御堂レイカ 外伝~続・地下鉄A筋線近辺では~前編

あらすじ

レイカのおとり捜査のおかげで逮捕者続出。
駅の痴漢率の劇的な下がり具合。
もちろんレイカのおとり捜査の技術とグラマラスなボディの存在があったが、拓哉の情報もかなり有効に使えた。
千手の件で落ちた信頼を回復させ、警で以前バカにしてきた幹部すらもこの結果にレイカを見ると気まずそうに傍にどく。
優越感を感じていることをまるで感じさせず歩く。
それと同時に、拓哉への報酬を考える。
順調に成果をあげていたが・・・。
これは~地下鉄A筋線近辺では~の続編です。


痴漢の絶えない地下鉄A筋線での攻防から数日が経過した。現在、かの御堂レイカの活躍によって、続々と逮捕者が確保されている。
もちろん、彼女の傾国の美女とでも言うべき美貌と、スーツにきつく収まったグラマラスな肉体、その淫靡なシルエットが貢献したことは間違いない。加えて、拓哉の情報網が役立った。
今となっては、白く傷ひとつないうなじに目をやることも許されず、彼女を馬鹿にしてきた警察の者たちは頭を垂れ、女王の邪魔をせぬように道を開けた。千手の件での失墜は、完全に回復していた。
囮捜査で何度も功績を上げてきたレイカは美しかった。取り戻された名誉に決して驕ることなく、肉感的ながらすらりとした脚で廊下を歩く。結わえた金髪から、ヒールを履いた爪先に至るまで、彼女は完璧だった。一歩歩くごとに、金髪は艶を見せつけながら、さらさらと流れる。
豹のようなしなやかさを帯びた肉体は、豊満でありながら隙を一切感じさせることがない。弾力のあるたわわな乳房や、整った逆ハート型のヒップに視線が行く若い警官もいるが、彼女は悪さをされない限り、手を出すことはしない余裕を持っていた。
学生時代に痴漢を受け、その度、理不尽な目に遭って来た彼女の「理不尽を撲滅する」という意思は、今なお鉄のように硬い。
大胆にして不敵。被害者心理研究所所属、御堂レイカとは、そういう女だった。

さて、驕ることはないレイカだったが、今の署の空気は実はまんざらでもなかった。自分を小馬鹿にした人間が道を譲るのはやはり爽快であったし、何よりいつもの空気に戻ったことが、彼女の心を安堵させた。
だが、彼女には一つの考え事がつきまとっていた。
(赤か……)
それは、今回の痴漢撲滅に協力の姿勢を見せた、田中拓哉への報酬のことである。
田中拓哉は痴漢グループのリーダー的な存在だ。不動産の家賃収入と株で生計を立てる彼は、地下鉄A筋線を根城として、痴漢を行っていた。痴漢を抜きにすれば、顔立ち良し、頭よし、弱者にも優しい、まっとうな人柄の男だ。だが、彼はどうしようもなく性とスリルに惹かれる男だった。
レイカがそんな彼と取引をしたのは、ついこの間のこと。彼女をメスとして堕とそうとせず、オンナとして愛そうとしているかのような行為に、彼女の鋼鉄の心がほんの少しだけ揺らいだのだ。
結果として、レイカは自分とセックスをすることを条件に、彼に痴漢をやめること、また、情報を提供することという取り決めをした。彼の方もまんざらではなかったようで、何だかんだ、うまくやっている。
レイカの熟れたナカが、知らず知らずのうちにわずかに甘く疼く。今日は彼と会う日なのだ。
聡明な彼女はもちろん、拓哉が赤の下着を喜んでいたことを思い出していた。
今日の待ち合わせは二十二時、高級ホテルのプールだ。ただ、赤く煽情的な下着だけをつけていくことでは少々物足りなさを感じた。
(折角のプールだし、赤いビキニでも準備しようかしら)
自分のはちきれんばかりのバストとヒップを収める水着を探すことは難しそうであったが、レイカは頷いて、仕事を上がる。

彼女の足取りは軽い。帰りに店に立ち寄って、水着を探す。狙ったように、フリルのついた
赤いビキニが売られていた。彼女のグラマラスな胸も、くびれた柳腰も、逆ハートのヒップも、ひとつも無駄にしない丁度いい水着があった。
(運が良かったわね)
上機嫌で彼女は水着を購入すると、一度自宅に戻り、準備をする。
背中の開いた煽情的な私服を着て、拓哉の好きな赤色のルージュを瑞々しい唇に引く。派手な化粧は必要ない。彼女の口元の色気は、元あるほくろと口紅だけで十分に引き立てられていた。
準備を終えたレイカは目的地に向けて、やはり流麗に歩き出した。

高級ホテルのプールにレイカの姿はあった。彼女は先ほど買った情熱的な色の水着を纏って、柔らかくまとわりつく水の感触を楽しんでいる。
やはり彼女の胸は大きく豊満で、それをどうにか包むビキニは今にも弾けて、乳房をまろび出させてしまいそうなほどだ。美しさと淫靡さを兼ね備えた蠱惑的なボディを周囲の客に見せつけながら、彼女はゆったりと優美に泳いでいく。
引き締まりながらも人を蠱惑してやまない脚が水を掻く度、男たちの視線は彼女へと向いた。
が、高級ホテルということもあって、彼女自身に手を出す不埒な輩はいない。
レイカは泳ぎながら、仕事のことについて思索する。
(確かにあの事件からいろいろあったけれど、今は順調ね)
今のところ、レイカを阻むものは誰もいなかった。彼女の大胆不敵な潜入捜査によって、検挙率はうなぎ上りだ。
彼女は何の心配もなく、ビキニに包まれた胸を晒して背泳ぎを始める。バストの谷間に溜まったプールの水がさらさらと湧き水のように肌を伝う。
(こういうリラックスした時間も久しぶりだわ)
軽く泳いだ彼女はしっとりと濡れた髪もそのままに、プールサイドに上がり、ロッキングチェアに身を委ねた。
下手なナンパに絡まれることもなく、サングラスを上げて、優雅な時間を過ごしている。
レイカは口当たりのいいソルティ・ドッグを口にして、塩でざらついたグラスの淵と共にグレープフルーツの酸味を味わう。あっという間に、グラスは空になる。
「やっぱりあんたには赤が似合う。サイコーだ」
「あら、ありがとう」
空になったグラスに、いつの間にか来ていた拓哉が酒を注ぐ。その引き締まった二の腕や精悍な胸板に、レイカは流し目を送る。拓哉の鍛え上げた逞しい肉体が、数日前の情事を思い起こさせる。
ウブなお姫様のように扱われたことも、忘れてはいない。彼女は少し、仕返しをしてやろうと思った。グラスを置いて、プールの中へ、しなやかに肉体を見せつけながら入っていく。
そして、拓哉の胸板に向けて、水を掛けた。
とっさにグラスを守って、拓哉が笑う。
「はは、やったな?」
「やったわよ」
拓哉もグラスを置いて、プールの中へと飛沫を上げて飛び込んだ。
大きな浮おき輪を持ち出して、二人で心地よい水の中を揺蕩ったり、ビーチボールを投げ合ったりして、子どものようにじゃれあった。
「……やっ。もう!」
「嫌いじゃないだろ?」
その度に、拓哉はレイカの瑞々しいヒップを撫でたり、たわわで張りのある乳房に触ったりした。それが本当に優しいタッチ程度のものであるから、レイカの中にいやらしいもどかしさが積もり始める。
「ふふ、どうかしら?」
羽毛で触れられるような優しい手つき。そんな拓哉の手から逃げるように、レイカは水の中を泳ぐ。拓哉もまた、彼女を追いかけていく。
「あんな美人と遊べるなんてなあ」
「どんな上流階級の人なんだろう」
レイカに目を奪われる衆目は、彼女を追う拓哉と見比べながら、そんな憧れを呟いて顔を見合わせる。それを耳にした拓哉が、レイカに追いついて囁きかける。
「お似合いだってさ」
「あら、耳ざといのね。調子に乗って痛い目を見るのはあなたよ?」
「こりゃ手厳しいな」
からかわれて、拓哉は少し納得のいかない顔でまたレイカを追いかける。まるで水鳥の求愛のように、離れては近づき、近づいては離れを繰り返す。
煽情的な水着に包まれた胸を見せつけるように、レイカが背泳ぎをはじめる。
「だが、これを独り占めして、調子に乗るなという方が難しいってもんだ」
拓哉がゆっくりとした平泳ぎで彼女を追いかけて、プール端でようやく捕まえる。
「今度こそ捕まえた」
「仕方ないわね」
彼の手が、レイカの肩を撫で上げる。身体は水の中にあるのに、切ない熱を帯び始める。それは、拓哉も同じようだった。
優しい顔をして、その眼差しは得物を狙う禽獣そのものの光を帯びている。レイカは今にもビキニからこぼれそうな胸を、拓哉の胸板に押し付ける。
「ねえ。またイかせあいしましょ?」
レイカの柔らかな唇から、甘い誘惑が拓哉へと囁かれる。
「勝ったら言うことを聞いてくれるのか?」
くつくつと喉を鳴らし、拓哉はレイカのビキニの紐に人差し指を引っかける。
レイカはそっと拓哉の指を離させて、プールサイドへと上がる。拓哉もビーチボール片手に彼女のくっきりとした尻のラインを追う。
「じゃあ、続きはあっちで、ね?」
「分かってる」
二人は連れ立って、プールを後にする。利用し利用される、あるいはささやかなセックスフレンドの類であるが、傍目から見れば二人は危険な綱渡りをする恋人のように見えた。
その視線の中に、レイカを狙う一組の目があったことは、まだ二人は知らない。

更衣室を出て、拓哉の部屋に入るなり、二人は肉欲のままに互いを貪り始めた。
拓哉がレイカの歯列を舌でなぞり、強引に差し込み、グレープフルーツの香り残る口腔を蹂躙する。
レイカも負けじと拓哉の唇を舐め、舌と舌を絡めて、甘く痺れる快感を求め続ける。二人の腕は絡み合い、頭や肩を撫でる。
やがて互いをきつく抱いたまま、二人はキングサイズのベッドへと倒れ込んだ。
「はあっ……やっぱり最高の女だな、お前は」
「んっ……ふふっ、褒めてくれてるの?」
二人は官能的に浸り、荒い呼吸を繰り返しながら、軽口を囁き合う。
レイカの服を引き裂かんばかりの勢いで、拓哉はブラウスのボタンを外していく。きつめに押さえつけられたフロントホックの赤いブラジャーが、早く外してくれとばかりに露わになる。
ヒュウ、と拓哉は口笛を吹く。
「悪くない報酬でしょ?」
「ああ、たまんねえ」
拓哉はフロントホックに指を掛けて、ぱちんと軽い音を立てて外す。瞬間、乳房が弾けるように姿を現す。
大きく、柔らかく、またハリもある。乳輪や乳首さえバランスの良い大きさの、完璧なバストを前に、獣の本能がむき出しになった拓哉はたまらず乳首にむしゃぶりついた。
「ンっ……」
初心な女なら、快感に悲鳴を上げてしまっただろう。だが、レイカは軽く白い喉を反らすだけで、まだ嬌声を上げない。
しかし、拓哉の絶妙な舌先が、巧みにレイカの調教された胸から快楽を引き出していく。
(そう、これぐらいで音を上げるオンナじゃない)
彼女の様子をちらと見て、拓哉は心の中で舌なめずりをした。
彼は姫に仕える従者のように、濡れた彼女のブロンズヘアに指を通す。気取ったリードに、レイカは唇を尖らせるが、再び始められた胸への刺激に身を震わせる。
「アッ、ちょっと……」
激しい行為から一転、拓哉の手つきが変わったことに、レイカは戸惑う。調教しつくされた胸を、舌が優しく這い、掌がそっとまさぐる。
鋭い刺激のない、やわやわとした焦らしのテクニックに、もどかしさを感じ始めて身じろぎしてしまう。
拓哉の舌がちろちろと左右に乳首を嬲る。唇が乳輪を吸い上げる。
「んんッ……」
口を閉じて、レイカは鼻から喘ぎを抜く。しかしそれだけで、レイカの色香というものは十分に溢れ出る。淫靡な女王様の顔が露わになり始める。
彼女の赤い下着の中に、難なく手を滑り込ませる。アンダーヘアに絡むステージのような熱気が彼を出迎える。少し熱気をくぐってやれば、次にあるのは挿入を今か今かと待つ女陰の湿気だ。
指を絡めれば、愛液が待っていたとばかりにぬるぬるとまとわりつく。
「だいぶ濡れてるな、そんなに待ち遠しかったか?」
愛液を蜜壺の入り口に塗り付けながら拓哉が問うと、レイカは強気な笑みを浮かべながら、拓哉の目をまっすぐ見据える。
「ン……プールの時から触ってたでしょ? 待ち遠しく思っているのはあなたよ」
「確かにな。それじゃあ、これでたっぷり可愛がってやる」
これから精液を注ぐ下腹部を優しく撫でまわしながら、拓哉は自らのベルトのバックルに手を掛けて、そそりたった肉棒を露出させる。
レイカの視線が己の男根に向けられて、ほんの少し期待しているのを、拓哉は見逃さなかった。
決して堕ちはしない高潔な彼女という女に御されながらも、交尾狂いの雌は自分を悦ばせる逞しいペニスを求めているのだ。
「お楽しみはこれからだ」
「期待してるわよ?」
お互いの余裕を見せつけながら、二人は笑ってみせる。
そして二人はさらなる悦楽を求めるべく、セックスの深みへと漕ぎ出した――。

(ふふ、悪くないわね)
無意識のうちに、レイカは休暇を心から楽しんでいた。男との『イかせあい』で、これほど身体が盛ったことはなかった。それが何より痛快だった。
彼女は拓哉と別れ、女性用のシャワールームでシャワーを浴びていた。普段は余裕に満ち溢れ、些細な事も見逃さない彼女だったが、今回ばかりは少し浮かれていたのだ。
「……っ!」
自分の体に走った電撃がスタンガンによるものだと気づいた時には時すでに遅し。
彼女の濡れた艶めかしい肢体は衝撃に強張った後、まるで糸の切れた操り人形のように弛緩する。
そう、プールの時から彼女は二人組の男に狙われていたのだ。
朦朧とする意識の中、かちゃんと音を立てて、レイカのお気に入りのサングラスが落ちる。
(くっ……こいつら!)
