を繰り返し、快感の余韻に震えている。

(いい感じだ…)

八雲は内心で勝ち誇るように微笑む。口元を涎で濡らし、瞳を潤ませた法子の表情には、もはや以前の凜とした様子は見られない。快感に翻弄された、一人の女の顔だけがそこにあった。

(これはまだ始まりに過ぎない…)

ビクつく法子の肢体を眺めながら、八雲は次なる調教への期待に胸を膨らませていた。

八雲は力の抜けた法子をそっとベッドに運び、横たわらせる。

「もう…やめて…」

しかし八雲の手が下半身に伸びた瞬間、法子の目が恐怖で見開かれる。

「だめ…! そこだけは…!」

残された力を振り絞って抵抗する法子。胸への愛撫は受け入れざるを得なかったが、これだけは絶対に許せない一線だった。

「お願い…やめて…」

震える声で懇願しながら、必死で八雲の手から逃れようとする。しかし快感で緩んだ身体は、思うように動かない。

(こんな…ところまで…されるなんて…)

恐怖と快感の狭間で、法子の意識は混乱していた。

突然、太ももを広げられ、法子は悲鳴を上げそうになる。

「いや…! そんな…!」

必死に太ももで八雲の頭を挟もうとするが、その抵抗も意味をなさない。舌が淫裂をゆっくりと這っていく。

「んっ…! や…め…!」

上から下へ、時には円を描くように動く舌に、法子の背筋が反り返る。今まで誰にも触られたことのない場所を、執拗に愛撫されていく。

未知の感覚に打ち震える。

(こんなの…ダメ…なのに…)

必死に抵抗しようとする心とは裏腹に、媚薬の効果で身体は素直に反応してしまう。八雲の舌は、その反応を確かめるように動きを変えていく。

「お願い…もう…」

快感と屈辱の狭間で、法子の意識が蕩けていった。

八雲はそんな反応を楽しみ、陰核を包皮をめくり、舌に大量の体液をつけ、舌を超振動させながら、器用に下を回転させる。

「うぶぁっ!!」

無様な法子の甲高い声が部屋に響く。

強烈な快感に思わず、足を拡げてしまうほど。

柔らかい舌の中で陰核が圧迫され、根本まで包まれる。その状態で舌を回転させられると・・・人外の快感に頭がおかしくなりそう。

「んあぁぁっ!!それやめてっ!」

今までにない快感に、法子の背筋が大きく反る。

「だめ…! そこは…!」

乳房への愛撫とは比べものにならない深い快感が、全身を貫いていく。愛液が溢れ出す音が部屋に響き、法子の羞恥心を更に掻き立てる。

「はぁっ…! んぁ…!」

全身を震わせながら、必死に起き上がり抵抗しようとする。しかし八雲の舌は止まることを知らず、更に深い快感を与え続ける。

(こんな…私…)

理性も、羞恥も、プライドも、全てが快感の波に呑み込まれていく。乳首で感じた時とは違う、より深く、より重い快感に、法子の意識は完全に支配されていった。

マーカスには胸しか愛撫されなかった。下半身を調教される前に鷹城八雲に救われた。

「あぁっ…! んッ…!」

二つの快感が同時に襲いかかる。舌が淫裂を舐め上げる感覚と、指が陰核を指が挟まれ、揉み転がされる的確に愛撫する刺激に、法子の意識が真っ白になっていく。

(だめ…もう…」

最後に爪が秘核の根本を優し掠めた瞬間、決定的な快感が全身を貫く。

「あッ…! はぁああっ…!」

背中を大きく反らせ、法子は絶頂を迎えた。足先まで痙攣するような快感に、意識が遠のいていく。

全身の力が抜け、ベッドに深く沈み込んでいく法子。その頬には、快感の涙が伝っていた。

「はぁはぁっ」

ピンク色に染め、玉のような汗をかく法子。

柔らかく弾力のある太ももの拘束は解かれた。

そのまま法子の足を拡げる八雲。

愛液で薄い陰毛は恥丘に張り付き、花唇は厚みを増し、法子の最も大切な部分は大輪の華を咲かせていた。

そんな法子を見ながら、まだまだ夜は長いと思う八雲。ほぐれた膣に舌を挿入する。

「ダメ…そんなところまで…」

か細い声で懇願する法子。しかし八雲の舌は容赦なく動き続け、更なる快感を引き出していく。

(これはすごい…)

八雲は内心で微笑んだ。まだ誰にも開かれていない場所の反応を確かめながら、次の調教への期待を募らせていく。

大量の愛液と初心な膣壁が侵入者を拒むように異常なほど締め付けてくる。

「んぁっ…! はぁっ…!」

膣内で動く舌に、法子の声が甘く上ずる。初めて侵入者を受け入れた場所は硬く締め付けてくるが、八雲の舌は容赦なくストロークを繰り返す。

「こんな…中まで…」

その動きに合わせて、八雲は舌に媚薬を分泌していく。舌から滲み出た強い媚薬が、敏感な膣壁に染み込んでいく。

「あぅ…なに…これ…」

次第に全身が熱を帯び、理性が溶けていくのを感じる法子。八雲の舌の動きに合わせて、意識が蕩けていった。

(まだまだ硬いが…これなら…)

あの鷹城八雲よりも締め付けが強い。しかし柔軟性や伸び縮みにかける。

(まぁその辺りはこれから良くなっていく・・・そう躾けてやろう)

ナイトメアは内心で微笑みながら、更に媚薬を染み込ませていく。

「はぁっ…! や…あっ…!」

八雲の舌が膣内を責め立てる中、もう片方の手が別の場所を愛撫し始める。指の腹から生えた極細の触手群が自ら衣を脱いだ陰核に吸い付き、揺さぶるような刺激を与える。

「だめ…! そんな…両方…! んぁあっ…!」

二つの快感が同時に襲いかかり、法子の声が甘く上ずっていく。触手群が根本まで張り付いて蠢く感覚に、背筋が大きく反る。豊満な胸が大きく揺れ、その動きに合わせて快感が増していく。

