10 終焉
教室はざわついていた。
少年少女が通う塾は、今日も盛況である。大企業の御曹司、令嬢が通う塾は、一昔前よりも生徒数が減っているものの、金に糸目を付けぬ富裕層の親により、一定数の水準は保っている。
御曹司、令嬢とは言え子供だ。仲良しの子と近くに座れば、退屈まぎれに雑談が始まる。
メグは、ざわめきを確認し、黒板に向いていたからだをひねって机に座る子供に向いた。
「こら、みんな少しおしゃべりが多いわよ」
優しくも鋭い声で指摘すると、生徒たちはざわつきを抑えた。この塾でも評判の美人教師、メグの凛々しい表情には、かすかにたしなめるような色が見える。
生徒たちは「はい」と素直にその言葉を聞き入れ、真面目に授業を聞く姿勢になった。
「……では、この問題を解いてもらいますね。それじゃあ……」
メグは生徒を見比べる。そして、その視線が一点に定まった。
教室の奥の方に腰掛けていた耕一郎だ。
「耕一郎くん。壇のところまで来て、答えを書いて」
「はい」
聡明で大人っぽい耕一郎が、壇上までいき、黒板にチョークで文字を書いている。
その最中、メグは耕一郎の隣に近づいた。二人が寄り添うように近い距離感で立つ。
教壇の向こう側に隠れるように、耕一郎とメグは隣り合っていた。
「うん……うん……いい解き方ね」
算数の公式を見事に展開し、いくつもの問題をすらすらと解いていく耕一郎の書いている内容を確認しているメグが、感心したように何度もうなずく。
その時、耕一郎の隣にいたメグが、不自然に揺れた。
「はぁ、ん……♡」
そして、メグがか細い声を上げる。
口からこぼれた弱々しい喘ぎが、教室の最前列にいた少女が聞いていた。
「先生、大丈夫ですか?」
その少女が、不思議そうにメグに尋ねる。
「ん……大丈夫。何でもないわ」
メグはすぐに冷静さを取り戻し、かすかにほほ笑む。
「先生、大丈夫ですか・」
「ひぅう……ちょっと気分が悪くなっただけ。それより、問題は解けたの?」
「はい。これでどうですか?」
「えぇと……うん、せ、正解よ。模範解答ね」
教室の空気が弛緩する。
やはり模範的な優等生だ、この子はいつだって正しい答えを導き出す……
そんな空気が、教室に満ちていた。
そう、この少年は、いつも正しい答えを導き出す。
勉強も、そして、それ以外のことも。
耕一郎は、なぜかしっとりと湿った左手を、こっそりとハンカチでぬぐいながら、席に腰掛けた。
その目には、ほんの一瞬だけ、強く鋭い光が宿る。端正な顔に浮かぶのは、醜く邪悪な意志の集合体であった。
「では、戻りますね」
耕一郎が澄ました声で言う。チョークを戻し、自分の席に戻ろうとする耕一郎は、ちらっとメグを一瞥する。
じっとりと、そのメグのスカートから延びる太ももに、透明の汁が一筋、流れていた。
「はい、今日の授業はこれでおわり」
メグの宣言に、教室内の少年少女の空気が一気に弛緩した。
「忘れ物をしないように気を付けてね。明日も授業がある子は、しっかり復習しておくように」
メグは凛々しく生徒たちに告げて、自らも身支度する。その身のこなし、仕草一つ一つが上品で、流麗である。
一つの少女たちのグループが、メグの様子を観察しながらため息をついていた。
「やっぱりいいなぁ、メグ先生」
「あ、リンちゃんもそう思う? 私もメグ先生、ステキだなって思うんだー」
「うんうん、いいよね、大人って感じぃ」
「オッパイもお尻も大きくて色っぽいし、カッコイイのに性格がおっとりしてて全然こわくないんだよね」
少女たちは口々にメグをほめたたえる。メグは、この塾でも評判の美人教師だった。それこそ人気で言えば、トップである。なぜこんな場所に、あんな美人が来ているのだろう? という噂が立つほどであった。