せめて一撃だけでも食らわせてやろうと足掻くが、彼女の体は思うように動かない。
「これが『囮捜査』をしくじった女かァ」
「静かにしろ。これから楽しい楽しいいたずらなんだ、運ぶぞ」
見慣れない下卑た男二人の視線を上に感じながら、ぐったりとしたレイカはそのまま、柳腰から抱えられてどこかへと連れ去られて行く。
まさに女王の失態だった。よもや自分の気の緩みで囚われの姫君になろうとは、レイカも想像してはいなかった。
犯行現場に残ったのは、栓を締められきっていないシャワーと、落ちたまま放置されたサングラスだけだった。

(ここは……)
次にレイカが意識を取り戻した時、彼女はまったく別のところへと移動させられていた。
事態を把握し、迂闊だったと歯噛みをしながら彼女は鋭く視線を巡らせる。
(防音設備のある部屋ね……それに)
どうやら自分の体や腕は壁のような拘束具に挟まれていて、思うように身動きが取れないでいる。上半身だけをさらけ出しているような状態だ。
(悪趣味な水着ね)
挙句の果てに、乳首の部分をハートにくりぬかれたシースルーの水着を着せられていた。並みの男どもが見たら股間を膨らませて迫って来るようなデザインに、レイカは食傷気味の表情を浮かべる。
「おお、目が覚めたみたいだね。こんにちは」
男の声に気づき、レイカは冷たい眼差しでそちらを見る。暢気にも挨拶を掛けてきたのは、ニットキャップを被った中肉中背の二人組だ。どちらもいやらしい笑いを浮かべ、拘束されたレイカを舐めまわすように視姦している。
「気分はどうだい、御堂レイカちゃん」
「良いと思っているなら、頭の中を一度取り換えた方がいいわよ」
 怯まない二人組を見て、レイカはため息をつく。
「……こちらのことは調査済みってわけね」
「もちろん。地下鉄A筋線でのウワサもね」
「ボクらそれでファンになっちゃったんだよ」
男の手が胸の下から差し入れられ、彼女の豊満なバストを上下に揺らす。その度に、彼女の乳房は音を立てそうなほど弾む。
「ふん、犯すなら、さっさと犯せばどう?」
「違うんだよ、レイカちゃん」
「ンっ……!」
胸を弾ませていた男の手が、やにわにレイカの乳首をつねる。今までの調教で、レイカはそれだけで甘い疼きを感じてしまう。
「そう、ボクらはレイカちゃんのおっぱいを育みにきたんだ」
もう一人の男がノートとペンを手に、にやつきを隠すことなくレイカへと告げる。
「こんな逸材をこのままにしておくなんて、もったいないじゃないか」
乳輪をなぞっていた男が、不意にレイカの乳首を指ではねる。
「ひんっ……!」
突如襲い掛かった強い性感に思わず声を漏らしてしまったレイカは、男たちを睨みつける。
「やっぱり乳首は敏感だね。でも、もっとよくしてあげるからね」
「勃起した乳首の硬さはどうだ?」
「思ったよりは硬いかな。でも指で潰せるぐらいだよ、ほら」
男はもう一人の男に訊ねられながら、何気なく乳首を人差し指と親指で摘まみ上げる。
「うっ……」
小さなうめきを漏らしたレイカに、男たちの笑みが深まる。後ろでノートを取っている男が、今度はあろうことか透明な定規を持ち出してくる。
「乳輪の大きさ計ってあげるね」
「ちょっと、何するつもり……ンッ」
氷ほどではないにしろ、冷たい定規の感触がレイカの胸を震わせる。定規越しに、押し潰された乳首と乳輪が男には見えているのだろう。今まで考えたこともなかったいやらしい発想に、彼女の顔が歪む。
「4センチ……いや、5センチぐらいかな。平均よりちょっと大きいぐらいだね」
後ろの男はにやにやしながらノートにレイカの乳輪の大きさを書き込む。
「乳首はジャスト1センチだって」
「へえ、胸の大きさにしては普通なんだ」
(こいつら、こっちが動けないからって……!)
足を動かしてはみたものの、女王を捕らえる拘束具は揺れ一つ起こさない。男たちの悪趣味が詰まった城壁だ。いかなレイカといえど、敷き詰められた男たちの欲望の煉瓦には敵わない。
「おっぱい自体の硬さや重さは?」
男の骨ばった手が乳肉をつねり、そのままバストを持ち上げる。きりきりと指先でつねられる感覚が、痛いながらに気持ちいいと、レイカは声を殺す。
「いっ……!」
「やっぱり見た目通り重量感はあるね。でも柔らかいし……」
十分に持ち上げてから、男はぱっと手を離した。自らの胸の重みが、そのまま快感となってレイカの理性にのしかかる。
「アッ……」
「言うまでもなく、ハリもいい」
後ろの男に定規を投げ渡して、男は右胸の下に手を差し入れ、指で横乳を撫で始める。きめ細やかなレイカの肌を、堪能するかのように。
「ンンっ……」
男の手の体温とこそばゆさに、レイカはわずかに身じろぎをする。乳首や乳輪に触らない、優しい触れ方で、男は指を滑らせる。
「すごくお手入れしてるね」
「あなたのためじゃないけれどね……くっ」
ほんの少し力を入れられて、レイカは小さくうめく。弾力のテストでもしているかのように、男は力加減を変えながら、右胸を手で犯していく。調教された胸は、その簡単な動きにさえ反応してしまう。
まるで乳首の先から母乳を絞り出すように、男は乳を揉む。触られていない乳首が存在を主張するかのように、じんじんと切なくなってくる。
(このままじゃ……乳首、勃っちゃう……)
レイカの懸念通り、右胸の乳首が徐々に盛り上がって、固くなっていく。男はこれを狙っていたようで、隆起した乳首とレイカの顔を見比べる。
「触ってもいないのに勃っちゃったね。えっちなこと考えてた?」
「そんなわけないでしょ?」
「強がってもダメだよ。それじゃあ、今度は左胸の方もしてあげようね」
また同じように胸を触ってくるのだろうと高をくくっていたレイカに待ち受けていたのは、触れるか触れないかのフェザータッチだった。男の手は、薄皮一枚向こう側にあるような繊細な距離感を保ちながら、レイカの乳房を撫でる。
「やっ……」
プールでの拓哉の優しい手つきが思い出されて、唐突にもどかしくなる。
顔に出さないようにと目を背けるが、異変があったことを見逃さない男ではなかった。興奮した吐息を出してなお、男の手つきが変わることはない。
くすぐったさと早く乳首を触ってほしいという願望が、レイカの中を駆け巡った。乳輪ギリギリのところを人差し指で責められて、とうとう彼女の左胸の乳首も勃ってしまった。
(ンっ……こんな、やつらに)
どうにか隙を見せて、脱出しなければとレイカは考えた。だが、そのためにはまだまだ、堕ちたフリをすることが必要だと彼女の明晰な頭脳は弾き出す。
(もうちょっと、従順なフリをして……)
そう思ったレイカを見抜いたのか否か、男は顔を近づけ、音を立てて鼻から息を吸った。
「良い匂いだ。これがレイカちゃんのおっぱいの匂いかあ」
挑発的とも言えるその態度に、レイカは氷より冷たい視線を投げかける。だが、男たちはまったく気に留めてもいない。
それどころか、キャスターのついた机を引っ張ってきて、次はどれで「おっぱいを育もう」か考えているようだった。
内心嫌がりながらも、レイカはその台の上にある道具を見る。ありきたりな歯ブラシと、電動歯ブラシ、オフィスで見かける目玉クリップ、そして見慣れない胸用と思しきラブグッズも見える。
「これを全部使って、楽しんでいこうね」
男は耳かきを置き、目玉クリップをカチカチと鳴らしながら、レイカに近付いてくる。
次に何をされるのか。おおかた予想がついたレイカは、何も言わず睨み返し続ける。
「知ってるんだよ」
思ったよりも俊敏な動作で、男は右の乳首をクリップで挟む。当然、敏感なところを金属の力で挟まれれば、痛みもする。
「いっ……ぎっ……!」
これにはさすがのレイカも苦悶の表情を浮かべる。だが、しばらく挟まれていると、挟まれている部分がじんじんと熱を帯び始める。
男の手がクリップをつけたまま乱暴に胸を押したり持ち上げたりする度、痛みは増大していく。
普通であるなら、泣きわめくほどの痛みがレイカの胸の先端に襲い掛かる。そう、普通であるなら、耐えられもしないのだ。
だが、拓哉との情事に残っていた快楽が、野火のように彼女の中で燃え広がり始めていた。
(い、いや……これって)
加えて、この痛みと忍耐は彼女のある記憶を想起させていた。
かつて千手に敗北した時、たっぷりと調教された身体は知っているのだ。『苦痛を耐え抜いた後の快感はとても気持ちがいい』ということを。
レイカの気付かぬうちに、そのように調教された尻が、切なげに揺れる。
(耐えないと……)
分かっていても、為す術はない。自慢の胸を上下に揺らされ、左右にこねくり回されながら、レイカはこの痛みを耐える他ない。
そこへ来て、男はもう片方の乳首を普通の歯ブラシでつつき始める。タイプの異なる刺激に、レイカは翻弄されるしかない。
「ンっ、ンンッ……!」
せいぜい抵抗できることと言えば、声を出さないようにすることぐらいだった。だが、目玉クリップに挟まれた痛みに、うまく集中ができない。その上、歯ブラシの毛先が、乳房の先をくすぐったく責めてくる。
「母乳はこのあたりから出るのかな?」
「ンアッ……!」
唐突に毛先をぐりぐりと押し付けられ、まるで乳首を掘られているような錯覚にさえ陥りそうになる。かと思えば、目玉クリップをつけられたまま、柔らかな乳房を思い切り押し込まれる。こりこりと隆起した乳首が、ひたすら拷問のように彼女を襲い続ける。
レイカの二つの胸は、今まさに男にいいように扱われる肉の玩具だった。
「んぎっ……!」