「あぅ…こんな…の…! はぁんっ…!」

理性が快感に押し流されそうになる中、法子の意識は次第に朦朧としていく。人間の指では決して与えられない異質な快感に、全身が痙攣するように震えていた。

腰が大きく跳ね上がり、その度に乳房が官能的に揺れる。快感に翻弄される法子の白い肢体は、もはや自分の意思では制御できないほどに感じてしまっていた。

「あ…なに…これ…」

下半身から今までにない快感が押し寄せてくる。乳房で感じた時とは全く異なる種類の、より深く、より強い快感に、法子は恐怖を覚える。

「こわい…! やめて…! こんなの…!」

必死に足をばたつかせ、逃れようとする法子。しかし八雲の舌と触手の動きは止まらない。

両手でシーツを掴み、必死に抵抗を試みるが、快感の波は容赦なく押し寄せてくる。全身が震え、足が痙攣するように動く。

(こんなの…初めて…)

理性が崩壊しそうな快感に、法子の意識は恐怖と歓喜の境界で揺れ続けていた。

今までとは違う理性を押し流すような大量の刺激に、震えながらも上半身を起き上がらせ、八雲の頭を掴み、股の間から離そうとする。

しかし間に合わず、八雲が陰核に群がる触手群の指腹を軽く持ち上げ、揺さぶる。

獲物から離れたくないと触手群が陰核の根本から表面までに強く吸い付く。

「あっ…! はぁああっ…!」

突然、法子の中で大量の光が迸るような感覚。

刺激が限界を超え、理性も、羞恥も、全てを吹き飛ばすような凄まじい快感が全身を貫く。無意識のうちに足が大きく開き、顔が天井に向かって反り返る。

「んあぁあっ…やぁっ!」

背中を大きく反らせ、全身を痙攣させながら、かつてない強さの絶頂を迎えた。豊満な胸が大きく上下し、肢体は制御を失ったように震える。

(私…どうなって…)

意識が遠のいていく中、法子の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。

初めて経験する凄まじい快感の中で、彼女の意識は完全に白く染まっていった。

(いい反応と声だ)

そう思いながら、八雲は悦ぶ。

舌を食い締めんばかりの締め付けと、膣の困惑を感じさせる微かな蠢き。

まだまだ性を知らないせいで膣内は硬さが強く、潮噴きなどは出来ないが、大量に分泌された愛蜜がそのポテンシャルを感じさせる性具。

快感の余韻に全身を震わせ、か細い吐息を漏らす法子。その耳元で、八雲が甘く囁きかける。

「気持ちよかったね…」

声に密かに催眠を織り込みながら、八雲は優しく語りかける。

「この素晴らしい快感を受け入れるんだ.」

絶頂の余韻で無防備になった法子の意識に、催眠を込めた淫魔の言葉が染み込んでいく。

「法子の体は…こんなにも感じられるんだ…いいね?しっかりこの快感を覚えるんだ。そして誰にされたのかをしっかり覚え、刻め」

未だに向こうの世界に浮遊している法子は無意識に何度も小さくうなずく。

瞳を潤ませ、荒い息を繰り返す法子の耳に、催眠を帯びた言葉が次々と流れ込んでいく。抵抗する力も残っていない中、八雲の声は着実に彼女の心に浸透していった。

■映画館にて

数日後— 最後列の角席。二人掛けのカップルシート。ゆったりとしたプレミアムシートから、目の前のスクリーンを眺める法子。白いカーテンで仕切られた空間に、映画の音声が心地よく響いていた。

今日の法子は警戒心からか、厚手のニットと分厚いジーンズという防御的な装いだった。スカートではなくジーンズを選んだのは、八雲に対する用心の表れだろう。黒縁の眼鏡と前髪を押さえた紺色のカチューシャが、日本人形のような凛とした美しさを引き立てている。厳重な服装の下にも、彼女の厳格さと真面目さは隠せなかった。

スクリーンに映る物語に引き込まれ、中々面白いと感じていた矢先。

「…!」

突然、手の甲に温かい感触。八雲の大きな手が、そっと法子の手を包み込む。185センチの長身から伸びた手は、法子の手を完全に覆い隠すほどの大きさだった。

(この感触…)

その瞬間、数日前の記憶が鮮明に蘇る。強引に服を脱がされ、全身を愛撫され…。

「ん…」

思い出すだけで、体が熱くなっていく。微かに震える手を、八雲はより強く握り締めた。

(ダメ…考えちゃいけない…)

暗闇の中、法子は頬を染めながら、必死に映画に集中しようとする。黒縁眼鏡の奥で瞳が揺れている。しかし、大きな手のひらの感触が、あの夜の記憶を次々と呼び覚ましていく。周囲の気配を遮る個室のような空間が、さらに法子の意識を昂ぶらせていく。

カチューシャで整えられた前髪の下、法子の額に薄い汗が浮かぶ。心臓の鼓動が早まり、厚手のニットの下でさえ息苦しさを感じていた。薄暗い映画館の中、八雲の存在感だけが際立って彼女の意識を支配していた。

(あの夜…)