「でも、何かメグ先生、変だったよね?」
「そうだね。メグ先生、優しくて授業もうまいけど、たまに調子悪そうだよね」
「休憩時間から帰ってきたら、顔真っ赤な時もあるしね」
「何だろう?ちょっと心配だよね」
メグの顔が真っ赤だったり、調子が悪そうなのは、多くの生徒が目撃している。いつもトイレから出てくるときに、そんな様子のことが多い。病気なのではないか? という噂が立っていたが、本人は、そういわれると苦笑して否定する。
素性の知れない謎の人物、というのがメグであった。
「いつかあたしも、メグ先生みたいになりたいなぁ」
「そうだねー。あれだけスタイルが良くって性格も良かったら、俳優やアイドルとも結婚できそう!」
「アイドルかぁー。ねね、アカリちゃんは誰が好き?」
「あたしはV4のりっくん! ララちゃんは?」
「あたしはねー……」
少女たちは話に夢中になりながら、楽しそうに帰っていく。
教室内は、あっという間に無人となった。
静まり返る教室内は、暗く空虚である。
塾は、物音ひとつすらしない場所となっていた。
「あ、あ、あ、あッ♡♡ あぁぁんッ♡ 深いいッ♡」
ずん、ずん、と粘ついた音が響く。
狭苦しいトイレの中の個室の一つ、そこから響いていた。
その中では、二人の人影があった。
「すごい、あぁんすごぉいッ♡♡ 奥まで届いてるぅッ♡♡」
「はは!! すっかり僕のチンポ専用のメス豚になったねぇ!! 結界まで張って、そうまでしてセックスしたかったのかい?」
「だって♡♡ だってだって♡♡ ご、ご主人様が、メグのマンコ、いじくりまわすからぁッ♡」
「あんなちょっとクチュクチュしただけなのに? 普段はあんなにすまし顔なのに、もうぶっ壊れちゃってるんだねぇ!!」
「はいッ♡ メグはご主人様のチンポのためなら何でもできるチンポ狂いのメス豚ですッ♡」
場所は、塾の一階の男子便所である。教師たちの待機所のある部屋の隣で、まだそこには塾講師たちが何人か居残りしている。
が、誰一人、その音に気付いていない。
当然だ。魔法少女の結界の力は、人間には感知できない。
メグは、自分から黒のシャツをはだけた。その下には装飾たっぷりの赤いブラジャーが零れ落ちそうな乳肉を支えている。耕一郎は、片方の手で、シャツをはぎ取る。乳の先端、ピンクの乳首がツンと立ち、淫らにピクンピクンと動いていた。
そして、スカートに隠された下衣、ショーツである。それも赤く鮮烈な輝きを放っていた。強引にめくりあげられたショーツは、大胆にずらされ、ガーターベルトだけのような状態だ。生殖器もアナルも完全に空にはなたれ、パンツとしての意味は全くなしていない。
スカートをまくり上げ、バックからメグを突く耕一郎は、赤いショーツの布地をなぞり立てる。メグは、その手つきにゾクゾクっと背筋を震わせた。
「このショーツ……ご主人さまの、好みかと思って、着てきたの……♡♡♡♡ どうですか?」
「ああ、とってもいいよ。セックスすることしか考えてないメス猫っぽさが最高だね」
「こんな風に丸見えになってて……♡ もし何かの拍子で見えちゃったらどうしよう、って思うと、興奮してしまうんです♡♡」
メグは、真っ赤になって震えていた。露出、チラリズムへの恥じらい、それらが全て、メグの性欲となって体の奥にこもっていく。
セックスを少しでも想起させるものすべて、性の奴隷となったメグを高ぶらせる。メグは、ギリギリのラインで人間生活を保っていた。
「触手で可愛がってあげてるときのメグの喜んでる顔、好きなんだ。まだ足りないようだし、もっともっと授業中にかき回してあげるよ」
「あぁん、ありがとうございますぅ♡ メグ、うれしいッ♡♡」