ついに男はもう一つ目玉クリップを取り出して、歯ブラシで弄っていた方にも取り付けた。レイカは歯を噛みしめて、苦痛のうめきを漏らすが、男はやはり気にしていない。
そして、二つの目玉クリップを持つと、そのまま少しずつ引っ張り始めた。痛みと痺れが、彼女の精神を締め上げる。
「やっ……それは、だめ……!」
痛い。でもその後に待っているものは、きっと気持ちがいい。このままクリップが外れたらどうなってしまうんだろう。マゾヒスティックな妄想がレイカの中を駆け抜ける。
「んぎいいっ……!」
そんなの、知れたことだ。ばちん、と音を立てて二つのクリップが外れると、脳天へと痛みと、それ以上の快楽が突き抜けた。
一瞬にして彼女の中で記憶と快感が弾けた。そう、胸から堕落させられた元快楽の囚人の彼女だからこそ、この気持ちよさを受け入れることができるのだ。それをアナル責めの時にいやというほど味わった。敗北の気配が彼女の脳を揺らす。弱気にむさせる。
(負けちゃう……っ)
軽くイってしまいそうになる刺激を、必死になって耐え、彼女の頭はくたりと下を向く。
「ハァ、ハァ……」
真っ赤に腫れあがった乳輪が、どれだけ強く挟まれたかを物語っていた。じんじんと熱くしびれる乳首をそのままに、荒くなった呼吸を戻そうと、レイカは押し黙る。
次に男が取り出したのは電動歯ブラシだった。電池の入ったそれのスイッチをONにすると、振動音と共に歯ブラシの毛先が細かく揺れ始める。
「ひっ……い、っ……!」
腫れて赤らんだ乳首に迷いなく押し当てられると、レイカの中で小さな快の火花が弾ける。声を押し殺すことが徐々にできなくなってきていることを、彼女も自覚し始めていた。
(痛い、のに……!)
今度は乳首だけを持ち上げるように歯ブラシが押し上げられる。レイカの乳首は輪郭を失いそうになるほどみじめに振動する。被虐的な感覚に荒くなった息は、悩ましげな色を帯びて鼻や開きかけた口から漏れる。
「声、我慢しなくていいんだよ」
「うっ……誰が、こんなのに、ぃぃっ……!」
強情なレイカの鋼の精神を溶かすべく、男は巧みに歯ブラシで乳首を磨いていく。ひりひりとした乳首には、触れるような刺激も、押し付けられて感じる振動も、もう快感の類にしか感じることができない。
硬い毛先で根本から先端まで、無垢な木材を彫刻刀で形作るがごとく撫で上げられる。かと思えば、母乳が出るかと思うほど、先端を深く掘り、抉られる。
「アッ、んあ、アアッ……!」
今まさにレイカは乳房を歯ブラシに磨かれるごとに嬌声を上げる、淫猥なアート作品と成り果てていた。これには、男も満足げな笑みを見せる。
「大分いい感じになってきたね、レイカちゃん。どんどん素敵なおっぱいにして、イかせてあげるからね」
「ハァ、ハァ……アッ、アアッ……」
快感で潤んだ目でレイカは睨み、歯噛みする。しかし、その胸を再び歯ブラシで刺激されると、あっけなく喉を反らして啼き始める。ねちっこい責めに、彼女の金髪から汗が滴り落ちる。
「ふうっ……ふうっ……胸ばっかり。とんだ変態ね」
電動歯ブラシを置いた男に、レイカは息を切らせながら不敵に笑いかける。男はといえば、にやにやと楽しそうに笑いながら、机の上のラブグッズを手にして近寄ってくる。
「ここまでさせておいて何だけれど、あいにくと、私の胸は性感帯じゃないの」
見えないところで汗ばんだ太ももをこすり合わせながら、レイカは強がりを見せる。そう、これは強がりだ。すでに下半身の疼きは強く、彼女に悩ましげな欲望を囁き続けている。それでも彼女は、弱さを見せようとはしない。
「いい加減、さっさと終わらせてくれないかし、いぃっ……!」
歯ブラシが離れるが、その直後に胸を鷲掴みにされて、きつめに揉みしだかれる。レイカの口から、上ずった声が漏れる。
「じゃあ、もうちょっとレイカちゃんのおっぱいに準備運動させちゃおっか」
(今までが準備運動!?)
レイカは聞き間違いかと思ったが、男たちからすればそうでもないらしい。次に持ってきたのは、胸に装着するタイプのローターつきカップだ。
「心配しないでも、この後はボクたちのテクでもっともっとよくしてあげるからね」
「粗末な腕前なのに、強がらなくていいのよ?」
好戦的なレイカの言葉にも、男は表情を崩さない。よほど、自信があるらしい。レイカは打っても響かない男の様子に、つまらなそうに眉を寄せる。
「まあまあ、楽しんでね。もしかしたらこれで一回目、イっちゃうかもしれないし?」
やはり為す術もなくカップを装着されてしまう。男はちゃんと装着できたことを確認すると、ローターのリモコンを手ににやつきを深くする。
「じゃあ一番弱いのから行くね」
男は確かにそう言って、スイッチをスライドさせた。
「はううっ……!!」
しかし、与えられたのは「最大」の振動だった。思わずレイカの口から悲鳴に似た喘ぎが漏れる。
(ンッ、んんっ、これ、きついぃ……っ)
半開きになった口から、抑えきれない甘い声が漏れる。今の今まで責められ続けた乳首に、激しい振動が加わる。それだけで、下腹部がひくついてしまう。がた、がたと拘束具を鳴らしながら、レイカは身もだえする。
「アッ、ア、アッ、だめ……イきたくない、のに……!」
ほんの数十秒振動を受けているだけなのに、下腹部のざわざわした感覚が強まってくる。歯を食いしばって、鼻から荒く息を吐き、レイカはどうにか耐えようと爪先を丸める。
ところが、今まさに絶頂を迎えようとしたその時、急にバイブレーションの勢いが弱まったのだ。
「なんてね」
「な、なんで……?」
朦朧としかけた意識の中で、思わずレイカはそう問いかけてしまった。男はレイカを覗き込みながら、にやりと笑う。
「レイカちゃんは、ボクたちの手でイくんだよ」
「機械じゃ味気ないだろう?」
どこまでも悪趣味な男たちに、レイカは息を整えながら、顔をしかめる。しかし男たちも余裕を与えることをしない。
「ンヒぃぃっ!!」
再びバイブレーションが最大まで引き上げられ、レイカはまた甘い悲鳴を上げる。そして絶頂寸前になると、またじれったいレベルにまで振動を落とされる。
まるで被害者心理研究所所属、御堂レイカという誇りの城壁を木っ端微塵にする破城槌だった。
「アッ、いや、いやっ、弱めたらまた焦らされてっ……!」
男たちの正確なコントロールに翻弄され、レイカは濡れた金髪を振り乱して喘ぐ。イきそうでイけない焦らし地獄のただ中に彼女はいた。レイカの声自体がチューニングされているかのようだった。不定期に高められては嬌声を上げ、弱められては切なげな声を漏らす。レイカにできるのはそれだけだ。
マグマのような性欲が、どんどん蓄積されている。レイカ自身にも自覚できるほどの熱量は、解放を今や遅しと待っている。
「アッ、アッ、アアッ、いや……!」
「これはレイカちゃんも気に入ってくれたみたいだね」
「ふざけ、ないで……ンアッ、アッ……」
頭を激しく横に振って、レイカは健気なレジスタンスよろしく抵抗する。だが、結局のところローターの振動は男の手に委ねられている。
(イくっ、イくから、弱めないでっ! アッ、だめ、振動が弱くなっちゃう、弱めないでっ!)
限界まで高められた快感が、絶頂を目の前にしてしぼんでいく。お預けを何度も何度も繰り返されて、彼女はすっかり汗だくになっていた。
「そろそろ頃合いかな?」
男がレイカの顔を覗き込みながら、やっとスイッチを切る。
「ハアッ……ハアッ……」
「ここからはね、もうちょっと激しくするからね」
息も絶え絶えなレイカからカップが外される。男たちは手足の拘束はそのままに、彼女を閉じ込めていた箱のような拘束具から、彼女を解放する。
(くっ……まだ、その時じゃないわ……)
今すぐにでもこの男たちを殴り倒して脱出したいところだったが、隙が伺えない。レイカは大人しく拘束されたまま、男たちとも目を合わせずに沈黙する。
「まずは……」
「ンアアッ!」
正面から乱暴に乳を掴み上げられて、思わずレイカは甘い声を出す。男は親指で円を描くようにしながら、絶えず乳首を刺激する。
「うんうん、十分に気持ちよくなる準備はできてるね」
「は、んっ・・・誰が、そんな、ひんっ!」
最初は円を描くだけだった手が、胸全体を優しく揉みしだき始める。彼女の美しいラインの双乳が、揉まれる度に下品に歪む。一緒になって上下させられる。ばらばらの動きをさせられる。かと思えば、強く掴まれて、男の指が大きく沈む。
たわわな乳房のハリと柔らかさを男は堪能している様子だ。
「いっ、やっ……!」
「あれ? 余裕なくなってきちゃった?」
「おい、そろそろオレにも少し触らせてくれよ」
「おっと、ごめんごめん。ほら、最高だよ」
さっきまでノートを取っていた男が今度は後ろからレイカの胸を鷲掴みにする。人差し指と中指で乳首を挟みながら、掌全体を使って揺さぶりをかける。
背中越しに、男のモノが勃起していることを、レイカは否応なく理解してしまう。しかしそれは相手のペースを乱すチャンスだと、彼女は口を開く。
「ふふん、勃たせちゃって……シたくてたまらないんじゃないの?」
「勘違いしてもらっちゃ困る。オレたちはあんたのおっぱいにしか興味がないんだよ」
レイカの挑発に対して、男は耳元でねちっこく囁きながら、人差し指と中指で、乳首を転がすように動かす。
「ンっ、ひうっ……!」
絶妙な力加減に、レイカの心はまたしても翻弄される。雌としての顔が、早く突っ込んで掻き回してほしいという甘い甘い欲望が、彼女の頭の中で渦巻く。しかし、男たちはそれを許さない。
(アアッ、だめ、きもちいい……! こいつら、上手い……!)