映画館の暗闇の中、法子の記憶が数日前に遡る。

人外の快感に翻弄され、理性が崩壊するような絶頂。そして意識が朦朧とする中で、強引に奪われた初めて。異質な熱が中に放たれた時の衝撃。

「お前を…」

行為の後、抱きしめようとした八雲に、法子は渾身の力で平手打ちを浴びせた。

「近寄らないで!絶対に許さない!」

涙を滲ませながらも、怒りに震える声で叫んだ。これまでに見せたことのない激しい感情を露わにして。

その記憶が蘇り、法子は思わず手を振り解く。しかし八雲の大きな手の感触とぬくもりは確実に彼女の心を捉えたまま離さなかった。

「でも、法子にもここに来るのを拒否することは出来たはず」

優しい声で八雲が語りかける。

「…それは、謝罪をすると言ったから…」

「じゃあ、本当に来たくなかった?」

「もちろん…絶対に…」

言葉を紡ごうとする法子の腕を、八雲が優しく撫でてくる。今度は振り解くことができない。

(どうして…)

自分の中の矛盾に気付き始める法子。確かに誘いを断ることもできた。でも、どこか八雲に会いたい気持ちもあった。

(違う…私は…)

その葛藤に気付いているかのように、八雲の手が更に優しく法子の肌を愛撫していく。暗闇の中で、彼女の理性が揺らぎ始めていた。

法子の態度の変化を見つめながら、八雲は内心で満足げに微笑む。

(確実に烙印は刻めている…)

あの夜、体液を子宮に注ぎ込んだ効果は着実に現れていた。まだ完全な支配には至っていないものの、確実に法子の心は八雲へと傾きつつあった。

「ごめんな。次からは気を付けるから」

優しく謝罪の言葉を口にしながら、八雲の心の中では別の思いが渦巻いていた。

(もう少しだ…)

表面上は反省した様子を見せながら、八雲は次なる調教への期待を胸に秘めていた。淫魔としての本質が、獲物を完全に支配する時を待ち望んでいる。

「…!」

八雲の大きな手が、そっと法子の太ももへと伸びる。

快感が法子を現実に引き戻す。

ジーンズ越しでも伝わる温もりに、法子の背筋が震える。

「だ、だめです…」

小声で抗議するものの、その手を払いのける動きはない。

(やめさせなきゃ…でも…)

映画館という場所で触れられることへの羞恥と、徐々に高まる期待が入り混じる。八雲の手は優しく、しかし確実に太ももを撫で続ける。

「こんなところで…」

震える声で囁くが、その言葉にも力強い意志は感じられない。むしろ、触れられる度に昨夜の記憶が蘇り、法子の意識は次第に蕩けていく。

昨日・・・また強引に迫られた最初の瞬間。しかし三度目からは…逃げることもできたはずなのに、そのまま身を任せてしまった自分。八雲の力強い腰使いと巧みな愛撫に、意識が蕩けるような快感を覚えてしまった。

(どうして…私…)

大きな手で全身を的確に愛撫され、腰を打ち付けられる度に声が漏れてしまう。最後の一度は、むしろ切なさやもどかしさが解消されていくような、そんな感覚すら覚えていた。八雲の中で、最高の快感に溺れていく自分がいた。

「はぁ…」

暗い映画館で、法子は小さく吐息をつく。しかしその吐息はどこか甘かった。

理性では受け入れられない行為なのに、体は既に八雲を求めてしまっている。

その変化に気付いているかのように、八雲の手が更に優しく法子の手を包み込んでいく。

(私…おかしくなってる…)

しかし、その感触にすら心が揺らいでしまう自分に、法子は戸惑いを覚えていた。

エンドロールが流れ始め、館内が明るくなっていく。

(映画…終わってた…?)

八雲の愛撫に意識を奪われ、気がつけば物語の内容など頭の片隅にもない。

「行きましょうか」

立ち上がろうとする法子の腕を、八雲が突然掴む。

「え…?」

人気のない通路を引っ張られるように進み、気がつけば男性トイレの前。

「ち、ちょっと…! だめっ…!」

抵抗の声も空しく、法子は個室の中へと連れ込まれていく。

(また…私…)

扉が閉まる音と共に、法子の心臓が早鐘を打ち始めた。

狭い個室の中、法子は壁に背を押し付けるように立っていた。

「どういうつもりですか…?」

怒りを含んだ声で問いかけるが、八雲の表情は変わらない。

「跪いて」

命令のような言葉に、法子は眉をひそめる。

「何を…言って…」

しかし狭い空間では、充分な抵抗もままならない。八雲の大きな体が法子を圧迫し、徐々に膝をつかせていく。

「やめてください…こんなところで…」

床に膝をつかされた法子は、上目遣いで八雲を見上げる。怒りと恐怖、そして僅かな期待が入り混じった複雑な表情で。

抵抗の言葉も虚しく、法子は八雲の前に跪かされた。

「やめて…こんなところで…絶対にダメ!」

必死に顔を背けようとし、両手で八雲を押し返そうとする。しかし、狭い個室では充分な力も入れられず、逃げ場もない。

「こんな…ことをしたら…信用できません!約束したじゃないですか!」

最後の抵抗として、法子は激しく頭を振り、立ち上がろうとするも、八雲の強引な動きに、結局は口を開かざるを得なくなる。

「んっ…! やぁ…!」

拒絶の意思とは裏腹に、法子の口が八雲を受け入れてしまう。

(こんな…公共の場所で…)

羞恥と恐怖が入り混じる中、法子の意識は次第に混濁していく。必死に抵抗しようとする心と、素直に従おうとする身体の狭間で、彼女の葛藤は深まるばかりだった。

八雲の満足げな表情が、法子の上方から覗き込んでいる。

ナイトメアは法子の熱い口内を堪能していた。しかし、彼女の怒りは収まるどころか、さらに強まっていく。

眉を吊り上げ、目を見開いた法子の視線には、激しい怒りと抗議の意思が宿っている。それは言葉以上に強い拒絶の表現だった。

(かなり怒っているな..)