言葉で嬲られるのも大好きなメグは膣奥を往復して突きまくられながら、被虐の喜びにぷるぷる震える。
「今日の手マンも良かったかい? あんなに濡れ濡れにするもんだから、席に着くまでに床がびっしょりになっちゃったねぇ?」
「だってぇ……♡ 我慢、できなくて♡♡」
「まさか君から僕を指名するなんて思ってなかったから焦ったよ。あの手マンのサービスも、本当はしてあげるつもり、なかったんだよ? 感謝してもらわないとね」
「気遣いしてくださって、ありがとうございますぅッ♡♡ ご主人様に、気づかいしてもらえて、メグは幸せものですぅッ♡♡」
耕一郎はメグのくびれた腰をがっしりと掴み、腰を固定すると、アナルに差し込んだ増強チンポを前後に大きいスライドでしごき始めた。
「あぁ、あ、あッあッあッあッ♡ ア、アナルぅぅぅ♡ ほぉぉぉッ♡ アナルの奥うぅぅぅぅッ♡♡ おぉぉぉぉぉッ、ほおぉぉぉぉッ♡♡」
「いいよ、メグの中、いい動き方だッ! さすがプロのメス豚だなッ!!」
「あぁん♡♡♡♡ あぁぁぁぁん♡♡♡♡ ありがとうございましゅッ♡♡♡♡ メグはッメス豚なのぉぉ♡♡♡♡」
メグは興奮に身をゆだね、片足をバレリーナのように持ち上げた。赤いショーツを膝頭にひっかけた股ぐらが、しぶきをあげながら陰毛をゆらゆらと揺らす。
女のフェロモンをぷんぷんと漂わせながら、バレリーナセックスを堪能する二人は、ぎゅうぎゅうに締め付けるアナル肉快楽に酔いしれていた。
「おおおおおおッ♡♡♡♡ おほぉぉぉぉ♡ これッ♡ これぇぇぇぇッ♡ すごいところに当たるうぅぅ♡ びくびくって言ってるの、すぐにイっちゃうの、これ、イきまくっちゃううぅぅぅぅ♡♡」
一しごきごとにぎゅっぎゅっと、アナルの締まりが良くなる。耕一郎は、ぐ、と口をかみしめ、射精をこらえる。
アナル絶頂が近づいてきたことで、メグが、ぶるるっと身もだえする。腸壁が乱れ狂い、女の絶頂を予期して、痙攣する。
「もっと欲しいかい? ほらほら、強くしてほしいんだろ? だったらおねだりしろよ、ほらッ!!」
「はい♡ おねがいしますぅッ♡♡♡♡ メグのアナルをぶっ壊してくださぁいッ♡♡♡♡♡」
「よしッ!!!! イくぞ、射精するぞ、メグッ!!!!」
「おほおぉぉぉぉぉぉぉーッ♡♡♡♡」
ぶしゅるるるるッ!! そんな音が、メグのアナルの中ではじけた。
耕一郎の生殖器先端から放たれた白濁液の奔流が、メグの尻の中に流れ込み、腸内で渦を巻く。ぐりゅりゅ、とうねりまくる腸内粘膜に吸い取られるように、精液が、中に満ちていく。
メグは、あまりの快楽の酔いしれながら、白目を剥く。
「おッ♡ ほッ♡ おッ♡ ほッ♡ ほおぉぉ♡ おほぉぉぉぉ♡」
口を大きく丸く開き、舌をだらんと伸ばして垂れ下げる。緩みに緩み切ったメグは、半狂乱のアナル絶頂に全身をくねらせつつ、目の前のトイレのタンクにしがみつく。
この塾のトイレはやや旧式で、タンクの部分には水を流す器具があった。力尽きたメグはそのホース状態の器具の水を流す部位の下に頭を持っていき、支えていた。
それはまるで酔っ払いのような姿だった。前後不覚に陥るほどに脱力したメグは、ごぽっという音と共に流れ落ちる精子を便器に流れ落ちさせながら、うっとりとしがみつく。
次の瞬間だった。
だらんと下げたメグの手が、なんらかの拍子にレバーを下げてしまっていた。
そのホース状態の器具から、水が流れ出る。
じゃああー……という音が、メグの後頭部で響き、同時に冷たい水がメグの頭に降り注いだ。
「はぁぁん……♡♡ はぁぁ……♡♡ あ、冷たくて、気持ちいい……♡♡」
流れ出た水が、しがみついたメグの頭に浴びせられ、びっしょりに濡らしていく。