指と指の間にきつく挟まれた乳首が疼く。その疼きに応えるように、男は乳輪をなぞり、乳首を嬲る。かと思うと、乳首をリズミカルに指で弾き始める。
「ンッ、アアッ、こいつ……アッ、アア、やめて……!」
反発しようとするレイカは、巧みな指使いを前にいいように奏でられる。開かれた口から、熱い息が何度も吐き出される。気が狂いそうな焦らしから一転して、一気に頂まで持ち上げて行こうという男たちの陰謀に、抵抗さえままならない。
息を切らしたところで乳房全体をゆっくりこねくり回され、その間にどうにか息を整えようとしたところに、また激しい乳首の責めが始まる。凄腕の揺さぶりが、彼女の性感をどんどん高めていく。
「そうそう、ボクらはレイカちゃんのおっぱいを育みにきたんだよ。おしりやおまんこには興味がまるでないんだ」
「この、変態っ……!」
ぞくぞくと駆け上がってくる快感を押し留めようと、レイカは歯を食いしばる。下半身が雄を求めて仕方がない。それなのに、このままでは胸だけで雌にされてしまう。そんな危うい発想が、彼女の理性を炙って溶かす。
「それ、イっちゃえ! おっぱいだけでイっちゃえ、レイカちゃん!」
男の無責任な歓声と、別の男の背後からの責めが過熱していく。今まで抑えに抑えられてきた性感が、ここにきて一気に押し上げられる。
腰のあたりからざわざわと快感がせり上がって来る。目の奥がチカチカし始める。無意識のうちに腰をうねらせようとしたが、それさえも男に止められる。
このままでは、本当に、本当に。
「いやっ、このままじゃっ、アッ、本当に……いぃぃっ!」
次の瞬間、レイカは絶頂に至った。全身をわななかせ、口を半開きにしながら天井を仰ぐ。
「アアッ、待って、やっ、まだイって……!」
それでもまだエクスタシーの波が引かない。イキ続けている。それなのに、背後の男は乳首の刺激を止めない。レイカは天国の階段から降りて来られず、口を開いて喘ぎ続ける。
「ああ、いい感じだね。じゃあ、ちょっと味見を……」
すると、前に立っていた男が突然レイカの胸をべろりと舐め上げた。味蕾のつぶつぶとした感触が、レイカの乳輪から乳首をねっとりと舐め上げる。
「いやっ……!」
やっと絶頂の波から抜けたレイカは、嫌悪感より先に快感を感じて拒絶の言葉を漏らす。男はその上ずった声に、隠し切れない笑いをこぼす。
「うんうん、おいしいよ、レイカちゃん。じゃあ、ここに……」
男はおもむろに自分のズボンをずらして、ギンギンにいきり立った肉棒を取り出した。
(オス臭いっ……ううっ、くらくらしちゃう……)
先走りの雄の臭いがむわっとレイカの鼻をつく。目の前に持ってこられたのでは、なおのことだ。目を伏せて、彼女はぽってりとした唇を引き結ぶ。
「じゃあ、お先にパイズリしちゃいまーす」
そう言うなり、レイカの美しいバストに、男はペニスを自分から挟み込む。優しく、重量を確かめるように男は手を動かしていく。
「おっ、おおっ、この重さ、柔らかさ、たまんない……!」
「うあっ、アアッ……ちょっと、人の胸をなんだと、思って……!」
その動作が徐々に荒くなり始めるにつれて、レイカも嬌声を上げる。必死の抗議もむなしく、男はどんどんその勢いを強めていく。
「あっ、あーっ、いいね。すごくいいよ、レイカちゃん!」
男がパイズリをすればするほど、先走りが溢れ出る。レイカの乳房にまとわりつく。それはにっちゅにっちゅと品の無い音を立てて、胸に塗り付けられていく。否応もなくレイカは雄の臭いを嗅ぎ、肉欲を深めていく。
(ううっ、こんな、こんな激しい……!)
念入りにしっかりと高められた胸だけで、レイカの快感はまた増幅されていく。男の腰使いと、胸を揉みしだく手つきが、彼女を高揚させていく。
男の荒い息がレイカに掛かる。それほどまでに、男と彼女の顔の位置は近い。
「ねえ、密着感が最高だよ。もっと、もっとやっていい? ねえ、レイカちゃん」
「ンッ、えっ、ちょっと、まさか……」
ヒートアップした男はパイズリをしたまま、レイカを後方へと押し倒していく。当然、彼女に拒む権利などない。蟹股になった男は、ひたすら彼女の胸を揉み、彼女の乳房の柔らかさと重さによって、肉棒を扱き上げていく。
(こんなのまるで、セックスみたいじゃない……!)
自分の下半身はこんなに疼いているのにと睨むも、男は目もくれない。目の前の魔性のおっぱいに目も意識も奪われてしまっている。男が掴んで動かす度に、乳房は形を変え、奴隷のように奉仕させられている。
(こんなことで感じるなんて!)
まったく使い物として認識されない下半身が、こっちにも欲しい欲しいと声もなく主張している。切なさが高まって、挿れてほしいとさえ思ってしまい、レイカは内心苛立つが、どうすることもできない。
(相手のペースに乗せられちゃダメよ、御堂レイカ……!)
また、そこまで心乱されていることに動揺し、余計に身動きが取れなくなる。耳に聞こえるのは自分と相手の荒い息、そして肉棒と乳房がぶつかる粘着質の音だけだ。
レイカを押し倒してなお、男の勢いは止まらない。限界まで張り詰めた男根、その鈴口がぱくぱくと動いて、今にも射精しそうだ。
「イっ、いい加減、にぃっ、して……うっ、アアッ」
彼女の中で一度は引いた絶頂の波が、再び迫ってくる。腰が動くが、男の股はレイカの腹の上だ。彼女の腰の揺れは、虚しく空を切る。
「出るよ、レイカちゃん! 出しちゃうね!」
「待って、ちょっと……こんな、いやっ、あああっ!」
男の絶頂に伴って、レイカの胸に特別濃い精液がぶちまけられた。ひときわ濃厚な臭いを嗅いだのが最後の決定打となって、レイカ自身も再びオーガズムに至ってしまった。
「ああ……レイカちゃんの乳まんこ最高だよ……」
射精した男のペニスが、レイカの頬を舐めるように撫でる。最後まで出尽くした精液を彼女の顔から胸までに塗りたくりながら、男は満足げに腰を上げる。
責められ尽くした彼女の神聖ささえ伺わせた胸は、今や痛々しく腫れ、すっかり台無しになっていた。それでも倒錯的な被虐の美しさが、男たちを惹いてやまない。
「それじゃあ、今度はオレの番だな」
「まだ始まったばかりだもんね、レイカちゃん」
男たちの責めにすっかり疲弊したレイカであったが、これは脱出するまでの、地獄の三日間の始まりにすぎなかった。

「ハァッ、ハァッ、アアッ……」
それからのレイカを待ち受けていたのは、おそるべき地獄だった。乳を徹底的に蹂躙される、言い換えれば他のところはまったく触れられない、乳責め地獄。
ある時は手で、ある時は道具で、徹底的にレイカの胸という部分だけが凌辱された。豊かな胸は、その度に質量を伴って揺れ、弾み、歪んだ。
(こいつら、どれだけ胸を触れば気が済むのよ……!)
さすがにここまでの乳狂いに彼女は遭遇してこなかったし、想定もしていなかった。それもあって、彼女もまた、調教されるされないの境界線の上を危うく揺れていた。
「じゃあ、レイカちゃん。そろそろローション塗ってあげようね」
気遣っているような言葉遣いをしながらも、にやにやした顔を隠さない男が小瓶を取り出す。どろりとした透明の内容物を手で温めるように揉みながら、男が近づいてくる。
「んアッ……」
ひりついた胸に、冷たいローションが塗りたくられる。びくりと反応すると、ローションが揺れた胸から飛び散る。男の手つきは相変わらず胸に熟知していて、レイカをひたすら惑わせる。乳首のあたりから円を描くように、胸全体にローションが塗られて行く。被虐的な痕のついたレイカの乳房は、それだけで淫らな雰囲気を増していく。
(今日で三日か。こいつら、本当に隙がない……ひうっ)
ローションでてらてらと光を反射する乳房を、男は相も変わらずこね回す。左右ばらばらに動かされると、自分の乳房同士がこすれ合って、くすぐったさに似た快感が走る。たわわな胸が、ローションを泡立てながら男の手でリズミカルに揺らされる。
「これはおっぱい用のローションでね、レイカちゃんも気に入ってくれると思うんだけど」
「ア……!」
男の手が滑って、乳首をかすめる。今までとは違う摩擦に、思わずレイカは声を上げる。
それを聞いた男が、人差し指の腹で乳首をなぞり始める。
「ンッ……ぁ」
滑る指と共に、ぞくぞくと新手の快楽が襲い掛かってくる。それは聡明なレイカに、あるひとつの考えを導き出させた。
(今までの責めが、全部違うものになっちゃうんじゃ……)
さすがに三日も同じことをされれば平気になってくると思っていたが、そう甘くはないらしい。レイカの中で、不安と背徳的な期待が渦巻く。
(ダメよ、隙を見て抜け出すんだから)
この三日間で、自分に何度言い聞かせたことか。荒い息を隠すこともなく、レイカは奥歯を噛みしめる。
するとレイカの様子を見ていた男は、別の瓶を取り出した。
「今度は何を出してきたのかしら?」
「レイカちゃんがもっと素直になれるお薬だよ」
言うなり男は瓶の中身をレイカの胸にぶちまけ、肌になじませるように強く揉み始めた。
「んあっ、アアッ……!」
今まで調教されてきた乳房が、それだけで一気に熱を帯びる。
だが、様子がおかしいことに、幸か不幸か聡い彼女はすぐに気づくことができた。
(違う、これ、さっきより感じる……まさか……!)