想像以上の抵抗に、八雲は一瞬動きを止める。子宮への烙印はまだ完全ではなく、このまま強引に進めれば、これまで築いてきた関係性が崩れる可能性も—。

法子の目には、純粋な怒りと裏切られた悲しみが浮かんでいた。その視線は、八雲の行動を強く非難していた。

「…」

八雲の手が優しく法子の頭を撫でる。指先が黒い綺麗なボブカットの間をすべり、そっと耳に触れる。その優しい感触に、激しい怒りを示していた法子の表情に、微かな変化が生まれる。

「法子があまりにも魅力的だったから…ごめんな。今回だけだから」

低く、甘く囁くような八雲の声。催眠を織り込んだその声は、まるで絹のように法子の耳に染み込んでいく。耳を優しく指先でなぞりながら、八雲は法子の目を見つめ続ける。

「こんなところで君を困らせるつもりはなかったんだ。でも…我慢できなかった」

甘い言葉と耳への愛撫に、怒りに燃えていた瞳に、徐々に潤みが浮かび始める。

「ほら、昨日みたいにしてご覧?」

その言葉に、法子の意識が揺らぐ。昨日の記憶が蘇り、抵抗の意思が少しずつ弱まっていく。

(昨日…私…)

怒りと屈辱、そして僅かな期待が入り混じる中、法子の動きが緩やかになっていく。八雲の催眠と、子宮に刻まれた烙印の効果が、彼女の意識を徐々に蝕んでいった。

法子の口内に、唾液が増してくるのを感じる。昨日の記憶が鮮明に蘇り、八雲に教えられた動きが体に染み付いていることに気づく。

(どうして…私…)

抵抗する意思と裏腹に、法子の動きはゆっくりと変化していく。昨日教わった通りに、おずおずと舌を動かし始める。口の中が熱く、昨日とは違う場所での緊張感が、さらに彼女の感覚を鋭敏にさせていく。

「そう…その調子…」

八雲の声が優しく耳に届き、法子の中で何かが崩れていくような感覚。怒りは残っているのに、体は素直に動いてしまう。

(こんな場所で…なのに…)

理性と本能の狭間で、法子の意識は揺れ続けていた。

法子の動きが次第に大胆になっていく。柔らかな唇で優しく包み込み、舌先で繊細に舐め上げながら、唾液で濡らしていく。手と唇を使い、昨日八雲から細かく指示された通りの動きをしていく。

(どうして…覚えているの…)

舌を平らにして広い面積を愛撫したり、時には先端を細く尖らせて敏感な部分を責めたり。昨日の記憶が、詳細に頭の中に残っていることに法子自身が驚く。八雲に命じられた一連の動作を、まるで体が自然と覚えているかのように繰り返していく。

吸い付くように唇を窄め、舌で丁寧に円を描くように愛撫する法子の動きに、八雲は満足げな声を漏らす。

「昨日より上手くなってる…」

その言葉に、法子の頬が熱くなる。恥辱と僅かな誇らしさが入り混じる複雑な感情に、彼女の意識は更に混乱していく。唇の圧力を変え、時には強く吸い上げ、時には優しく舐めるように。

(私…何をしているの…)

理性では拒絶していても、体は既に八雲の指示に従順に反応していた。

「恥ずかしがることじゃないよ。気持ちいい…ありがとう」

八雲の優しい言葉が法子の心に染み込んでいく。

「嬉しいよ。えらいぞ」

頭を優しく撫でられながらかけられる言葉に、法子の心に思いがけない満足感が広がる。

(褒められている…)

幼い頃から人を助けるのが好きで、母性が強かった法子。委員長として正しいことをしているのに、「うざい」「空気読めない」と言われることが多かった学生時代。良かれと思った行動が、迷惑がられたり、嫌われたりする経験を重ねてきた。

友人は少なく、自分を認めてくれる人はほとんどいなかった。唯一両親だけが、彼女の真面目さを理解し、応援してくれていた。

しかし今は違う。八雲に褒められるたびに、心に小さな花が咲くような温かさを感じる。

(こんな…ことなのに…どうして…)

羞恥と満足感が混ざり合い、法子の心はますます混乱していく。八雲の言葉と手の温もりに、安心感すら覚えてしまう自分に戸惑いながらも、彼女の心は確実に八雲へと傾いていった。

「ああ…本当にありがとう、法子…」

八雲の感謝の言葉が繰り返されるたび、法子の心の中の怒りが少しずつ薄れていく。初めは抵抗からはじまった愛撫が、次第に情熱を帯びてくる。

舌を這わせる動きが積極的になり、唇の圧力も強くなっていく。頬を窄めて強く吸い上げ、時には舌先で敏感な場所を執拗に責め立てる。昨日教わった技術を全て駆使すし、アピールするように法子の口が八雲を貪っていく。

口内に感じる熱さと固さ、その存在感に、法子の下半身が疼き始めていることに気づく。

(どうして…こんなこと…なのに…)

公共の場という背徳感が、むしろ彼女の感覚を鋭くしていく。律儀で真面目な委員長が、トイレの個室でこんな行為に耽る—その矛盾が、背徳感が心と体に複雑な快感をもたらしていた。

八雲は法子の変化を見逃さなかった。目の中の怒りが次第に情熱へと変わっていく様子、積極的に動く舌と唇の動きを満足げに見つめながら、内心で微笑む。

(良い感じだ…)

彼女の中の烙印が確実に効いていることを実感しながら、八雲は法子の頭をさらに優しく撫でていった。

「よう、あの映画どうだった?」

突然、男性の声が聞こえてくる。トイレのドアが開き、二人の男が入ってくる音がする。

「っ…!」

法子の舌が一瞬で止まる。心臓が激しく跳ね上がり、恐怖で顔が青ざめる。

(誰かが…来た…!)