あっという間に、メグの美しい顔が水びたしになった。
「あはははははは!! びっしょびしょじゃないか!!?? 惨めだねぇ!? 雌豚にふさわしいよ、あははははは!!」
嘲り笑う少年、耕一郎は、心底軽蔑したように、腹を抱えつつ、アナルをうがっていた肉棒をさすった。最後のトドメとばかりにすぼまった尻穴をほじくると、絶頂に悶え狂うメグが、ビグンビグンと小刻みにわななき、腸液の混じった黄ばんだ精子があふれ出ていく。
「全く……メグ、君はまだ訓練が足りないみたいだ。僕のママや姉さんは、君みたいにはしたなく乱れたりしないよ? セックスの最中も、淑女のたしなみを忘れちゃいけないんだ」
「は、はい……♡♡ 申し訳、ございません♡♡」
耕一郎はメグの顎に手をやり、顔を持ち上げさせた。
水に濡れた唇が、ピンクに濡れて光る。
「じゃあ、今日は特別に課外授業だ。ホテルに行くよ」
「は、はぃ……♡♡」
メグは、耳元でそうささやかれ、次なる期待に胸をときめかせていた。
魔法少女、メグの人生は、こうして淫欲に取り込まれ、終わりを告げた。この後、メグがどうなるのかを知る者はいない。
ひと時の甘い肉欲の日々に狂い尽くし、その向こうにある廃人としての生涯を過ごすのか、それとも仲間に助け出され、人生を取り戻すのか……それは、誰にも分からない。
ただわかっているのは、耕一郎というゆらぎを取り込んだ少年が、その邪悪を謳歌するためのきっかけとなってしまったという事実のみである。
「もう僕の味方たちは消えちゃったからね。新しい味方を見つけて、そこから、また本格調教をしてあげないと」
ぐったりするメグに聞こえないほどの小さい声で、耕一郎は独り言をつぶやく。
取り巻きの四人の少年は、メグを陥落させてからの一ヶ月で、一人、また一人と姿を消していった。力尽きて消滅したのか、魔法少女に討ち取られたのかは不明だ。だが、危機が迫ってきているのは間違いない。耕一郎は、触手とタコという二つの武器を手に入れつつも、まだ油断はしていない。ゆらぎの力の宿主を探しながら、メグの力を日ごと、自らに取り入れている。
「僕は、僕の望む女、全てを手に入れて見せる……!! メグ、君には役立ってもらうよ!」
そういながら、耕一郎はメグの唇を奪う。
「あぁ、ん……♡♡ ちゅぐ、ちゅぐ……♡♡ お、お役に、たち、ましゅうぅう……♡♡」
絶望と暗黒の押し寄せようとしている中、二人は汗と精液にまみれながら、いつまでも口づけを続けるのであった。
終わり
この作品は二次元ドリームマガジンに追悼特集に掲載された綾守先生のあらすじに私が想像で追加したものを伊藤巧先生に書いて頂いた作品です。
魔法少女アイシリーズは色々なトラブル(特に魔法少女アイ3の残念っぷり)などもあり、綾守先生の外伝には非常に期待しておりましたところ、訃報を聞きました。
当時は本当に驚きました。
綾守先生の作品だけは発売日を調べて、本屋で買っていました。
ご病気とは聞いていましたが、そこまで悪いとは想像していませんでした。
エロ小説の小説家に感想や応援のメールやはがきを送るなんて馬鹿馬鹿しいと嘘をつき、本音はただ恥ずかしいと思っていた自分が情けないです。
そんな後悔からある意味少しでも供養出来たらと思い、あらすじや資料を少しずつ用意し作っていただきました。
いいものが出来たと感じております。
近々この魔法少女メグのアンケートを取りますので、ご参加いただければ幸いです。
この作品が一瞬でも綾守先生がいなくなったことの皆さんの孔を埋めれれば嬉しいです。
魔法少女アイ外伝は楽しみにしてファンも多いと思うので、二次作品ですが楽しんでいただければ幸いです。