「気付いた?」
男は笑みを深くして、目隠しを取り出してきた。男は目隠しで、むずむずとした落ち着かなさにもがくレイカの目を覆う。
「そう、これね、即効性の媚薬なんだ」
「……!」
男を睨もうにも視覚は塞がれ、失った視野を補おうと、聴覚が鋭敏になる。男のいやらしい声が、余計にはっきり聞こえてくる。
「じゃあ、今からいっぱい乳イキしようね」
「誰がそんなこと、ンひぃっ!」
男の手が乳に触れただけで、弾けるような快感がレイカの脳まで駆け上がってくる。目隠しをされたことで、触られることにも敏感になって、彼女はたまらず上ずった声で啼く。
並みの女ならばそれで絶頂してしまうほどの悦楽。今回ばかりはレイカもその例に漏れなかった。
「アッ、いやっ、もう来る、イくっ……!!」
放置されっぱなしの股間から愛液が垂れる。膣が収縮を起こし、身体じゅうが突っ張る。
その時、ぱしゃ、とシャッターを切る音がした。もう一人の男が撮影しているのだ。この御堂レイカの痴態というものを。
(まずい……けど、これ、キツいぃ……!)
半開きになった口からひっきりなしに喘ぎ声が漏れる。美麗な彼女の顔が、乳房を揉みしだかれるだけで淫猥に歪む。
「ぁ、ひいっ、またイくっ、おっぱいだけでこんな、アァァッ!」
さっきイったばかりなのに、レイカの豊満な肉体はまた絶頂に打ちのめされる。見ることのかなわない撮影の音が、余計に彼女の背徳感を煽る。
「ンアッ、撮らないで、よっ……」
「目は隠れてるからいいだろう?」
もう一人の男が残酷な言葉でレイカを突き放し、またシャッター音を鳴らす。その間にも、胸は遠慮なくこねくり回されている。
想像してしまう。男から手が伸ばされてくる。それだけでドキドキしてしまう。乳イキを期待してしまう。
「アアッ……!」
かと思うと、男は手を離し、わざとらしくふうっと息を吹きかけてくる。手とはまた違った刺激も、媚薬で高められた身体は受け入れてしまう。
次に待っていたのは、一瞬の間だった。
「今度は一体、なにを……ヒ、んんっ!!」
隙を突かれ、胸を鷲掴みにされる。電撃のような快感が、爪先から髪の先まで走り抜け、また彼女を絶頂へと導いていく。レイカは自らの理性が急速に消耗していくのを感じたが、どうすることもできない。
「ンンンっ……!」
鷲掴みにしたまま、指を一本一本ぐにぐにと動かされて、レイカは首を横に振る。この間にも、シャッター音は何度も聞こえてくる。
(くっ、このままじゃ本当に堕ちちゃう……!)
レイカもこれには危機感を覚え、絶頂で寸断される意識の中、必死に思索を巡らせる。
(堕ちたフリをして、なんとか……)
下手に抵抗すれば、余計に強い刺激を与えられると考えた彼女は、我慢せずに素直に喘ぎ声を出すことにした。
「アアッ、ア、だめぇっ……!」
「おっ、やっと素直になってきたかな?」
乳首を摘ままれ、乳輪をなぞられ、乳房を乱暴に掴まれ、撮影される。この悪夢のサイクルから脱出する機会を、待ち続ける。
男も素直に喘ぎだしたレイカにまんざらでもない様子で、乳責めを続ける。
「じゃあ、媚薬もうちょっと足しちゃおっか」
「っひ、だめぇ、これ以上はっ……!」
「ふふふ、だーめ。じゃあもっとかけちゃおうねえ」
だが、男も男で一筋縄ではいかない相手だということは、すでにレイカも熟知しているところだった。わざと甘い声を出して、彼女も隙を伺う。
こうして、およそ三日の間、レイカは与えられる快楽の波にどうにか乗りながら、待ちに待ち続けた。

(ンンっ、ここからどう立ち回ろうかしら……)
乳首の周りをハート型にくり抜かれた水着を着て、レイカは思案していた。
後から後から新手の快楽が与えられるこの乳責め地獄から、華麗に脱出する。そのためには、もうしばし耐える必要がありそうだと判断し、彼女は熱っぽい息を吐く。
(少し抵抗して、そこから堕ちる演技をしようかしら。腕の見せ所ね)
媚薬もすっかり浸透してしまって、二つの乳房は触られるだけでよくなってしまう。水着が擦れるだけで、気持ちがいい。
心の底から堕ちることはしなくても、気持ちいいということまで否定するつもりも、レイカにはなかった。
「そろそろ降参する?」
「ぁ、ンン……!」
男がそれを知ってか知らずか、乳首をぐりぐりと人差し指の腹で押す。
「誰が、あんたたちなんかに……!」
「まだそんなこと言う気力があるんだね。さすがレイカちゃんだよ」
レイカの反論に賞賛しながら、男は乳を持ち上げ、身体と乳の間の汗ばんだ匂いをたっぷりと嗅ぐ。
そしてそのまま、乳を下からゆっくりと揉み上げはじめた。
「アッ、んっ……」
親指の腹で両の乳首を強めに押され、レイカもふるふると軽く身を震わせる。緩慢な、ねちっこい動きに、もどかしさが募る。
「でもそろそろ、レイカちゃんのおねだりが聞きたいなあ」
まだ中身のある媚薬の瓶を片手に、男はわざとらしくぼやく。瓶を乳房の上で傾けて、一滴、二滴と中身を落としていく。
「ひうっ、ンアッ……!」
「心の籠ったおねだり……聞きたいなあ?」
媚薬が胸の谷間を伝う。男が指で掬い取って、触るか触らないかの距離で乳首を濡らす。じわじわと熱を帯びる乳首が、触ってほしいとばかりに固くなる。
「ン、くうっ……」
三滴、四滴。胸全体をフェザータッチで撫でられる度に、媚薬の範囲は広がっていく。それも伴って、当然レイカの肉体は火照り、激しい性欲に苛まれていく。
「おねだりするまではこのままだよ」
「ふうっ……ふうっ……」
徐々にレイカの息が荒くなる。胸が熱い。下腹部が疼く。肉棒を突っ込んで掻き回してほしい。様々な肉欲が、彼女の頭の中をかき乱す。
男たちはレイカの精神が胸から溶かされていくのを、にやにや笑いながら見つめている。
(おっぱい……おっぱい触ってほしい……)
彼らが手練れだということは嫌というほど理解してきた。このまま、適当なおねだりをしたところで、彼らが納得するとは到底思えない。レイカは、まだ口を開かない。
「ンンン……っ、ふうっ……!」
上半身をもじもじさせて、レイカは惑乱の声を漏らす。乳の揺れで、わずかな快楽を得ようと足掻く。しかしそれでは到底足りない。彼女の中で鎌首をもたげた欲望が、声帯を震わせる。
「おねだりしないと、もっともっとしんどくなるよ?」
「誰が……っ」
そんなことを言う男を弱々しく睨み返して、レイカはぽってりした唇が白くなるほど、口を引き結ぶ。そうしている間にも乳首から乳房から、媚薬はどんどん浸透して、レイカの理性を蝕んでいく。
今まで順調に耐えてきた女王の顔に、雌の欲望が滲んで浮かぶ。
(ううっ、思ったより、きつい……っ、おっぱい、おっぱい触られたいぃ……!)
胸に感じる異様な熱に、心が昂ってくる。頭の中が、まるで目の前の男たちのように自分の胸のことでいっぱいになる恐ろしさ、そして背徳感が、彼女の脊髄を這い回る。
だが、堕ちるわけにはいかないのだ。レイカは自分の雌の部分を必死に律する。律するが、今こそ、限りなく本心に近い「おねだり」ができるだろうと、彼女の頭脳は弾き出す。
「あ、あぁっ……」
震える声で、レイカは男を見上げる。
「わ、私の胸……さ、触ってください……」
「うーん、もう一声!」
「ンア……アアッ!」
男は媚薬の残りを容赦なくレイカの胸全体に振りかけた。一瞬にして膨れ上がる性欲と電撃のように走る快感に、レイカは仰け反る。媚薬の雫が落ちる、それだけでもう、胸は気持ちよくて、もどかしくて、たまらないのだ。
「レイカちゃん、もっとえっちに言ってほしいなあ?」
男はレイカの後ろに回り、拘束を解く。だが、レイカはまだ攻撃を仕掛けない。彼女の手は、ずぶ濡れにでもなったかのように震えている。
「わかるよね?」
「……う」
レイカはおそるおそる、じぶんの乳房を両手で寄せる。自分の手の触れたところから、じんじんと甘い痺れが広がっていく。
「育てられた私のえっちなおっぱい……もっといじって、ください……アンッ!」
「いいよいいよ、今の最高!」
男はそれを聞くなり、レイカの手を跳ねのけて彼女の胸を乱暴に揉みしだき始めた。
レイカの美しい胸は品も何もなく、揉まれるごとにぐにぐにと形を変える。その度に、レイカの頭の中にすさまじい快感が叩き込まれる。
「ンアアッ、ァ、アアッ、ァァ!」
「うーん、すっかりできあがっちゃったねえ」
乳首を揃えた指で何度も弾かれる。乳房を揉み上げられ、こねくり回される。その度に、レイカからは叫びに似た甘ったるい声が発せられる。
「これだけやっても、油断しちゃだめなんでしょ?」
「ああ、そうだ」
男は双乳の乳首をつねり、ぐっと乳房を持ち上げながら、男は後ろの男に声を掛ける。黙って撮影していた男が頷く。
「油断させたところを襲撃する。彼女の常套手段だ」
「へえ、おっかないね、レイカちゃん」
「い、やぁっ……!」
乳首をつまんだまま、男はレイカの乳房をこねる。乳首を押し込まれ、鋭い快感にレイカは声を荒げる。彼女が頭を動かす度、すっかり汗の匂いが染みついたブロンズヘアが揺れる。
「ふうん、これも本心じゃないかもしれないんだ?」
男も楽しんでいる様子で、レイカの胸を鷲掴みにして、円を描くように揉み始める。かと思うと、副乳の窪んだ部分を舌で舐め上げる。
「アアッ、ア……本心、よ。ずっと、ここにいるからっ」
「本当にぃ?」
「本当、だから、あああっ!」
何度目か分からない乳イキに、レイカはおとがいを反らす。すっかり上気した白い肌に当てられたか、もう一人の男も近づいてくる。
「お、そろそろ参戦する?」
「そうだな。いよいよ楽しめる身体になってきたんだろ?」
もう一人の男が後ろに回って、副乳の窪みを愛撫し始める。舌とは違う刺激に、レイカはまた声を上げる。いかに百戦錬磨の彼女とはいえ、大量の媚薬を盛られた上に二人がかりで責められては、さすがに成す術がない。
 男にしがみついてしまいそうになるのを、ぐっとこらえながら、彼女はどろどろに溶け切った理性の最後のひと欠片を手放すことはしない。
「アアッ、おっぱい、おっぱいすごいぃ……!」
レイカには、自分から発されるこの言葉が本心なのか、演技なのかの区別も徐々につかなくなってきていた。二人の手はばらばらに動く。片方は胸を揉みしだき続け、もう片方は乳の下に手を滑り込ませて、指先でなぞってくる。
(やっぱりこいつら、上手い……!)