「いや〜、ラストの展開は予想外だったな」 「だよな。あのどんでん返しは見事だったわ」

男たちは小便器に並び、何の疑いもなく映画の感想を語り合っている。その何気ない会話が、法子にとっては雷鳴のように響く。

(見つかったら…どうしよう…)

八雲に恨めしい視線を向けるが、彼は法子の頭を優しく撫で、静かにするように示す。個室の中で、二人は固唾を呑んで男たちの会話を聞いていた。

「それとさ、俺たちの近くに座ってたカップルの子見た?」

「あぁ、あの眼鏡かけた乳のデカい子?」

「そうそう、ボブカットでニットの子」

会話を聞いた瞬間、法子の体が硬直する。

(私のこと…!)

「めちゃくちゃ可愛かったな。純粋で真面目な感じが」

「うん、でもおっぱいがデカいのがギャップでエロかったよな」

「そうそう」

法子の顔が真っ赤に染まる。見られていた…それだけでなく、映画館での八雲の行動まで見られていたのだ。

(見られてた…私たち…)

「でも彼氏に途中から胸揉まれてたぞ」

その言葉に、法子は耳まで真っ赤になる。恥辱で全身が震え、八雲に怒りの視線を向ける。

「まぁイケメン彼氏に夢中なんじゃね?」

 「あぁ俺にもあんな子がいたらなぁ」

「そうだな…」

そう言いながら笑い合う二人の声が、トイレに響く。法子は恥ずかしさと屈辱で、もう何も考えられなくなっていた。

法子が固まっている間、沈黙を守っていた八雲の態度が変わる。法子に視線で愛撫の再開を促す。

(今…そんな…!)

怒りの表情で拒絶しようとする法子だが、八雲からの強い視線に言い知れぬ感情が胸を突く。頭上から見下ろす雄の眼差しに、心臓が高鐘を打つ。

(どうして…私…)

言うことを聞かなければいけない—そんな不思議な感覚が法子の心を支配していく。理性では絶対に拒否すべき状況なのに、身体は異なる信号を送ってくる。

外では男たちの会話がまだ続いている。見つかるかもしれないという恐怖と、八雲の命令に従わなければならないという感覚の狭間で、法子の心は揺れ続けていた。

壁一枚隔てた場所で、自分についての下卑た会話が続いている。その状況にもかかわらず、法子は自らの内側から湧き上がる衝動に逆らえずにいた。

(どうして…こんな時に…)

震える唇で、再び愛撫を始める法子。先ほどよりも更に高まる緊張感と背徳感に、頭が真っ白になりそうだった。

外の男たちの笑い声と、目の前の八雲の満足げな表情。その狭間で、法子の理性は急速に溶けていく。

(見つかったら…でも…止められない…)

公共の場という状況と、自分の行動の矛盾。その狂気じみた状況に、法子の心は混乱の渦に飲み込まれていった。

八雲は、法子の内面の変化を見逃さなかった。烙印の効果が、着実に彼女を変えていることを実感していた。

壁一枚隔てた場所で、自分についての下卑た会話が続いている。その状況にもかかわらず、法子は自らの内側から湧き上がる衝動に逆らえずにいた。

(どうして…こんな時に…)

震える唇で、再び愛撫を始める法子。柔らかな唇で包み込み、舌を滑らせる動きは緊張で少し硬いものの、次第にリズムを取り戻していく。頬を窄めて吸い上げる度に、八雲の息遣いが乱れるのを感じる。

先ほどよりも更に高まる緊張感と背徳感に、頭が真っ白になりそうだった。外の男たちに聞こえてしまうのではないかという恐怖から、できるだけ音を立てないように努めるが、それがかえって八雲にとっては心地良いようだった。

外の男たちの笑い声と、目の前の八雲の満足げな表情。その狭間で、法子の理性は急速に溶けていく。

(見つかったら…でも…止められない…)

公共の場という状況と、自分の行動の矛盾。その狂気じみた状況に、法子の心は混乱の渦に飲み込まれていった。

八雲は、法子の内面の変化を見逃さなかった。烙印の効果が、着実に彼女を変えていることを実感していた。

法子の口の動きが次第に大胆になっていく。唇で強く吸い上げ、舌で繊細に責め立てる。時には喉の奥まで受け入れ、時には舌先で敏感な場所を執拗に愛撫する。恐怖と緊張が入り混じる中、その技巧は先ほどよりも洗練されていた。

「あの子さ、ホントは淫乱なんじゃないか?」

 「なんで?」

 「いや、あんな真面目そうな顔して、でも体つきがエロすぎるだろ」 「あぁ、わかる。特にあの胸は反則級だよな」

男たちの会話が続く。自分についての卑猥な会話を耳にしながらも、法子の口は止まらない。

(こんな…ことされてるのに…)

屈辱と羞恥が入り混じる感情が、むしろ法子の感覚を鋭くしていく。男たちの下卑た笑い声と、八雲の息遣いが交錯する空間で、法子の理性はどんどん薄れていった。

「彼氏、めちゃくちゃ羨ましいよな…」

 「ほんとそれ。俺もあんな子と一晩…」

その言葉に、法子の頬が熱くなる。まさに今、彼らの想像を超える行為に及んでいるという現実が、彼女の中で奇妙な高揚感を生み出していた。

法子は幼い頃から自らに厳しい道徳観を持っていた。委員長を務め、規則を守り、他人にも同じことを求めてきた。常に自分の行動を監視し、「してはいけないこと」に対する心理的な障壁を高く設定していた。

(私は…こんな人間では…ない…)

しかし今、その障壁を越えてしまったことで、予想外の感情が彼女を襲う。背徳感と解放感が混ざり合い、理性では拒絶しながらも、心の奥底では禁断の果実を味わう快感に震えていた。

男たちの下卑た会話が続き、八雲からの催眠的な囁きが耳に届く。媚薬の効果も相まって、法子の高潔な精神は少しずつ蝕まれていく。

「この子、本当は淫乱なんじゃないか?」

その言葉が、不思議と法子の心に刺さる。今まで必死に否定してきた自分の一面が、徐々に顔を出し始めていた。

(違う…私は…でも…)