息の合った二人羽織のようなコンビプレーに、レイカは翻弄される。縄はほどかれているというのに、抵抗する力が沸いてこない。
「ンひいぃっ!」
不意に乳をぎゅっと絞られて、レイカは胸を捧げるように突き出してしまう。
「本当におっぱい出ちゃったらどうする?」
「そ、んなこと……ンア、アッ!」
本気で乳搾りでもするかのように、男はリズミカルに胸を揉み始める。レイカの聖母のような乳は、ただの乳牛の如き有様になっていた。
男たちはなおもレイカの乳だけを狙って犯している。乳房の重みを生かして、持ち上げては落とし、下から手を差し入れて抱き上げては揉む。
時に、レイカの敏感な部分である乳首の根本を刺激すべく、乳首をくわえて下で撫で上げることもあった。
その度に、レイカは性欲に敗北したように、仰け反り、身を震わせ、むせ返るような色気を振りまきながら嬌声を上げる。彼女の中の、一度屈した性の囚人が、顔を出す。もう十分頑張ったのだから、堕ちてもいいと囁きかける。
(だめ、だめだったら……アアッ!)
脳内の囚人を後押しするように、男たちはそれぞれに片方ずつの乳を責め始める。乳同士を押し付けて擦り合わせ、媚薬の刺激をより一層強めてくる。
(ああっ、足りない、足りないぃっ、もっと強いの欲しい……!)
気をしっかり持とうとすれば持とうとするほど、より鮮烈な快楽に見舞われる地獄のスパイラルの中、レイカは興奮しきった雌の喘ぎを漏らしてしまう。腰が勝手にくねってしまう。
「ぉ、アッ、ンアッ……ぅ、アンッ……!」
先ほどの強い刺激から一転して、男たちの責めはもどかしい弱いものになっていた。レイカが胸を押し付けようとすると、彼らはそうさせないようにレイカの肩を押し付ける。
(また、焦らすの……!?)
切なさが、焼けるように熱い胸からこみあげてくる。男たちは分かっていて、フェザータッチをやめない。
「撮影が終わったら、裏に流してもっと見てもらおうね」
「アアッ、いやぁっ……!」
レイカの脳は考えてしまった。この男たちに匹敵するような変態どもに、乳アクメをする自分が見られてしまうことを。下卑た視線。荒い吐息。そそり立ったいくつもの肉棒。そんな妄想が、彼女の頭の中で駆け回る。
(変態達に囲まれて、興奮するなんて……!)
自分の思考とは裏腹に、肉体はひたすら甘い声を発し、いっそ笑みさえ浮かべている。理性と肉欲のバランスを崩したレイカは、快楽の渦の中をさまよっている。
「アアンッ、アッ、ぁ、だめっ……! だめえっ!!」
ぎゅっと乳房を握られた瞬間、また絶頂した。放置された下腹部がきゅんと切ない感覚に見舞われ、膣が収縮する。
「まだイってる、イってるから……アアンッ!」
オーガズムの大波が来てもなお、男たちは責める手を止めはしない。絶頂を長く引き伸ばされているような、息苦しい快楽がレイカを襲う。
「おっぱいの気持ちよさ、忘れられないようにしてあげるからね」
男はまた絶妙な位置に指を添え、乳首を押したり離したりしながら、レイカの悦楽を探り当てていく。
「これが終わってもね、おっぱいオナニーしたくてたまらないようになっちゃうから」
「アアッ、やぁ、そんなの……ひんっ」
レイカの胸に、改めてローションが塗りたくられる。慣れ始めた頃に、男たちはまた触感を変えてくる。ぬるぬると不安定に滑る指が、また未知の快感を導き始める。
「いやっ、おっぱいぬるぬるにしないでえっ……」
被虐的なレイカの様子に、男たちも夢中になっているようだった。乳首をつまんだ状態で、乳房と乳房をまた擦り合わせながら、レイカの顔を見る。
「もうちょっとかな?」
「念入りにした方がいい」
「そうだよね。レイカちゃんのもーっとイイ顔見たいなぁ?」
レイカを覗き込んで男がそう言うと、彼女の乳首を強めにつまむ。
「ンアア……ッ!」
そのまま、乳房をゆさゆさと上下に揺すり始める。あられもない歪み方をしながら、レイカの胸は弾む。
「やっ、アッ、それ、きもちいいっ、おっぱい、おっぱい歪んじゃうっ」
「大丈夫大丈夫、レイカちゃんのおっぱいは最高だから、これぐらい平気だよ」
男の目の奥の狡猾さを今更ながらに認識するが、レイカの思考はどんどん溶けていく。そう、これは最初から隙を見せた方が負ける、巧妙な心理戦なのだ。
「おっぱいイイっ、おっぱいイイからっ、アッ、アアッ」
「もーっとよくなるんだよ」
男は乳首を強めに弾き、また全体的に乳房を揉み始める。もう一人の男は、副乳のくぼみを相変わらず触れるか触れないかの距離で愛撫している。
「ふうっ、ふーっ、アア、ンアアッ……!」
息も絶え絶えになりながら、レイカは胸を男の手に擦り付けるように動かす。
「レイカちゃんもノってきたね」
「もっと、もっとおっぱいぃ」
紅潮した頬にうっとりとした笑みを見せながら、レイカは自分の罠の中に誘い込もうとする。
「それじゃあ、お望み通りにね」
「ひゃっ……アッ、アッ、ンンッ」
男は片手で乳首を、強弱を付けながらつまんだり緩めたりする。一方で、反対側の乳房に口を付けて、音を立てて啜りはじめる。母乳を求める赤子のように吸っていたかと思うと、忘れた頃にいやらしい舌使いで乳輪を舐め回し、乳首を舌で押す。
「アアッ、ンア、だめ、びりびりきちゃう、またイくっ、イくぅっ!」
再びレイカの全身を絶頂の波が襲う。男たちも男たちで、レイカを乳イキ地獄の中に堕とそうとする。その執念と技量に、レイカも縄をほどかれたことを忘れてしまいそうになる。
見向きもされない股間から愛液を噴き出しながら、レイカはいつ終わるとも知れないエクスタシーの濁流を受け流す。
(ううっ、もっと、もっと乳アクメしたいぃ、でもこのままじゃ、全部どうでもよくなっちゃう……!)
半開きの口から唾液が垂れそうなほど、レイカの肉体は興奮していた。これだけの絶頂をしてなお、もっと快楽を貪りたいと貪欲に欲情していた。レイカは胸を軽く左右に揺らして、男たちにねだる。
「ここにいるからぁ、もっと、おっぱい触ってください……!」
「おっ、今のいいね!」
乳房から口を離した男が笑みを深くする。
(そう、そのまま、油断してちょうだい)
レイカは祈るように、男の些細なミスを狙う。
「でもまだまだ……レイカちゃんならもっとイけるはずだよ」
しかし男はまだ隙を見せない。準備運動の如く乳房をゆっくりと揉みしだきながら、にやにやと笑う。
「待ってぇ、もう……!」
「待ーたーなーい」
子どもがふざけているかのような口ぶりで、男は乳首を指と指の合間で弾く。微細な刺激にも、レイカの胸は鋭敏に反応する。
「アッ……!」
男は先ほどねぶったのとは反対側の乳首を口の中に収め、舌で転がし始める。ねっとりとした舌使いが、彼女の疼いて仕方のない乳首を刺激する。レイカはまた限界を超える快楽を叩き込まれ、背中を反らす。
(こんな気持ちいいの、まだ続けるの……!?)
喉が枯れてしまうかと思うほどの喘ぎを吐き出しながら、レイカは快楽に溺れたい衝動に抗い続ける。まるで身体と精神がバラバラになってしまいそうな感覚に、彼女は唇を噛む。
「まだ我慢してるでしょ?」
唇を噛む様子を目ざとく男が見つけ、今度は緩急をつけて乳房を刺激する。片方は舌でしゃぶり、片方は指先で乳首をつまみ、まるで男根を扱くように上下に動かす。
「やっ……ンンッ、乳首、しごかないでっ、おっぱい出ちゃう」
「ほんとに出ちゃったらどうしようね? そろそろ出ちゃうかも?」
感じても感じても収まらないどころか、どんどん蓄積されていく快感。レイカはその猛烈な色欲の熱の中で、うわごとを言うように反論する。男はそれを聞いて、にんまりと笑うばかりだ。
「反対側、扱いちゃって」
男は口を離すと、先ほどまで吸っていた方の乳首を指先で扱き始める。一旦開放されたかと思いきや、さっきまで手で扱かれていた方の乳首は、もう一人の男につままれる。
「ンッ、アッ、アッ、だめ、だめ……!」
乳房から乳輪、乳首の先までを余すことなく、別々のタイミングで扱かれる。制御できない快楽が、レイカの頑強な理性をなおも激しく揺さぶる。
「レイカちゃんの乳首、すっかりスケベになっちゃったね」
「アンッ、ぁ、そう、私の乳首、こ、こんな扱かれただけで、気持ちよくなっちゃうっ」
レイカは極限状態で、敢えて男の言葉に乗る。淫猥な娼婦を演じ、男たちを誘う。
「ほら、ほら、ドスケベ乳首でまたイっちゃえ、レイカちゃん!」
「アッ、アアアッ、イく! またイっちゃう!」
甘ったるい声を響かせながら、レイカは絶頂するが、真っ白になる思考のほんの片隅に、しっかりと正気を残している。
男たちに責められれば責められるほど、自分がどんどんおかしくなっているような錯覚を受ける。だが、時折レイカの頭の中にちらつくものがあった。
それは、三日前の拓哉の責めだった。自分をメスではなくオンナに仕立て上げようとする、あの欲望と打算に満ちた、それでいて理知的で優しい責め。
「ン、ひいっ、イイぃっ!」
それは彼女の全身に宿る情欲の炎も煽ったが、同時に魂の芯に冷静さを取り戻させてくれるものだった。
確かにレイカにとって、男たちは極上の責めを駆使できる、百戦錬磨の猛者ではある。気を抜けば、自分も呑み込まれてしまうほどの快楽を、いくらでも与えてくる。
だが、その行為は、自分をメスに仕立て上げるための巧妙な罠でしかない。どんなに意向を凝らそうと、この事実だけは覆ることがないということは、レイカが一番よく理解していた。
いくら苛烈な責めをしたとて、メスの上のオンナを求める行為には敵わないのだ。
拓哉との記憶が鮮やかに通り過ぎていく。こんな行為に、敗北してしまうわけにはいかないと、彼女の闘志を取り戻させる。
(負けられない)
翻弄されるふりをして、彼女は壁のある一点を見る。そこには、男たちが撮ってきた犠牲者たちの写真が貼ってある。最初のうちは気づかなかったものだ。
年端も行かない少女が胸を嬲られ、顔を赤らめながら絶頂する写真があった。幼い少女が泣いているものもあった。あるいは自分と同じぐらいの女性が、媚薬漬けで半開きの口から唾液を垂らし、無残に人格を踏みにじられていたものもあった。
もしも自分が同じように堕ちてしまったのなら、誰が性犯罪者を捕まえて、彼女たちを救うというのだろう。
(そう、私は御堂レイカ――こんなやつらに、屈したりしない!)
余裕はないに等しくとも、二つの事柄は、彼女の理性の火を灯すのには十分だった。
「アアッ、ンア、もっと、おっぱいしてくださいぃっ」
迫真の演技で、レイカは男たちの底なしの性欲を煽る。わざと無様なふりをして、陥落したと思い込ませる。
「ええー、まだ信じられないなあ?」
「ここにいます、ずうっと言うことききますからぁ、おっぱいもっとぉ」
従順な口ぶりで、レイカは男を上目遣いで見て、懇願する。男が忠誠を確かめるように胸を鷲掴みにしてくるが、レイカは絶対に尻尾を見せまいと、いやらしく喘ぐ。
「アアンッ、レイカのおっぱい、もっとしてくれるんですか……?」
「だとよ。どうする?」
もう一人の男が乳の下の窪みを撫でながら、喉を鳴らしてくつくつと笑う。目の前の男も、笑みを今までより一層大きくする。
「レイカちゃんはもーっとおっぱいアクメしたい?」
「はいぃ、たっぷり育てて貰ったレイカのおっぱいで、一杯恩返ししたいです……!」
だらしない笑いを見せ、レイカは上半身を軽く左右にねじって、ローションと媚薬と唾液でどろどろになった胸を振って揺らす。
(さあ、これでどう?)
誇り高い女捜査官が、目の前で一人のメスとして屈服する。しかも、胸を弄られただけで、変態乳アクメを晒すメスとして。男たちにとって最高にそそるシチュエーションを、彼女は渾身の演技で作り上げてみせた。
「ふふふ、ふふふふっ」
それを見た男が隠し切れない様子で笑い声を上げ始める。後ろの男も、笑っている。それが嘲笑の類でないことを、レイカはすぐに理解する。
「いいよ、もっと、もっとしてあげようね!」
男は左の乳房にむしゃぶりつく。もう一人の男も右胸を開いた口でくわえ込む。
(掛かった!)
レイカの堕ちた演技に、男たちは初めて己の興奮を御せなかったのだ。
「アアッ、アンッ、はげしいっ……!」
わざとらしく喘いで仰け反り、レイカは勝利の笑みを隠す。男たちは今、すっかり被虐的な有様になったレイカの美乳に夢中だった。もうレイカを警戒することはない。男たちは彼女の術中に嵌ったのだ。そう、レイカは粘り勝ったのだ。
「アッ、ンンッ……フフッ」
勝利と性欲、二つの快楽にうっとりとした笑みを浮かべながら、レイカは唇を吊り上げる。
「ねえ、私の胸、そんなにいい?」
「うんうん、最高だよ。形も柔らかさも全部、最高!」
「そう、それは良かったわ」
今まで意図的に動かされなかったレイカの腕が、ゆっくりと二人の男の頭に伸ばされた。

「じゃあ、本望よね」
「ぐぎ!?」
「何だと!?」
男が気づいた時には時すでに遅し。レイカの両手は男たちの頭を一つずつ捕らえ、万力のような膂力でヘッドロックを始めていた。
「この瞬間を待っていたわ……!」
「ぐぐう、さすがレイカちゃん……ボクらの隙を三日も待ってたのか」
「ええ。乳首を本気で噛むなり何なりすれば、逃げられたでしょうけれどね」
頭を締め上げられながら、男は初めて困惑の表情を浮かべる。
「いやいやいや、だって最高のおっぱいなんだよ! そういう傷はちょっと!」
「そう。ならそのこだわりに溺れて、観念なさい!」
より一層力を入れて、レイカは男たちが屈するのを待つ。だが、ここまでレイカを責めてきた男たちも、ただでは負けない。
「でもね、もうレイカちゃんのおっぱいはボクらなしではいられないんだよ!」
男はヘッドロックを巧みにすり抜けると、再びレイカの胸にむしゃぶりついた。
「アアンッ!」
あられもない声を上げたレイカの手の力が、不意に緩まる。もう一人の男もそれでヘッドロックから脱出し、もう片方の乳房に吸い付いた。
まるで赤子のように乳首を吸い、舌でちろちろと舐め上げる。二人のコンビネーションに、レイカの呼吸は震える。
「ハアッ、ハアッ……ァ」
媚薬にまみれた胸が疼いて仕方がない。ヘッドロックをやり直すも、今一つ力が入らない。
男の一人が胸に顔を埋めたまま、口を開く。その呼気が濡れた乳首に当たって、くすぐったい。
「レイカちゃん。レイカちゃんの気持ちいいこと、ボクらならいっぱいしてあげられるよ」
「ふざけないでっ、ンアアッ!」
「ふざけてなんかいないよ。こんな極上のおっぱい、他にはないもん!」
素直な男の欲求に半ば呆れながらも、レイカは二人つの頭を締めるのをやめない。結果として、自分の胸に男たちを押し付けていることになってしまっているが、彼女はいっそ窒息させるほどの力で二人を追い詰める。
「ン、ぅ……!」
純粋に快楽だけを与える舌使いに、レイカは身震いする。水着の繰りぬかれたハート形の部分をなぞるように、男たちは愛撫を続ける。
三日もの間、調教を続けられてきたレイカの胸は、理性に反してもっとかわいがってほしいと切なく震える。
(だめよ、ここで落としたらもうチャンスは二度とないわ!)
鉄の意志で歪んだ性欲を抑えながら、レイカは男たちへの制裁を続ける。
「レイカちゃんの感度を、ボクたちは熟知してるよ」
時折説得のようなことを言いながら、男は口腔で吸い上げ、舌で乳首を押したり、押し上げたりする。
「ハアッ、アッ……だから何だって言うの」
反論したレイカだったが、男の言うことが事実だということも理解していた。現にレイカはまた、理性と性欲を天秤にかけてぐらぐらと揺らしていたのである。
(くっ、こんなところで折れたりなんて、しない!)
だが、レイカの意識に反してレイカの肉体は、口吸いや舌での愛撫を受け入れてしまっている。完璧な彼女にほんの少しの焦りが浮かぶ。
「やっ……」
彼女の心の隙をついて、男が乳首にふうっと息を吹きかける。思わず上ずった声を上げてしまったレイカは、男を睨みつける。男はまた、乳房に吸い付き始めている。
(乳首がじんじんする……っ)
責められれば責められるほど、乳首は自己主張を始めてくる。あれだけ酷に扱われたというのに、健気にも更なる快楽を求めて隆起する。
「ンッ、やっ、アアッ!?」
男たちは示し合わせたように乳首を甘噛みをする。痛くない、けれど絶妙な加減で刺激される乳首に、レイカは甘く喘ぐ。甘噛みから、また舌で転がすという快楽のサイクルを繰り返されて、彼女の手が緩む。あと一歩のところで男たちを仕留めることができない。
「乳首っ……噛まないで……!」
「ね、こんなに気持ちいいことがまだたくさん待ってるんだよ?」
「ひうっ……!」
再び息を吹きかけられ、レイカは乳首から起こったびりびりとした快感を耐える。
男たちは、今度は口で吸いながら、頭を動かして乳房を揺らしてくる。舌をまるでローターのように小刻みに揺らし、最後の抵抗を続けている。
「アッ、ンアッ、アッ……」
徹底した口による奉仕に、時折びくびくと身体を跳ねさせながら、レイカはなおも細腕に力を入れようとする。
(でも、もうちょっとぐらい……)
内なる魔性の囁きがレイカの理性をおびやかす。快楽からか、否定からか、彼女は頭を横に振って、部屋の端に貼られた写真を見る。相変わらずそこには、この男たちがめちゃくちゃにしてきた被害者女性たちの悲惨な顔や胸が写っている。レイカの中に、怒りの炎が燃え上がってくる。
「あんなことをしたあなたたちを許すわけにはいかないのよ!」
「だけど、三日の間、ボクらの責めを受け入れていたんだよね?」
ふと、男がそのようなことを口にして、ヘッドロックされながらもにやにや笑いを取り戻す。
「ええ、あなたたちの隙を伺いながらね」
「でもその間、ボクたちの責めを拒み続けることもできた。でも、レイカちゃんはそうしなかったよね?」
「何を言って……アアッ」
もう一人の男が不意にレイカの乳首をべろりと大きく舐める。突然の刺激に、レイカの反論が打ち消される。
「それって、レイカちゃんだって、本当はシてほしかったんじゃないの?」
「そんなわけないでしょ……っ、ンンンっ」
男の甘言に惑わされないように意識を集中すればするほど、乳首から与えられる刺激を強く感じてしまう。もう一人の男の不規則な責めが、レイカの思考力を揺るがす。
「ちょっと、私は話をっ、ンアッ、してるのよ……!」
困惑しながらも、レイカは男の責めを享受する。
「ほら、今だって突き飛ばせばいいのに、ヘッドロックでボクらをおっぱいに押し付けちゃってる。レイカちゃんはボクたちにもっとおっぱいして欲しいんだよ」
(好き勝手言って……! でも、でも……)
確かに気持ちいいということに対して、レイカは嘘をついたことはなかった。本心と打算のギリギリのところで、おねだりをしたことも事実だった。だからといって、男の言葉を受け入れることは到底できないのも本当だった。
(気持ちよかったのも本当よ。でも、彼らに口実を作らせるわけにもいかないわ)
「んんー、黙ってるってことはそうってことかな?」
喘ぎ声さえ押し殺し、沈黙を貫くレイカに、男は再び舌で乳首を弄び始める。
まるで男根の裏筋を撫でるかのように、下から乳首をなぞる。
「ンッ……ぁ」
かと思うと、唇で挟んで、乳首の根元から先端まで扱くように動かしてくる。彼女の豊満な双乳は、その暴挙を受け入れてしまう。
「アアッ、ン……」
嬲られる胸のあたりから上ってくる惑乱に、レイカは軽く頭を横に振る。腕の力がまた弱ってくる。男たちがヘッドロックから逃げようとするのに気づいて、力を入れ直す。性欲との戦いの裏で、そんな攻防戦が続いている。
「この……」
胸からは興奮した唾液の音がいやらしく発せられている。音だけでも欲情してしまいそうな、おそるべき舌使い。持っていかれないようにするので精いっぱいのレイカは、口を必死につぐむ。
「どう? レイカちゃん、考え直すつもりはない?」
男はなおも、レイカの精神の奥にある、満たされないメスの部分を刺激する。
これがただの姦計だということは理解していても、胸が快感を欲してしまう。
三日間の責めに耐えてきたということは、それだけ身体がこの卑怯な男たちの手管に慣れてしまっているということでもあった。
「ンアアッ、アッ、アッ……」
その証拠に、胸を責め続ける男たちに、いまだ彼女はとどめを刺せていない。あと少し力を入れたり、殴り飛ばしたりしてしまえば終わることを、ずるずると引き延ばしてしまっている。自覚しているだけに、レイカは喘ぎのさなかに歯噛みする。
「そうやって、どれだけの女性を傷つけてきたと思ってるの!?」
「心外だなあ。ボクたちは一度もおまんこにチンポを突っ込んだりしてないよ。ちょっとしたいたずらじゃないか」
男の声色は嘘やごまかしを喋っているのではなかった。本心から言っているのだと、レイカには理解できた。呆れたレイカは彼らの頭を締め上げる。
「あなたたちがしていることは犯罪よ……ンンッ!」
しかし、またも胸を舐めしゃぶられ、レイカは言葉を遮られる。
「レイカちゃんだって気持ちよくなることは嫌じゃないんでしょ?」
「アッ……!」
男の言葉を聞いている横で、もう一人の男が乳首の先端をぐっと舌先で押し込む。鋭い快感がレイカの中を走る。まとまっていた言葉が霧散する。
乳輪をねぶり、油断したタイミングで乳首を強く刺激する。それを繰り返されているうちに、レイカの腰のあたりから、絶頂の予感がざわざわとせり上がってくる。
彼女のかすかなわななきを察知して、男たちは夢中で乳首を刺激する。被虐の快感が、レイカに襲い掛かる。
「ンアッ、そこはっ」
その上、男たちはこの期に及んで下乳に浮き出している静脈の交点という、彼女のとっておきの性感帯に触り始める。
「あれー、レイカちゃんここも弱いのかな?」
「弱いわけ、アッ、いやっ……!」
「ふうん、弱いんだ」
まるで最初から知っていたかのような口ぶりで、男は静脈の後天を中心として、さわさわと指の腹で撫でる。もう一人の男が乳首の根本を責め続けていて、レイカの性感は限界まで高まっていく。
それでもなお、男たちは彼女の弱いところを責める。副乳のくぼみを、まるで骨をなぞるような強さで触れる。隠していた弱点をつまびらかにされて、さすがのレイカも悲鳴を上げる。
「アアッ、なんでっ、こんなとこ……!」
「言ったでしょ、ボクらはレイカちゃんのファンだって」
隠し玉を出してきた男が、レイカの豊満な胸に囁き、くぼみをぐりぐりと押す。
「ンアアアッ」
「レイカちゃんのおっぱいのことなら、もうなーんでも知ってるんだよ」
「この……っ、アンッ!」
静脈の交点を生ぬるい男の舌がねっとりとした速度で通過する。背筋に嫌悪感よりも快感が先に走ったことに、レイカは衝撃を隠せない。
(こいつら本当にどこからこんな情報を引き出してくるの……!)