厳格な自己規制の反動が、禁断の快感となって法子の全身を駆け巡る。八雲はその変化を見逃さず、さらに彼女の心の奥底に潜む本能を引き出していく。

法子の混乱をよそに、状況は進展していく。彼女の感覚が研ぎ澄まされる中、八雲の変化に気づかざるを得ない。

(まさか…今…)

変化を感じた法子の表情に動揺が走る。個室内に微かな水音が響き、それを聞かれるのではないかという恐怖が彼女を襲う。

「何か聞こえなかった?」

外の男性の声に、法子の心臓が跳ね上がる。

「ん?何も聞こえないけど」

「そう?気のせいかな」

会話は続くが、法子は今や極限の緊張状態に置かれていた。音を立てないよう必死に努めながらも、八雲の腰の動きが加速していくのを感じる。

(どうして…こんな状況で…)

心の中で葛藤が続く一方で、八雲の表情に変化が見えた。その瞬間が近づいていることを、法子は直感的に理解していた。

八雲の動きが加速していく。法子の感覚が研ぎ澄まされる中、間近に迫る瞬間を予感して心が大きくざわめく。

(このまま…)

次の瞬間、口内で亀頭部の膨張を感じ取った法子は、咄嗟の判断を迫られる。服が汚れて外に出られなくなるという現実的な懸念か、八雲を満足させたいという感情か—その理由すら自分でも分からないまま、彼女は迷わず全てを受け入れ、飲み干す。

「ふぅ…なんか腹減ってきたな」

 「そうだな。ここ出て何か食うか?」

 「いいね、行こうぜ」

外の男たちの声が遠ざかっていく。ドアが閉まる音が聞こえ、トイレは再び静寂に包まれた。

背徳の瞬間を越え、法子と八雲だけが残された空間で、彼女は自分の行為の意味を問い始めていた。

静まり返ったトイレの個室に、雌の荒い息遣いだけが響く。

法子は震える手で唇の端に残った精液を拭い取りながら、八雲を見上げる。目には怒りと屈辱が浮かんでいた。

「なぜ…こんなことを…」

震える声で、やっと抗議の言葉を絞り出す。さっきまでの従順な様子は消え、本来の厳しい眼差しが戻ってきていた。

「約束したじゃないですか…もう強引なことはしないって…何でこんなこと」

立ち上がろうとする法子の足は、まだ少し震えている。公共の場でのこの行為の衝撃が、彼女の心と体を揺さぶっていた。

トイレの個室から出て、鏡の前に立つ法子の頬は紅潮していた。たった今、彼女が何をさせられていたのか――その羞恥心が胸の内を駆け巡る。

「何って、気持ちよかっただろう?」

鈴木八雲はにやりと笑いながら手を洗った。その余裕のある態度がさらに法子の怒りに火をつける。

「あなたは…」

法子は言葉を選びながら。

「人としてあるまじき行為です。私は…紅薙姫の一員として、こんな…こんな…」

言葉が詰まる。何と言えばいいのだろう。淫らな行為をさせられたと言うべきか。それとも、自分の意志が弱かったと認めるべきか。

「まだそんなことを言っているのか」

鈴木八雲は呆れたように溜息をつき、法子に近づいてきた。

「近寄らないでください!」

法子は一歩後ずさった。

「本当にそれでいいのか?」

鈴木八雲の声は低く、甘く、法子の耳に心地よく響く。「お前の体は正直だぞ」

「何を…」

言葉が終わる前に、八雲は素早い動きで法子のニットを掴み、上へと持ち上げた。青いブラジャーも一緒に引き上げられ、法子の豊かな胸があらわになる。

「や、やめてください!」

法子は抵抗しようとしたが、鈴木八雲の手は力強く、彼女の両手首を片手で掴んでいた。

「見ろよ、これ」

八雲は法子の胸を見つめながら言った。

「めちゃくちゃ勃ってるじゃん」

法子の視線が自分の胸に落ちる。そこには、完全に隆起した乳首があった。ピンク色の大きな乳暈は露わになり、普段は陥没している乳首が今は堂々と主張していた。

「これは…違います…」

法子は必死に言い訳をしようとした。

「寒いからです…」

「嘘つき」

鈴木八雲は笑った。

「自分の体の反応くらい、認めろよ」

あまりの恥辱に、法子は顔を横に向けた。頬は真っ赤に染まり、眼鏡の奥で目に涙が浮かんでいた。一度マーカス・アンフロラに開発された胸は、些細な刺激にも敏感に反応してしまう。そのことを知っている鈴木八雲が、今、法子の最も恥ずかしい部分を見つめていた。

「ほら、見て見ぬふりはやめな」

八雲の声は柔らかくなった。

「お前の体がどれだけ正直か、ちゃんと受け入れろよ」

法子は目を閉じた。受け入れたくなかった。この恥ずかしさも、体の正直な反応も、そして何より、鈴木八雲に対して抱いている複雑な感情も。

「私は…」法子の声は震えていた。

「何?」

八雲が耳元で囁く。

「こんなの…嫌です…」

だが心の奥底では、法子は別の感情と闘っていた。

八雲の態度に、彼女が崇拝していた鷹城八雲の姿を重ね合わせていた。

八雲から受ける快感は、あの淫魔マーカスの苦い記憶を少しずつ塗り替えていた。それを認めたくない自分と、八雲の腕の中で溶けていきたい自分との間で、法子の心は揺れ動いていた。

「本当にそう思ってるか?」

鈴木八雲は法子の乳首に指を這わせた。

ビクッと震える法子の体。

「嫌がっているなら、こんな反応しないはずだ」

法子は目を閉じたまま、顔を背けたままだった。自分の体の反応を認めたくなかった。感じていることを認めたくなかった。だが、鈴木八雲の指先が作り出す快感の波は、法子の心の壁を少しずつ崩していった。

子宮に刻まれた鈴木八雲の烙印が、まるで脈打つように熱を帯びる。まだ40パーセントほどの完成度だが、それでも法子の体は鈴木八雲の存在を強く意識していた。

「やめて…ください…」

法子は震える声で懇願した。だが、その言葉とは裏腹に、彼女の体は八雲の指先に反応していた。

「本当にやめてほしいのか?」

八雲は法子の耳元で囁いた。

「この反応を見ると、そうは思えないんだが」

八雲の指が法子の乳首を軽く摘み、優しく転がした。

「ひっ!」思わず漏れる嬌声。法子は慌てて口を押さえた。

「可愛いな」

八雲は微笑みながら、もう一方の乳首も愛撫し始めた。

「こんなに敏感になってるなんて」

「そんな…」

法子の抵抗の言葉は途切れがちだった。

「触らないで…お願い…」

しかし八雲は法子の言葉を聞き入れる気配はなかった。

両手で法子の乳房を包み込み、親指で乳首を円を描くように撫でる。

「う…あっ…」

法子の体が震え始めた。淫魔に調教された胸は、もはや普通の快感では済まない。

八雲の指先から伝わる刺激が、法子の脳を白く染めていく。

「違う…こんなのは…」

抵抗の言葉を口にしながらも、法子の体は正直だった。

責め手の指の動きに合わせて、背筋が弓なりに反り、腰がくねり始める。

「ほら、素直になれよ」

鈴木八雲は乳首を軽く引っ張りながら言った。

「お前の体は正直だ。感じているんだろう?」

「感じてなんか…あっ!」

八雲が乳首を強く捻ると、法子の体に電流が走った。

「嘘つき」

八雲は囁いた。

「この反応は何だ?」

執拗な愛撫が続く。

八雲の指が乳輪の周りをなぞり、時に軽く、時に強く乳首を刺激する。法子の抵抗する力は次第に弱まっていった。

「やめ…て…あっ…」

法子の声が甘く変わり始めた。鈴木八雲はそれを見逃さない。

「ほら、もう少しだ」

鈴木八雲は法子の両方の乳首を同時に摘んだ。

「素直になれ」

「いや…あっ…ああっ!」

突然、法子の体が大きく震えた。背中が反り、足がガクガクと震える。

「い、いやぁっ…!」

乳首からの快感が全身を駆け巡り、法子の意識が白く染まっていく。

「あっ…あああっ!」

押し殺そうとする声が漏れ出し、法子は雄の腕の中で痙攣した。乳首だけで絶頂に達してしまった彼女の顔は、恍惚と羞恥で真っ赤に染まっていた。

「イったな」

八雲は満足そうに言った。

「乳首だけでイくなんて、すごいじゃないか」

「そんな…」

絶頂の余韻に震えながら、法子は言葉を絞り出した。

「私…こんな…」

八雲は法子の顎を掴み、顔を上げさせた。

「これが本当のお前だ」

八雲は真剣な表情で言った。

「これを受け入れるんだ」

まだ絶頂の余韻に震える法子の目には、恥辱の涙が浮かんでいた。だが、その奥には、何か別の感情も揺れているように見えた。

こんな私は、退魔師として失格なのか――。

法子の頭の中に、そんな思いが過ぎった。しかし同時に、もう一つの思いも湧き上がる。

――でも、これは本当に私が望んでいることなのかもしれない。

揺れ動く心と、正直な体の反応。法子はその狭間で、静かに揺れ続けていた。

「もう、やめてください」法子は震える声で言った。自分の身なりを整えながら、鏡に映る自分の顔を見ることができなかった。

鈴木八雲は軽くため息をつき、退いた。 「分かったよ」

法子は急いでブラジャーを直し、ニットを下ろした。手が震えていた。

「行くか」

八雲は扉に向かって歩き出した。

法子は黙って頷き、鈴木八雲の後に続いた。トイレを出る直前、法子は深呼吸をした。心を落ち着かせようとしたが、まだ胸の高鳴りは収まらなかった。

廊下に出ると、ふとした冷気が二人を包んだ。人気のない廊下には、彼らの足音だけが響いた。

「ねえ、さっきのことは…」

八雲は歩きながら言った。

「悪かったよ。ちょっとやり過ぎた」

その言葉に法子は顔を上げた。

八雲が謝るなど、思いもよらなかった。

「ただ…」

鈴木八雲は続けた。

「お前が可愛すぎるんだよ」

「そういう言い方で誤魔化さないでください」

法子は冷たく言い返した。

「トイレで、そんな…私に…」言葉を続けることができなかった。

鈴木八雲は歩みを止め、法子の方を向いた。

「本当に謝るよ」そう言って、法子の手を取ろうとした。

「触らないでください!」法子は鈴木八雲の手を強く払いのけた。

「もう二度と私に触れないでください!」

八雲の表情が一瞬で変わった。いつもの余裕のある笑みが消え、冷たい目で法子を見つめた。

「そうか」

その一言だけを残し、八雲は歩き出した。

その背中からは、先ほどまでの温かさが消えていた。

法子はその場に立ち尽くした。八雲が本気で怒ったのか、ただ拗ねているだけなのか、判断がつかなかった。だが、あの冷たい目は今までに見たことがなかった。

「八雲さん…」

小さく呟いたが、八雲は振り返らなかった。

数歩後を追いかけながら、法子の中で不安が膨らんでいった。自分が強く出過ぎたのではないかという後悔。でも、あんな風に触れられて、感じてしまったことへの怒り。そして何より、八雲に嫌われたかもしれないという恐怖。