心の中で悪態をつくも、レイカの肉体はもう限界寸前にまで高められていた。静脈をなぞるように舌を這わされ、副乳のくぼみを乱暴に押され、忘れた頃に乳首の根本を愛撫される。
レイカの肉体はその行為に歓喜し、性感に変換して彼女自身に圧倒的な快感の暴力を叩き込む。
「ちょっと、もう、いい加減にしてぇ……ッ!」
彼女は一瞬のうちにオーガズムまで昇り詰めてしまった。びりびりと脳髄を駆け巡る絶頂の感覚に、レイカの手が緩む。だが、男の頭を離すまでには至らない。
彼女は責め続ける男の頭を胸に押さえつけたままだ。重量級の美乳に埋もれた男は、幸せそうにさえ見える。
「そろそろ認めてくれてもいいんだよ、レイカちゃんが乳アクメ大好きな変態だって」
「アンッ……」
機嫌を伺うように、男は舌で乳首を弄びながら、手で横乳を揉む。イったばかりの身体は、もう双乳のどこを触られても気持ちがいい。意識が朦朧としてきて、ヘッドロックが単に男たちを抱き寄せるだけの締め方になっていく。
(このままじゃ、負けちゃう)
レイカの中で、弱気というらしからぬ部分が頭をもたげる。このまま攻守を逆転されてしまったら、もう覆すことはできないだろう。これは最初で最後のチャンスなのだ。それなのに、まだトドメを差すことができない。
「あーあー、ボクたちが大好きだからってこんな抱き締め方しなくてもいいのに」
男はへらへら笑っている。胸にうずもれる幸福感からか、耐える必要のないヘッドロックもどきを馬鹿にしているのか、レイカには分からなかった。
(このまま、このまま認めてしまえば……楽になる……)
彼女の中に、粘性を帯びた性欲がとぐろを巻き始める。その時だった。
――大変魅力的なお姿ですね。
男たちの声にまぎれて、いつか聞いた千手の言葉がレイカを挑発し、頭の中を駆け抜けた。気骨の綻びを突き、自分をへし折ったあの怪物。
――さあ、答えてください。レイカさんは、胸が弱いんですね。
確かに、かの怪物が言う通り、胸が弱いと認めてしまえば、男たちの責め苦からは解放されるだろうと、彼女の冷静な部分は弾き出した。しかし、彼女は痴漢どもに悦ぶ『雌畜』である前に、不撓不屈の『女王』であった。
(誰が、そんな屈服なんてするものですか……!)
思い出せば思い出すほど、彼女の中で怒りと屈辱がこみ上げる。負ける、と思っていた気持ちが、皮肉にもいつかの亡霊によって奮い立たせられる。
生尻にグリセリンと牛乳の混合物を突っ込まれ、栓をねじ込まれ、耐え切れず公衆の面前でひり出したことが鮮やかに蘇る。あの敗北の後で飲んだコーヒーがどれほど苦かったことか。
「ほら、レイカちゃん、答えてよ。レイカちゃんは胸が大好きなんだよね?」
――さあ、答えてください。レイカさんは、胸が弱いんですね。
いつかの幻と、目の前の男の声と姿が重なる。頭の中で『運命』が鳴り響く。鳴り響く度に、与えられた凌辱と敗北の数々が、止まることのない特急となって彼女の頭の中を通り過ぎていく。
(うるさいわね! 今、戦ってるとこなのよ!)
自分を打ち負かした千手の幻に、レイカは心の中で怒鳴りつける。
――おやおや。
飄々として、しかし卑劣な千手の亡霊が、困った声と共に苦笑いをしたようにレイカには感じられた。
はたして、千手の幻は消え去った。レイカは精神が折れるギリギリのところを、持ち直したのだ。
部屋の中から怪物の雑念は消え、再び男二人とレイカだけになる。
「ねえ、まだ降参しないの? 降参しようよ。そうすれば……」
「そうすれば、何かしら?」
淫猥な言葉を投げかけられて、レイカは怒りに満ちた双眸で男を睨みつける。たまらない快感に男たちを抱きしめていた腕が、再びヘッドロックの形を取る。
「いだだだだ」
捨て身の責めをしていた男から、ついに悲鳴が上がる。骨と肉のきしむ音さえ聞こえてくる。
「いぎっ、ぎぎぎ。このままシメられるわけには……!」
「ぐ……オレたちにもプライドというものがあるんだ……!」
「アンッ……!」
男は最後の力を振り絞って、乳房に手を伸ばし、荒っぽく揉みしだきながら女王のご機嫌を伺う。
「なあ、あんただって楽しんでただろ? オレたちならもっと楽しませてやれるんだぞ」
「そうそう! 触られただけで幸せになれる、最高のおっぱいにしてあげられるんだよ!」
まるで命乞いのように、男たちは快楽を掲げながらレイカの言葉を待つ。
だが、女王の威厳を取り戻したレイカには、もはや通用しない言葉だった。
「くどいわよ、そろそろおしまいね。観念なさい、犯罪者!」
「うぐうっ!」
一人の男がヘッドロックの膂力に耐え切れず、責めを諦めてじたばたともがき始める。ギブアップと言わんばかりにレイカの腕を掌で叩くが、当然、彼女はやめたりしない。
そのうち、男の身体はだらしなく弛緩した。彼の口が、ついに柔らかな乳房から離れる。
「ああっ」
片割れがやられたと悟り、今の今まで言葉でレイカを翻弄してきた男が悲鳴を上げる。もう一人の男がくずおれる。そのズボンがゆっくりと湿り始め、ちょろちょろと情けない音を立てながら床に尿を垂らし始めた。男は無様に失禁していた。
レイカは敢えて、主犯格の男をヘッドロックから開放してやる。男は慌てて抜け出すと、じりじりと怯えた顔で下がりながら、レイカの顔を見つめる。
今やレイカは怒りを身に纏い、ブロンズヘアが逆立たんばかりだった。彼女は絶頂したにも拘わらず優雅な足取りで、一歩、また一歩、豊満な胸を見せつけながら男へと近づいていく。
「ひいっ」
もはや命の危機を前にした男に、胸を責める余裕などなかった。レイカから目を離すことはできないが、さらに後退する。後ろにあるのは、散々自分がいたぶってきた女性たちの写真だ。
まるでその犠牲者たちが押さえつけているかのように、男の背中は壁にぴったりついて、動かなくなる。
「いやいやいや、レイカちゃんだって今の今まで楽しんでたじゃん!」
「よくも散々やってくれたわね」
レイカの姿勢が低くなる。彼女は半歩身を引いて、拳を構える。彼女のしなやかな肉体に、ありったけの筋力が溜め込まれる。
「い、いい、今からでも遅くないよ、だから……!」
胸の前で両手を振って、男は必死に説得をしようとする。だが、怒れる女王を前に、全ては無駄なことだった。
「これは、とっておきのおしおきよ!!」
腰をひねり、肩を動かし、レイカは男の顔面目掛けて拳を振り抜いた。
「ぐええええっ!」
顔が歪むほどの衝撃に、男は悲痛な叫び声をあげる。男は壁に背中をしたたかにぶつけ、膝から崩れ落ちた。男の歯は折れ、血の混じった唾液が、衝撃で外れた写真や画鋲と共に、白い床に落ちる。
すっかりうずくまった男に、レイカはふんと鼻を鳴らした。
(早く着替えたいわ)
うんざりして、レイカは地面に転がる男たちを見下ろす。もう彼らは自分から動き出す気力も尽き果てた様子で、惨めに震えている。
「……」
レイカは床に落ちた写真を一つ拾い上げる。幼い少女だった。自分のように何日も胸を責められ続けたのかもしれないと思うと、彼女の中に怒りと悲しみが満ちた。
「仇は取ったわよ」
写真に写る少女の頭を撫でるように、レイカは小さく人差し指で輪郭をなぞる。彼女の表情に、慈愛の女神のような柔らかさが戻る。
(だからって、彼女たちの傷が癒えるわけではないのだけれど……)
ほんの少しだけ、彼女の表情は曇る。しかし、彼女は首を横に振る。
そう、犠牲者の傷が癒えるのには、ずっと時間が掛かる。
それでも、戦っていれば次の犠牲者を減らすことはできる――レイカはこの地道な戦いを続けてきた。だから、今回の出来事にも意味はあると理解できた。今回も悪質な犯罪の芽を二つ、摘むことができた。戦果は上々だった。
(あら、誰かしら)
やっと肩の力を抜いたレイカの耳に、かすかな足音が届いた。
(新手の犯罪者かしら。でも、それにしては足音を隠す気がないわね)
訝しむレイカのすぐ側で、扉が開く。
「レイカ!」
そこにいたのは、珍しく焦りの表情を見せた拓哉だった。彼はドアノブを握りしめたまま、レイカの水着姿を見て、苦笑気味に口を開く。
「……奇抜な水着だな」
「赤じゃなくておあいにく様ね」
互いの無事を確認し、二人は軽口を言い合って唇を吊り上げた。


これはbc8c3zがあらすじ・設定を作り、それを元にある方に書いてもらった綾守竜樹先生の御堂レイカの2次創作です。
綾守竜樹先生のファンの方に読んでいただければ、それに勝る喜びはありません。
一瞬でも先生がいなくなったことの皆さんの孔を埋めれれば幸いです。
感想があれば励みになりますのでお書きください。
またアンケートだけでもいただけたら今後の参考になりますので入れてください。
よろしくお願いします。

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