それなのに――なぜ私は彼を追いかけているのだろう? 本来なら、逃げ出すべきなのに。 あれだけのことをされたのに。

法子の頭の中で、矛盾した思いが渦巻いていた。

「八雲さん、待ってください」

思わず声を上げていた。

鈴木八雲は足を止めた。振り返らないまま、「何だ?」と冷たく言った。

「私…」

法子は何を言おうとしていたのか、自分でも分からなかった。謝るべきなのか、それとも抗議すべきなのか。

振り返った八雲の目には、何かが宿っていた。法子は一瞬、恐怖を感じた。あの目は、人間のものではないような…

「何も言うことがないなら、行くぞ」

八雲は再び歩き出した。その背中はいつもより大きく、遠く感じられた。

法子はその背中を見つめながら、胸の奥に広がる空虚さを感じていた。なぜだろう、あんなことをされたというのに、彼が遠ざかっていくことが怖かった。

「いや、そもそも」

法子は自分に言い聞かせるように呟いた。

「あなたが強引にトイレに連れ込んだんじゃないですか」

八雲の足が止まった。ゆっくりと振り返る。

「そうだな」

彼の口元に、薄い笑みが浮かんだ。

「だが、お前は最後まで抵抗しなかった」

その言葉が、法子の胸を刺した。反論したかったが、言葉が見つからなかった。確かに、最後まで抵抗はしなかった。いや、できなかった。

「違います…私は…」

「お前の体は正直だったな」八雲は一歩、法子に近づいた。

「それを認めたくないだけだろう?」

法子は後ずさりした。八雲の目に吸い込まれそうになる。

法子は知らないが子宮に刻まれた烙印が熱を帯びていた。

「もう、やめてください…」

法子の声は震えていた。怒りなのか、恐怖なのか、それとも別の感情なのか。

八雲・・・ナイトメアは法子の表情を見つめながら、内心で笑っていた。あまりにも分かりやすい。怒っているふりをしているが、その目は自分を求めている。唇は拒絶の言葉を紡ぐが、その身体は既に自分のものだ。

「交渉ごとには向かないタイプだな」

心の中で思った。

真面目で正直すぎる法子は、自分の本当の気持ちを隠すことさえできない。それが彼女の魅力でもあり、弱点でもあった。

法子の瞳が揺れるのを見て、鈴木八雲は確信した。今なら押し切れる。

「こっちだ」

不意に法子の手を掴み、鈴木八雲は彼女をビルとビルの狭い隙間へと引っ張り込んだ。

「ちょっと、何を—」

言葉を遮るように、鈴木八雲は法子を壁に押し付けた。人目につかない薄暗い隙間。そこで八雲は再び法子を見つめた。

「本当はどうなんだ?」

八雲の声は低く、甘く響いた。

「お前が欲しいものは何だ?」

法子は言葉に詰まった。本当はどうしたいのか、自分でも分からなかった。頭では拒絶したいのに、体は彼を求めている。そして心は——心はどうなのだろう。

「私は…」

法子の胸の内には、葛藤と混乱が渦巻いていた。

鈴木八雲はもう待てなかった。法子の唇に自分の唇を重ねた。突然のキスに、法子は目を見開いた。

「んっ…!」

抵抗するように、法子は唇を固く閉じた。鈴木八雲のキスを拒もうとする。しかし鈴木八雲は諦めない。片手で法子の顎を掴み、もう片方の手を彼女の胸に這わせた。

「んぅ…やめ…」

トイレでの刺激で既に敏感になっていた胸が、布越しでも反応する。鈴木八雲の指が乳首を探り当て、軽く捻った瞬間、法子は思わず口を開いてしまった。

「あっ…!」

その隙に、八雲の舌が滑り込む。

「んむっ…!」

法子は舌で押し返そうとしたが、それが逆効果だった。鈴木八雲の舌が法子の舌に絡みつき、深く侵入してくる。

「ん…んぅ…」

抵抗するつもりだった法子の舌が、いつの間にか鈴木八雲の舌と絡み合っていた。最初は拒むように動いていた舌が、次第に応えるように動き始める。

「んむ…ちゅ…」

法子自身も気付かないうちに、彼女の体は鈴木八雲に寄り添うように傾いていた。子宮に刻まれた烙印が熱を帯び、体の芯から火照りが広がる。

八雲は法子の腰に手を回し、さらに彼女を引き寄せた。二人の体が密着する。キスはさらに深まり、法子は完全に抵抗の意志を失っていた。

「ん…ちゅる…」

舌が絡み合い、口内の隅々まで探り合う。唾液が交わり、時折漏れる吐息が二人の間で熱を帯びていく。もはやそれはキスというよりも、口による性行為のようだった。

鈴木八雲の舌が法子の舌の根元まで侵入し、彼女の口内を存分に味わう。法子もまた、鈴木八雲の舌に自分の舌を絡ませ、吸い付くように応えていた。

二人の唇が離れる瞬間、銀色の糸が引かれた。互いの目が見つめ合う。法子の目は既に理性の光を失い、欲望に濁っていた。

「八雲さん…」

法子の声は掠れていた。

鈴木八雲は微笑み、再び法子の唇を奪った。今度は法子も素直に受け入れ、自ら口を開いて八雲の舌を迎え入れる。

「ん…ちゅ…はぁ…」

激しく舌を絡ませ、吸い合う二人。雌の手が雄の首に回り、さらに深いキスを求めるように引き寄せた。

烙印の熱が法子の理性を溶かしていく。八雲はその様子を見て内心で笑った。予想よりも早く進んでいる。このまま行けば、完全な支配も遠くない。

ビルの隙間の薄暗がりの中、二人の姿は次第に一つに溶け合っていった。


これはbc8c3zがあらすじ・設定を作り、それをある先生に作ってもらった綾守竜樹先生の百姫夜行と魔斬姫伝をクロスオーバーさせた2次創作です。

今後もどんどん続いていきます。
よろしくお願いします。

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